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ソフトウェアデファインドストレージ:サードプラットフ ォーム主導で進む IT トランスフォーメーションの有力な実 現手段 ホワイトペーパー

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ソフトウェアデファインドストレージ:サードプラットフ ォーム主導で進む IT トランスフォーメーションの有力な実 現手段 ホワイトペーパー
ホワイトペーパー
ソフトウェアデファインドストレージ:サードプラットフ
ォーム主導で進む IT トランスフォーメーションの有力な実
現手段
スポンサー:EMC
Ashish Nadkarni
2015 年 5 月
Laura DuBois
IDC の見解
IT 業界のサードプラットフォームへの移行は、目覚ましくかつ破壊的な影響を及ぼすことになると
IDC は考えている。サードプラットフォームは「ビッグデータ」「ソーシャル」「モバイル」「クラ
ウド」という 4 要素で形成されている。そのサードプラットフォームはすでに企業のビジネスのやり
方を左右し始めている。具体的な領域としては、顧客との関わり方、イノベーションの創出方法、新
製品・サービスの投入スピード、事業運営の効率と信頼性などである。サードプラットフォームが進
化するに伴い、モノのインターネット(IoT)、ロボティクス、3D プリンティング、コグニティブコ
ンピューティングなど、イノベーションを加速させる新たな技術が登場し、次世代アプリケーション
のポートフォリオが急激に拡大しつつある。IDC の予測では、2020 年までに企業が戦略的に実施する
新規 IT 投資は、実質的にすべてサードプラットフォーム関連のテクノロジーやソリューションを対
象としたものになる。こうした次世代サードプラットフォームアプリケーションの基盤となる IT イ
ンフラは、機動性と強靱性を備え、需要に柔軟に対応できるだけでなく、CAPEX(設備投資)の負担
を抑えながら管理できるものでなくてはならない。すなわち、以下の条件が求められる。

サービスベース:均質化したデータセンターリソースに対してソフトウェアベースの制御、
オーケストレーション、自動化が可能であること。

自律的:ハードウェア固有の機能から独立して動作し、プログラムによるアプリケーション
層への働きかけが可能であること。
このソフトウェアデファインドインフラの核となる要素がストレージ層だ。ストレージ層はデータ保
持という重要な役割を担っており、上記のような設計目標に合致した機能が求められる。現世代のス
トレージシステムは、ハードウェアのカスタム設計と密接に連携して機能するコントローラーストレ
ージソフトウェアをベースにしている。そのため、管理が複雑であったり、スケーリングが高額にな
ったりしがちで、サードプラットフォームインフラの構成要素としてはあまり適していない。一方、
ソフトウェアデファインドストレージ(SDS)ソリューションの場合、コントローラーストレージソ
フトウェアは基盤となるハードウェアと切り離され、汎用ハードウェア(COTS)上で動作し、「ク
ラウドスケール」のストレージサービスのフル実装が可能であるため、大胆な移行が可能である。
SDS ソリューションは、ファイル、ブロック、オブジェクトなど多様なデータ編成に対応するほか、
ソフトウェアオンリー型アプライアンスやハイパーコンバージドアプライアンスなどのリソースオー
ケストレーション、デリバリーのモデルにも対応している。
May 2015, IDC #255891
サードプラットフォーム時代に適したソフトウェアデファインドインフラの構築原理を真の意味で実
践している EMC のようなサプライヤーは、SDS の提供においてポートフォリオを充実させることが
いかに重要性かを理解している。個々のユースケース(スケール)、アプリケーション、顧客(導入
タイプ)に最適な SDS ソリューションを提供する必要性を認識しているからだ。そのため EMC では、
ScaleIO、ViPR、Elastic Cloud Storage(ECS)など新しい SDS 製品やソリューションの開発に力を入れ
るだけでなく、Isilon や VNX のような従来から定評のあるストレージ製品をソフトウェアデファイン
ド型のソリューションとして再発売し、引き続き提供している。サードプラットフォームテクノロジ
ーの導入は企業に破壊的影響をもたらしかねないが、EMC のようなサプライヤーはそこに着目し、
企業がインフラ導入で適切な決断をするため必要なオプションを提供することで存在感を発揮してい
る。
概況
サードプラットフォーム時代はすでに始まっている。そして近い将来、企業の事業運営の基盤は完全
にサードプラットフォームへ移行することになるだろう。サードプラットフォームの 4 要素である
「ビッグデータ」「ソーシャル」「モバイル」「クラウド」は、すでに企業のビジネスのやり方を左
右し始めている。具体的な領域としては、顧客との関わり方、イノベーションの創出方法、新製品・
サービスの投入スピード、事業運営の効率と信頼性などである。サードプラットフォーム時代の現状
の例を挙げる。

基幹業務アプリケーション導入企業のリアルタイムインテリジェンスへのニーズに後押しさ
れ、アナリティクスは 2 桁ペースで成長している。

クラウドおよびマネージドサービスのプロバイダーは、インフラマネジメントで大幅に業績
を向上させている。

カスタマーエクスペリエンス技術やソーシャル技術の影響で、コグニティブレスポンスが注
目を集めている。

ユーザーがインテリジェントシステムやマシンラーニングを通じて情報を受け取るようにな
ったため、モバイル機器とのやり取りはこれまでより受動的になりつつある。
さらに、モノのインターネット(IoT)、ロボティクス、3D プリンティング、コグニティブシステム、
次世代セキュリティなど、イノベーションを加速させる新たな技術が登場し、次世代アプリケーショ
ンのポートフォリオが急激に拡大しつつある。IDC の予測では、2020 年までに企業が戦略的に実施す
る新規 IT 投資は、実質的にすべてサードプラットフォーム関連のテクノロジーやソリューションを
対象としたものになる。
次世代アプリケーション
サードプラットフォーム時代に合わせて開発された次世代アプリケーションは、現世代のアプリケー
ションとは大きく異なる。たとえば、次世代アプリケーションが採用する設計原理では、アプリケー
ション構成要素はステートレスで、水平方向にスケーラブルだ。アプリケーション層もデータ層も強
固なインフラ基盤を前提としたプロセスにはなっていないことや、DevOps、継続的インテグレーショ
ン、アジャイル開発などの開発手法を活用していることも特徴的だ。また、こうした次世代アプリケ
ーションは以下の要素を組み込んでいることが多い。
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
「キーバリューペア」ベースのストレージ技術やキャッシュ技術(例:Memcached、Redis、
HDFS、NoSQL 指向データベース(Cassandra、MongoDB、Riak 等))を用いたデータマネジ
メントおよび保持のメカニズム

サービス指向アーキテクチャ(例:メッセージキュー、RESTful API)

最新のアプリケーションフレームワーク(例:Rails、Django、Spring、AngularJS)

並列で地域分散型のアルゴリズムを用いてクラスター上で大量のデータを処理、生成するた
めのプログラミングモデル(例:MapReduce)

ソーシャルメディアストリームやモノのインターネット(IoT)用センサーなどの情報源から
データを収集するためのマルチソース型地域分散データ収集メカニズム

開発プロセスへ情報と支援を提供し、ビジネスプロセスへの迅速なフィードバックを繰り返
し行うための内蔵アナリティクス機能
サードプラットフォーム時代のインフラ
しかし、現世代 IT インフラのほとんどは、こうしたサードプラットフォームアプリケーションの設
計目標を満足するには能力不足というのが現実だ。したがって、新しい発想に基づくサービス指向の
コンピューティング、ネットワーキング、ストレージへの移行が必要となる。
たとえば、サードプラットフォームアプリケーション用のコンピュート層は、ハイパーバイザーやベ
アメタルから PaaS 層やアプリケーションコンテナ(例:Docker)へ移行してインフラポータビリテ
ィを備える必要がある。また、サードプラットフォームアプリケーションは大抵ネットワーク通信量
が多いため、アプリケーションノード間でソフトウェアデファインド型の高速相互接続が必要だ。現
世代ストレージインフラについても同様の進化が必要だ。現世代ストレージシステムは、ハードウェ
アのカスタム設計と密接に連携して機能するコントローラーソフトウェアをベースにしているため、
以下の制約がある。

管理が複雑:サイロ型ストレージインフラの管理は必然的に複雑になる。さらに、管理側か
らはデータ内部が見えないため、データ保護方式やアクセスプロトコルが複数必要になる。

手頃な費用でスケーリングしにくい:アーキテクチャ上の理由から、現世代ストレージシス
テムは非効率的で、オーバーヘッドが大きく(特に地域的分散による)、ユニファイドマネ
ジメント機能もない。

クラウドに対応していない:現世代ストレージシステムのアーキテクチャは、次世代アプリ
ケーションの多くで必要となるオンデマンドの拡張性を提供するのに適していない。
驚くまでもないことだが、ハイパースケールサービスプロバイダー、ソーシャルメディア企業、Web
2.0 企業など、他に先駆けてサードプラットフォームを導入しているとみられる企業の多くは、「ソ
フトウェアデファインドインフラ」と呼ばれる新局面のインフラへすでに移行済みだ。
ソフトウェアデファインドストレージ
SDS は、ソフトウェアデファインドインフラの要であり、データセンターへ次々と導入される次世代
アプリケーションに対応するための基本的アプローチだ。ソフトウェアデファインドインフラは、機
動性と強靱性を備え、需要に柔軟に対応できるだけでなく、CAPEX の負担を抑えながら導入できる
ものでなくてはならない。すなわち、以下の条件が求められる。
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
サービスベース:均質化したデータセンターリソースに対してソフトウェアベースの制御、
オーケストレーション、自動化が可能であること。

自律的:ハードウェア固有の機能から独立して動作し、プログラムによるアプリケーション
層への働きかけが可能であること。
SDS は製品ではなくアプローチだ。これはソフトウェアデファインドインフラの他の構成要素につい
てもいえる。
IDC の定義では、SDS ソリューションとは、基盤となるハードウェアから切り離され、汎用ハードウ
ェア(COTS)上で動作し、ストレージサービス全般を提供するという 3 つの特徴を備えたコントロ
ーラーソフトウェア(ストレージソフトウェアプラットフォーム)を実装するソリューションである。
このアプローチとしての SDS には、各種データ編成モデル、同種/異種データ保持方式、さまざまな
実現モデルが含まれている。ここで各用語は以下のように定義される。

データ編成モデル:ブロック構成のレイアウト内、一元的または分散ファイルシステム内、
あるいはテナントアカウントコンテナにオブジェクトを格納する方式において、データがど
のように編成されるかを表す。

データ保持方式:データがどこにあるかを示す。可能性のある場所としては、サーバー内の
ディスクメディアや外部 JBOD、外部ストレージアレイ、テープ、さらにはパブリッククラウ
ドまで考えられる。

実現モデル:これに含まれる要素は、アプライアンスのほか、汎用ハードウェア(COTS)上
で動作するソフトウェア、ハイパーバイザー内部で動作するハイパーコンバージドソリュー
ションなどである。SDS は、スタンドアロンシステムとして、またはクラウドフレームワー
ク(例:OpenStack)の一部としても実現可能だ。

ストレージサービス:既存のプロトコルを通じたデータアクセス、API を通じたアクセスや
マネジメント、さらにはオートメーション、リソースフェデレーション、データモビリティ
などもこれに含まれる。
スケールアウト型メタデータ、シェアードナッシングアーキテクチャのような設計を選択すれば、高
い拡張性が得られたり、「クラウド並み」の経済性が達成できたりするソリューションもある。
SDS の主な市場ドライバー
サードプラットフォームアプリケーションのスケーリングにはアーキテクチャを根本的に変えること
が必要だが、SDS ソリューションはこのニーズに応えることを目指している。これは、コモディティ
ハードウェア上でオープン API、オープンソースソフトウェア、商用ストレージソフトウェアを動作
させることで実現できる。
この考え方を最初に取り入れたのがハイパースケーラーである。サプライヤーがこのハイパースケー
ラーを提供し始めたため、サードプラットフォームアプリケーションを導入する企業がスケーラブル
で強固なインフラへ移行できるようになった。導入企業が期待できるのは、SDS コントローラーソフ
トウェアをハードウェアから切り離せること、コントローラーストレージソフトウェアを好みのベン
ダーから調達した汎用ハードウェア(COTS)上で動作させられること、さらにその結果として
CAPEX の負担を軽減できることだ。また、SDS ソリューションには既存のストレージ環境を簡素化
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する能力もあるため、その過程で管理オーバーヘッドを削減でき、コスト削減につながる。したがっ
て、SDS 導入成功のポイントは、以下のようになる。

クラウド化への道筋をつける:SDS ソリューションにより、データセンターがサービスベー
スで「クラウドスケール」のデータセンターに生まれ変わるための道筋をつけられること。
データセンターのストレージリソース全体に対して管理とフェデレーションのためのレイヤ
ーを構築し、リソースを均質化できること。さらに、待ち時間が短く、最適な容量の階層を
一時的に構築し、それを適切に組み合わせることで、汎用ハードウェア(COTS)を使用しな
がらインフラをオンデマンドでスケーリングできること。

CAPEX/OPEX コストを削減する:SDS ソリューションにより、調達プロセスで具体的なコ
スト削減が実現できるとともに、運用保守を続ける中でコスト削減が数字に表れること。す
なわち、3~4 年の期間で考えた総保有コスト(TCO)で「クラウドスケール」の経済性を実
現できること。
EMC による SDS へのアプローチ
ストレージソリューション市場のリーダーである EMC は、数十億ドル規模の成熟産業の中でまだ黎
明期にあった SDS セクターへ早期から参入していた。EMC は SDS を単一製品というより、ストレー
ジが将来どのように提供されるかを視野に入れた構想とみなしている。この目標に向かって、SDS ソ
リューションの強固なポートフォリオを築き上げている。これは IDC の推定では、業界で最も広範な
ポートフォリオの 1 つである。EMC のポートフォリオの主な強みとしては以下が挙げられる。

オープン:ベンダーを選ばないオープン標準に基づく API を使用した製品のため、スタンド
アロン環境でもクラウド環境(例:OpenStack)の一部としても使用可能。オープンソースコ
ミュニティ版なら、無料でソフトウェア入手し、簡単に試用できる。

多様性:EMC の SDS ポートフォリオには、ファイル、ブロック、オブジェクト、HDFS、ハ
ーパーコンバージドなどさまざまな SDS データ編成および実現モデルが含まれる。次世代型
のラックスケール、データセンター、ハイパースケールアウトなどのアーキテクチャにも対
応している。

柔軟性:EMC はソリューションをアプライアンスまたはダウンロード型ソフトウェアとして
提供し、汎用ハードウェア上で使用できるようにしたいと考えている。
EMC は、SDS ソリューションで業界最高水準のポートフォリオの提供を目指しているが、その内容
は以下のとおりだ。

データセンターリソースのオーケストレーションおよび管理

非構造化データのストレージ、管理、インプレースアナリティクス

構造化データ用のスケーラブルストレージおよび仮想インフラ

クラウドスケールで地域分散型のワークロード用のインフラ

アナリティクス中心のワークロード用レポジトリ

ハイパーコンバージドインフラ用ストレージ

データアジャセンシーを必要とするワークロード用のインフラ
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EMC がこのポートフォリオで達成しようとしているのは、広範なユースケースに対応できるエンタ
ープライズクラスの SDS ソリューションを提供し、しかもそのすべてで汎用ハードウェア(COTS)
の使用を可能にすることで経済性と柔軟性を実現することだ。
EMC が提供する SDS のポートフォリオ
EMC の SDS ポートフォリオは、ScaleIO、ViPR、Elastic Cloud Storage などの SDS 新製品・ソリューショ
ンのほか、vVNX や今後リリースされるソフトウェアオンリー製品 Isilon OneFS(それぞれ EMC が従来
から提供し、定評のあるストレージ製品 VNX および Isilon をベースにしている)で構成されている
(図 1 参照)。
図1
EMC の SDS ポートフォリオ
ソフトウェアデフ
ァインド
ソフトウェアデフ
ァインド
ソフトウェアデフ
ァインド
ソフトウェアデフ
ァインド
ソフトウェアデフ
ァインド
ユニファイドブロ
ック/ファイル
スケールアウト
SAN
スケールアウトフ
ァイル
ハイパースケール
オブジェクト
マネジメント
出典:EMC、2015 年
オーケストレーションと管理(ViPR)
EMC がデータセンターで異種ストレージリソースのプロビジョニングと管理を自動化する SDS ソリ
ューションとして ViPR Controller を発売したのは 2013 年のことだ。ViPR Controller は、複数ベンダー
の複数製品が混在するストレージ環境をサービスベースの共通管理フレームワークで一括管理すると
いう革新的なソフトウェアデファインドソリューションとして発売された。ViPR Controller は
VMware、OpenStack、Microsoft などのクラウドスタックと統合可能で、他の管理システムとの統合用
に RESTful API を提供する。ViPR Controller を導入した企業は、プロビジョニング期間を最大 63%短
縮でき、プロビジョニング費用を最大 73%削減できるほか、消費者が 5 つの簡単なステップで新しい
ストレージの利用を開始できる環境を構築できる。
業界初の試みとして、EMC は ViPR Controller のコード(ストレージの自動化および制御機能全般)を
オープンソースコミュニティへ公開することを計画している。プロジェクト名は CoprHD で、オープ
ンソースコミュニティとして Mozilla Public License を使用する。EMC の狙いは、オープンソースコミ
ュニティを通じて開発を加速し、ストレージアレイとデータ保護技術へのサポートを強化することだ。
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オープンソースコミュニティ型の開発を進めるということは、顧客やパートナーにとっては選択肢が
広がるとともに柔軟性と透明性が高まることになる。
スケールアウトブロックとハイパーコンバージド(ScaleIO)
EMC は 2014 年初めにイスラエルの新興ストレージ企業 ScaleIO を買収した。狙いは、同社の持つ革新
的サーバーベースストレージ技術で、汎用のコモディティハードウェアを使用してソフトウェアデフ
ァインド型かつスケールアウト型のブロックストレージソリューションを構築できるというものだ。
ScaleIO が競合製品と異なる点は、ハイパーコンバージド型ストレージプラットフォームとして動作で
きること、そして複数のハイパーバイザー、オペレーティングシステム、コンピューティングハード
ウェア(ARM ベースのサーバー含む)をサポートしていることだ。さらに、ScaleIO の大きな強みは、
拡張性が他のどの製品より優れていることだ。単一の統合クラスター内でノードを数千台まで拡張で
きる。このような特徴を生かし、EMC は ScaleIO を大企業およびクラウドサービスプロバイダー向け
製品と位置付けている。こうした企業ではスケールと異種混在環境への対応力が非常に重視されるか
らだ。これは、主に中位市場で vSphere ベースの仮想インフラ導入企業を対象とする VMware 製品、
vSAN とは対照的だ。
スケールアウトオブジェクト(Elastic Cloud Storage)
EMC は、オブジェクトベースの次世代ハイパースケールストレージソリューションである Elastic
Cloud Storage(ECS)を発売した。ECS は、サードパーティ提供のコモディティインフラ上に実装す
るソフトウェアオンリー製品版、もしくはアプライアンス統合版として提供されており、非構造化デ
ータに対する保存、アーカイブ、アクセスに使用する。ECS は、Centera(EMC の旧世代オブジェク
トベース型 SDS)、Atmos(EMC の現世代オブジェクトベース型 SDS)、その他のオブジェクトベー
ス型ストレージプラットフォームの制約を部分的に克服すべく開発されたソリューションだ。ECS を
導入することで、プライベートクラウド、パブリッククラウドのいずれにおいても拡張性が極めて高
いストレージを実現できる。また、データの配置、保護、ライフサイクルポリシーのメタデータを自
由に設定できるようになる。データ保護には、ローカル・分散両方のイレージャーコーディングを用
いてサイト別・地域別の保護を行うハイブリッドエンコーディングを採用している。ECS へのアクセ
スには RESTful API が使用できるため、Amazon Web Services S3、OpenStack Swift、EMC Atmos、さら
には Centera の API である CAS もサポートしている。EMC によると、4 年間の TCO で考えた場合、
同量のデータなら ECS に保存する方が Amazon Web Services よりも安くすむという。EMC は、ECS が
業界で最も費用対効果の高い HDFS プラットフォームだとしている。
ECS は、Centera および Atmos からの技術更新に最適な製品と位置付けられている。実際、ECS ソフ
トウェアおよび ECS アプライアンスの開発ロードマップでは、Centera や Atmos を使用中の顧客がシ
ームレスに移行できるよう、段階的に新機能を追加している。
スケールアウトファイル(Isilon)
2009 年、EMC は次世代のスケールアウト NAS 機能をストレージポートフォリオに追加することを念
頭に、Isilon を買収した。Isilon の NAS 製品ファミリーは、分散ファイルシステム OneFS を基盤とし
ており、急成長するスケールアウトファイル市場へごく初期段階から投入されている。OneFS は、業
界で初めて製品化されたファイルベースの SDS ソリューションの 1 つで、シェアードナッシングアー
キテクチャを採用することで汎用サーバー上に多様なストレージプロトコルを実装している。従来か
らの販売経路を通じたニーズに応えようと、EMC は Isilon を完全一体型アプライアンスとして発売す
ることにした。
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EMC は、SDS に関する製品の豊富さでは業界有数の地位を維持している。EMC では、このアプライ
アンスオンリーの導入モデルから Isilon ソフトウェアを切り離そうとしている。Isilon を EMC のクラ
ス最高級分散ファイルシステムのソフトウェアオンリー版として発売するつもりだ。これで、顧客は
自ら選択したハードウェアに Isilon を実装できるようになる。
ユニファイド SAN/NAS(vVNX)
EMC は、VNXe を中規模の IT 環境に適したエントリーレベルのユニファイド SAN(iSCSI)/NAS
(NFS/SMB)アレイと位置付けている。現在発売を予定しているのはソフトウェアデファインド版の
VNX で、想定されるユースケースは、仮想 VNX ストレージを使用した vApps 開発・テスト環境の構
築や、ハードウェアオーバーヘッドなしでデータレプリケーションやスナップショット、クローンを
テストすることなどだ。アプライアンス版と同じく Unisphere や機能パリティを使用し、VNXe シリ
ーズ全体で一貫した表示や操作性を実現している点が企業の IT 担当者に評価されそうだ。
EMC は vVNX のコミュニティ版もリリース予定で、これも業界初となる。企業側は、これを自由にダ
ウンロードして本番環境以外で使用できる。当面は vSphere 上で動作する仮想マシンとして vVNX を
サポートし、最終的には他のハイパーバイザー向けのバージョンも発売する計画だ。
EMC にとっての課題と機会
EMC をはじめとする現行のストレージベンダーが SDS 製品戦略を実行に移すには、さまざまな面で
現状を変える必要が生じる。それは、製品とサービスをどう開発し、マーケティングし、販売するか
という点であったり、ストレージの調達・管理方法についてこだわりを持つ顧客にどう対応するかと
いう点や、このような顧客がソフトウェアデファインドインフラの実装にいざ着手した場合どうサポ
ートするかという点での変革である。
さらに、収益をどこでどのように把握するかという点でも変革が必要だ。要するに、SDS に基づく製
品戦略を取れば、少なくとも大規模な破壊的影響は避けられない。しかし、このようなベンダーの多
くにとっては、現状維持もまた存在を脅かす問題になりかねない。すなわち、SDS ビジョンを掲げ、
短期的に破壊的影響を受けながらも長期的には存在意義を維持するか、現在の延長線上にとどまって
長期的に存在意義を完全になくすか、のいずれかだ。どちらの道に可能性があるかは明らかだ。
このような全社規模の変革を SDS ソリューション市場でリーダーになるチャンスと捉えている既存ベ
ンダーは少数だが、EMC はその中に含まれると IDC はみている。既存製品ラインをソフトウェアデ
ファインド型へ移行させるために技術リソースを動員しているからだ。
また、EMC は M&A 手法を効果的に活用して新製品を獲得し、「サードプラットフォームストレー
ジ」のポートフォリオを外部の力を借りて拡大してきた。EMC は破壊を自発的に受け入れることで、
非自発的な破壊を避けようとしているのだ。とはいえ、これはまだ EMC にとって長い道のりの始ま
りに過ぎない。この道を進むにつれ EMC が直面しなければならない課題は、内部的にも外部的にも
いくつかある。まず、自社従業員と既存顧客の認識を変え、SDS を受け入れさせなければならない。
EMC は、目標到達へ向け、ソフトウェアデファインドインフラのビジョン、製品ポートフォリオ戦
略と実際の行動を絶えず整合させることも必要だ。
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結論
テクノロジーがデジタルトランスフォーメーションで中心的役割を果たすようになるに伴い、新たな
ビジネスモデルなり、デジタルデータと物理データをシームレスに統合する製品・サービスなりが登
場し、ビジネスや顧客体験を変え、新しい収益源を生み出すであろうというのが IDC の見解である。
このような新ビジネスモデルは、従来とはまったく異なる方法でさまざまな産業を変革することにな
る。この時代を表す主な特徴を挙げるとすれば、即時性、新たな購買センター、次世代の事業運営、
効率の数値化、豊富なリソース、モノとサービスの個別化などだ。
SDS も含めたサードプラットフォームの IT インフラは、このトランスフォーメーションと歩調を合
わせるように進展するものと考えられる。次世代インフラ実現へ向け準備する中でサプライヤーが重
視すべきは、製品ポートフォリオを通じて価値を提供することだ。ポートフォリオに含まれる製品は、
「クラウドスケール」のデータセンターで歯車として機能するものでなくてはならない。たとえば、
シリコンフォトニクスのような新技術を使えば、分散したコンピュートプール、メモリープール、ス
トレージプールをシームレスなソフトウェア層で統合して実行することが可能になる。
サードプラットフォームは、今後の IT 市場成長の原動力だ。ソフトウェアデファインドストレージ
(ソフトウェアデファインドインフラ)は、その成長に欠かせない要素である。道のりはまだ始まっ
たばかりだ。
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IDC について
インターナショナルデーターコーポレーション(IDC)は、情報技術、通信、コンシューマーテクノ
ロジー市場に関する、市場インテリジェンス、アドバイザリーサービス、イベントにおける世界第一
級のプロバイダーです。IDC では、IT 専門家、企業の経営陣、投資コミュニティがテクノロジーの購
入および事業戦略に関して、事実に基づく意思決定ができるように支援を提供しています。全世界で
110 を上回る国において、1,100 人以上の IDC のアナリストが、テクノロジーおよび業界の機会とトレ
ンドに関するグローバル、リージョナル、そしてローカルの専門知識を提供しています。IDC では 50
年にわたって、クライアントが主要な事業目標を達成できるように、戦略的な洞察を提供しています。
IDC は、テクノロジーに関する世界有数のメディア、調査、イベント会社である IDG の子会社です。
グローバル本部
5 Speen Street
Framingham, MA 01701
USA
508.872.8200
Twitter: @IDC
idc-insights-community.com
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必要です。係る申請には、提案する文書のドラフトを添付する必要があります。IDC では、その理由の如何にか
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