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PwC Insurance Tax Alert FATCA 規則案により保険会社はどのような影響 を受けるか?

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PwC Insurance Tax Alert FATCA 規則案により保険会社はどのような影響 を受けるか?
PwC Insurance Tax Alert
2012 年 2 月 22 日
FATCA 規則案により保険会社はどのような影響
を受けるか?
2012 年 2 月 8 日、2010 年米国雇用関連法の一部として成立した外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の
諸条項に関するガイダンスを提供する規則案が公表された。規則案は、保険業界における導入に関する多くの問
題について具体的なガイダンスを提供している。また、保険業界から寄せられた多くのコメントを取り込んだようで
ある。一方でこれまで公表されてきた FATCA の段階的施行についての延期はほとんど行われていないと考えら
れる。
PwCの見解:規則案によって解消された懸念事項の中には、経過措置対象の拡大や金融口座と口座保
有者に関する定義の明確化があげられる。
これらはまだ規則案ではあるものの、保険会社において、対象となる商品および必要となる事務手続とシ
ステム変更を把握するのに十分なガイダンスが示されている。さらに、FATCAの適用開始時期に間に合う
ように顧客や保険販売チャネルの関係者に周知する準備を行うことが可能になったと思われる。
規則案の公表と同時に、米国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインおよびイギリスの各国政府は共同声明を発表し、
外国金融機関が、米国政府に対してではなく各国の税務当局に対して一定の顧客に関する口座情報を開示する
ことを通じて FATCA を実施していくというアプローチについて検討していることを明らかにした。共同声明は、互
恵的制度であるとして、米国も共同声明を発表した各国の居住者が米国金融機関に保有している口座について
の情報を収集し、提供することも強調している。
PwCの見解:共同声明は、保険その他の業界から提起されている多くのプライバシー関連法規則による
懸念について言及している。しかし、共同声明で提唱された枠組みでは、FATCAの観点から収集しなけ
ればならない情報量は必ずしも削減されていない。どのように情報交換に関する条項が起案されるかによ
って、米国の保険会社は状況によっては米国外の顧客のための報告を増やす必要性が出てくるだろう。
1) FATCAの定義に含まれている保険用語
従前のガイダンス(Notice)は主として銀行向けに規定されていたため、今回の規則案の公表まで、FATCAの適
用と影響について保険業界は不透明な状況に置かれていた。保険業界からの要望に応えるために、規則案
は、保険業界がFATCAに適切に対処するのに必要な複数の用語についての定義を明確化している。特に、
規則案は「口座保有者」として確認の対象となる当事者を明確にしたほか、「キャッシュバリュー」と「保険会社」
の定義に関する追加のガイダンスを提供し、特定の保険・年金契約が金融口座の定義に含まれるか否かの詳
細について言及している。
本アラートは英語の原文を翻訳したものです。したがって、あくまでも便宜的なものとして利用し、必要に応じて原文をご参照頂くようお願い致します。
口座保有者
金融口座(下記参照)に該当する保険・年金契約において、キャッシュバリューを利用できる者、または保険金
(給付金・年金)受取人を変更できる者は口座保有者であるとみなされる。あるいは、そのような者が存在しない
場合には、保険金(給付金・年金)受取人が口座保有者となる。
金融口座
投資要素を含む保険契約-すなわち、キャッシュバリューのある保険契約と年金契約は「金融口座」の定義に
含まれる。例えば、定期生命保険(term life)、障害に関する保険(disability)、傷害・医療保険(health)、火災保
険(property)、新種保険(casualty)等、キャッシュバリューの要素がない保険契約は金融口座の定義から除外
される。
キャッシュバリュー
キャッシュバリューのある保険契約とは、ゼロより大きいキャッシュバリューを有する保険契約である。さらに、キ
ャッシュバリューは次のいずれか大きい方である。
1.
解約または契約終了に伴い、保険契約者が受け取ることができる金額(解約手数料・約款貸付控除前の
金額)
2.
保険契約に基づいて保険契約者が保険会社から借り入れることができる金額
キャッシュバリューから除外される項目
キャッシュバリューの定義に加えて、次の項目はキャッシュバリューの定義から明確に除外されている。
1.
保険契約の解除、保険契約の有効期間中のリスク・エクスポージャーの減少、あるいは入力誤りその他の
類似の誤謬による保険料の再計算の結果により、(生命保険・年金を除く)保険契約に関して契約者に支
払う保険料返戻金
2.
定期生命保険、あるいは、保険金・給付金の支払いが、例えば個人の傷害や疾病のような、保険事故の
発生により生じた経済的損失の補償に限定される保険契約に関連する、契約者配当金(契約解除に伴う
配当金は除く)
保険会社
保険会社という用語は、年間の業務の過半が、保険または年金契約の引受け、あるいはそれらの再保険を行う
(あるいは当該契約に関連して支払義務を負う)会社として定義されている。
PwCの見解:規則案に示された定義により、FATCA上の適切な確認手続の適用と報告要件の決定が明
確になった。さらに、キャッシュバリューから除外される項目により、保険契約のもと既に支払われた保険
料の保険契約者への返戻をFATCAの対象外とする意図を明らかにした。
2) 退職金・退職年金
特定の要件を満たす一定の貯蓄口座(退職金・退職年金口座および非退職貯蓄口座を含む)は金融口座の
定義から除外されている。一般に、そのような口座は、特定の退職金制度により保有されているか、税務上・規
制上の要件を条件としている。
本アラートは英語の原文を翻訳したものです。したがって、あくまでも便宜的なものとして利用し、必要に応じて原文をご参照頂くようお願い致します。
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さらに、外国金融機関(FFI)が、その設立または事業を行っている国の法律の下、退職金・退職年金の給付を
目的として組織化された企業体であり、かつ、一定の要件を満たしている場合には、みなし遵守FFIに該当す
ることになる。
PwCの見解:FATCAは一定の退職年金契約を規制対象から除外している。しかし、米国人による租税回
避の潜在的なリスクの程度を識別するために適切な調査手続を実施しなければならない。
3) 口座を識別する確認手続/残高基準の修正
規則案では、米国人口座に該当するか否かを決定するために行う既存口座確認手続の事務負但は、以下の
修正により軽減されている。
a)
(保険・年金以外の)口座の残高または価値が5万ドル以下およびキャッシュバリューが25万ドル以下の保
険・年金契約を有する個人口座については、確認手続きから除外することができる(事実上の残高基準)
b)
既存の法人口座に対する25万ドルの残高基準の提示
c)
「顧客確認手続」(KYC)/「マネーロンダリング防止」手続(AML)として収集した情報に依拠することの容認
d)
手作業のレビュー(エンハンスド・レビュー)を要する既存個人口座(「ハイ・バリュー口座」)の基準値を
100万ドル以上に引上げ
e)
書面の口座記録の「詳細レビュー」(書面調査等)の範囲に関するガイダンスの提示
f)
いわゆる「プライベート・バンキング口座」に関する従前のガイダンスの特別ルールを削除し、この概念を
前述の「ハイ・バリュー」口座の概念に統一
PwCの見解:保険契約の大部分が下記の適用除外契約の要件に合致するものの、米国口座として識別
された既存口座/契約のレビュー・報告にあたり保険会社に依然影響を及ぼすことになる。しかし、参加
FFIは、個人口座保有者が有する価値または残高の合計が25万ドル以下のキャッシュバリューのある既
存の保険・年金契約について文書化を省略することができる。
規則案はすべての口座残高を名寄せすることを要求しているが、それは、コンピューター化されたシステムが、
口座残高の集計を可能とする顧客番号、納税者番号等のデータ要素を参照することによって、口座を関連づ
けることができる範囲内で行えば良いこととされている。しかし、ハイ・バリュー口座のリレーションシップ・マネー
ジャーは、同一人が直接または間接的に所有し、支配し、または設定した口座であることを、既に知っているか
当然知っているべきである口座については、すべての口座を集計することも要求している。
PwCの見解:保険のためにコンピューター化されたシステムは、多くの場合、特定の商品固有のシステム
となっており、他の商品のためにコンピューター化された別のシステムと繋がっていない。したがって、す
べての個人口座保有者の口座を関連づけることは不可能なケースが多いだろう。
4) 経過措置対象契約(Grandfathered Obligations)
規則案は、従前の通知で提示されたガイダンスを修正し、経過措置対象契約の基準日として2012年3月18日
から2013年1月1日に変更を行った。しかし、規則案では、既存契約に対する重要な修正は、当該修正の発効
日時点で新規に契約を締結または実行したものとして取り扱うこととしており、経過措置対象契約の範囲に含ま
れないことを示している。残高基準を超える経過措置対象契約を有する保険会社は、報告対象となる源泉徴
収対象支払いを識別するために適切な確認手続を実行し、当該支払を報告するプロセスを構築する必要があ
る。
本アラートは英語の原文を翻訳したものです。したがって、あくまでも便宜的なものとして利用し、必要に応じて原文をご参照頂くようお願い致します。
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さらに、規則案は、適用除外契約に該当する一定の契約を特定しているが、そのような契約として、規定の年
齢の到達時または死亡時のいずれか早い方に支払われる生命保険契約と有期年金(Term Certain Annuity)
契約をあげている。
PwCの見解:「経過措置対象契約」の範囲の拡大により、保険業界は源泉徴収に関する負担が軽減され
ることになった。しかし。保険会社は、依然として報告対象となる源泉徴収対象支払いを識別するために
確認手続を実施することが要求されている。
規則案は負債証券に関連して「重要な修正」を定義している。他のすべての契約については、重要な修
正は「すべての関連する事実と状況」に基づいて決定されることとしている。したがって、保険契約におけ
る「重要な修正」とはどのようなものを指しているかは依然として不明瞭である。例えば、保険価額の変更
や保険金(年金、給付金)受取人の変更が「重要な変更」に含まれるかどうかについては、米国内国歳入
庁(IRS)による追加のガイダンスが必要な領域と考えられる。
5) みなし遵守FFIの追加カテゴリー
規則案はみなし遵守FFIの追加カテゴリーを提示している。この対象の拡大は、FFI契約を締結することが必要
でない企業にかかる法令遵守のための負担を削減することを目的としている。みなし遵守FFIのカテゴリーは従
前のガイダンスを整理して登録みなし遵守FFIと認定みなし遵守FFIというカテゴリーを設けた。この追加は、投
資家の性質(例えば、退職金制度、参加FFIあるいは適用免除受益者)、資金拠出元(例えば、雇用主、政府
あるいは従業員による拠出)、業務範囲(例えば、ローカル銀行、あるいは所在国外での業務が制限されてい
る保険会社、証券会社に限定)に焦点を当てて行われている。
PwCの見解:「みなし遵守」は、IRSと米国財務省が、米国人による租税回避リスクの低い一定の金融機関
や退職金制度等に対して提供したFATCAに対する別の方策である。これらの規則により、みなし遵守と
なるのが容易になった企業もあるが、FATCAに関連する事務負担が完全に消滅するわけではない。例え
ば、登録みなし遵守の地位を得ようとする企業はみなし遵守FFIの地位を登録し、FFI契約に準じた契約
を締結し、必要な宣誓を行う必要があり、FFI‐会社識別番号(FFI-EIN)を入手することが要求される可能
性もある。源泉徴収義務者として、企業は追加の確認要件に直面する(例えば、みなし遵守FFIの追加カ
テゴリーに対して適切な源泉徴収証明を入手することに注意)。最後に、登録みなし遵守FFIには、3年ご
とに「みなし遵守」の地位を証明するために、依然として一定の継続的な情報収集・モニタリング要件があ
る。
依然のNoticeにおいて、IRSは損害保険・再保険契約のみ発行する保険会社に関してFATCAからの免
除を認める可能性について検討していた。規則案においては、そのような会社に関するみなし遵守の地
位はない。しかし、規則案は、投資要素を含む保険契約、すなわち、キャッシュバリューのある保険契約
および年金契約のみが「金融口座」の定義に含まれるとしている。一方で、キャッシュバリュー要素のない
保険契約、例えば、定期生命保険(term life)、障害に関する保険(disability)、傷害・医療保険(health)、火
災保険(property)、新種保険(casualty)および再保険等については、金融口座の定義から除外している。
しかし、金融口座をひとつでも持っている損害保険会社や再保険会社は依然として参加FFIとしての登録
が必要となる可能性がある。米国財務省とIRSは規則案で触れられていないみなし遵守FFIの追加カテゴ
リーが必要かどうかについてのコメントを募集しているため、キャッシュバリューのある保険・年金契約等の
金融口座を最小限保有する企業に対してみなし遵守FFIのカテゴリーを付与する検討が行われるものと
考えられる。
6) 法令遵守を立証するために必要な手続きに関するガイダンス
従前のNoticeにおいて規定されていたガイダンスを修正し、FFIがFFI契約の条項を遵守していることを責任者
が定期的に宣誓することが予定されていることを規定した。その契約条項には、とりわけ文書化された方針・手
続の採用および前述の方針・手続に対するFFIの遵守状況の定期的なレビューを行うことが含まれている。FFI
本アラートは英語の原文を翻訳したものです。したがって、あくまでも便宜的なものとして利用し、必要に応じて原文をご参照頂くようお願い致します。
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は第三者による監査を通じて法令遵守を立証することは要求されていないが、IRSは遵守が疑わしい場合には
FFIの監査を実施することができる。
PwCの見解:これは、FATCA責任者がFATCAの遵守についての最終的な説明責任を負っていることの
確認である。そのため、FATCA責任者は、宣誓書の提出に際して、必要な確認手続、源泉徴収、報告手
続のすべてが十分に完了していることを確信している必要がある。留意しなければならないのは、多くの
保険会社が第三者サービスプロバイダーによって数多くの機能(例えば、確認手続、源泉徴収および報
告の機能等)が遂行されている資産運用業務を担っている点である。このような場合であっても、FATCA
責任者は宣誓書の提出に際してすべての手続が十分に完了していることを確信している必要があるだろ
う。
前述のとおり、規則案は従前のガイダンスと比べて詳細なガイダンスを多く提供している。しかし、さらに多くの
ガイダンスが今後数カ月の間に公表されることが予定されており、FFI契約書のひな型、源泉徴収証明の修正
版(様式W-8等)、および情報申告書の修正版(様式1042-S等)などの草案が公表予定である。
公開ヒアリングは2012年5月15日に予定されている。IRSは2012年4月30日までパブリックコメントを
募集している。
2012年2月21日、PwCは規則案全般に関するウェブキャストを主催した。2012年2月10日(金)に開設された登
録サイトへのリンクは、http://www.pwc.com/us/fatcaに掲載されている。
さらに、多くの米国PwC事務所が、3月に保険業界に対するFATCA規制の影響について検討する円卓会議や
セミナーを主催することになっている。
PwCの見解:規則案はFATCAの導入の延期、すなわち保険業界に対する法令遵守の労力が実質的に
軽減されたことを示唆している。ただし、実際は保険会社は相当量の作業を依然として実施しなければな
らないと考えられる。規則案によって今後どのような対策が必要になるのか詳細が明らかになった部分も
多いことから、保険会社はFATCAの要求する事項に対応するために業務プロセスと事務手続の変更に
関する検討を開始する必要があると考えられる。
本アラートは英語の原文を翻訳したものです。したがって、あくまでも便宜的なものとして利用し、必要に応じて原文をご参照頂くようお願い致します。
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この内容についてのご質問は、下記記載の FATCA チームメンバーまでご連絡ください。
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あらた監査法人
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昌彦
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090-6514-2842
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[email protected]
090-6045-9637
あらた監査法人
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080-3246-9227
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080-1015-7200
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マネージャー
比留間 延佳
[email protected]
080-3592-6099
プレス・リリース、共同声明、規則案へのリンクは以下のとおりです。
プレス・リリース:
http://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/tg1412.aspx
共同声明:
http://www.treasury.gov/press-center/pressreleases/Documents/020712%20Treasury%20IRS%20FATCA%20Joint%20Statement.pdf
規則案:
http://www.irs.gov/pub/newsroom/reg-121647-10.pdf
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