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欧州における純粋持株会社の VAT 控除に 係る留意点 Transaction M&A News

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欧州における純粋持株会社の VAT 控除に 係る留意点 Transaction M&A News
Transaction M&A News
欧州における純粋持株会社の VAT 控除に
係る留意点
Issue 70, August 2014
In brief
欧州において、課税事業者には、他の事業者に支払ったVATの前段階税控除が認められます。課税事業者
とは、経済活動を独立して営む者とされています。
ここで、純粋持株会社については、経済活動を営んでいるかについて疑義が生じるケースがあり、実際に、純
粋持株会社が企業の買収のために要した費用にかかるVATの控除を否認された事例も発生しています。
欧州のVATは15%-25%と比較的税率が高く、VATの税額控除が否認されると影響が大きくなりがちであり、
純粋持株会社における、企業買収のために要した費用に関するVATの控除の可否については、留意が必要
と考えられます。
In detail
1. 欧州VATにおける前段階税控除
欧州VATは、原則として欧州加盟国内で課税事業
者が事業として行うすべての資産の譲渡と役務の提
供に課税されます。課税事業者とは、営む場所や目
的、結果を問わず経済活動を独立して営むすべて
の者を意味し、ここでいう経済活動とは、製造、販売、
サービスの提供に含まれる全活動で、工業、農業、
自由業も含まれ、所得獲得のために継続的に有形ま
たは無形資産を利用することも含まれます。
課税事業者は自らの課税売上によって預かったVAT
を税務当局に納付する義務を負うと同時に、物品や
サービスの購入の際に支払った前段階税(input
VAT)について、控除を行う権利があります。
しかしながら純粋持株会社の場合、主として株式の
保有を事業としていることから、純粋持株会社が経済
活動を行っているか否か、または経済活動を行って
いると認められる場合でも、支払ったVATが課税売
上とひもづけることができるか否かについては、常に
議論があるところです。
2. 純粋持株会社が買収に要した費用に関する
VATの控除についての事例
2006年に、Ferrovial社に率いられたスペインのコン
ソーシアムが、英国の大手空港運営会社であるBAA
社の公開買付(「TOB」)に成功しました。 Ferrovial社
は、商業空港のようなインフラプロジェクトに特別な専
門知識を有し、本件についても長期的な投資を行う
ことを望んでいました。同社は、本件入札のために、
Airport Development and Investments Limited
(「ADIL社」)という新会社を設立しました。買収後、
BAA社はADIL社の完全子会社となり、また、BAA社
のVAT上の連結納税グループのメンバーとなりまし
た。ADIL社は、BAA社のVAT上の連結納税グルー
プのメンバーとなる前には、VAT登録をしていません
でした。
ADIL社が、BAA社の買収に関連して購入した様々
なプロフェッショナル・サービスに関するVATの控除
が税務当局により否認されたことから、BAA社によっ
て、英国において異議申立および裁判が行われまし
た。本件の争点は、当該VATがBAA社のVAT上の
連結納税グループにおいて、控除することが可能で
あるか否かという点でした。
www.pwc.com/jp/tax
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第1次異議申立(1st Tribunal)においては、ADIL社は経済活動を行っており、また、ADIL社の支払ったプロフェッショナル・
サービスの対価とBAA社の課税売上の間に直接の関連性(direct and immediate link)があると認められました。
第2次異議申立(2nd Tribunal)においては、ADIL社がサービスを受けた時点において経済活動を行っていたことについては、
第1次異議申立(1st Tribunal)の判断が保持されました。他方で、ADIL社が要したコストと、その後のBAA社のVAT上の連結納
税グループにおける課税売上には直接の関連性(direct and immediate link)がないものと判断されました。これは、コストのす
べてがADIL社で行われた課税売上もしくはVATの連結納税グループ下におけるADIL社に帰属する課税売上のいずれにも関
連しないものと判断されたということとなります。
本件については、さらに裁判(Court of Appeal)の判決が公表されています。
Court of Appealにおいては、欧州司法裁判所の判例をもとに、株式の取得を唯一の目的とする純粋持株会社で、かつ、株式
の取得に対して持株会社自体でマネジメントが行われていないような場合には、課税事業者となることができないと結論付けて
います。
また、純粋持株会社において株式の取得に要したプロフェッショナル・サービスに関する費用と、その後の課税売上の間には直
接の関連性(direct and immediate link)がないとしています。
他方で、課税事業者においては、このようなプロフェッショナル・サービスについては、ビジネス全体に関連する費用であるもの
として、VATの前段階税控除が認められるとしています。
PwC
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