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国外財産調書制度 International Assignment Services Alert September 2013

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国外財産調書制度 International Assignment Services Alert September 2013
www.pwc.com/jp/ias
International Assignment Services Alert
国外財産調書制度
September 2013
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2012年度税制改正により制定された
国外財産調書制度について、2013年
3月に新たな通達が公布され、国外
財産調書制度の適用に関する具体
的な指針が明らかにされました。この
ニュースレターでは、国外財産調書
制度の概要を整理するとともに、新し
い通達で明らかとなった事項につい
てお伝えします。
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2012 年度(平成 24 年度)税制改正により、国外財産調書
制度が制定されました。この制度は個人(日本居住者)が
所有する国外財産が 5 千万円超ある場合には、その明細
を税務当局へ毎年提出するもので、2013 年 12 月 31 日
時点で保有する国外財産から適用が開始されます。
今般、適用開始に先立ち 2013 年 3 月に国外財産調書制
度に関する新しい通達が公布されました。この通達により、
制度の制定時には不明確であった国外財産の価額の算
定方法等、国外財産調書制度の適用に関する具体的な
指針が明らかにされましたので、制度の概要とともに通達
の内容を解説します。
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国外財産調書制度の概要と適用開始時期
国外財産調書の提出義務者
対象となる財産
国外財産の所在地
国外財産の価額
所得税の財産債務の明細書との重複関係
虚偽記載や不提出についての罰則
税務当局による調査の有無
過少申告加算税又は無申告加算税の特例
税収確保に関する海外諸国との政府間協力
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1. 国外財産調書制度の概要と適用開始時期
国外財産調書制度とは、日本の居住者が 12 月 31 日時点において合計 5 千万円超の国外財産を保有している場合に
は、国外財産調書(保有する国外資産の内訳明細書)を作成して、翌年 3 月 15 日までに所轄の税務署長に提出しなけ
ればならないという制度です。
調書の提出の適用開始時期は、2014 年 1 月 1 日以降提出分から(つまり、2013 年 12 月 31 日時点の国外財産調書を
2014 年 3 月 17 日までに提出するのが初回になります)適用になります(改正法附則 1 七、59)。
2. 国外財産調書の提出義務者
国外財産調書の提出が必要となるのは、日本の居住者(非永住者を除く)であり、かつ 12 月 31 日時点において国外財
産を時価ベースで合計 5 千万円超保有している個人です。 この日本の居住者(非永住者を除く)とは、その年の 12 月
31 日時点において日本国内に「住所」を有する、又は継続して 1 年以上「居所」を有する個人のうち、外国籍(外国人)
であり、過去 10 年間日本に住所等を有していた期間の合計が 5 年以下である個人以外をいいます(所法 2①三、四)。
たとえば、外国人の方が出向等により継続して日本で勤務する場合、当初 5 年間は非永住者として国外財産調書の提
出は不要ですが、5 年を超える居住期間がある場合には国外財産調書の提出が必要になりますので留意が必要です。
また、国外財産調書の提出は、所得税確定申告書の提出の有無とは関係なく義務付けられるものです。たとえば、申告
所得のない未成年者であっても、贈与や相続等により多額の国外財産を有する場合には国外財産調書を提出しなけれ
ばならないので留意が必要です。
なお、12月31日においては居住者であったが、提出期限の翌年3月15日までに死亡した場合、又は出国(海外旅行等で
はなく、住所を有しなくなること)した場合は、国外財産調書の提出は不要になります。
3. 対象となる財産
対象となる財産は「国外にある財産」のすべてであり、財産に債務は含まれません。たとえば、外国で 1 億円の不動産を
銀行借入により購入した場合、国外財産は正味ゼロと考えるのではなく、この場合は、1億円の国外財産を保有している
ということで、当該1億円の不動産を記載した国外財産調書の提出が必要になります。
この「財産」の範囲については、新しい通達において、金銭に見積もることができる経済的価値のあるもの全てのものをい
う、という定義が示されました。
4. 国外財産の所在地
財産の所在地については、相続税法の規定(相法 10①及び②)により判断し(送法 5③、送令 10①)、その判定の時期
は 12 月 31 日における現況とされています(送令 10③)。主な財産の所在地については、下記の表のとおりです。
財産の種類
動産
不動産
預貯金
生命保険契約等の保険
金
有価証券
ストックオプション
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所在の判定
動産の所在地
不動産の所在地
預貯金の受入れをした営業所又は事業所の所在地
契約に係る保険会社等の本店又は主たる事務所の所在地
有価証券の発行法人の本店又は主たる事務所の所在地
ただし、金融機関の口座で管理されている有価証券については、その金融機関の営業所等
の所在地
証券の発行者の本店又は主たる事務所の所在地
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5. 国外財産の価額
財産の価額は、12 月 31 日時点の時価又は見積価額によることとされています(送令 10④、送規 12⑤)。また、財産の価
額が外国通貨で表示される場合には、12 月 31 日の外国為替相場(12 月 31 日に当該相場がない場合には同日前で同
日にもっとも近い日の外国為替相場)により換算することとされています(送令 10⑤)。なお、通達において、邦貨換算を
行う場合の為替相場は、いわゆる対顧客直物電信買相場(TTB)によることとすることが明らかになりました(通達 5-11)。
見積価額についても、新しい通達においてその具体的な内容が示されました。見積価額とは、その年の 12 月 31 日にお
ける財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などをもとに、合理的な方法により算定した価額、とされて
います。さらに、通達では、この見積価額の算定方法について、以下の表に掲げる例示が挙げられています(通達 5-7、
5-8)。
財産の種類
土地
建物
預貯金
有価証券(上場有価証
券以外)
ストックオプション
民法上の組合契約に基
づく出資
見積価額の例示
(1) その年の 12 月 31 日が属する年中に課された固定資産税に相当する外国の租税の課
税標準額
(2) 取得価額を基にその取得後における価額の変動を合理的な方法によって見積もって算
出した価額
(3) その年の翌年 1 月 1 日から国外財産調書の提出期限までにその財産を譲渡した場合に
おける譲渡価額
(1) 上記「土地」の(1)から(3)のいずれかに該当する価額
(2) 業務の用に供する資産以外のものである場合には、その財産の取得価額から、その年
の 12 月 31 日における経過年数に応じ定額法により計算した償却費の額を控除した金
額(注 1)
(注 1)なお、業務の用に供する減価償却資産の場合には、その年の 12 月 31 日におけ
る減価償却後の価額が「見積価額」とされている(送規 12⑤、通達 5-9(2))。
12 月 31 日時点での預入残高
(1) その年の 12 月 31 日における売買実例価額(その年の 12 月 31 日における売買実例価
額がない場合には、その年の 12 月 31 日前の同日に最も近い日におけるその年中の売
買実例価額)のうち、適正と認められる売買実例価額
(2) (1)がない場合には、その年の翌年 1 月 1 日から国外財産調書の提出期限までにその
財産を譲渡した場合における譲渡価額
(3) (1)及び(2)がない場合には取得価額
その年の 12 月 31 日におけるそのストックオプションの目的たる株式の時価又は見積価額か
ら 1 株当たりの権利行使価額を控除した金額に、権利行使により取得することができる株式
数を乗じて計算した金額
組合等の組合事業に係るその年の 12 月 31 日又は同日前の同日に最も近い日において終
了した計算期間の計算書等に基づき、その組合等の純資産価額又は利益の額に自己の出
資割合を乗じて計算するなど合理的に算出した価額。ただし、組合等から計算書等の送付等
がない場合には、出資額によることとして差し支えない。
6. 所得税の財産債務の明細書との重複関係
所得税の確定申告を行う際に総所得金額及び山林所得金額の合計額が 2 千万円を超える場合には、「財産及び債務
の明細書」を所得税確定申告書と一緒に提出する義務があります(所法 232①)。財産及び債務の明細書には、財産の
所在地にかかわらず 12 月 31 日時点のすべての財産の種類及び価額ならびに債務の金額等を記載することが定めら
れています。
国外財産を 5 千万円超有している場合には、上記の財産及び債務の明細書と国外財産調書と重複することになります
が、この場合は財産及び債務の明細書と国外財産調書の両方を提出することが必要です。この場合、国外財産の明細
は国外財産調書に記載し、財産及び債務の明細書には国外財産の記載は必要ないこととされています(送法 5②)。一
方、国外財産を記載した財産及び債務の明細書を提出した場合であっても、国外財産調書の提出が免除されているわ
けではないので留意が必要です。
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7. 虚偽記載や不提出についての罰則
国外財産調書に偽りの記載(虚偽記載)をして提出した場合には、一年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処するこ
ととされています(送法 10①)。また、正当な理由なく提出期限までに提出をしなかった者も同様に一年以下の懲役又は
50 万円以下の罰金に処することとされていますが、この場合は情状により刑の免除ができることになっています(送法
10②)。この罰則規定は 2015 年 1 月 1 日以降提出分からの適用になります(改正法附則 1 九)。
8. 税務当局による調査の有無
国外財産調書についても、国税職員の調査の対象になります。「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、国外財産
調書の提出に関する調査について必要があるときは、当該国外財産調書を提出する義務がある者(当該国外財産調書
を提出する義務があると認められる者を含む。)に質問し、その者の国外財産に関する帳簿書類その他の物件を検査し、
又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる。」と、国外財産調書について国税職員の質
問検査権が定められています(送法 7②)。
9. 過少申告加算税又は無申告加算税の特例
修正申告等(修正申告、期限後申告、更正、決定)を行った場合には、一般的には修正申告等により納付する本税につ
いて 10%又は 15%の過少申告加算税、15%又は 20%の無申告加算税が課されることになります。
国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税について修正申告等があり、過少申告加算税又は無申告加算税
が課される場合で、提出期限内に提出した国外財産調書に修正申告等の基因となる国外財産が記載されているときは、
これら過少申告加算税等については対象となる本税×5%を控除することとされています(送法 6①)。
一方、国外財産に係る所得税について修正申告等があり、過少申告加算税又は無申告加算税が課される場合で提出
期限内に国外財産調書が提出されていない、又は提出された国外財産調書に修正申告等の基因となる国外財産が記
載されていないときは、これら過少申告加算税等については対象となる本税×5%を加算することとされています(送法
6②)。なお、国外財産調書に重要事項の記載が不十分であると認められるときも同様の取り扱いとなります。
10. 税収確保に関する海外諸国との政府間協力
近年、日本を含め海外諸国において、国外財産にかかる税収をいかに確保するかということが各国政府の課題となって
おり、適切な徴税を行うための様々な施策が検討されています。日本における国外財産調書制度もその例の一つです。
各国の税務当局が適正に税徴収を行うための諸国間の情報交換、徴税支援等を目的として創設された多国間税務執
行共助条約には、50を超える国が署名しています。日本も2011年11月に当該条約に署名し、当該条約は2013年6月に
発効しました。
日本国内では、2013年6月に国税徴収法基本通達が改定され、国外財産を有する納税滞納者について、日本政府が外
国政府に滞納税額の徴収につき協力を要請できることとなりました。
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