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ザイリンクス(Xilinx)事件と独立企業基準 岡田至康 海外論文紹介
海外論文紹介 ザイリンクス(Xilinx)事件と独立企業基準 by Reuven S. Avi-Yonah 翻訳者: 税 理 士 法 人 プライスウォーターハウスクーパース顧 問 岡田至康 はしがき 本稿は,平成21年12月22日開 sharing agreement)の対象となる一連のコス 催の国際課税研究会における,税理士法人プラ トに含まれると判示した。 イスウォーターハウスクーパース顧問岡田至康 ザイリンクス事件の判決は 3 つの理由で重要 氏が報告した「ザイリンクス(Xilinx)事件と である。第 1 に,コストシェアリングはおそら 独立企業基準( 『Tax Notes International』/ く現行の移転価格税法で鍵となる重要な分野で 2009年6月8日号掲載の“Xilinx and the Arm's- あろう。というのは,これが無形資産からの利 Length Standard” ) 」の日本語訳である。 得を米国から低課税国・地域に移す主な手法と なっているからである。その上,有識者が一様 国際課税 ……………………………………………………… に認めるところでは,無形資産からの所得の配 賦は移転価格では最も重要な問題であり,最も 無形資産集約的な企業は従業員ストックオプ [ 訳者注 ] 筆者ルーベン・S・アヴィ– ヨナ(Reuven S. AviYonah)は,ミシガン大学法学部アーウィン・I・ コーン研究基金教授で,国際租税法学修士担当部 長である。 ションに頼るところが大きいため,ザイリンク ス事件における狭い論点の判決でも,特にハイ テク企業に関しては,大きな歳入上の影響があ る。これは,ハイテク企業連合のために納税者 側についた 2 つの意見書が提出されたことや 5 月27日,米国第 9 巡回裁判所控訴審は,ザ IRS の勝利に対する実務家の反応からもみてと イリンクス社対内国歳入庁長官事件(Xilinx v. れる(注2)。 (注1)で判決を下した。 2 対 1 の Commissioner) 第 2 に,ザイリンクス事件は,デュポン事件 多数決で租税裁判所判決を覆し,従業員ストッ 判決が1979年に出されて以来,主な移転価格事 クオプションのコストは租税分担契約(tax 件で最初の IRS の勝利である。ザイリンクス (注 1 ) Xilinx Inc. et al. v. Commissioner, Nos. 06-74269( 9 th Cir. May 27,2009), Doc 2009-11943, 2009 WTD 100- 26. (注 2 ) Sam young,“Ninth Circuit Reversal of Tax Court in Xilinx a Major Government Victory, Practitioners Say,” Tax Notes Int’l, June 1, 2009, p.707, Doc2009-11945, or 2009 WTD 100-1. 勿論,ハイテク企業が第 9 巡回裁 判所に多く集まっているので,歳入への影響は高まる。ザイリンクス事件で,第 9 巡回裁判所の判事全員によ る審議を求められることや,最高裁判所へ上訴されることはあり得るようにみえる。もし,ザイリンクス事件 が維持されれば,他の巡回裁判所に係っている納税者が巡回裁判所間での意見相違を生じさせようとすること も考えられ,また更にはハイテク企業は第 9 巡回裁判所から出て行くこととなるかもしれない。 332 租税03-岡田.indd 租 税 研 究 2010・3 332 2010/03/02 20:58:13 う非関連者間であれば従業員ストックオプショ り多くの多国籍企業に,移転価格事案について ンのコストを分担しなかったであろうというこ 事前確認(APA)を求めるよりも IRS と争う とであり,従って,独立企業基準では費用分担 との判断を再考させることとなる可能性がある。 契約においてもこれらのコストを分担しないこ 著者が長く思料してきたのは,移転価格事案で とが求められるということである(注3)。控訴審 30年間にわたって納税者が引続いて勝利してき は,明確にこの事実認定を受け入れ,更には何 たとの訴訟記録をみれば,納税者に APA の締 故非関連者間であれば決してこのようなオプ 結に向かわせるには重要な IRS の勝利が必要 ションのコストを分担しようとしないかの説明 であるということであり,34億ドルのグラクソ まで行っている。それにも拘らず,多数意見で 事件の決着とザイリンクス事件の両者で十分な は(ヌーナン判事の猛烈な反対にも拘らず), の か もしれない。多国籍企業約350社 の う ち ストックオプションのコストを分担対象コスト APA を締結しているのは約半数に過ぎないた に含めることを求めるとの判決を下した(注4)。 め,APA が顕著に増加すれば,移転価格問題 この判決の重要性を理解するためには,一歩 の解決に向けて大いに役立つであろう。 下がって,まずコストシェアリングの制度がい 第 3 に,当事案の個別理由付けは,独立企業 かにして生じたかを検証することが必要である。 基準(ALS:Arm’s Length Standard)が, 1986年以前,米国の製薬会社は,米国で開発さ 引き続き有効であるかどうか,新たな疑問を投 れた医薬品の特許をプエルトリコの関連会社へ げかける。私の見解では,この理由付けは,あ 移転させたことを巡る一連の事案で,それを弁 まりに狭すぎるとはいえ,正しいものである。 護することに成功していた。その結果,米国へ ザイリンクス事件の持つ意味が理解されれば, はコストが,海外へは利得が,それぞれ一方的 本件は最終的にはオバマ政権と議会に移転価格 に配賦され,海外では極めて低税率で課税がな 分野での大幅な洗い直しを迫る機会となり得る されていた。これらのうちの一事案で,連邦請 が,この洗い直しは重要な国際租税分野の改革 求裁判所(Court of Federal Claims)は,次の のための前提条件でもある。 とおり述べている。 国際課税 事件の論点は狭いが,この IRS の勝利は,よ この論文の残りの部分でこの第 3 のポイント を展開する。パート A では,ザイリンクス事 「1972年から1976年課税年度で,MSDQ(メ 件の理由付けが独立企業基準についてのかなり ルク社のプエルトリコ関連会社)は課税所得 幅広い諸論評とどううまく調和するかを説明し, 合計 1 億8,180万 2 千ドルを計上した。支払 パート B では,国際租税改革の見通しについ 連邦法人税は65万 7 千ドルであった。この価 ての当評論の意味を詳述する。パート C では, 格決定過程では,製造コストと最終製品価格 この時点が何故このような改革にふさわしいも との間にこのような不均衡をもたらし,また のかを説明して,結びとする。 全ての申告課税所得の98.82%に上る留保利 益額が積み上がっているが,これは経済的に A. ザイリンクス事件と独立企業基準 正当化されないか,社会的に受け入れられな いものであろう。このような結果は,規制さ 租税裁判所がザイリンクス事件で出した判決 れた医薬品市場での管理が,期待されるほど の理由は,独立企業としてお互いに取引を行な 十分ではないことを明らかにするものであろ (注 3 ) Xilinx, Inc. v. Commissioner, 125 T.C.37(2005), Doc2005-18073, 2005 WTD169-8. (注 4 ) Xilinx, 上述1. 租 税 研 究 2010・3 租税03-岡田.indd 333 333 2010/03/02 20:58:13 う。このような結果は,MSDQ についての よって当該移転の経済的効果を無くさせること 所得の歪みを立証するものではない。このよ である。 うな問題は,現行の規定や規則の下で,482 当時,このスーパーロイヤリテイー規則に対 条によって対処できるものではない,という しては,非関連者間ではまずこのようなロイヤ ことである(注5)。 」 リテイー取極に合意しないであろうから,独立 企業基準からの乖離であるとしてかなりの批判 1980年代の初頭に,議会は,この問題解決の があった。しかしながら,1986年税制改革法の ための措置を採り始めた。まず,1982年に,租 立法経緯をみれば,議会の理解では,基本的な 税公平・財政責任法(Tax Equity and Fiscal 問題は独立企業基準なのであって,スーパーロ Responsibility Act)で936条を修正し,プエル イヤリテイー規則はたとえそれが独立企業基準 トリコ関連会社へ移転した無形資産から生じる と合致しないとしても適用されることになる, 所得は,当該会社が親会社への費用分担支払い ということであった。下院の報告書には,次の を行なうこと,あるいは利得を折半することを とおり記されている。 選択しない限り,当プエルトリコ会社の米国株 国際課税 主の所得として扱われることを規定した(注6)。 「多くの識者は,482条に係る規則での“独 次 の 措 置 は,1984年 に, 赤 字 削 減 法(Deficit 立企業間”アプローチの有効性に疑問を呈し Reduction Act)で採られ,367条 (d)を修正し てきた。たびたび提起されている問題は,非 て,外国関連会社への無形資産の無税での移転 関連者間での比較対象独立企業間取引がない を,当該資産の生産性,使用あるいは処分如何 こと,及び比較対象がない中で独立企業概念 により,耐用年数に亘る年次支払での無形資産 を課そうとすることによる不統一な結果であ の売却として取り扱うこととした(注7)。 る。 最 後 に,1986年 税 制 改 革 法(Tax Reform 基本的な問題は,関連者間の関係が非関連 Act)で,議会は初めて482条を改正し,第 2 者間のものとは異なることである。識者が注 文即ち“無形資産(§936 ⒣ ⑶ B に規定する 目しているのは,多国籍企業が業務を行なっ ものに限る)の譲渡又は実施権の供与の場合に ているのは一経済単位としてであって, “ま は,当該譲渡又は実施権の供与に係る所得金額 るで”自らの外国子会社とは非関連の如くと は当該無形資産に帰すべき所得と相応のもので いうわけではない,ということである。加え なければならない” ,を追記している(注8)。 て,潜在的に価値ある資産を子会社に移転す この“スーパーロイヤリテイー”規則が意図 る親会社は,まるで非関連者と取引を行なう しているのは,米国から無形資産を移転する納 のと同じようなリスクに直面するわけではな 税者に対して無形資産からの利得が増えるにつ い。その資本持分を有することから,自ら設 れてロイヤリテイー支払いを増加させ,これに 定する価格に拘らず,究極的には将来の期待 (注 5 ) Merck & Co. v. United States, 24 Cl. Ct. 73(1982). その他の事案の研究には,Reuven S. Avi-Yonah,“The Rise and Fall of Arm’s Length: A Study in the Evolution of U.S. International Taxation,”15 Virginia Tax Rev. 89(1995), updated version in 9 Finance and Tax L. Rev. 310(2006). を参照。 (注 6 ) Joint Committee on Taxation, 97th Cong., 2 d Sess.,“General Explanation of the Revenue Provisions of the Tax Equity and Fiscal Responsibility Act of 1982,”82-96(Comm. Print 1983) (注 7 )367 ⒟⑵条 (注 8 ) 482条。同様の所得相応性基準が,§367(d)の無形資産の移転及び §936(h)の費用分担支払に,それぞれ 適用された。 334 租税03-岡田.indd 租 税 研 究 2010・3 334 2010/03/02 20:58:13 利得あるいは予想外の利得という便益を得る 間の無形資産移転に係るセーフハーバー最低支 権能が確保されている。この関係があれば, 払額を示すものでもない(注11)。”従って,たと 同様に,もし親会社が望めば,毎年取極を改 え同一の無形資産が同一の状況下で一定のロイ 訂して,移転されたものが生み出す収入面で ヤリテイー率で関連者に移転されるという完全 の主要な変化を考慮することも可能となろう。 な比較対象が見つかったとしても,この規定で 482条に係る一定の法的解釈によれば,関 は,依然として,関連者間での移転する側に 連者間取引の対象と同じような一般分類項目 スーパーロイヤルテイーの配賦を求めることと のものに係る非関連者間での価格取極は,状 なろう。1986年税制改革法に係る両院協議会で 況により,たとえそれぞれの取引に係る量及 は,米国外への(outbound)移転のみならず びリスクあるいはその他の要素に重要な差異 米国内への(inbound)移転にも所得相応性規 があるとしても,関連者間価格取極に係る 定を拡張適用するとの点を除いて,当下院法案 “セーフハーバー”と考えることが可能であ どおりの合意がなされた(注12)。 これに続く時期(1986年-1994年)は,マイ 定が,高度に標準化された商品やサービスを ケル・ダーストが“大移転価格戦争(注13)”と呼 対象とする場合においてさえも不当に比較対 んだ時代であった。米国が1988年に白書を発表 象の概念を強調することになるかもしれない し,1992年に482条に係る規則を提案した後, と懸念する一方で,このようなアプローチは 米国の貿易相手国及び多国籍企業側からは協調 無形資産の移転が関係している場合には極め してロビー活動がなされ,彼らのみるところ, て厄介であるので,無形資産の移転に関する 独立企業基準からの乖離とされ,また定式配分 企業間価格ルールについての規定の改正が必 の方向への歩みとされるものを,弱めようとの 要であると考えている(注9)。 」 動きがあった。その結果,妥協の産物として, 482条に係る最終規則及び新 OECD 移転価格ガ この論評をみれば,下院は所得相応性基準が イドライン(1995年)に具体化された。ここで 独立企業基準と整合的であるとあえて主張する より重要なことは,新規則にはコストシェアリ つもりはなかったのである。この報告書が記述 ング法(cost-sharing method)が含まれてい するところでは,多国籍企業内で無形資産を移 たことである(注14)。 転する側は,そのコストを回収するために, コストシェアリングの基となる考えは,無形 “ ‘独立企業’の諸要素よりもむしろ” ,資本投 資産からの利得の配賦とそれを開発するための 資に目を向けていたものであり ,“産業規 コストの配賦とは何らかの関係があるはずであ 範あるいはその他の非関連者間取引 は,関連者 るということであり,それは当規則における利 (注 9 ) H.R. (注10) 国際課税 ろうとされる。この委員会は,このような決 Rep. No.426, 99th Cong., 1 st Sess. 423-424(1985) (注10) 同上,424 (注11) 同上,425 (注12) H.R.Conf. (注13) Michael Rep. No.841, 99th Cong., 2 d Sess. Ⅱ-637(1986), reprinted in 1986 U.S.C.C.A.N. 4075, 4725. C. Durst, IFA Canada Speech(May 21,2009 ),”The President’s International Tax Proposals in Historical and Economic Perspective,”Tax Notes Int’l, June 1 2009, p.747. 討議には,上述 Avi-Yonah,5. を参照。 (注14) T.D. 8632, 1996- 4 IRB 6 (1995), Doc 95-11248, 95 TNI 245- 8 ; 規則 §1.482- 7 ザイリンクス事件の多数意 見が強調するように,費用分担規則が 最終決定したのは,他の移転価格規則の半年後である。 (注15) Notice 88-123, 1988- 2 C.B. 458, Doc 88-8504, 88 TNI 43-7. 租 税 研 究 2010・3 租税03-岡田.indd 335 335 2010/03/02 20:58:13 益分割法の基礎にもなるとともに,究極的には 第 3 に,コストシェアリングは,実際上, 1988年 白 書 か ら 派 生 し て い る( 注15)。 コ ス ト スーパーロイヤリテイー規則の背後にある根本 シェアリングでは,米国親会社とその外国子会 的理由を明らかに失わさせていった。納税者は 社は無形資産開発のコスト分担に同意するもの コストシェアリングを使って,米国外で何ら実 であり,また,もし有効なコストシェアリング 際の研究開発を行なう必要もなく,無形資産の 契約の要件に合致しているならば,無形資産か 大半を海外に移してきた。これら無形資産はそ らの利得をコストと同じ割合で配賦することが, の後,特にチェックザボックス規則及び954⒞ 当規則で認められる。コストシェアリングには ⑹を使って,サブパート F 取り込みを発動さ 3 つの基本的な問題がある。 せることなく高課税国・地域から低課税国・地 第 1 に,無形資産からの利得はそれの開発コ 域に利得を移転させて,繰り延べができる所得 ストに関連があるとの基本的な考えは誤りであ を発生させている。その結果,納税者は1986年 る。ボシュ・ロム事件その他多くの事件でみら 以前と同様に低課税国・地域に多くの利得を付 れたように,多くの場合,無形資産からの利得 けることができた(注17)。 は関連者間の関係の結果であって,従って開発 このような背景の下,我々は今やっとザイリ コストがどこで生じたかとは関係がない ンクス事件を理解することができる。この事件 。 (注16) 国際課税 第 2 に,もしある無形資産が成功すれば,そ の問題は,従業員ストックオプションのコスト の利得はそのコストとの関係をあまり生じない。 をザイリンクス社のアイルランド子会社との費 コストシェアリングの背景にある考えは,納税 用分担契約での分担すべきコスト全体に含める 者は外国関連会社に配賦される控除を失うのは べきかどうかであった。一般に,分担すべきコ 気が進まないであろうということ,従って,外 ストが多いほど,納税者にとって費用分担契約 国関連会社にはあまりに高いコストと利得を配 の価値が少ない。というのは,アイルランド子 賦しないであろうということである。しかしな 会社で分担されるコストは,米国で控除できな がら,納税者は10億ドルの価値のある特許権を いからである。多くのハイテク企業は,国外利 開発するのに100万ドルのコストがかかる場合 得をアイルランドのような低課税国・地域に付 には,アイルランド関連会社との間での80/20 ける一方,ストックオプションコストを控除す のコストシェアリング契約で,研究が成功した ることで米国での租税債務を除去できている。 場合に 8 億ドルにかかる現行の米国の税を避け 租税裁判所及び少数意見で主張されたのは, ることができるなら,80万ドルを失うリスクを オプションのコストは非関連者間であれば分担 喜んでとるであろう。 されないことから,独立企業基準の下では費用 (注16) Bausch & Lomb v. Commissioner, 92 T.C.525(1989), affd, 933 F.2d 1084(1991). ボシュ・ロム事件では,納 税者は価値ある知識をアイルランド子会社に移転した。その知識により,当子会社ではコンタクトレンズを競 争相手よりもずっと安いコストで製造することができた。この付加価値は,もしこの子会社が親会社とは非関 連の会社であれば,失われてしまっていたものであろう。従って,裁判所が,この知識が開発されたところに 付加価値全体を配賦しようとの IRS の試みを拒否したのは,間違いではなかった。 (注17) Martin A. Sullivan,“Obama Launches International Tax Reform: The Battle Begins,”Tax Notes Int’ l, May 18, 2009,p.539, Doc 2009-10299, or 2009 WTD 88- 9 参照(2006年に米国多国籍事業体の税引前利益の23%は 5 つ の低課税国・地域にあった);Avi-Yonah, Clausing, and Durst,“Allocating Business Profits for Tax Purposes: A Proposal to Adopt a Formulary Profit Split,”Florida Tax Rev.(2009), Figure 2 (2005年に米国多国籍事業体 の利得の30%はオランダ,ルクセンブルグ,バミューダにあり,上位10地域のうち 8 地域は実効税率が10%未満 であった) 336 租税03-岡田.indd 租 税 研 究 2010・3 336 2010/03/02 20:58:13 分担契約で分担すべきコスト全体に含まれ得な 無 い の で 評 価 が 難 し い, ⑵ 非 関 連 者 間 で の い,ということである。彼らが指摘したのは, ジョイントベンチャーでコストを分担すれば, 規則1.482- 1 ⒝ ⑴ で求めているのは“あらゆ オプションのコストを軽減するためにジョイン る事案で適用されるべき基準は,支配されてい トベンチャーの価値を最小化する誘因となる, ない納税者と独立企業間取引を行っている納税 ⑶ コストを分担するのは当該納税者にとって 者という基準である” ,またアイルランド・米 国租税条約第 9 条が求めているのは独立企業基 の控除可能額を減少させる,ということである 。これらの理由のため,コストが分担され (注20) る比較対象はないであろう。しかしながら,裁 うことである。 判所はそれにも拘らず,全てのコストという要 ヌーナン判事がその少数意見で述べているの 件が,より個別の規定であるために優先適用さ は,独立企業基準は移転価格規則の目的にとっ れるとした。最後に,裁判所は,アイルラン て不可欠のものであり,それは“支配されてい ド・米国租税条約に基づく反論を,セービング ない取引の納税者と支配されている取引の納税 条項により拒否した。当条項は,全ての米国の 者との均衡(parity)である。当規則はこの目 租税条約にみられ,また,米国がザイリンクス 的を無意味なものとするように解釈されるべき 社のような米国居住者に対して有している課税 ではない。もし,独立企業基準がコストシェア 権に条約は影響を及ぼし得ない,と規定してい リング規則によって打ち負かされるのであれば, る。 当該規定の目的が挫かれることになる” ,とい 私は,482条とコストシェアリング規則の歴 うことである(注18)。 史にみれば,多数意見が正しいものと思う。た しかしながら,多数意見の考えは,独立企業 だ,それは,必ずしもその理由付けによるので 基準は482条の焦点ではないということであっ はない(少数意見がいみじくも指摘しているよ た。即ち, “重要なことは,独立企業結果を得 うに,特別規定は一般規定に勝るという多数意 ることそれ自体は規定を設けていることのゴー 見が依拠している規準のようなものをあまりに ルではない,むしろその目的は,支配された取 重視するのは困難である)。 引に帰属する課税所得を納税者が正確に反映す 第 1 に,482条は,独立企業基準よりも少な ることを確かなものとすることで,脱税を防止 くとも10年先行しており,従って,独立企業基 することである(注19)” 。次いで,多数意見の考 準を満たすことが482条の“目的”であると言 えでは,独立企業基準を具体化している規則 うことはできない(注21)。むしろ,多数意見が適 1.482- 1 ⒝ ⑴ の文言は,規則1.482- 7 ⒟ ⑴ の 切にも述べていたように,482条の目的は,納 文言が共有無形資産の開発に関する“全てのコ 税者の所得を正確に反映し,脱税を防止するこ スト”の分担を求めているのとは相容れない, とであり,また,独立企業基準はその目的に適 ということである。 う一方法に過ぎない(それは,実際のところ この矛盾が生じるのは,非関連の納税者間では 482条の文言が制定されて後40年を過ぎた1968 ストックオプションのコストを分担しないからと 年まで意味を与えられていなかった)。 いうことであり,その理由は,⑴ 現金支払が 第 2 に,コストシェアリングが独立企業基準 (注18) Xilinx 上述 国際課税 準を移転価格事案に適用することである,とい 1 ,6180. (注19) 同上,6167. (注20) 同上,6176. (注21) Avi-Yonah, 上述 5. 租 税 研 究 2010・3 租税03-岡田.indd 337 337 2010/03/02 20:58:13 と符号しないきちんとした理由がある,即ち, これらもまた米国居住企業であるからである。 コストシェアリングはスーパーロイヤリテイー その場合は,条約上独立企業基準が適用できる 規則から生じたものであるが,この規則は明ら のは,裁判所がナットウエスト事件で(間違っ かに独立企業基準に基づいていないものであっ て)判示したとおり,外国事業体の米国支店の た。かくして,多数意見がコストシェアリング みとなるであろう(注23)。 を独立企業基準に従わない別個の枠組として見 ているのは,正しい。もし,非関連者間では関 B. ザイリンクス事件と国際租税改革 連者間で行うような費用分担を行なわないので 国際課税 あれば,それは関連者間でのコストシェアリン ザイリンクス事件判決で特にポイントとなっ グが独立企業基準では仕切られないこと,また, たところは狭い範囲のものであるが,重要なも 独立企業基準が移転価格法のこの分野では不適 のである。コストシェアリングに係る基本的な 切であること,を意味している。そのことは, 問題は,そのまま残るであろう。即ち,たとえ, 1986年にスーパーロイヤリテイー規則を制定し そのコストをやや広く定義して,ストックオプ た時の議会の目標であり,同じ考えがコスト ションを(ザイリンクス事件後の新しいコスト シェアリングにも適用されるべきである。 シェアリング規則では明らかなように)含むと 第 3 に,また,多数意見が,アイルランド・ しても,納税者は,未だにコストシェアリング 米国条約に基づく反論を拒否したことも正し を使って,無形資産から生じる利得を米国から かった。しかしながら,その理由付けには,自 移すことができるであろう。コストシェアリン ら認識していそうもない興味深い意味あいがあ グは上述したような利得配分の歪みをもたらす る。多数意見が述べているのは, “ザイリンク 基となるものである。従って,より幅広い改革 ス社は,外国の事業体ではなく,従って,たと が必要であり,ザイリンクス事件はその方向性 え規則 1-482- 7 ⒟ ⑴ で全てのコストを要件と を示している。 していることが条約の独立企業基準と適合しな 基本的に,私が常々思料してきたことは,法 いとしても,当該規則をそれに適用するのは条 人課税は,居住地基準ではなく,むしろ源泉地 約に違反しない” ,ということである 基準でなされるべきである,ということである。 。 (注22) しかし,この点は,米国親会社が関係してい これには 2 つの理由があると思われる。第 1 に, る事案だけではなく,全ての移転価格事案に適 法人の居住地はあまり意味がないということで 用される。というのは,ザイリンクス事件では, ある,というのは,個人とは異なり,法人はど また外国の事業体(アイルランド子会社)も関 この国にも物理的に存在しておらず,投票もで 係していたからである。セービングクローズの きず,また,再分配課税には不適切な主体であ ために,IRS が独立企業基準でない方法をザイ る。第 2 に,法人の源泉地基準課税は,法人が リンクス社に適用することが可能になると読め 事業活動を行うことを可能にするようなコスト るのであれば,外国親会社の米国子会社にもこ を生じさせる国で当該事業活動に従事して受領 れらの適用ができることとなる。というのは, する便益に拠っているからである。 (注22) Xilinx, 上述 (注23) National 1 ,6171. Westminster Bank v. United States, 512 F.3d 1347(Fed. Cir.2008), Doc 2008-905, 2008WTD 11-22 (英・米条約第 7 条の独立企業基準は利子配賦規則に勝ると判示) 。私の意見では,この事件は,独立企業間結果 を求めるのに定式を適用するという長い伝統のため,誤った判断をしたものと思われ,定式を使うというのは, 7 条(OECD モデル条約 7 条( 4 )参照)の下での唯一の要件となっている。 338 租税03-岡田.indd 租 税 研 究 2010・3 338 2010/03/02 20:58:13 この議論は,米国をテリトリル制度に近づけ ないと指摘されていることから,我々のポジ ようとする人々の見解を支持することとなる。 ションが支持されているものである。 テリトリアル主義には多くの利点がある。とい し か し な が ら, 我 々 の 提 案 は, 定 式 配 分 うのは,利益を還流させないようにするとの誘 (FA)の反対論者を納得させるまでには至って 因を失くし,また,外国税額控除の必要性を減 いない。それよりむしろ,独立企業基準を強く じることによって潜在的に簡素なものとするこ 支持する者は,定式配分について,一連の欠点 とになるからである。適正に運用されれば,歳 を主張しており,それには次のような事項が含 入増をもたらすものでもある。というのは,免 まれる。 除外国源泉所得に配賦される控除は認められな 1 )定式配分は,そもそも恣意的である。 くなるであろうからである。 2 )定式配分は,二重課税を惹起する。とい しかしながら,私は,現在言われているよう うのは,独立企業基準を適用する国があれ なテリトリアル主義に対しては繰り返して反対 ば,他方で定式配分を採用する国もあり, 意見を主張してきており,繰り延べを制限する また,定式配分を採用する各国で異なった とか,更には廃止するとの取組み(オバマ政権 定式を用いるであろうからである。 3 )定式配分では,課税ベースの統一が求め た。その理由は単純である。即ち,移転価格の られるが,それは達成不可能である。 改革がないと,テリトリアル主義では海外への 4 )定式配分は,租税条約違反である。 利得移転の誘因が一層強くなり,更には歳入損 5 )定式配分を立法化することは不可能であ 失及び米国法人課税ベースの浸食となるからで ろう。というのは,多国籍企業及びその施 ある(注24)。私が思料するところ,どのような国 行によって損失を被る国々からの反対があ 際課税改革でもその鍵となるのは,どうみても るからである。 移転価格の洗い直しである。私の共著者である 私は,これらの各主張に対して満足のいく答 キム・クロージングやマイケル・ダーストと私 えがあると思料しているし,実際に他のところ が主張しているとおり, 1 つの可能性は,定式 で詳細に答えている(注26)。しかしながら,私の (我々が示唆したのは売上高基準によるもので 答えが定式配分の反対論者に納得してもらえそ ある)を採用して,関連者間でのルーティーン うもないことも承知している。従って,私はこ の貢献を考慮した後に残った利益を分割するこ の論文を使ってより穏健な進め方を提案したい とである(注25)。 と思っている。即ち, (むしろ定式配分で独立 このような改革については議会で立法化する 企業基準に取って変わるのではなく)定式配分 ことができ,我々は立法上の文言をその論文で を独立企業基準の枠組でのみ採用するというこ 提案している。ザイリンクス事件では,独立企 とである。 業基準は移転価格法の一主要分野では適用でき 基本的な問題が生じるのは,適切な比較対象 (注24) Avi-Yonah,“Comment 国際課税 での現在の取組みのようなもの)を支持してき on Yin, Reforming the Taxation of Foreign Direct Investment by US Taxpayers,” 28 Va. Tax Rev. 281(2008)参照 . (注25) Avi-Yonah, Clausing, and Durst, 上述17. (注26) 同上;条約上のポイントについては,Avi-Yonah and Clausing,“Reforming Corporate Taxation in a Global Economy: A Proposal to Adopt Formulary Apportionment,”in Jason Furman and Jason Bordoff, eds. Path to Prosperity: Hamilton Project Ideas on Income Security, Education, and Taxes(Brookings Institution Press)319-344. しかしながら,もし,ザイリンクス事件の裁判所が正しければ,定式配分は,セービングク ローズの故に,条約第 9 条に違反することにはならない。 租 税 研 究 2010・3 租税03-岡田.indd 339 339 2010/03/02 20:58:14 国際課税 がない場合である。適切な比較対象がある場合 であるとされ,そのような無形資産が開発され には,伝統的な算定方法(独立価格比準法,原 たところに配賦される。しかしながら,この方 価基準法,再販売価格基準法)が使用可能であ 法は有用ではない。というのは,⑴ OECD 及 り,それで解決するであろう。しかし,OECD び世界のその他の国はこれを拒否している, ガイドラインが認めるように,多くの場合,適 ⑵ これは米国で研究開発を行っている多国籍 切な比較対象はなかなか見つからないのである。 企業を罰することになる,⑶ これは多国籍企 OECD ガイドラインの下で,次に考えられ 業に対して低課税国・地域に人為的に利得を移 る代替案は,取引単位営業利益法(TNMM) 転する費用分担契約の締結を促すことになる, である。しかしながら,TNMM では,米国の からである。また,ボシュ・ロム事件で裁判所 比較利益法(CPM)よりももっと厳しい比較 が述べたように,無形資産の価値が生まれたの 可能性のテストが求められるが,そのことは, は両社が関連者であるという事実の結果である CPM が現行の算定方法のなかで最も操作しや ならば,その付加価値は開発されたところとは すいのは明らかであることから,好ましいこと 別のものである。 である。大手会計事務所勤務のとある精通した もし米国のアプローチが拒否されるというこ エコノミストは,私に,自分はクライアントの とであれば,問題はどう残余利益を配賦するか 求めるどのような結果でも CPM を使って作り である。OECD ガイドラインはこの問題には何 出せると語っている。 も述べていない。このことは,一機会を提供す CPM はまた,取引上の複雑さを生み出す大 るものである。おそらく,この情況では,残余 きな源泉でもある。それは,大手会計事務所に 利益を配賦する定式を採用ことは可能であろう。 とっては恩恵であり,自らサービスを供与でき 理解しなければならないのは,もし比較対象 ないところには問題である。しかし,OECD が(定義により)見当たらず,また,残余利益 での TNMM の比較可能性基準がもっと厳しい が,両社間の関係の結果として生じるもので, ということは,米国で CPM が使用されている 両社が非関連者であれば消失するという場合に 多くの事案で,TNMM が適用できないという は,独立企業基準は意味がなく,またどんな配 ことである。 賦も恣意的となる。このような状況下で,鍵と ここで残るのは利益分割法である。利益分割 なるのは最も合意を得られやすい定式を採用す 法の下では,比較対象はルーティーンの機能に ることである。 係る利益を配賦するために使われる。しかし, 米国一国だけという情況下では,私の共著者 通常は残余利益がきちんと残っているものであ 及び私が支持しているのは,付加価値税におけ り,それが生じるのは何故かというと,まさに, る仕向地基準の定式と類似の売上基準の定式で 多国籍企業の存するのが独立企業の関係では得 ある。この定式では,輸出に有利であり,従っ られないような利益を稼得するためであるから て,政治的に好評であるとみられ,貿易赤字の である。それ故に,適切な比較対象を見出すの 故に米国にとって好ましい(注27)。OECD の枠組 が困難なのである。 であれば,私はもっとバランスのとれた定式, 移転価格における主たる問題は,利益分割法 即ち,賃金・有形資産・売上という 3 つの構成 の下で残余利益をどう配賦するかである。米国 要素のものの方が好ましいと思っている。 規則では,残余利益は高収益の無形資産の結果 これら 3 つの構成要素は,勿論,伝統的な米 (注27) Avi-Yonah 340 租税03-岡田.indd and Clausing, 上述26. 租 税 研 究 2010・3 340 2010/03/02 20:58:14 国の州の定式配分方式で採られている要素であ ているよりももっと二重課税になる,とい る。この定式はこれまで明らかに極めてうまく うことにはなりそうもない。もし,米国が いっている。というのは,これは,多くの米国 残余利益を研究開発の場所を基に配賦し, の 州 で 使 わ れ て い る の に 加 え て, 米 国 及 び 他国がそれに同意しないならば,二重課税 OECD でのグローバルディーリング規定の基 は既に脅威である。紛争は,OECD モデ 本ともなっており,また,共通合算法人課税 ル条約の下での新しい仲裁条項を使って解 ベース(CCCTB)方式の最有力候補となって 決され得る。 いるからである。それももっともであると思わ 3 )もし,OECD が独立企業基準の下で残 れるのは,その各要素は客観的であるからであ 余利益に係る定式を受け入れれば,条約違 る(賃金及び売上は外部の者との取引であり, 反ともならないし,また,条約 9 条の枠組 有形資産は評価にかかっているとはいえ,資産 基準の定式には,米国の利子配賦の定式のよう で処理ができる。 4 )それは単に残余利益に係る定式であるの に,多くの経験がある) 。 で,そのベースは既に独立企業基準で決定 無形資産は除かれているが,私の意見では, されている。 そのことは適切である。というのは,それらの 価値は物的・人的資本及び市場からの結果とし 5 )均衡のとれた定式では,常に損を被る者 が出るということはあまり起こらない。 て生じるものであり,それらの要素は含まれて おり,それらの価値を配賦することはできず, C. 結論:今や改革の時である それらを含めようとすることは操作を招くこと ザイリンクス事件は米国国際課税の改革の機 従って,私が提案したいのは,ルーティーン 会を提供している。狭義では,より多くの多国 の機能に係る利益を越えての比較対象が見出せ 籍企業に事前確認(APA)の締結を促す可能 ないという困難な移転価格事案においては,利 性があるが,それは現行制度の中で移転価格の 益分割法の下で残余利益を配賦すべく伝統的な 紛争を減少させる鍵となるものである。 三要素による州の定式の使用を,米国は採用す より広義では,ザイリンクス事件は,またし べきであるし,OECD は公認すべきである, ても独立企業基準が修復不能のものであること ということである。 を示している。その理由は他のところで詳細に 私が思料するところでは,この提案は,上述の 発表されており,ここでは繰り返さない(注28)。 定式配分に係る諸問題への対処がなされている。 私は,次の 3 つの理由から,今が移転価格の改 1 )定式は恣意的であるが,それは経済実態 革を行う時であると思料している。 に関係しており,また,いかなる配賦も比 1 )繰延べ及びテリトリアル主義を巡る現在 較対象がなければ恣意的である。OECD の議論は,政府及び議会が移転価格の改革 ガイドラインもまた残余利益を配賦しない ということで恣意的である。 下で既に残余利益について二重課税が生じ (注29) CCCTB を行わない限り解決しそうもない。 2 )EU は,伝統的に独立企業基準の支持者 2 )このような結果のために独立企業基準の (注28) Avi-Yonah, 国際課税 となる,からである。 であるが,その CCCTB 計画の要素として 定式配分を採用する方向に動いている(注29)。 Clausing and Durst, 上述17. については,例えば,Jack Mintz and Joann weiner,“Some Open Negotiation Issues Involving a Common Consolidated Corporate Tax Base in the European Union,”62 Tax L. Rev. 81(2008). 租 税 研 究 2010・3 租税03-岡田.indd 341 341 2010/03/02 20:58:14 3 )OECD でさえ,これもまた独立企業基 このようなことから,私が思料するのは,今 準の支持者であるが,利益分割との関連で が改革に都合の良い時であり,政府と議会は繰 定式を採用する方向へ多少の柔軟さを示し 延べとテリトリアル主義を巡る現在の議論を利 ており,利益分割法を伝統的な独立企業基 用して,ここに概説した線に沿って移転価格改 準に基く諸方法と同等の方法として指定し 革に取り組むべきである,ということである。 ようとしている(注30)。 Reprinted with permission Copyright(2009).Tax Analysts 国際課税 (注30) Avi-Yonah, “Between Formulary Apportionment and the OECD Guidelines: A Proposal for Reconciliation,”available at http://ssrn.com/abstract=1411649. 参照。 342 租税03-岡田.indd 租 税 研 究 2010・3 342 2010/03/02 20:58:14