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# 05 □□□□■ マエストロの解説 □■□□□□■ マエストロの解説 □□□□■□□□□■□□□ 複雑になりすぎた 法人税をもう 一度勉強しよう 移転価格税制における独立企業間価格の算定 方法は、独立価格比準法等の基本三法及び利益 分割法等の利益法が、法令上、個別に定められ ている(措法 66 の 4 ②、措令 39 の 12 ⑧)。これ ら算定方法には、それぞれの優先順位が付けら 税務における第一人者 〝税務マエストロ 〟による税実務講座 れておらず、国外関連取引の内容及び国外関連 今週のマエストロ&テーマ 移転価格税制 への対応③ # 113 品川克己 税理士法人プライスウォ ーターハウスクーパース (マネージング・ディレクター) 取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案 して、最も適切な方法を採用して独立企業間価 格を算出することが求められている(措法 66 の 4 ②)。これら、独立企業間価格の各算定方 法の内容、特徴を理解することは、最も適切な 方法を採用するために最重要項目といえる。 1 基本三法 (棚卸資産の売買取引) (1)独立価格比準法(CUP 法) ① 概 要 独 立 価 格 比 準 法(CUP 法:Comparable Uncontrolled Price Method)とは、特殊の関 係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚 略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国 卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と 際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及 取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロー 売買した取引の対価の額(取引段階、取引数量 スクールにて客員研究員として日米租税条約につ いて研究。97年より00年までOECD租税委員会 その他に差異がある場合にはその調整を行った に主任行政官として出向(在フランス) し、 「 OECD 後の対価の額)に相当する対価の額をもって独 移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」 立企業間価格とする方法であり、端的には、比 の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財 務省を辞職し現職。 114 もって独立企業間価格とする方法である(措法 66 の 4 ②一イ) 。具体的には、図 1 にあるとお 次回のテーマ # 較対象取引(本誌 545 号参照)の対価の額を 簡易課税制度 (その1) 税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化 など、消費税法の改正が続く。消費税マエス トロが実務ポイントを解説する。 ※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。 [email protected] り、対象法人から国外関連者(又はその逆)に 対して製品 X を販売する取引が国外関連取引に 該当し、比較対象取引(内部比較対象取引及び 外部比較対象取引)における製品 X(もしくは 同種の製品)の価格と直接比較する方法である。 独立価格比準法は、国外関連取引における棚 卸資産の価格と比較対象取引における価格を直 No.549 2014.6.9 23 【図1】 独立価格比準法(CUP法) 製品Xの販売 国外関連取引 国外関連者 法人 製品X(または同種の製品)の販売 非関連者 内部比較対象取引 非関連者 外部比較対象取引 仕入税額控除の時期 ) 模事業者等の課税売上高が5億円を超えること 外 リ 製品X(または同種の製品)の販売 非関連者 【図2】 再販売価格基準法(RP法) 接比較する方法であることから、独立企業間価 (経済・社会構造、地理的状況、消費者の慣習 格の計算にあたって最も信頼性の高い方法であ などを考慮)などの類似性が求められる。 り、独立企業間価格算定の基本となる方法とい このように、独立価格比準法を適用する場合 える。 (図 1) 国外関連者 非関連者 の比較対象取引は容易に見出すことができず、 (購入者) 製品Y ② 比較対象取引 法人 価格A 再販売 現実的には金や原油等のように性状等が均一、 価格B 独立価格比準法は、比較対象取引を見出すこ 単一であるような商品の場合(外部比較対象取 とが難しい点が短所といわれている。比較対象 引)や対象法人が非関連者と同様の取引を行っ 非関連者 製品Yまたは同種・類似の製品 取引は、対象法人が非関連者と行った取引(内 非関連者 ている場合(内部比較対象取引)に限定される 部比較対象取引)と非関連者がその非関連者と と考えられる。 行った取引(外部非関連者取引)があり、いず (2)再販売価格基準法(RP 法) 非関連者 非関連者 製品Yまたは同種・類似の製品 価格C れの場合においても、その取引が国外関連取引 非関連者 ① 概 要価格D と類似したものである必要があるが、この類似 通常の利益率: または 再販売価格基準法とは、国外関連取引に係る 性は、取引の対象となる棚卸資産の類似性と取 棚卸資産の買手が、特殊の関係のない者に対し 引状況の類似性の両面で比較可能性を有したも て当該棚卸資産を販売した対価の額(再販売価 のでなくてはならない。 【図3】 原価基準法(CP法) 棚卸資産の類似性では、棚卸資産の性状、構 格)から「通常の利潤の額」(当該再販売価格 造、機能等について「厳格な同種性」が求めら う。)を控除して計算した金額をもって独立企 れると考えられる(事務運営指針参考事例集 製品Zまたはその原材料等 業間価格とする方法をいう(措法 66 の 4 ②一 B−A B 法人 に「通常の利益率」を乗じて計算した金額をい ロ)。 再販売価格基準法は、売上総利益の水準を比 国外関連取引 ぼす程度の差異があるか否かによって判断され 製品Zもしくは同種・類似の製品 較することによって独立企業間価格を求める方 極め自体が難しいといえる。 非関連者 取引状況の類似性は、取引段階(小売か卸売 製品Zもしくは同種・類似の製品 か等) 、取引数量(価格に影響がある場合) 、取 およびその原材料等 引時期(市場価格が季節要因で変動する場合な 価格C 非関連者 ど) 、引渡条件、支払条件、取引市場の状況 24 No.549 2014.6.9 内部比較対象 ① 外部比較対象 特殊 実 関係 法人 課税売 国外関連者 製品Z 非関連者 度の差異まで容認されるかは、価格に影響を及 およびその原材料等 るが、現実的には価格に及ぼす差異の程度の見 ① D−C D (売手) (以下「事例集」 )事例 1) 。この場合、どの程 国外関連取 価格B 法であるが、売上総利益が売上価格から仕入価 価格A 非関連者 格(原価)を控除するものであることを考慮す ると、独立価格比準法についで直接的な方法と いわれている(事例集事例 1)。一般的には、 非関連者 非関連者 日本の親会社が海外の子会社(国外関連者)へ 価格D の棚卸資産の輸出取引及び日本の子会社が海外 通常の利益率: B−A D−C または A C 特殊 関係 法人 実 課税売 ) 配 外部比較対象取引 非関連者 非関連者 【図2】 再販売価格基準法(RP法) (購入者) 製品Y 国外関連者 法人 価格A 再販売 国外関連 非関連者 価格B 製品Yまたは同種・類似の製品 ① 内部比較対 ① 非関連者 非関連者 外部比較対 製品Yまたは同種・類似の製品 非関連者 価格C 非関連者 価格D 通常の利益率: の親会社(国外関連者)からの棚卸資産の輸入 【図3】 原価基準法(CP法) 取引の場合に適用することができる方法であ 非関連者 B−A D−C または B D い内部利益率を用いる内部利益率比準法の方が 適当と考えられている。 特殊 実 関係 法人 また、再販売価格基準法によって独立企業間 る。 (売手) なお、ここでいう「通常の利益率」は、国外 価格を求める場合、再販売者の通常の利益率を 関連取引と同種又は類似の棚卸資産を、非関連 国外関連者 製品Z 用いることとなるが、これは再販売者の果たす 者から購入した者(再販売者)が非関連者に販 非関連者 機能及び負担するリスクと密接な関係がある。 国外関連取引 製品Zまたはその原材料等 法人 売した取引(比較対象取引)における再販売者 製品Zもしくは同種・類似の製品 の売上総利益率となるが、再販売者の売手とし およびその原材料等 ての機能等に国外関連取引と差異がある場合に 非関連者 は、その差異により生じる利益率の差に必要な 製品Zもしくは同種・類似の製品 調整を加える必要がある(措令 39 の 12 ⑥) 。 およびその原材料等 (図 2) ② 比較対象取引 非関連者 価格C 再販売価格基準法における比較対象取引は、 図 2 にあるように、国外関連取引と同種又は類 したがって、再販売価格基準法においては、原 価格B 則として再販売者の機能等の類似性及びその差 価格A 非関連者 異の調整が最も重要な課題といえる。そういう 点では、棚卸資産自体の差異の影響を受けにく く、独立価格比準法のような棚卸資産について の厳格な同種性は求められていないと考えられ 非関連者 非関連者 価格D ている。 B−A D−C 通常の利益率: または 再販売者の機能等については、具体的には、 A C 再販売者が購入した棚卸資産に加工等を加えて 似の棚卸資産を、非関連者から購入した者(再 いるか否かや、再販売者が広告、マーケティン 販売者)が当該棚卸資産を非関連者に販売した グ、配送、保守サービスその他のサービス機能 取引をいい、再販売者が国外関連者である場合 を果たしているか否かを考慮することとなる。 には「内部利益率比準法」 、再販売者が非関連 再販売 さらに、再販売者が商標等の無形資産を使用し 者である場合には「外部利益率比準法」とされ ているか否かも考慮すべきファクターといえ る。どちらがより適当な利益率かについては、 る。 再販売価格基準法が、実質的には再販売者の売 (3)原価基準法(CP 法) 手としての機能に着目する方法であることか ① 概 要 ら、再販売者の機能の差異を考慮する必要のな 原価基準法とは、国外関連取引に係る棚卸資 製品Y 国外関連者 No.549 2014.6.9 (課税売上高5億円超) 課税売 25 特殊 関係 法人 実 課税売 ) 配 通常の利益率: B または D 特殊 実 関係 法人 【図3】 原価基準法(CP法) 製品Zまたはその原材料等 (売手) 課税売 法人 非関連者 製品Zもしくは同種・類似の製品 およびその原材料等 国外関連者 製品Z 国外関連取引 価格A 価格B 非関連者 非関連者 製品Zもしくは同種・類似の製品 およびその原材料等 価格C 非関連者 非関連者 価格D 通常の利益率: 非関連者 B−A D−C または A C 産の売手の購入、製造その他の行為による取得 原価基準法における比較対象取引は、図 3 に の原価の額に、通常の利潤の額(当該原価の額 あるとおり、国外関連取引の売手が、同種又は に通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。 ) 再販売 類似の棚卸資産を非関連者に販売した取引と第 製品Y を加算した金額をもって独立企業間価格とする 三者間での取引の 2 つが考えられる。前者の取 方法である(措法 66 の 4 ②一ハ) 。 引における利益率を使用する原価基準法は内部 なお、ここでいう通常の利潤率とは、国外関 利益率比準法といい、後者の取引おける利益率 連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資 を使用する原価基準法は外部利益率比準法とい 産を、非関連者から購入、製造その他の行為に われている。再販売価格基準法と同様、原価基 より取得した者(販売者)が同種又は類似の棚 準法においても売手の機能及びリスクに着目す 卸資産を非関連者に販売した取引(比較対象取 ることから、棚卸資産自体や原価の差異及び売 引)における売上総利益の額の原価の額に対す 手の機能やリスクを考慮する必要がない内部利 る割合をいい、比較対象取引と国外関連取引で (課税売上高5億円超) 益比準法がより適当と考えられる。 売手の果たす機能等に差異がある場合には、そ また、原価基準法では、原価の妥当性(比較 A社 の差異により生じる利益率の差を調整した後の 割合となる(措令 39 の 1250%超の ⑦) 。このように、原 出資などによる支配 価に与える販売者の機能及びリスクの類似性を 割合を指標とするものであるため、棚卸資産を 連取引と同種の棚卸資産であっても、販売者が 関連者取引により入手した場合など国外関連取 原材料の仕入れから製造まで一貫して行う製造 引における棚卸資産の原価そのものが通常の取 販売の場合と、販売者が簡単な最終組立てしか 引価額と異なる場合には、まずは当該原価を通 していない場合には、おのずと利益率にも差が (子会社)(孫会社) (ひ孫会社)66 常の取引価格に引き直す必要がある(措通 生じよう。こうした差異の調整も必要となる。 の4 (4) - 6) 。 (図 3) (4)基本三法に準ずる方法 ② 比較対象取引 50%超の出資 などによる支配 No.549 2014.6.9 条件に も更に とって 独立企業間価格の算定方法として、これまで 納税者 26 D社 (課税売上高 5億円超) 課税売 可能性)に加え、再販売価格基準法と同様、原 合わせて考える必要がある。たとえば、国外関 A社100% B社 100% C社 100% 実 国外関連者 価基準法においては、売上利益の原価に対する 新設法人 特殊 関係 法人 の基本三法に準ずる方法によることも認められ 該買手から当該関連者への販売価格を算定 ている(措法 66 の 4 ②一ニ) 。この「準ずる」 し、これに基づき、国外関連取引に係る独立 の意味については特に明示されていないが、基 企業間価格を算定する方法 本三法の考え方からかい離しない限りにおい ハ)国外関連取引に係る棚卸資産の買い手が当 て、取引内容に適合した合理的な方法を使用す 該棚卸資産を用いて製品等の製造をし、これ る途を残したものといわれている(事例集事例 を非関連者に販売した場合において、当該製 1(参考 3) ) 。具体的には、法令の規定にした 品等のその非関連者に対する販売価格から再 がって、基本三法を適用した場合には比較対象 販売価格基準法を適用する場合の通常の利潤 取引を見出すことが困難な国外関連取引につい の額のほかに、例えば、当該製品等に係る製 て、その様々な取引形態に着目し合理的な類似 造原価や当該製品等の製造機能に見合う利潤 の算定方法とすることで比較対象取引を選定で の額を控除して独立企業間価格を算定する方 きる場合などに適用される。事例集には、次の 法 方法が具体例として紹介されている。 ニ)他社から購入した製品と自社製品をセット イ)商品取引所相場など市場価格等の客観的か にして国外関連者に販売した場合において、 つ現実的な指標に基づき独立企業間価格を算 例えば、独立価格比準法と原価基準法を併用 定する方法 して独立企業間価格を算定する方法 ロ)国外関連取引に係る棚卸資産の買手が、関 ホ)基本三法を適用する上での比較対象取引が 連者を通じて非関連者に当該棚卸資産を販売 複数ある場合において、それらの取引に係る した場合において、まず非関連者に販売した 価格又は利益率等の平均値を用いて独立企業 当該棚卸資産の価格から再販売価格基準法を 間価格を算定する方法 適用する場合の通常の利潤の額を控除して当 記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお 伝えいたします。 TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:[email protected] ※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。 No.549 2014.6.9 27