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IFRS 10Minutes IASB 収益認識とリース 公開草案を公表

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IFRS 10Minutes IASB 収益認識とリース 公開草案を公表
IFRS 10Minutes
Vol. 8
2010年8月
PricewaterhouseCoopersが国際財務報告基準に関する最新情報を簡潔にお届けするニュースレター
IASBとFASB
収益認識とリース
公開草案を公表
収益認識
• 契約と履行義務に基づく新しい収益認識モデルの提案
• 5つのステップに基づく収益の認識
• 従来の収益認識方法への影響は?(続きは2、3ページ)
提案モデルに基づく基本的な収益認識の考え方(5つのステップ)
ハイライト
 リース会計の公開草案を公表
(IASB / FASB)
1.
1.
顧客との
顧客との
契約の識別
契約の識別
2.
2.
履行義務の
履行義務の
識別
識別
3.
3.
取引価格の
取引価格の
算定
算定
 収益認識の公開草案を公表
(IASB / FASB)
 IASB / FASB 修正コンバージェンス戦略
 活発化する公正価値論争 (PwC調査)
 IFRSに基づくプロジェクト
-IFRSプロジェクトの進め方
 コラム
- IASB / FASB 財務諸表の表示の追加的
アウトリーチ活動を開始
-公正価値測定の不確実性の分析
-IASB Conference in 東京
-金融庁 IFRS適用のQ&Aを公表
-IASB 保険契約の公開草案
4.
4.
取引価格の
取引価格の
履行義務
履行義務
への配分
への配分
5.
5.
履行義務の
履行義務の
充足時点で
充足時点で
収益を認識
収益を認識
リース
• 全てのリース契約をオンバランス?
• 使用権モデルに基づく新しい会計処理(借手)
• 履行義務と認識の中止のハイブリッドモデルに基づく会計処理(貸手)
(続きは1ページ)
借手
リース料支払義務
=
使用権資産
=
リース支払料の現在価値
=
履行義務
=
リース支払料の現在価値
貸手
受取債権
What’s New
発行日
発行主体
発行物
6/14
PwC
6/17
金融庁
6/24
IASB / IASCF
6/24
IASB / FASB
公開草案: 顧客との契約からの収益を公表 【ページ 2、3】
6/24
IASB / FASB
修正コンバージェンス戦略の詳細を公表 【ページ 4】
6/29
IASB
公開草案: 公正価値測定に関する測定の不確実性分析の開示を公表 【ページ 8】
6/29
FASB
公開草案: 「公正価値測定と開示-US GAAPとIFRSにおける共通の公正価値測定と開示に関する規定の改訂」を公表
7/1
IASB / IFRSF
IASC財団が、IFRS財団に名称を変 更
7/1
IASB / IFRSF
IASB Work Planを更新
7/1
IASB / ASBJ
7/2
IFRIC
公正価値測定にかかる包括的なプロジェクトサマリーを公表
7/8-9
IFRIC
会議: IFRIC meeting
7/9
IASB / IFRSF
7/19-23
IASB
7/28-29
IASB
7/30
IASB / FASB
8/4
金融庁
8/12-13
ASBJ / FASB
8/17
IASB / FASB
調査結果: 投資家とアナリストの参加による金融商品会計の「公正価値」論争の活発化 【ページ 5】
「IFRS(国際会計基準)の任意適用及び初度適用について」を公表 【ページ 8】
IASB Work Planを更新
IASBとFASBが財務諸表の表示プロジェクトに関する追加的アウトリーチ活動を開始 【ページ 8】
金融商品: 償却原価及び減損の公開草案にかかるExpert Advisory Panelでの議論の内容を公表
会議: ボードミーティング July 2010
会議: IFRS Conference 東京開催 【ページ 8】
公開草案: 保険契約 【ページ 8】
「連結財規等の一部を改正する内閣府令(案)等」を公表
グローバル・コンバージェンスを議論する会合
公開草案: リース 【ページ 1】
01
IASB/FASB
公開草案:
リース
2010年8月17日、IASBとFASBは、新しいリースの会計基準の
公開草案を公表しました。公開草案では、2009年3月公表のディス
カッションペーパー (“DP”)(2009年6月発行 10 Minutes Vol. 1参
照)に対するコメントを反映し、DPで予備的見解が示されていな
かった貸手の会計処理を含めて、借手、貸手双方の会計処理のモ
デルが示されています。
この公開草案によれば、従来のファイナンス、オペレーティング
リースの区分を廃止して、原則としてほとんどのリース取引の会計
処理が、貸借対照表に反映されることが提案されています。
貸手の会計処理(ハイブリッドモデル)
• 貸手が、リース対象資産の重要なリスクと便益を有するか否
かによって、①履行義務モデル、②認識の中止モデルの二つ
のモデルが提案されています。
貸手の会計処理の主な特徴
履行義務モデル
認識の中止モデル
貸手が、対象資産の重要
なリスクと便益を有する
その他全てのリース
リース
• 借手から受領するリー • 借手から受領するリー
ス料相当のリース債権
ス料相当のリース債権
認識される資産
• リース対象資産の認識 • 対象資産の一部を借手
を継続
に移転して認識を中止
適用範囲
借手の会計処理(使用権モデル)の主な特徴
• 公正価値評価されている投資資産など一部の例外を除いた
全てのリース取引を対象
• 「使用権資産」を資産、「リース料支払義務」を負債として認識
• 損益計算書で「使用権資産」の償却と「利息費用」を認識
• 「リース料支払義務」は、当初、「追加借入利子率」で割引いた
「リース支払料の公正価値」で測定し、その後は、「追加借入
利子率」の見直しは行わずに「償却原価」で測定
• 「使用権資産」は、当初は取得原価で測定し、その後は「償却
原価」で測定もしくは再評価
• 変動リース(Contingent rentals)と残存価値は、予測される支
払額を含めて、各期に再評価する。
• 「リース期間延長オプション」 は、「どちらかといえばあり得る
“more likely than not”」基準に基づく発生可能な最長期間で
リース負債を認識し、各期に再評価する(下記【例】参照)
【例】 リース期間延長の処理(”more likely than not”)の決定
借手のリース資産の利用
認識される負債
を約束する履行義務
債権の測定
債務の認識
なし
(認識を中止した資産を
リース売上の原価として
計上)
当初リース料の公正価値で認識
その後、償却原価で認識
当初、取引価格で認識
なし
その後、リース期間を通じ
(残存資産の認識を継続)
て認識
リース期間延長
借手と類似の処理
オプション
借手と類似の処理
信頼性をもって見積れる場合のみ変動リースを含める
変動リース
履行義務の充足に伴う場
変動額は全て損益へ
合のみ、変動額を損益へ
(前提)借手が機械装置を10年の期間でリースし、リース期間終
了時に5年の期間の延長の選択権が付与されている場合
開示
(提案されているモデルによる会計処理)
• 借手、貸手ともに詳細な内容の注記が要求されます。
• 借手は、リース契約当初に、支払債務を“more likely than
not”基準で10年と15年のいずれかに決定することが必要
公開草案に対するコメントは、2010年12月15日まで募集され、
2011年第2四半期に基準の公表が予定されています。
02
IASB/FASB
公開草案:
顧客との契約から
生じる収益
2010年6月24日、IASBとFASBは、収益認識の会計基準のコン
バージェンスを達成する共同プロジェクトのなかで、公開草案「顧
客との契約から生じる収益」を公表しました。当該草案は、両審議
会が、2008年12月にディスカッションペーパーを公表後、関係者か
らのコメントを募集するとともにアウトリーチ活動の継続的な実施を
経て、公表されたものです。
公開草案で提案されている新しい収益認識モデルでは、企業の
顧客との契約と、それに関連する履行義務に焦点を当てたアプ
ローチが採用され、5つのステップに基づいて収益を認識すること
が提案されています。
3.取引価格(“Transaction Price”)の算定
• 取引価格に基づいて収益を認識することが提案されている。
• 取引価格は、財やサービスと交換に企業が顧客から受領した、
又は、受領することが見込まれる対価の金額(第三者から代
理で徴収した金額を除く)とされる
• 取引価格は、回収可能性、貨幣の時間価値、現金以外の対
価、顧客に支払われる対価の影響を検討した上で決定される
1.顧客との契約の識別
4.取引価格の履行義務への配分
• 「契約」とは、二者以上の当事者間の合意であり、それにより
強制可能な権利と義務が生じるものと定義される
• 契約開始時の独立販売価格(“standalone selling price”)に
応じて配分する
• 契約は、文書、口頭もしくは企業の商慣行に基づくもの等様々
なケースを想定し、国や管轄地域、産業によって異なる
• 独立販売価格が直接入手できない場合は、見積りが利用さ
れる
• 契約が存在するケース(全ての要件が必要)
5.履行義務の充足時点で収益を認識
− 契約に商業的実態(“Commercial Substance”)がある
− 契約当事者が契約を承認し、義務の履行をコミットする
− 強制可能な権利を識別できる
− 支払条件やその方法を識別できる
• 顧客に対する履行義務が充足された時点で収益を認識する
• 履行義務の充足は、顧客への物品または役務の移転によっ
て達成される。移転とは、顧客による支配の獲得(顧客が支
配を獲得した時点で、移転したものとされる)とされる
2.履行義務(“Performance Obligation”)の識別
その他の提案内容
• 履行義務を、財やサービスを顧客に移転することを強制可能
な約束であり、直接的、間接的な約束を含むと定義する(ビジ
ネス慣行による暗黙の約束も含まれる)
• 不利な履行義務(履行義務充足コストが、取引価格を超過す
る場合に損失を認識)
• 履行義務の識別では、契約に含まれる独立した履行義務の
区別(“distinct”)が重要であり、区別できるとは、区別できる
機能と区別できる利益マージンがあることとされる
• 契約コスト(一定条件によって契約履行直接費の資産計上)
• 財務諸表の表示(契約資産、契約負債等の新しい開示科目)
• 開示の充実(経営者の重要な判断その他)
03
IASB/FASB
公開草案:
顧客との契約から
生じる収益(続き)
提案されている公開草案が最終化されると、様々な業種での現
行の収益認識方法に影響がある可能性があります。
公開草案で提案されている原則:
区別できる製品、サービスに対して独立の履行義務を識別
公開草案の提案によって影響のある可能性のある取引の
一例
(影響が想定される取引)
公開草案で提案されている原則:
支配が顧客へ移転する時のみ収益を認識
(影響が想定される取引)
• 進捗(進行)基準で収益を認識している長期の工事契約やソフ
トウェアの開発等の契約
(想定される影響の例)
• 契約期間を通じて顧客に継続的に支配が移転(サービスを提
供)している場合のみ進捗(進行)基準が適用可能となる。
(例:顧客が建設、開発中の建物を所有しているなど)
• 電信事業サービスや工事契約など、従来、単一の履行義務を
前提に、収益を計上していた契約で複数の履行義務を含むと
考えられる契約
(想定される影響の例)
• 以下のような取引を独立の履行義務ごとに細分化して収益を
認識することで、認識時期が分散されるとともに、独立の履行
義務ごとに、より多くの利益数値が報告される可能性がある。
− 無料の通信期間(通信データ量)や将来の修理やアプリ
ケーションインストールの権利を含んだ携帯電話の販売
− 工事の段階ごとに完成物を把握できる工事契約
公開草案で提案されている原則:
製品の保証に関する収益の繰り延べ、履行義務の配分
公開草案で提案されている原則:
確率加重平均した発生可能性による取引価格の見積り
(影響が想定される取引)
(影響が想定される取引)
• 製品の欠陥等の潜在的な隠れた瑕疵がある場合すなわち製
品の交換や修理をする義務がある契約(“latent defect”)
• 割引や値引き、インセンティブの支払い、信用リスク等により
取引価格が変動する取引
(想定される影響)
• 顧客への製品の支配移転後に生じた不具合に対する保証義
務がある契約(“faults”)
(想定される影響の例)
• あらかじめ想定される潜在的な製品の交換、修理に関して、独
立の履行義務を識別しないが、予測される製品の交換や修理
による取替え部品換部分については収益を繰り延べる。
• 顧客に製品の移転をしたあとに生じる不具合に対する保証で
は、独立の履行義務があると考え、当初の取引価格の一部を
履行義務に配分する。
• いずれの場合も製品保証引当金を計上するのではなく、収益
の繰延、減額が求められる。
• 将来の支払額が不確実であるリベート等のセールスインセン
ティブの見積りについて、加重平均による発生可能性の見積
りが必要となり、経営者の重要な判断が求められる。
• これらの見積りが合理的に出来ない場合、収益を認識できな
い可能性がある。
IASBとFASBは、2010年10月22日まで当該公開草案に対する
コメントを募集し、2011年第2四半期での基準の最終化を予定して
いますが、適用時期については明示されていません。
04
IASB/FASB
修正コンバージェンス
戦略の詳細
2010年6月24日、IASBとFASBは、コンバージェンスプロジェクト
についての新しい優先順位付けとスケジュールの概要を示す修正
戦略を公表しました。これは、2010年6月2日発表の共同声明
(2010年6月発行 10 Minutes Vol. 7 表紙で解説)を受けた具体的
な戦略であり、利害関係者の様々な懸念への対処を意図した概要
が示されています。今回の修正戦略では、緊急性の高い優先プロ
ジェクトについては完了目標を2011年6月以前とする一方で、その
他については、2011年末の完了が目標とされています。
修正戦略の概要
• IASBおよびFASBが最も緊急であると考えるプロジェクトに重
点を置いた主要プロジェクトを優先する新しいスケジュール
• 1つの四半期に公表する公開草案の数の制限(重要または複
雑な公開草案の数を4つまでに制限)
• 主要なMOUプロジェクトの発効日および経過措置に関して、
関係者の意見を求める協議文書を別途発行する提案
プロジェクトのスケジュールの概要
IASB
FASB
優先プロジェクト
IASB
FASB
その他のプロジェクト
金融商品
− 認識と測定(資産)
基準: 2009年公表済
金融商品
− 認識と測定(負債)
ED: 2010年第2四半期
基準: 2011年第2四半期
− 減損
ED: 2009年第4四半期
基準: 2011年第2四半期
− ヘッジ会計
ED: 2010年第3四半期
基準: 2011年第2四半期
ED: 2010年第2四半期
基準: 2011年第2四半期
認識の中止-開示
ED: 2009年
基準: 2010年第3四半期
未定
連結
(一般会社)
ED: 2008年
基準: 2010年第4四半期
未定
連結
(投資会社)
退職後給付
ED: 2010年第4四半期
基準: 2011年第2四半期
ED: 2010年第2四半期
基準: 2011年第1四半期
未定
収益認識
ED: 2010年第2四半期
基準: 2011年第2四半期
貸借対照表-相殺
ED: 2010年第4四半期
基準: 2011年第2四半期
リース
ED: 2010年第3四半期
基準: 2011年第2四半期
財務諸表の表示
ED: 2011年第1四半期
基準: 2011年第4四半期
包括利益計算書
ED: 2010年第2四半期
基準: 2010年第4四半期
非継続事業
ED: 2011年第1四半期
基準: 2011年第4四半期
公正価値測定
ED: 2010年第2四半期
基準: 2011年第1四半期
持分の特性を有する
金融商品
ED: 2011年第1四半期
基準: 2011年第4四半期
両審議会は、今後、アップデートされたスケジュールに基づいて
公開草案を公表していくとともに、利害関係者からのコメントを募集
するためのラウンドテーブルの開催を予定しています。
保険契約
排出権取引
ED: 2010年第3四半期
基準: 未定
ED: 2010年第3四半期
基準: 未定
ED: 2011年第3四半期
基準: 2012年
05
投資家とアナリストの
参加により活発化する
金融商品会計の「公正
価値」論争
~PwC調査より~
PwCは、2008年後半の金融危機と、その結果、明らかになった
金融商品会計の大きな課題、IASBとFASBが進行している従前の
金融商品会計の見直しといった背景を受け、投資家とアナリストと
いう重要な利害関係者に対する詳細な調査を実施しました。
調査の目的
• 金融商品の会計と報告に関する投資家とアナリストの見解を
深く理解し、多種にわたる投資プロフェッショナルが抱いてい
る見解を取りまとめること
調査対象
• 世界各地を対象に62人の投資プロフェッショナルを抽出し、詳
細な対面調査を実施。
調査対象の分布
地域
米国51%、欧州34%、アジア太平洋15%
投資機関
バイサイド42%、セルサイド42%、信用格付16%
業種
銀行49%、保険41%、ゼネラリスト10%
商品
株式76%、債券(固定金利)24%
調査結果の要旨
• 投資家は混合測定モデルの採用を期待しているか?
− 多くの投資家は、期間の短い金融商品には「公正価値」を、
期間が長く(特に銀行貸出と預金)、約定に基づくキャッ
シュフローの回収を目的として自社で保有する意思を持っ
ている金融商品に対しては「償却原価」を適用するという
「混合測定モデル」の適用を望んでいる。
− 「混合測定モデル」を望む投資家は、このモデルの採用に
より、金融商品を保有する企業の基本的ビジネスと当該
商品保有の経済的理由がより明確に反映されると考えて
いる。また、短期的なトレーディングでなく、長期的な
キャッシュフローの獲得を目的として保有する金融商品に
関して、純利益が公正価値の変動の影響を受けないよう
にすることが重要と考えている。
• 企業分析において金融商品の公正価値情報は有用か?
− 多くの投資家は、金融商品の公正価値情報は重要かつ
有用と考えている。
− 一方で、公正価値情報は様々な方法で利用されるが、通
常、投資家が、対象企業の流動性、資本充足度、企業価
値算定といった指標に対して自身の見解を示すためのも
のであり、将来のキャッシュ・フロー創出の指標として用い
られることは稀なため、企業の分析上、必ずしも重要な指
標ではないと考えている。
• 公正価値情報について、投資家は何を望んでいるか?
− 投資家は、公正価値情報開示の改善に対する要望を示し
ている。具体的には、ポートフォリオ構成とリスク要因、評
価方法、仮定、重要な仮定の変化に対する感応度の分析
に関する適切な情報があげられる。
• 期待損失に基づく減損モデルを投資家は支持するか?
− 発生損失でなく、期待損失に基づく減損モデルは広く支持
されている。同時に、期待損失モデルの適用方法を定義
して欲しいという要望がある。
− 期待損失モデルの定義があいまいな場合、過度に恣意的
な引当を計上し、利益操作が容易になるという懸念がある。
PwCは、調査結果についてのプレスリリースのなかで、今回の
調査が現在、進行中の金融商品会計の議論に重要な役割を果た
すであろうとの見解を示しています。
(出典)
http://www.pwc.com/gx/en/press-room/2010/investors-and-analysts-add-to-the-critical-fair-value-debate.jhtml.html (2010年6月14日プレスリリース)
http://www.pwc.com/gx/en/audit-services/assets/financial-instruments-reporting.pdf (”What Investment professionals say about financial instrument
reporting”) (PwC Global Website)
06
IFRSプロジェクト
事例紹介
− IFRSプロジェクト
の進め方
②ロードマップ
の策定
前号(*)(2010年6月発行 10 Minutes Vol.7参照)のこの項で
は、IFRSプロジェクトの立ち上げについて記載しました。特に、
IFRSプロジェクトの最初のフェーズである「予備調査フェーズ
(Phase1)」 の立ち上げの事例とともにIFRSプロジェクトの目的に
ついて解説しました。
今回は、定められたゴールを目指すための期間、取り組み範囲
(スコープ)、スケジュールを定めるロードマップの策定を中心に解
説します。ロードマップの策定が、 「予備調査フェーズ(Phase1)」
のゴールと言えます。 〔図表1〕
〔図表1〕 PwCの3フェーズ・アプローチ
Phase 1
Phase 2
Phase 3
予備調査
IFRSの適用
会計/業務プロセス/情報システム
定着化
ロードマップ
2. 未経験の取り組み
• 多くの日本企業にとって、あるいは多くの従業員にとって
初めての取り組みであること
3. 長期間におよぶ取り組み
• 日本におけるIFRSの強制適用は2015年3月期、あるい
は2016年3月期となることが想定されていること
• 仮に2015年3月期からの適用としても、その前年の比較
年度、あるいは適用年度後の定着化まで含めると5年程
度の長期間にわたるプロジェクトになること
ロードマップの要件
このような特徴に対応するためロードマップは、概ね下記の7点
の要件を満たすものでなければならないと言えます。
① 取り組むべき事項が漏れなく列挙され、時系列に定義されて
いること
② 複数の取り組むべき事項間の関係が整理され、先行後続関
係が明示されていること
ロードマップの重要性
多くの会社では、IFRSプロジェクト以外にも様々なプロジェクトに
取り組まれているものと思います。そのなかでも、ロードマップ、あ
るいはマスタースケジュールといったものを策定されるものと思い
ますが、IFRSプロジェクトにおいては、特にこのロードマップが重
要な意義を持ちます。これは、主にIFRSプロジェクトの特徴とも言
える下記の3点に起因します。
(*)本誌のバックナンバーは、PwC
Japan IFRS情報提供ウェブサイト
[http://www.pwcjp-ifrs.com]に掲
載しています。是非ご参照ください。
1. 影響範囲の広さ
③ 先行取り組み事項における結論を待って後続検討事項を定
める場合も多いため、あらかじめロードマップの見直しポイン
トを設けておくこと
④ IFRSは確定した基準ではなく、今後も継続的に改訂されるも
のであることから、その改訂タイミングを想定して会計処理方
針を議論するスケジュールを定めること
⑤ 社内の他のプロジェクト等との関係を整理し、特に大規模な
コストを要する情報システムの改修、構築において二重投資
を避ける工夫がなされていること
• IFRSという新しい会計基準の適用が、会社の広い範囲
に影響をおよぼすこと
⑥ IFRSプロジェクトの関係者全員がロードマップの策定に携わ
り、全員に理解、納得されたロードマップであること
• それゆえに、経理部門に留まらず、多くの部門、関係者を
含めた取り組みになること
⑦ 初期のロードマップ策定段階から、会社の経営層への説明
がされ経営層の承認を得たロードマップであること
07
IFRSプロジェクト
事例紹介
− IFRSプロジェクト
の進め方
一方で、④や⑤の要件などはIFRSプロジェクト独特の論点を含
みます。④の要件については、例えば、本誌(”IFRS 10
Minutes”)にて継続的に紹介しているIFRSの改訂の動向を参考
にロードマップを策定することができます。
IFRSと情報システム
IFRSの適用によって会計処理が変更されれば、会計処理を行う
業務プロセスを変更する場合があります。さらに、会計処理を情報
システム(以下、「システム」と称します)を用いて行っている場合、
システム改修を行う場合があります。ここまでが、IFRS適用による
直接的な業務プロセス、システムへの影響です。また、前号(*)の
この項において解説した「IFRSプロジェクトの目的」に照らせば、
「1. 財務の視点」と「2. 業務プロセスの視点」に相当します。
多くの企業では、IFRSによる直接的なシステムへの影響に対応
する際、併せてシステム、特に会計システムに関して認識されてい
た他の課題と併せて取り組もうとする考え方が生まれます。このよ
うな考え方は、「二重投資を避ける」という観点から当然と言えます
が、これは「IFRSプロジェクトの目的」に照らせば、「3.経営改革の
視点」に含まれるものです。
システム領域を含んだロードマップの検討事例
ある会社では、IFRSプロジェクトの目的を、IFRS適用のために
最低限必要な対応と、経営改革の視点で取り組むべき範囲とで明
確に分けて検討し、それを統合させるという手順でロードマップの
策定が行われました。〔図表2〕
〔図表2〕 ロードマップの検討手順
会計/財務
会計処理への
領域の 1
影響範囲把握
検討
会計処理
方針策定
業務/システム
影響範囲特定
2
業務
プロセス/
システム
領域の
検討
現行業務
/システム
確認
3
1 :財務の視点
• 会計処理方針
の変更が影響
する業務/システ
ムの抽出
ロードマップ(
初版)
策定
⑤の要件については、我々が普段参画させていただいているプ
ロジェクトの現場に限らず、一般的にもよく議論されるポイントで
す。「二重投資を避ける」という観点はロードマップ策定にあたって
は当然のことですが、そもそもIFRS適用によって情報システムを
大幅に改修あるいは構築しなければならないのか、その範囲はど
の程度のものなのかということについて、これを大きく認識する考
えと、必要最低限の対応にとどめる考えの双方が存在し、本誌の
読者の方々の中にも正解が分からないと感じていらっしゃる方が
多いものと思われます。
すなわち、会社の状況によって異なり、一般論としての正解がない
のです。それゆえ、各社で取り組む範囲を見極め、各社独自の
ロードマップを定義することの必要性と重要性が高い領域です。
プロジェクト推進方針策定
②ロードマップ
の策定(続き)
これらの「ロードマップの要件」の多くは、IFRSプロジェクトに限っ
た要件ではなく、通常他のプロジェクトを推進するためのロードマッ
プの策定にあたっても必要な要件だと考えられる方も多いと思いま
す。確かにその理解は間違いではありません。しかしながら、IFRS
プロジェクトでは、前述の特徴から、「ロードマップの要件」の重要
性がより高いということを再度強調しておきます。
グループ
会計
マニュアル
作成へ
システム
改修、
構築へ
その他の
課題抽出
• 併せて取り組む
関連課題抽出
2 :業務プロセスの視点
3 :経営改革の視点
この検討事例では、会計/財務領域、業務プロセス領域、そして
システム領域のそれぞれが並行して検討されました。そして、3種
類の取り組みをそれぞれ推進しながら、タイミングを定めて相互の
検討から受ける影響を確認しあう形でプロジェクトが推進される
ロードマップが作成されました。実際のロードマップの事例の紹介
は次号以降を予定していますが、IFRS適用の影響には、種類の
異なる複数の検討が混在することを「予備調査」の段階から意識し
て取り組むことが重要と言えます。
08
コラム
IASBとFASBが、財務諸表の表示プロジェクトに関する追加
的アウトリーチ活動を開始
金融庁 「IFRS(国際会計基準)の任意適用及び初度適用に
ついて」を公表
IASBとFASBは、2010年7月1日、それぞれのウェブサイトに共
同プロジェクトである財務諸表の表示に関する新基準の草案を掲
載することにより利害関係者に対する追加的なアウトリーチ活動を
開始しました。
金融庁は、2010年6月17日、 「IFRS(国際会計基準)の任意適
用及び初度適用について」を公表しました。このなかでは、企業
が、平成22年3月31日以後終了する連結会計年度から任意に
IFRSを適用できることを受けて金融庁に寄せられた質問とその回
答が示されており、過去、アニュアル・レポートでIFRSに基づく財
務諸表を提出している場合には、IFRSによる連結財務諸表を記載
した有価証券報告書提出の際には、初度適用の規定は適用され
ず、過去、すでに初度適用の規定の適用を受けていることを記載
する必要がある旨の見解が示されています。
財務諸表の表示については、6月24日に両審議会から公表され
た修正コンバージェンス戦略(ページ04で解説)のなかで、最終基
準の公表時期を2011年末まで延期することが表明されています
が、この草案を公表することで、さらに時間をかけたアウトリーチ活
動を行い、提案内容の費用と効果の関係、金融機関にとっての財
務報告の影響に関する懸念の評価を行う予定です。当該草案で
は、財務諸表の新様式の区分案も示されています。
IASBが、レベル3に分類される公正価値測定について、改
善案を公表
IASBは、2010年6月29日、「公正価値測定に関する測定の不確
実性分析の開示」を公表しました。この内容は、2009年5月に公表
された公開草案「公正価値」に限定的な変更を加えるものです。
当該公開草案では、公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類さ
れる公正価値測定に関する測定の不確実性を開示すことを企業
に求めることが提案され、観察不能なインプット間の相関の影響を
考慮した不確実性の分析の開示が求められています。
IASBとFASBは、2010年9月7日まで当該公開草案に対するコメ
ントを募集し、その内容を共同で検討する予定です。
IASB、日本にてIASB Conferenceを開催
IASBは、ASBJの協力のもと、2010年7月28日、29日の両日、
東京で、IFRS Conferenceを開催しました。
IASB 保険会計に関する公開草案を公表
IASBは、2010年7月30日、保険契約の会計を改訂する公開草
案を公表しました。当該公開草案では、保険リスクを有する全ての
地域の保険発行者の発行する保険契約に共通に適用される基準
が提案されています。
IASBは、保険契約の会計について、2004年にプロジェクトの
フェーズ1として、IFRS4を暫定的な会計基準として公表しています
が、IFRS4は、依然として、複数の会計実務を許容する内容であ
り、プロジェクトのフェーズ2として、さらなる検討を継続し、2007年
のディスカッションペーパーの発行を経て、当該公開草案の公表に
至りました。
当該公開草案の公表は、FASBとの共同活動の結果によるもの
であり、FASBもIASBの公開草案の内容を含めた公開草案を近日
中に発行する予定です。IASBは、今後、引き続き、アウトリーチ活
動を進めるとともに、当該公開草案に対するコメントを、2010年11
月30日まで募集しています。
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