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IFRS 10Minutes IASB 新しい連結の支配 の概念を公表
IFRS 10Minutes Vol. 9 2010年10月 PwCが国際財務報告基準に関する最新情報を簡潔にお届けするニュースレター IASB 新しい連結の支配 の概念を公表 ハイライト 連結会計についてのプロジェクトの全体像 • 支配モデルの概念の統一 • 連結及び非連結企業に対する開示の拡充 • 米国会計基準とのコンバージェンス (続きは02ページ) IASB Work Plan (2010年10月12日付)より抜粋 • プロジェクト計画表の更新(ASBJ) 2010年 2011年 • 連結財務諸表のスタッフドラフト公表(IASB) • 認識の中止の開示(IFRS7号改訂)(IASB) • 税効果会計の一部を修正(IASB) • IFRSとXBRL • IFRSに基づくプロジェクト - IFRSプロジェクトの進め方 • コラム - 公正価値測定のスタッフドラフト - IASB/ASBJ 日本でのコンバージェンス とIFRS導入について協議 - 概念フレームワークの第一フェーズを完 了(IASB) - 単体財務諸表に関する検討会議(ASBJ) - IFRS 1号の改訂 支配の概念 (IAS27の置換え) 開示 連結- 投資会社 7-9 10-12 Staff Draft Final 1-3 4-6 MOU Joint X X 7月以降 Final ED Final X 新しい支配の概念 • パワーとリターンに基づく支配の概念 • 組成された企業(”Structured Entities”) を含んだすべての企業に適用される 単一の支配の概念 What’s New 発行日 発行主体 発行物 8/19 IASB / IFRSF 8/24 IASB 8/26 IASB / IFRSF 8/26 IFRIC 8/31 IASB / IFRSF 「年次改善:IASB デュー・プロセス・ハンドブックの修正案」を公表 9/2 IASB / FASB リースプロジェクトのアウトリーチ活動として、リース公開草案に対する質問書を公表 9/2-3 IFRIC 9/10 IASB / IFRSF 公開草案: 繰延税金:基礎となる資産の回収 【ページ 4】 9/9-10 IASB / ASBJ 日本におけるIFRSとのコンバージェンスとIFRS導入に関して協議 【ページ 8】 9/14-16、24 IASB 会議: ボードミーティング September 2010 9/17 ASBJ プロジェクト計画表を更新 【ページ 1】 9/28 IASB / FASB 概念フレームワークのフェーズ1を完了 【ページ 8】 9/28 FASF / ASBJ 「単体財務諸表に関する検討会議」を設置 【ページ 8】 9/29 IASB 連結財務諸表に関するスタッフドラフトを公表 【ページ 2】 9/29-30 AOSSG 第2回 アジア・オセアニア基準設定主体会議 9/30 IASB / IFRSF 10/7 IASB 10/12 IASB / IFRSF IASBの次期議長、副議長を任命 10/12 IASB / IFRSF Work Planを更新 10/5、19-22 IASB 公正価値測定に関するスタッフドラフトを公表 【ページ 8】 会議: ボードミーティング August 2010 IFRS 1号 初度適用の改訂案を公表 【ページ 8】 解釈指針案: 「露天堀り鉱山の生産フェーズにおける剥土費用」を公表 会議: IFRS Interpretations Committee Meeting IFRS 1号 初度適用の改訂案を公表 【ページ 8】 基準改訂: 「開示-金融資産の譲渡」 【ページ 3】 会議: ボードミーティング October 2010 01 ASBJ コンバージェンス プロジェクト 計画表を更新 2010年9月17日、ASBJは、2011年までの会計基準のコンバージェ ンスのプロジェクト計画表を更新しました。変更後のプロジェクト計画 表は、IASB とFASBが、公開草案等に対するより高品質なコメントを 得るために、プロジェクトの優先順位付けを行い、優先プロジェクトを 2011年6月までに完了すること(2010年8月発行 10 Minutes Vol.8で 解説)に伴って更新されたIASBの最新のワーク・プランを踏まえたも のとなっています。 既存の差異に関連するプロジェクト項目 企業結合 ステップ2 (のれんの償却等) 2010年10~12月にED公表、 2011年1~6月にFinal 無形資産 2010年10~12月にED公表、 2011年1~6月にFinal 新しいプロジェクト計画表には主として、 1. 既存の差異に関連する企業結合(のれんの償却等)と無形資産 それぞれについて、公開草案と最終基準の公表を3カ月から最 長6カ月延期することを明示 2. その他IASBのワーク・プランを考慮して、3カ月から6カ月のプロ ジェクト項目完了の延期の明示 3. IASB/FASBの検討項目以外の項目(特別目的会社の連結、四 半期、後発事象)の追加 が反映されています。 IASB/FASBのMOUに関連するプロジェクト項目(つづき) (7) 退職給付 (ステップ1)*2 2010年10~12月にFinal (ステップ2)*2 2011年4~6月にDP公表、 2011年10~12月にED公表 IASB/FASBのMOUに関連するプロジェクト項目 (1) 連結の範囲 2011年1~6月にED公表、 2011年7~12月にFinal (2) 財務諸表の表示 (フェーズB 関連)*1 2011年4~9月にDP公表 (非継続事業) 2011年1~3月にED公表、 2011年4~9月にFinal (3) 収益認識 2010年10~12月にDP公表、 2011年7~9月にED公表 (4) 負債と資本の区分 2011年7~12月にDP公表 (5) 金融商品 (8) リース 2010年10~12月にDP公表、 2011年7~9月にED公表 (9) 認識の中止 2010年10月~2011年3月にDP公表、 2011年7~9月にED公表 IASB/FASBのMOU以外のIASBでの検討に関連するプロジェクト項目 引当金 2011年4~6月にDP2公表、 2011年10~12月にED公表 排出権 IASBの検討状況を踏まえて対応 保険 IASBの検討状況を踏まえて対応 (分類と測定)(金融資産) 2011年7~9月にED公表 (分類と測定)(金融負債) 2010年10~12月にDP又はDP2公表 2011年7~9月にED公表 特別目的会社の連結 2010年10~12月にFinal (減損) 2011年7~9月にED公表 四半期 2010年10~12月にED、 2011年1~3月にFinal (ヘッジ会計) 2011年7~9月にED公表 後発事象 2010年10~12月にED、 2011年1~3月にFinal (6) 公正価値測定・開示 2011年1~6月にFinal IASB/FASBの検討項目以外の項目 *1: IASBのプロジェクトの呼称 *2: ステップ1は、退職給付債務、勤務費用の期間帰属や未認識項目のオンバランス化、開示の拡充等/ステップ2はMOUに関連するプロジェクト項目 DP: 論点整理(ディスカッションペーパー) DP2: 検討状況の整理 ED:公開草案 Final: 会計基準/適用指針等(最終) 02 IASB 連結財務諸表: スタッフドラフトを 公表 2010年9月29日、IASBは、新しい連結基準に関するスタッフドラフト を公表しました。スタッフドラフトでは、 2008年12月に公表された公 開草案10号「連結財務諸表」に寄せられたコメントレターに対する審 議を含むIASBの2010年 5月までの仮決定が含まれており、新しい連 結における「支配」の定義を示しています。 今回のスタッフドラフトでは、開示に関する規定と投資会社 (Investment Company)に関するガイダンスは対象外とされ、個別財 務諸表の作成に関する従前のガイダンスが削除されています。 開示については、別途2010年中に公表予定の基準で、子会社、 関連会社及びジョイント・ベンチャーを含めて包括的に取り扱われる ことが予定され、投資会社のためのガイダンスは、2010年中に公開 草案が公表される予定です。 連結財務諸表を巡るプロジェクトの動向の全体像 • 「支配の定義の見直し」と「関連する開示の充実」の2つのプロ ジェクトとして現行基準(IAS27号とSIC12号)を見直し • 「支配の定義の見直し」 一般会社での支配の概念を取り扱ったIAS27号と、特別目的事 業体の支配の概念を取り扱ったSIC12号で、適用される支配モデ ルが異なるという指摘を受けて、すべての企業に適用可能な支 配の定義の設定を検討 • 「関連する開示の充実」 企業が開示する組成された企業(“Structured Entities”)に関する リスク情報の開示のため、非連結の事業体も含めた開示情報の 充実を検討 日本企業への想定される影響 • 投資企業の「支配の存在」には、「パワー」と変動する「リターン」 の双方が必要とされ、次の全てを満たすことが要求されています。 1. 被投資企業に対するパワーを有していること 2. 被投資企業への関与によって、変動するリターン(プラスもマ イナスも含む)に対する権利を有していること 3. 被投資企業のリターンの金額に影響を与えるパワーを行使で きる能力があること 支配の存在の検討 • スタッフドラフトでは、議決権又は契約に基づいた権利の保有は パワーを有している証拠となりうるとした上で、支配を評価する際 の適用ガイダンス(案)を示し、議決権および契約に基づいた権 利を評価する際に考慮すべき事項とし、以下を示しています。 - (議決権) 自社の議決権保有割合、潜在的議決権、議決権行使に関す る他の株主との契約、他の株主の分散度合と過去の議決権行 使パターン など - (契約に基づいた権利) 防衛権、主要経営者の選任・解任権、参加権、被投資会社の デザインの目的、関連当事者などの他の当事者との関係、代 理人 など 議決権50%未満の保有で支配の有無を判定する例(適用ガイダンス(案)より) 議決権の保有状況のみで パワーが存在するケース 議決権の保有状況及びその他 の要素を総合してパワーが 存在するケース 投資企業の有す • 47%保有 る議決権 • 40%保有 • 10%保有株主1名(1番目) 議決権を有する • 4%保有株主1名(2番目) 外部株主の保有 • その他の株主(全て1%未満 比率 の少額割合の保有) • 12名の外部株主が5%ずつ 均等に保有 議決権以外の他 • 考慮の必要なし の要素の検討 • 投資企業が、主要経営者の 選任・解任権、報酬決定権を 契約上の権利として有してい る 支配の存在の有 無の判定 • 他の株主と比較した絶対的 な割合の議決権の保有のみ で支配の存在を判定 • 議決権以外のその他の要素 を考慮した上で、支配の存在 を判定 日本企業への想定される影響 • IFRSには、例えば日本基準での議決権保有比率40%以上と いった実質基準の連結判定の詳細な数値基準のガイダンスがな く、各企業の実態をより検討することで、支配の存在の判定をす ることが必要であり、連結対象会社の範囲に影響がある可能性 があります。 IASBは、スタッフドラフトに関する円卓会議を2010年10月に実施し たあと、2010年中に最終基準を公表する予定です。 03 IASB 資産の認識の 中止の開示: (IFRS7号改訂) 2010年10月7日、IASBは、譲渡した金融資産に付随するリスクに関 連して追加的な開示を要求するために「IFRS 7号 金融商品-開 示」の改訂基準「開示-金融資産の譲渡」を公表しました。 この改訂は、2009年3月に発行された公開草案「認識の中止」に対 するコメントを反映して最終化されたものであり、G20会議での金融危 機への危惧に対応することを意図しています。 公開草案では今回改訂された開示項目とともに、譲渡された金融 資産の会計処理の変更も提案されていましたが、これについては、 IASBとFASBのMOU項目への対応の改訂計画に基づき今後引き続 き検討される予定です。 改訂の基本概念 • 従来のIFRS7号では、金融資産(特に認識の中止の要件を満た さない金融資産)の譲渡についていくつかの開示が要求されて いましたが、改訂基準では、従来の開示に加えて、追加的な開 示が要求されています。 • さらに、譲渡によって認識を中止しているものの継続的関与のあ る金融資産についても、新たに開示が要求されることになります。 オンバランスシートディスクロージャー(認識を中止しない場合) (目的) • 譲渡済み、認識を中止していない金融資産について関連する 負債との関係の理解の促進 (現行のIFRS 7号で要求されている既存の開示) • 譲渡された金融資産の性質 • 引き続き晒されている所有に係るリスクと経済価値の性質 • 認識を続けている資産及び関連する負債の帳簿価額 (新たに追加された開示) • 譲渡済みの金融資産と関連する負債の関係の性質 • 譲渡資産にのみ償還請求権を有する負債について、譲渡資産 及び関連する負債の公正価値と純額ポジションの明細 オフバランスシートディスクロージャー(認識を中止した場合) (目的) • 認識を中止した金融資産に対する継続的関与の性質とリスクの 評価の促進 (開示) • 譲渡によって認識を中止しているが、譲渡済の関連する金融資 産のリスクと経済価値に晒されている場合に、継続的関与に伴う リスクの影響を理解できるように例えば以下の注記を要求 • 認識を中止した資産への継続的関与を象徴する資産と負債の 帳簿価額と公正価値 • 認識を中止した資産への継続的関与から生じる損失の最大エク スポージャー • 認識を中止した資産の再購入に必要なキャッシュアウトフロー • 上記の将来キャッシュフローの満期期間分析 • その他の定性的情報 • 継続的関与に関する開示 - 資産の譲渡時に認識された損益 - 継続的関与から認識された当期及び累積的な収益と費用 - 譲渡取引が報告期間に均等に分布していない場合の追加的 な開示 (譲渡が報告期間末に集中している場合など) 継続的関与に関する開示の方法 継続的関与のタイプ別に開示 (例) • 保証行為、コール、プットオプションなどの金融商品のタイプごと • 債権のファクタリングや証券化、貸付証券など譲渡のタイプごと 改訂基準によって、他の当事者に対して、金融資産を、売却、ファ クタリング、証券化、貸出等で譲渡する企業において追加的な開示 が要求される可能性があり、2011年7月1日以降開始事業年度からの 適用(早期適用可能)が要求されています。 04 IASB 公開草案: 税効果会計の 一部を修正 2010年9月10日、IASBは、法人所得税会計の一部を修正する公開 草案を公表しました。これは、現行のIAS12号「法人所得税」のうち、 繰延税金資産/負債の測定の一部を修正する内容であり、2010年 11月9日までのコメント募集期間を経て、2010年の年度末に適用可 能とするように最終基準化することが予定されています。 法人所得税会計を巡るプロジェクトの動向の全体像 • IASBとFASBは、2002年9月に会計基準の短期コンバージェンス の合同プロジェクトの一部として法人所得税の会計を変更する プロジェクトを開始しました。 • その後、IASBは、IFRSと米国会計基準とのコンバージェンスと、 IAS12号の改訂を目的として、2009年3月に現行の基準を改訂 する公開草案「法人所得税」を公表(2009年6月発行 10 Minutes Vol.1で解説)しました。 • 2009年7月までのコメント募集期間に提出されたコメントレターの 分析の結果、IASBは、改訂の範囲を限定してIAS12号を改訂す ることを決定しました。 公開草案で提案されている一部修正の内容 • 現行のIAS12号の規定では、企業が、資産の使用、資産の売却 のいずれか予測する方法によって計算した税務上の結果が繰 延税金資産/負債の測定に反映されることとなります。 • したがって、資産の使用と売却によって税務上の影響が異なる 場合には、その取り扱いを決定して会計処理する必要がありま すが、公正価値で評価された資産について、使用や売却で回 収される帳簿価額を評価する場合は、その評価が困難であり、 主観的となることが想定されるため、以下のようなアプローチが 提案されています。 ⁃回収が他の方法で生じるという明確な証拠がない限り、資産は すべて売却を通じて回収されるという推定(反証可能な推定) ⁃明確な証拠によって、資産の使用期間にわたって経済的便益 を費消することが証明される場合(反証可能な場合に該当)に は、資産の使用を前提にして繰延税金資産/負債を測定 • 現在予定されている主な改訂内容 - 不確実な税務ポジション - 公正価値で再評価された資産(今回の公開草案の範囲) - 他(評価性引当金の必要性を検討するガイダンス 等) 公開草案の適用範囲 • 繰延税金資産/負債が以下に起因して発生している場合 SIC21号の廃止 • SIC21号「法人所得税-再評価された非減価償却資産の回収」 では、土地などの非減価償却資産に関連する繰延税金資産/ 負債は、資産の売却から生じる税務上の結果を基礎として測定 されることになりますが、この内容が今回の改訂基準に取り込ま れることから、SIC21号の廃止が提案されています。 - IAS40号に基づいて「公正価値」で測定された「投資不動産」 - IAS16号又はIAS38号の「再評価モデル」で測定された「有形 固定資産」あるいは「無形資産」 • 公正価値や再評価モデルを事後的な測定に使用する場合 - 企業結合で測定された投資不動産、有形固定資産もしくは 無形資産から生じる繰延税金資産/負債にも適用 • 繰延税金資産/負債の双方に等しく適用 (将来減算一時差異/将来加算一時差異) 想定される影響 • キャピタルゲイン税率と法人所得税率が異なる地域で、投資不 動産、有形固定資産、無形資産を公正価値で計上している企 業は、資産が売却を通じて回収されるという前提によって、測定 される繰延税金資産/負債の金額に影響を与える可能性があり ます。(例:シンガポール、ニュージーランド、香港、南アフリカな ど) 05 IFRSとXBRL はじめに XBRLとIFRS導入への影響 XBRL(eXtensible Business Reporting Language)とは各種財務報 告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベース の言語です(出典1参照)。すでに日本でも金融庁のEDINETにおい て採用されており、皆さんも用語自体はご存知かと思います。今回は XBRLとIFRSがどのような点で関係があるのかを考えてみます。 IFRSを適用する目的のひとつに、国境を越えた企業間比較を可能 にすることが挙げられます。各国独自の会計基準を国際的に統一す れば企業間の比較は可能になります。それをより具体化するための 手段がXBRLであると言えます。 XBRLでは、タクソノミと呼ばれる電子的な財務諸表のひな型があら かじめ用意されており、財務諸表の提出企業は、このタクソノミを利 用して財務諸表を作成します。実際に数値の入力された財務諸表は インスタンスと呼ばれます。タクソノミは、各会計基準にあわせて用意 されており、IFRSについても2010年版のタクソノミがすでに公表され ています(出典2参照)。また、参考資料として、2009年のIFRSタクソノ ミをベースにした日本語版も公表されています(出典3参照)。 XBRLの利点と特長 XBRLでは、あらかじめひな型が決まっているため、提出企業がひ な型にしたがって財務諸表の開示を行えば、投資家はコンピュー ターを利用して、企業間の財務諸表の比較を容易に行うことができま す。 その一方で、あらかじめ用意されたひな型で開示すべき勘定科目 が不足する場合には、提出企業が独自に勘定科目を追加することが できます。企業独自の追加が可能なことから、XBRLの特長として拡 張可能性(eXtensible)が挙げられます。 会計基準は統一されても財務諸表を作成している言語の違いが残 る場合、投資家は国籍の異なる企業の比較を行う場合、言語の異な る財務諸表を見比べ、同じ概念の勘定科目を特定しながら比較を行 わなければなりません。しかし、XBRLを利用すれば、コンピューター を利用し、あらかじめ定義されたひな型の中から、同じ概念の勘定科 目を特定し、自動的に企業間比較を行うことができます。 IFRSの適用と同時にXBRLが採用されれば、国境を越えた企業間 比較が容易に行えることになります。こうした背景から、日本及び米 国の規制当局は、IFRSの適用にあたって、IFRS財団に対し、IFRS版 XBRL(IFRSタクソノミ)の充実を求めています。 日本でIFRSが適用される場合には、IFRSタクソノミを利用して財務 諸表の開示を行うことが予定されているため、今からIFRSタクソノミで どのような勘定科目や注記項目が必要となるかを研究しておくこと で、開示書類の作成がスムースになることが期待できると考えられま す。 現状 現状 (EU等) IFRS on not XBRL このように企業間の比較可能性を確保しつつ、企業独自の拡張が 認められる点が、XBRLの利点と特長であると言えます。 (日米) Local GAAP on XBRL (出典) 1. http://www.xbrl-jp.org/about/index.html 2. http://www.ifrs.org/XBRL/IFRS+Taxonomy/IFRS+Taxonomy+2010/IFRS+Taxonomy+2010.htm 3. http://www.ifrs.org/Use+around+the+world/IFRS+translations/Japanese+IFRS+Taxonomy 将来 将来 (世界共通) IFRS on XBRL 06 IFRSプロジェクト 事例紹介 • IFRSプロジェクト の進め方 ③ロードマップ の構成要素 前号(*)(2010年8月発行 IFRS 10 Minutes Vol.8参照)のこの項で は、IFRSプロジェクトにおけるロードマップの重要性と要件、情報シス テムとの関係、およびロードマップ策定の検討手順について記載しま した。 本項でも引き続きIFRSプロジェクトにおけるロードマップについて記 載しますが、今回は、まずロードマップを構成する要素、つまりロード マップの中に表記されるプロジェクトのタスクとマイルストーンについ て説明した上で、実際のロードマップの事例をご紹介します。 前号までの復習になりますが、ロードマップは、PwCで「予備調査 (Phase1)」と称しているIFRSプロジェクトの最初のフェーズでの成果 物にあたります〔図1参照〕。予備調査とは、IFRSの適用によって会社 の会計処理、業務プロセス、情報システムのどの領域に影響があり、 また財務上どのような影響を受けるのかを概要レベルで確認した上 で、その確認結果を基に、以後の実際の対応(=IFRSの適用)を具 体的に決めるフェーズです。そして、その実際の対応を時間軸と共 に表現するのがロードマップです。 〔図1〕 IFRSプロジェクト(PwCの3フェーズ・アプローチ) 予備調査 Phase 2 IFRSの適用 会計/業務プロセス/情報システム 1. 会計処理方針の検討 2. グループ会計マニュアルの作成 3. IFRSに対応するための新業務プロセス、会計システムの変革 4. IFRS要件、および経営改革の視点での取り組み事項を踏まえ た会計システム改革 5. IFRS移行日における開始残高の算出と移行 6. IFRSに関する人材教育 IFRSプロジェクトにおけるタスク Phase 1 ロードマップの構成要素(タスク) Phase 3 定着化 ロードマップ 7. IFRS適用時の影響額算定 マイルストーンの設定 ロードマップ作成作業は、前述のように列挙されたタスクに時間軸 を加えて取りまとめる作業です、この取りまとめの段階では、タスクを 並べるだけではなく、マイルストーンを明確にする必要があります。 マイルストーンは、一般にプロジェクトのスケジュールの中に設定さ れる、プロジェクトの途中段階でのゴールと言えます。つまり、いつま でに何をどのレベルで仕上げていくのかを示すものです。一方で、 IFRSプロジェクトでは、プロジェクトを構成するほとんどのメンバーに とって初めて経験するプロジェクトであるケースが多いため、プロジェ クトで定めたマイルストーン、あるいはゴールの具体的な認識がメン バー間で異なっているケースが見られます。そのため、 IFRSプロジェ クトでは、できるだけ具体的なマイルストーン、すなわちロードマップ をプロジェクト内外の関係者とのコミュニケーションツールとして使用 できるレベルで作成することが重要です。そしてマイルストーンは、下 記「マイルストーンの設定タイミング」にしたがって設定する必要があ ると考えられます。 マイルストーンの設定タイミング したがって、ロードマップは検討作業や調査等のタスクによって構 成されます。このタスクとしては、一般に以下に記す「ロードマップの 構成要素(タスク)」のような項目が並びます。 a. 各タスクの検討結果を会社の意思決定とするタイミング b. 各タスクの検討結果が統合されるタイミング c. IFRSプロジェクトでの検討結果がIFRSプロジェクト以外のプロ ジェクト等、他の取り組みに伝達されるべきタイミング (*) 本誌のバックナンバーは、PwC Japan IFRS情報提供ウェブサイト[www.pwc.com/jp/ifrs]に掲載しています。是非ご参照ください。 07 IFRSプロジェクト 事例紹介 • IFRSプロジェクト の進め方 ③ロードマップ の構成要素 (続き) ロードマップの事例 〔図2〕で示したロードマップは、実際の事例を一般化したものであ り、マイルストーンがなぜこのタイミングに設定されているのか分かり にくくなっているかもしれませんが、この事例では、左記a、b、cの3要 素が 1 ~ 4 のマイルストーンには含まれています。 1 a. 会計処理方針案をグループ本社外(子会社、会計監査人 2 3 a. 会計システムの開発(多大な投資)の意思決定のタイミング c. 会計システム設計内容を他の情報システム改革等のプロジェ クトに伝達するタイミング 4 a. IFRS適用を最終決定し、比較年度、適用年度の財務諸表作 成を開始する意思決定のタイミング b. 開発された新しい会計システムを会社の公式な会計システム として稼動させることを意思決定するタイミング 等)に提示する意思決定のタイミング a. 最終化された会計処理方針を会社として承認するタイミング また、本項で述べているマイルストーンの意義に照らすと、マイルス b. 会計処理方針の決定内容や管理会計要件等を会計システ トーンは、ロードマップ策定段階から会社の経営層を含めた関係者 ムの設計に取り込む作業の開始のタイミング に十分に周知しておくことが必要と言えます。 c. 決定された会計処理方針にしたがった販売部門等関連部門 の業務プロセス変更の開始のタイミング 〔図2〕 IFRSプロジェクトロードマップ 08 コラム IASB 公正価値測定に関するスタッフドラフトを公表 IASBとFASB 概念フレームワークの第1フェーズ完了を公表 IASBは、2010年8月19日、共同プロジェクトである公正価値測定に 関して、スタッフドラフトを公表しました。 IASBとFASBは、2010年9月28日、 IFRSと米国会計基準の概念フ レームワークを改善する共同プロジェクトの第1フェーズの完了を公 表しました。概念フレームワークの目的は、原則主義に基づいた将 来の会計基準の強固な基礎を築くことにあります。 今回のスタッフドラフトは、2009年の公正価値測定に関する公開草 案公表後の両審議会での仮決定の内容を反映したものであり、企業 が測定の不確実性分析を行う際は、インプット間の相関関係につい て予想される影響を考慮しなくてはならないという追加の要件が示さ れています。 概念フレームワークのその他の要素のうち、報告企業概念につい ては、すでに2010年3月に公開草案が公表され2010年中の最終化 が予定されているとともに、認識や測定についても今後、検討されて いく予定です。 IASBとASBJ コンバージェンスとIFRS導入について協議 IASBとASBJは、2010年9月9日、10日に、日本におけるIFRSとのコ ンバージェンスへの取り組みを促進し、IFRS導入についての準備状 況を検討するため、第12回定期協議を開催しました。両者は相互の プロジェクトの最新状況を確認するとともに、議論の多いテーマであ る金融商品(金融負債の分類及び測定、減損の測定、ヘッジ)、連 結、リース、収益認識について協議を実施しました。 IFRS 1号 初度適用の改訂 IFRS 1号は、IFRSに準拠した財務諸表を初めて適用する企業に適 用される基準であり、特定の会計事象について、例外規定や免除規 定を複数定めています。このため、関連する基準や解釈指針の新規 の公表や改訂に伴い、適宜改訂されることが必要であり、2010年8月 26日、9月30日にそれぞれ以下の改訂案が公表されました。 財務会計基準機構「単体財務諸表に関する検討会議」を設置 1. 用語の書き換え (2010年8月26日公開草案公表、コメント募集期間10月27日) 財務会計基準機構は、2010年9月29日、単体財務諸表のコンバー ジェンスを当面どのように取り扱うべきかについて、ハイレベルな意見 を聴取するために、「単体財務諸表に関する検討会議」を同機構内 に設置しました。 「認識の中止の例外規定」と「初日(Day 1) の損益」に関連して明 示されている「2004年1月1日」という日付について、「移行日」と置き 換えることが提案されています。 現在、IFRSの導入について、連結先行のアプローチを採用すること が企業会計審議会の意見書に記載されている一方、単体財務諸表 についての具体的な進め方が議論になっている背景から、同機構 が、ASBJの独立性を確保しつつ、基準設定機能の強化及びそのた めの産業界を含む各ステークホルダーによるバックアップ強化の方 策を検討することになりました。 超インフレ下の国では、一時的に財務諸表の作成にIFRSを適用で きないことがありますが、IFRSに従った財務諸表の作成を再開する際 に必要な免除規定の新設が提案されています。 こうした状況を踏まえ、財務会計基準機構が、個々の会計基準ごと に、関係者の意見を聴取検討の上、対応の方向性についての考え 方を集約することを想定するとともに、ASBJが、本検討会議の意見を 十分斟酌し最終判断を行うことが想定されています。 2. 深刻な超インフレの影響を受ける企業に関する改訂 (2010年9月30日公開草案公表、コメント募集期間11月30日) How PwC can help PwCがお手伝い できること 1. 研修サービス 3. 会計基準適用アドバイザリー・サービス IFRSの規定の解説に加え、業種特有の論点や欧州での適用事例 などを豊富に取り上げた研修会を実施いたします。また、貴社固有 の論点についてのディスカッションも行います。 新会計基準の適用方法や新規取引、特定案件への会計基準の適 用について技術的支援を行います。IFRS適用前においては、IFRS 導入を見据えたアドバイスを提供します。 2. 予備調査・コンバージョン支援サービス 4. 財務報告プロセス改善支援サービス (1) IFRSクイックレビュー 企業がIFRS適用にあたって解決すべき課題を6つの観点 (業務プロセス、システム、組織、内部統制、教育制度、管理 会計)から整理し、これらの課題について、解決の方向性と コストの概算等を提示します。 本格的な予備調査を実施せず、簡易的にIFRS適用の影響 を把握したい会社へのサービスです。 (2) 予備調査 IFRSの適用を検討するために必要な調査を行います。財務 数値への影響のみならず、業務プロセスやシステム、事業計 画などIFRS適用がもたらす影響の概要を把握し、IFRS適用 までの実行計画案を策定します。 (3) IFRSコンバージョン支援サービス IFRSの適用プロセスをいくつかのサブフェーズに区切り、 IFRS適用後の会計処理方針策定、グループ会計マニュア ル作成、必要な業務プロセス改革、システム改修/構築等、 貴社のIFRS適用を全面的に支援します。 グループ会計マニュアルの作成・導入や決算早期化、決算プロセ ス効率化・標準化など、グループレベルでの財務報告体制の改善 について、J-SOX対応を図りつつ支援します。 5. 業務プロセス改善支援サービス IFRS適用により影響を受ける広範なシステム・業務プロセスについ て、IFRS適用の実現を図る取組を支援します。また、IFRS適用を好 機に行うさまざまな業務改革についても全面的に支援します。 6. 連結システム・会計システム等導入支援サービス IFRS適用後の業務を効率的に運用するために必要な連結システ ム・会計システム及び様々な業務システムの導入を構想立案・要件 定義から実際の導入運用までを全面的に支援します。 7. IASBの動向についての情報提供サービス IASBの公表するディスカッションペーパー、公開草案等の情報およ びその解説をいち早く提供します。 PwCの3フェーズ・アプローチ Phase 1 Phase 2 Phase 3 IFRS クイック レビュー 予備調査 IFRSの適用 会計/業務プロセス/情報システム 定着化 1週間 3~6ヶ月 12~30ヶ月 6~12ヶ月 Contact us PwC Japan あらた監査法人 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース PwC Japan IFRS情報提供ウェブサイト: www.pwc.com/jp/ifrs PwC Japan IFRS プロジェクト室: 電話: 03-3546-8192 E-mail: [email protected] 責任者: 鹿島 章 担当: 為崎 直子 © 2010 PwC. All rights reserved. Not for further distribution without the permission of PwC. “PwC” refers to the network of member firms of PricewaterhouseCoopers International Limited (PwCIL), or, as the context requires, individual member firms of the PwC network. Each member firm is a separate legal entity and does not act as agent of PwCIL or any other member firm. PwCIL does not provide any services to clients. PwCIL is not responsible or liable for the acts or omissions of any of its member firms nor can it control the exercise of their professional judgment or bind them in any way. 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