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IFRS 10Minutes IASB/FASB コンバージェンス スケジュールを延期
IFRS 10Minutes Vol. 12 2011年4月 PwCが国際財務報告基準に関する最新情報を簡潔にお届けするニュースレター IASB/FASB コンバージェンス スケジュールを延期 ハイライト • IASB/FASB 主要プロジェクト延期へ IASB Work Plan更新 コンバージェンスのターゲットを2011年末まで延期へ • IASB/ FASB 両議長がインタビューで明言 • 最新のプログレスレポート公表 Work Plan (2011年4月21日版)抜粋 2011年 5月 6月 MoU Joint ✓ ✓ 金融商品(通常のヘッジ) Ballot (Target IFRS Q3) ✓ 金融商品(ポートフォリオのヘッジ) 公開草案 • リース会計: 2月~4月の動向 連結(IAS27号の置換え) IFRS10 連結(他の事業体に対する持分の開示) IFRS12 • コラム - IASB新理事に鶯地氏を指名 - ASBJ 金融商品会計基準(金融負債)の 論点の整理を公表 - G20財務相/中央銀行総裁会議でコン バージェンス結果への期待について言及 - 金融庁 2010年7月以降公表の基準を指 定国際基準に追加 Q4 Ballot (Target IFRS Q3) 金融商品(資産/負債の相殺) • IFRSプロジェクト事例紹介 - IFRSプロジェクトの進め方 Q3 金融商品(減損) • 新しい5つの連結基準(5月公表予定) • 収益認識: 2月~4月の動向 (続きは1ページ) 連結(投資会社) 公正価値測定 その他の包括利益の表示 Ballot (Target IFRS Q3) ✓ ✓ ✓ ✓ 公開草案 ✓ IFRS13 ✓ ✓ IAS1改訂 ✓ ✓ リース Ballot Target IFRS ✓ ✓ 収益認識 Ballot Target IFRS ✓ ✓ ジョイントベンチャー 退職後給付 IFRS11 ✓ IAS19改訂 ✓ 保険契約 年次改善(2009-2011) 3year Public Consultation 記号: RV: Request for View Ballot: 決議 IFRS: 最終基準 Ballot (Target IFRS Q4) 公開草案 RV ✓ What’s New 発行日 発行主体 発行物 2/25 IASB / IFRSF 2/25 ASBJ 3/1, 2 IASB / IFRSF 3/10-11 IFRIC 3/14-23 IASB / IFRSF 3/28 IASB / IFRSF 3/29 IASB / IFRSF 4/6 金融庁 4/6, 12-15 IASB / IFRSF 4/14 IASB / FASB 4/14-15 国際会議 G20 財務相/中央銀行総裁会議でコンバージェンス結果への期待について言及 【ページ 8】 4/15 IASB/FASB 新基準の発効日に関するユーザー調査を実施 4/21 IASB / IFRSF Work Planを更新 【ページ 1】 4/21 IASB / FASB プログレスレポートを公表 【ページ 1】 4/27 IASB / IFRSF IASB新理事に鶯地氏を指名 【ページ 8】 「金融商品会計基準(金融負債の分類及び測定)の見直しに関する検討状況の整理」を公表 【ページ 8】 会議: ボードミーティング March 2011 会議: IFRS Interpretations Committee Meeting 会議: ボードミーティング March 2011 Work Plan更新 【ページ 1】 会議: ボードミーティング March 2011 2010年7月以降公表の基準を指定国際基準に追加 【ページ 8】 会議: ボードミーティング April 2011 コンバージェンスのプロジェクトのスケジュールの延期を発表 【ページ 1】 会議: ボードミーティング April 2011 01 IASB/FASB 主要プロジェクト 延期へ IASB Work Plan更新 2011年4月14日、IASB、FASBそれぞれの議長(IASB 議長David Tweedie、FASB議長Leslie Seidman) は、IFRS 財団のディレクター によるインタビューのなかで、共同優先プロジェクトの完了のター ゲットを2011年末まで延期することを公表するとともに、翌週21日に は、IASB/FASBからコンバージェンスプロジェクトのプログレスレ ポートが公表されました。 両議長へのインタビューの要点 両議長はインタビューのなかで、優先順位の高いプロジェクト (リース、収益認識、金融商品、保険契約)のターゲットを、2011 年末まで延期することについて言及したとともに、以下の点につ いて強調しています。 • 2011年6月は、プロジェクトの完了の期限(デッドライン)で はなく、ターゲットであること • プロジェクトの完了には、各種のフィードバックを受領する ことが不可欠であり、現在までに、それぞれのプロジェクト について重要なフィードバックを受け取っていること • 両審議会のメンバーは、高品質の基準を策定することが引 き続き重要であると認識していること 両議長は、併せて近日中にコンバージェンスに関するプログレ スレポート(進捗報告書)をそれぞれのウェブサイトで公表すること についても言及しました(右紙面参照)。 両議長へのインタビューの要旨については、IASB、FASBそれ ぞれのWebsiteで公開されています。 (出典) IASB http://www.ifrs.org/News/Announcements+and+Speeches/IASB+FASB+in terview.htm FASB http://www.fasb.org/cs/ContentServer?site=FASB&c=Document_C&page name=FASB%2FDocument_C%2FDocumentPage&cid=1176158434105 プログレスレポートの要点 左記のインタビューを受けて、2011年4月21日、IASB/FASBよ りコンバージェンスプロジェクトについてのプログレスレポートが公 表されました。IASB/FASBによるプログレスレポートの発行は、4 回目(前回は、2010年11月)であり、主として以下の報告がされて います。 • 5つのMoUプロジェクト(連結財務諸表(他の事業体に対す る持分の開示を含む)、共同アレンジメント、退職後給付、 公正価値測定、その他の包括利益の表示)について、重 要な決定に至り、近日中に最終基準を公表予定 • 優先プロジェクトとしている3つのMoUプロジェクト(金融商 品、リース、収益認識)とジョイントプロジェクトである保険契 約について、引き続き優先的に完了を目指す • 様々なステークホルダーの意見を聞くため、コンバージェ ンスプロジェクトの期限を主として2011年末(保険について は2012年上半期)まで延長する改訂Work Planを公表 • 新しい基準の適用日は、企業に適用準備の十分な時間を 確保できる日とすることを強調 • 短期MoUプロジェクトの進捗については、ほとんどが完了 しているか、もしくは完了に近い状態であることを報告 IASB Work Planを更新 こうした動きに併せ、IASBは、2011年3月28日、4月21日にMoUプロ ジェクト項目の完了に向けてのWork Planを更新しました(表紙、4月 21日版参照)。更新後のWork Planでは、6月までのプランが月別に 詳細化されるとともに、2011年中のプランとしてIASB理事による Ballot(決議)、最終基準の公表の目標(Target)が明示されています。 02 新しい5つの 連結基準: (5月公表予定) IASBは、2011年4月21日版のWork Planのなかで、連結財務諸表 に関連する新しい5つの基準(IFRS10号 連結財務諸表、IFRS11号 共同アレンジメント、IFRS12号 他の事業体に対する持分の開示、新 IAS27号、新IAS28号)を、5月に公表予定としています。 従来の基準と新しい基準の関係 SIC12号 会計処理 会計処理 旧IAS27号 旧IAS28号 開示 会計 処理 会計処理 開示 SIC13号 IAS31号 会計処理 開示 会計 処理 (02、03ページの内容は、4月21日現在の状況であり、5月公表予 定の最終基準では、内容が変更される可能性があります)。 新IAS28号 関連会社とジョイントベンチャー • 従来のIAS28号のうち会計処理についての規定をほぼ踏襲 (開示の規定については、IFRS12号に統合) • 重要な影響力を有する投資先もしくはジョイントベンチャー(共 同アレンジメントのうち、IFRS11号に従って判定されたもの)の 会計処理(持分法)について規定 • 従来の20%以上という重要な影響力の基準は、引き続き適用 IFRS12号 他の事業体に対する持分の開示 新IAS27号 IFRS10号 個別財務諸表 連結財務諸表 新IAS28号 IFRS12号 IFRS11号 持分法 開示 共同アレンジメント IFRS10号 連結財務諸表 • 2010年9月公表のスタッフドラフト(同10月発行 10 Minutes Vol. 9で解説)の内容を基礎として、一部を変更する予定 • 「パワー」と「リターン」に基づく支配の概念を導入し、以下の全 ての要件を満たすことを要求(スタッフドラフトから変更なし) 1. 被投資企業に対するパワーを有していること 2. 被投資企業への関与によって、変動するリターン(プラスも マイナスも含む)に対する権利を有していること 3. 被投資企業のリターンの金額に影響を与えるパワーを行使 できる能力があること • 適用ガイダンスに、代理人の関係などについて、いくつかの設 例を追加予定 新IAS27号 個別財務諸表 • 個別財務諸表を作成する場合に、企業が保有している子会社、 ジョイントベンチャー、関連会社への投資の会計処理(取得原 価かIFRS9号 金融商品に従った会計処理(未適用の場合は IAS39号))と開示を規定(併せて連結に関する規定を削除) 他の企業への投資のうち、IFRS9号 金融商品の対象外の投 資(子会社、共同アレンジメント、関連会社、非連結の組成さ れた企業)について共通に適用される開示の基準 (主な開示規定) • 従来のIAS27号、IAS28号、IAS31号それぞれの開示の基準に ついての重複を排除 • 投資先の持分の本質(支配、共同支配、重要な影響)の決定 や共同アレンジメントの種類の決定の根拠となる重要な判断と 仮定の開示 • 子会社への投資に関する情報(重要な非支配持分、重要な 資産/負債へのアクセス制限、連結組成された企業に対する 持分に関連するリスク、支配を解消しない持分の変動等) • 共同アレンジメントと関連会社への投資に関する財務上の影 響、リスク等 • 非連結の組成された企業の開示(投資の性質、リスク等) • 複数投資先の開示情報の結合(より有用と考えられる場合) • 重要な関連会社、ジョイントベンチャーの要約財務情報 • 適用日 • 5つの新しい基準は、2013年1月1日以降開始事業年度からの 適用(早期適用可能)が予定されます。また、早期適用をする 場合には、5つの基準を同時に適用することが必要です。 03 IFRS11号 共同アレンジメント IAS31号とIFRS11号での共同アレンジメントの整理 ⁃ 二者以上の当事者がジョイントコントロール(共同支配)を有 する状態にある全ての共同アレンジメントに適用 IAS31 • 適用範囲 共同支配事業 共同支配資産 共同支配企業 • ジョイントコントロール(共同支配) ⁃ アレンジメントに対して契約上合意された支配の共有をいい、 支配を共有する当事者の一致した同意が必要 • 共同アレンジメントの種類 ⁃ 従前のIAS31号の3つの区分から、「ジョイントオペレーショ ン(共同営業」)と「ジョイントベンチャー」の2区分に変更 ⁃ “Separate vehicle”の有無と、その他の状況(①“Separate vehicle”の法的な形態、②契約条件、③その他の事実と状 況)を検討して双方のいずれかを判定(右図参照) IFRS11 新しい5つの 連結基準: (5月公表予定) (続き) ジョイントオペレーション (共同営業) ジョイントベンチャー 権利、義務を資産、 負債として会計処理 純資産を持分法を 適用して会計処理 なし 法的な形態、契約条件 その他の状況を検討して決定 • ジョイントオペレーション(共同営業)への投資の会計処理 - アレンジメントに対する権利と義務を資産、負債として計上 (収益、費用も認識) • ジョイントベンチャーへの投資の会計処理 - アレンジメントにおける“Separate vehicle”の存在の有無 共同アレンジメント アレンジメントに対する純資産を持分法で会計処理 • 比例連結の廃止 - あり IAS31号でジョイントベンチャーの会計処理として認められて いた持分法の適用と比例連結の適用の2つの会計処理のうち、 比例連結を廃止 (比例連結)・・・・・共同支配投資企業の財務諸表において、共同支配企 業の資産、負債、収益及び費用の各科目に対する共同支配投資企業の 持分相当額を、科目ごとに類似の項目と合算するか又は独立科目として 報告する、会計処理及び報告の方法 SIC13号の廃止 • SIC13号「共支配企業-共同支配企業による非貨幣資産の拠 出」の概念については、新IAS28号に取り込まれ、廃止予定 新しい基準の適用によって日本企業に想定される影響の一例 • 支配の概念について、潜在的議決権、他の株主の分散度合い、 一時的な支配、代理関係、重要性の判断、特別目的会社に対 する例外規定等様々な要因を考慮することで、従来の連結対象 が大きく変わる可能性があります。 • 廃止される比例連結は、従来、日本基準で適用されていなかっ たため影響は限定的ですが、ジョイントベンチャー(共同支配企 業)として会計処理してきた投資先について、IFRS11号に従った 整理を実施する必要があります。 • 連結子会社に加え、連結対象外の他の事業体に対する持分に ついても、開示事項が大幅に増える可能性があります。 04 リース会計: 2月~4月の動向 IASBとFASBは、公開草案「リース」に対するコメント(2011年2月発 行 10 Minutes Vol. 11で解説)に対して、同2月以降の審議会で、具 体的な検討(いくつかの仮決定を含む)、アウトリーチ活動による意見 募集について議論を継続しています。 リースの定義の見直しの議論(4月の仮決定) その他の項目に関する主な議論の例 項目 - 「特定の資産」は、識別可能な資産とする - 大きな資産の一部について、物理的に区分できる部分のみ 「特定の資産」になりえる(非物理的な部分(パイプラインな ど)は「特定の資産」にならない) 更新オプション (2月仮決定) • 50%超の可能性がある 場合に、更新期間に含 める 変動リース料 (4月仮決定) • 実質的に固定リース料とい える部分・指数やレートに 依存するリース料のみ含め • 期待値を算定して含める る(将来の売上に応じて変 動するリース料等はオフバ ランス) 2つのリースモデルの検討(借手)(2月/4月の仮決定) (借手、貸手双方とも) • リースごとに適用可 • 更新オプションは、行使 可能性を検討して判定 ファイナンス以外の目的 初期に多くの費用(金利)を計上 (公開草案と同様のモデル) 毎期の費用を定額で認識(現行 オペレーティングリースと同様) リースモデルの検討(貸手) • 借手と同様に区分するが、会計処理は今後検討予定 • 資産の種類ごとに会計方 針として選択 • 更新オプションは、行使さ れると仮定して判定 短期リース(12 (借手) か月以内)に 関する簡便法 • 割引前の数値をオンバラ ンス • オンバランスは不要 (3月仮決定) • リース料発生額をリース • 損益を定額法で計上 期間にわたって計上 (貸手) • ファイナンス目的とそれ以外の目的で区分(双方ともオンバラン ス)(区分基準は、現行IAS17号を踏襲) ファイナンス目的 • 更新オプションの行使に重 大な経済的インセンティブ があれば含める 購入オプション • 行使の経済的インセンティ • 行使価格をリース料に含 の行使価格 ブが重要なら行使価格を めない リース料に含める (3月仮決定) (原則2)合意した期間にわたって、特定の資産の使用を支配する 権利が与えられている - リース期間中に、①資産の使用を指図する能力、②資産の 使用から便益を享受する能力を有する、の双方の要件が必 要と考え、収益認識の基準の公開草案での「支配」の要素 を加味 その後の議論 (借手、貸手双方とも) • 公開草案で提案されているリースの定義の2つの原則(現行 IFRIC4号と同様)の見直しを検討 (原則1)契約の履行が「特定の資産」の提供の有無に依存する 「特定の資産」の定義について、以下を仮決定 公開草案 • リース料発生額をリース 期間にわたって計上 • 損益を定額法で計上 今後の動向 今後も第3四半期のBallot、第4四半期以降の最終基準の公表(表 紙参照)に向けて、 引き続き審議および各関係者からのアウトリーチ 活動がなされる予定であり、動向について引き続き留意が必要です。 05 収益認識: 2月~4月の動向 IASBとFASBの収益認識プロジェクトは、2011年1月のボードミー ティングでの仮決定(2011年2月発行 10 Minutes Vol. 11で解説) 以 後、2月以降のボードミーティングでも、公開草案:「顧客との契約か ら生じる収益」の内容と異なるいくつかの仮決定がされています。今 後も第3四半期のBallot、第4四半期以降の最終基準の公表(表紙参 照)に向けて、議論が続いていく予定です。 2011年1月以降のIASB/FASBボードミーティングでの議論 2011年2月以降の主な仮決定(協議)の例 製品保証(2月1日/2日)(仮決定) 1. 顧客が、製品保証を別個に購入するオプションを有する場合、 製品保証を独立した履行義務として収益の一部を繰延べる 2. 上記オプションを有さない場合、製品保証を費用の引当として 会計処理(公開草案では、製造物責任を除いて収益の繰延) 1月19日/20日(10 Minutes Vol.11参照) 契約獲得コスト(2月1日/2日)(仮決定) • 財及びサービスの移転の判定、契約の分割、別個の 履行義務の識別(1) 2月1日/2日 • 契約獲得のための追加コスト(販売費用等)は、回収が見込まれ 一定の条件を満たす場合に、資産として認識(公開草案では、 発生時の費用処理) • 製品保証、契約獲得コスト 支配の連続的な移転の指標(2月16日/17日)(仮決定) 2月16日/17日 • 不利な履行義務(2) • 以下のいずれかの場合、支配が連続的に移転するとみなす 1. 履行につれて、顧客が支配する資産が創造または増強される 2. 履行により転用可能な資産を形成せず、いずれかを満たす a. 各タスクの実施によって顧客が便益を得る b. 履行義務を他者に引き継ぐ場合に、再実施が不要 c. 顧客都合の契約の途中キャンセルの場合も、履行に関する 支払を受ける権利を有する 3月21日/23日 顧客の請求権が失効することによる収益の認識(2月16日/17日)(仮決定) • 貨幣の時間価値、回収可能性、不確実な対価(1) • 合理的な見積り可能であれば顧客への移転パターンに比例して 収益認識、不可能であれば顧客の権利行使がほとんど見込め なくなる(remote)時点で、収益認識(公開草案では不明確) • 別個の履行義務の識別(2)、支配の連続的な移転の指標、 契約の変更、契約の結合、契約の存在と履行義務の定義、 顧客の請求権が失効することによる収益の認識、不利な履 行義務(1) 3月1日 4月12日-15日 • 不確実な対価(2)、取引価格の配分、コストの会計処理、 ライセンスと使用権、買戻条件付き契約 4月下旬(5月)以降 • 開示、移行及び適用時期 2011年第3四半期以降 • 2011年第3四半期にBallot予定、最終基準の発行は第4四半 期をターゲット 不利な履行義務(2月16日/17日/3月1日)(仮決定) • 各履行義務単位(公開草案)でなく契約単位で不利を判断 • 不利か否かのテストは、全ての契約について実施 回収可能性(3月21日/23日)(仮決定) • 収益を総額で表示し、次の行に回収可能性の影響額を収益の 控除項目で(Contra Revenue)表示(公開草案では純額表示) 06 IFRSプロジェクト 事例紹介 • IFRSプロジェクト の進め方 ⑥(続々)タスク の実態 前々号(*)(2010年12月発行 IFRS 10 Minutes Vol.10参照)から、 IFRSプロジェクトの目的とそれぞれの目的に紐づくタスクの実態につ いての説明を開始し、前々号ではタスクAの内容を、前号ではタスク Bの内容を、それぞれ説明しました(【図表1】参照) 。今号では「タス クC IFRSの適用を契機として取り組むべき業務プロセス上、システム 上の課題と対応策の検討」について説明します。 IFRSプロジェクトでのタスク(前号までの復習) 本稿では、IFRSプロジェクトの目的とタスクを【図表1】のとおり整理 しています。 【図表1】の「タスクA IFRSに従った会計処理方針の検討」の実態 については、前々号で、IFRSに準拠することによって日本基準に 従った現行の会計処理方針を変更する必要があるか否かを判断す るための論拠を整理するタスクであることを説明しました。また、この タスクの達成には、相応の時間が必要であることを説明しました。 また、「タスクB IFRSに従った会計処理方針を実現するための業 務プロセスとシステム機能の改修点の検討」については、企業は、 IFRSの適用の影響をいたずらに過大/過小評価するべきではなく、 自社の会計処理、業務プロセスおよび情報システムのあるべき姿を 冷静に判断する必要があることを説明しました。 【図表1】 IFRSプロジェクトの目的とタスク IFRSプロジェクトの目的 特に、会計処理方針の大きな変更がない場合でも、日本基準、 IFRS双方に対応できるシステムの準備およびIFRSに従った会計処 理に慣れていない担当者が実際の業務を行えるようになるには相応 の時間が必要であることを説明しました。 タスクCの事例 タスクCは、文字通り「IFRSの適用を契機」とした経営改革と言えま す。このタスクは、会計制度として求められるものではなく、IFRSの適 用への取り組みをきっかけとして、あるいはIFRSの適用への取り組み と併せて取り組まれているタスクであり、全ての企業に当てはまる制 約はありません。しかし、実際にはIFRSの適用を契機として様々な課 題に取り組む企業が少なくないことも事実です。下に示したプロジェ クトのテーマ(例)は、実際のプロジェクトにおいて取り組まれている テーマです。 タスクCとして取り組まれているテーマ(例) 本社会計システムの改修または入れ替え グループ会社全体の会計システムの統一 グループ会社全体の勘定科目体系、および製品の品目コー ド等関連するコード体系の統一 グループ経営管理の仕組みを見直し、より統一化された経 営管理指標を導入して、タイムリーな経営判断および経営戦 略立案と実行を可能にする仕組みの整備 IFRSプロジェクトでのタスク 1 財務の視点での 目的 A IFRSに従った会計処理方針の 検討 2 業務プロセスの 視点での目的 B IFRSに従った会計処理方針を 実現するための業務プロセスと システム機能の改修点の検討 会計システムや勘定科目体系のグループ統一と併せて、 グループの経理業務プロセスを標準化し、経理業務を グループシェアード化 3 経営改革の視点で の目的 C IFRSの適用を契機として取り組む べき業務プロセス上、システム上 の課題と対応策の検討 IFRSの適用の検討過程で収益認識プロセスを分析したこと を契機とする、取引先との販売契約と実態との乖離是正、お よびより効率的な販売・物流業務の実現とその標準化 IFRSの適用の検討過程で収益認識プロセスを分析したこと を契機とする、受注案件の採算管理とリスク管理の精緻化 (*) 本誌のバックナンバーは、PwC Japan IFRS情報提供ウェブサイト[www.pwc.com/jp/ifrs]に掲載しています。是非ご一読ください。 07 IFRSプロジェクト 事例紹介 • IFRSプロジェクト の進め方 ⑥(続々)タスク の実態 (続き) タスクCの検討領域 タスクCとして取り組まれる領域は、【図表2】の白地の三角形の領 域に当たります。この領域は、IFRSと直接的な関係がない領域である 場合もあり、企業によって取り組みの範囲、コスト、期間は様々です。 【図表2】 IFRSプロジェクトのタスク領域イメージ IFRSに従った会計処理方針 の検討をする領域:タスクA IFRSに従った会 計処理方針を実 現するための業 務プロセスとシス テム機能の改修 点の検討をする 領域:タスクB IFRS IFRSの適用を契 機として取り組む べき業務プロセス 上、システム上の 課題と対応策の 検討をする領域: タスクC 業務 システム タスクCに取り組む企業は、なぜIFRSの適用というただでさえ大きな 課題への取り組みと同時に、必須でない領域への取り組みを行うの でしょうか。IFRS、あるいは会計と間接的にでも関連する課題が認識 されているのであれば、その課題と併せて取り組むことで2つの課題 を効率的に解決できるからだと言えます。その他、先送りできない喫 緊の課題が存在し、取り組まなければならない時期が偶然にIFRSの 適用への取り組み時期と重なったケース、IFRSが制度として適用さ れる前からタスクCに相当する取り組みを行っていて、後からIFRSの 適用への取り組みを従前の取り組みに組み入れたケースなど、企業 によって理由は様々ですが、企業がタスクCに取り組む理由の一つ は、二重投資の回避であると言えるでしょう。 【図表3】の通り、すでに上場企業へのIFRSの適用が強制されてい るEU諸国や2011年中に強制適用が開始される韓国でも、タスクCに 取り組み、すなわち経営管理の高度化、グローバルでの会計システ ム、経営管理制度の統一と標準化を実現し、あるいは実現のために IFRSの適用後も継続的な取り組みを行っている企業は少なくありま せん。 【図表3】 ある欧州企業のIFRSプロジェクトのスケジュール ~2005年(IFRS適用) • IFRSに従った会計 処理方針の策定 • グループ会計マ ニュアル作成 • 本社での会計シス テム改革 • 本社にてIFRSを前 提とした経営管理 制度を構築 2006年~2007年 2008年~(現在) • 本社でのIFRSに 従った会計処理へ の習熟 • グループ会社全 体での会計シス テムの統一 • 新会計システムの 稼動安定 • 勘定科目コード をグループで統 一 • 海外子会社では自 国会計基準に従っ た処理を継続し、本 社への報告時に IFRSへ組替え • 本社での経営管 理制度をグルー プ全社に適用 タスクCの意義 おそらく多くの読者の方が感じていらっしゃるとおり、タスクCは壮大 な取り組みにもなり得ます。そして取り組み範囲を拡げるほど、よく練 られたマスタースケジュール、状況に応じたスコープ/スケジュール /優先順位/プロジェクト予算の調整、グループ会社や関連部署の 参画などが必要となり、プロジェクトの推進は容易ではありません。そ こには様々なプロジェクト管理上の工夫があります。 例えば、IFRSの強制適用までの年限や、「IFRSプロジェクト」だから 経理部門の仕事であるといった概念を捨て、上記事例の企業のよう に長期的な視点で取り組む全社プロジェクトと定義するケースや、プ ロジェクト名称を変更して単なる「IFRSプロジェクト」ではないことをグ ループ内に周知しながらプロジェクトを推進している企業もあります。 IFRSの適用を制度で強制される受身の取り組みとしてではなく、IFRS を契機とした積極的な経営改革の機会として前向きな取り組みに捉 えることでベネフィットを得るタスク、これがタスクCといえます。 08 コラム IASB新理事に鶯地氏を指名 金融庁 2010年7月以降公表の基準を指定国際基準に追加 IFRS財団の評議委員会は、2011年2月25日、鶯地氏(住友商事株 式会社フィナンシャルリソーシズグループ長補佐、IFRS解釈指針委 員会委員、日本経団連IFRS導入準備タスクフォース事務局長、ASBJ アドバイザー)を、2011年7月1日からの5年間(任期3年間の再任が 可能)を期間としてIASBの理事(山田理事)の後任に指名することを 発表しました。 金融庁は、 2011年4月6日に「連結財務諸表の用語、様式及び作 成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基 準を指定する件」の一部改正を公表しました。この改正は、IASBが 2010年7月1日から12月31日に公表した国際会計基準を指定国際会 計基準として追加するものであり、以下の基準が新しく指定国際会計 基準に加えられています。 ASBJ、「金融商品会計基準(金融負債の分類及び測定)の見 直しに関する検討状況の整理」を公表 ASBJは、2011年2月25日、 「金融商品会計基準(金融負債の分類 及び測定)の見直しに関する検討状況の整理」を公表しました。 ASBJは、金融商品会計に関する国際的な会計基準の取扱い及び その動向を踏まえつつ、「金融商品に関する会計基準」の全面的な 見直しについて審議を進めている一環として、すでに、平成22年8月 に、「金融商品会計基準(金融資産の分類及び測定)の見直しに関す る検討状況の整理」を公表していますが、さらにIASBが金融負債の 分類及び測定に関する部分を含める形でIFRS9号 金融商品を改訂 /公表したこと等を踏まえ、IFRS9号とのコンバージェンスを念頭に金 融負債の分類及び測定に関する検討を進め、今回の文書の公表に 至りました。 この文書には金融負債の分類及び測定について我が国の現行の 基準とIFRS9号の比較が付録表として含まれています。ASBJは、この 文書の内容について4月25日までコメントを募集しています。 G20 財務相/中央銀行総裁会議でコンバージェンス結果へ の期待について言及 G20財務相/中央銀行総裁会議が、2011年4月14日、15日に開催 されました。この会議のなかでは、IASBとFASBの合同プロジェクトの 進捗がレビューされたとともに、IASBのガバナンスプロセスの成果に 期待する旨の合意がされました。 IFRS1号「国際財務報告基準の初度適用」(改訂)(2010年12月20日 公表) IFRS7号「金融商品:開示」(改訂)(2010年10月7日公表) IFRS9号「金融商品」(改訂)(2010年10月28日公表) IAS12号「法人所得税」(改訂)(2010年12月20日公表) 改訂後の指定国際会計基準は、2011年4月6日から適用されます。 How PwC can help PwCがお手伝い できること 1. 研修サービス 3. 会計基準適用アドバイザリー・サービス IFRSの規定の解説に加え、業種特有の論点や欧州での適用事例 などを豊富に取り上げた研修会を実施いたします。また、貴社固有 の論点についてのディスカッションも行います。 新会計基準の適用方法や新規取引、特定案件への会計基準の適 用について技術的支援を行います。IFRS適用前においては、IFRS 導入を見据えたアドバイスを提供します。 2. 予備調査・コンバージョン支援サービス 4. 財務報告プロセス改善支援サービス (1) IFRSクイックレビュー 企業がIFRS適用にあたって解決すべき課題を6つの観点 (業務プロセス、システム、組織、内部統制、教育制度、管理 会計)から整理し、これらの課題について、解決の方向性と コストの概算等を提示します。 本格的な予備調査を実施せず、簡易的にIFRS適用の影響 を把握したい会社へのサービスです。 (2) 予備調査 IFRSの適用を検討するために必要な調査を行います。財務 数値への影響のみならず、業務プロセスやシステム、事業計 画などIFRS適用がもたらす影響の概要を把握し、IFRS適用 までの実行計画案を策定します。 (3) IFRSコンバージョン支援サービス IFRSの適用プロセスをいくつかのサブフェーズに区切り、 IFRS適用後の会計処理方針策定、グループ会計マニュア ル作成、必要な業務プロセス改革、システム改修/構築等、 貴社のIFRS適用を全面的に支援します。 グループ会計マニュアルの作成・導入や決算早期化、決算プロセス 効率化・標準化など、グループレベルでの財務報告体制の改善に ついて、J-SOX対応を図りつつ支援します。 5. 業務プロセス改善支援サービス IFRS適用により影響を受ける広範なシステム・業務プロセスについ て、IFRS適用の実現を図る取組を支援します。また、IFRS適用を 好機に行うさまざまな業務改革についても全面的に支援します。 6. 連結システム・会計システム等導入支援サービス IFRS適用後の業務を効率的に運用するために必要な連結システ ム・会計システム及び様々な業務システムの導入を構想立案・要 件定義から実際の導入運用までを全面的に支援します。 7. IASBの動向についての情報提供サービス IASBの公表するディスカッションペーパー、公開草案等の情報およ びその解説をいち早く提供します。 PwCの3フェーズ・アプローチ Phase 1 Phase 2 Phase 3 IFRS クイック レビュー 予備調査 IFRSの適用 会計/業務プロセス/情報システム 定着化 1週間 3~6ヶ月 12~30ヶ月 6~12ヶ月 Contact us PwC Japan あらた監査法人 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース PwC Japan IFRS情報提供ウェブサイト: www.pwc.com/jp/ifrs PwC Japan IFRS プロジェクト室: 電話: 03-3546-8192 E-mail: [email protected] 責任者: 鹿島 章 担当: 為崎 直子 ©2011 PwC. All rights reserved. Not for further distribution without the permission of PwC. “PwC” refers to the network of member firms of PricewaterhouseCoopers International Limited (PwCIL), or, as the context requires, individual member firms of the PwC network. Each member firm is a separate legal entity and does not act as agent of PwCIL or any other member firm. PwCIL does not provide any services to clients. PwCIL is not responsible or liable for the acts or omissions of any of its member firms nor can it control the exercise of their professional judgment or bind them in any way. 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