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IFRS 10Minutes IASB/FASB 収益認識 再公開草案 公表

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IFRS 10Minutes IASB/FASB 収益認識 再公開草案 公表
IFRS 10Minutes
PwCが国際財務報告基準に関する最新情報を簡潔にお届けするニュースレター
IASB/FASB
収益認識
再公開草案 公表
ハイライト
• IASB Work Planを更新
• 収益認識:再公開草案
• 米国の動向:SECスタッフペーパー
AICPA年次総会
• IFRS Conference AICPA年次総会
ハンス フーヘルフォルスト議長のスピーチ
• IFRSプロジェクト事例紹介
- IFRSプロジェクトの課題
(グループ会社展開(前篇))
• コラム
- IASB/ASBJ 定期会合を実施
- IASB、IFRS 9号の強制適用延期を決定
- IASB、金融資産と金融負債の相殺の基
準を改訂
- IASB、IFRS 10号の経過措置を明確化
する公開草案を公表
- 企業会計審議会の開催状況
Vol. 16
2011年12月
ステップ 1
ステップ 2
ステップ 3
ステップ 4
ステップ 5
顧客との
「契約」
の識別
別個の
「履行義務」
の識別
取引価格
の算定
履行義務
への取引
価格の配分
履行義務の
充足時点で
収益を認識
収益認識の再公開草案のポイント
• コア原則には変更なし(5つのステップによる収益認識)(続きは02、03ページ)
1. 顧客との「契約」の識別
• 「契約」とは二者以上の当事者間の合意/契約の「結合」と「変更」を検討
2. 別個の「履行義務」の識別
• 財又はサービスを顧客に移転する契約上の約束(明示的、黙示的)
• 区分できる独立した「履行義務」について、財又はサービスを別々に識別
• 財又はサービスの束については、単一の履行義務として会計処理
3. 取引価格の算定
• 「期待値」ないし「最も発生の可能性が高い金額」による算定
• 信用リスクの調整(減損損失)は収益控除せず、収益に隣接する項目で表示
4. 履行義務への取引価格の配分
• 独立販売価格を基礎とした配分、残余アプローチの利用を限定的に許容
5. 履行義務の充足時点で収益を認識
• 一定の期間にわたり充足する履行義務の要件の設定
• 一時点で履行義務が移転する場合の支配の獲得の5つの指標の設定
• 「合理的に確実」と見込まれる金額に収益認識を制限
What’s New
発行日
発行主体
発行物
10/27
IASB / IFRSF
IFRS Conference ブラジル(サンパウロ)で開催 【ページ 5】
10/31
IASB / IFRSF
Work Planを更新 【ページ 1】
10/31、11/1
IASB / ASBJ
定期会合を実施 【ページ 8】
11/3-4
IFRSIC
11/3-4
SUMMIT
11/7
IASB
会議: ボードミーティング November 2011
11/10
金融庁
企業会計審議会開催 【ページ 8】
11/14
IASB / IFRSF
11/15-16
IASB
会議: ボードミーティング November 2011
11/16
SEC
スタッフペーパー:「米国会計基準とIFRSの比較」及び「実務におけるIFRSの分析」 【ページ 4】
11/24
IASB / IFRSF
IFRS Conference オーストラリア(メルボルン)で開催 【ページ 5】
12/5
SEC / AICPA
AICPA 年次総会 ワシントンで開催 【ページ 4、5】
12/13-16
IASB
12/16
IASB / IFRSF
基準改訂:IFRS 9号の強制適用の延期 【ページ 8】
12/12
12/16
IASB / IFRSF
基準改訂:金融資産と金融負債の相殺(IAS 32号の修正) 【ページ 8】
12/16
IASB / IFRSF
基準改訂:開示-金融資産と金融負債の相殺(IFRS 7号の修正) 【ページ 8】
12/20
IASB / IFRSF
Work Planを更新 【ページ 1】
12/20
IASB / IFRSF
公開草案: IFRS 10号の経過措置ガイダンス 【ページ 8】
12/22
金融庁
会議: IFRS Interpretations Committee Meeting
G20サミット、高品質な会計基準について言及
再公開草案: 顧客との契約から生じる収益 【表紙、ページ 2、ページ 3】
会議: ボードミーティング December 2011
企業会計審議会開催 【ページ 8】
01
IASB Work Plan
を更新
IASBは、2011年10月31日、12月20日にWork Planを更新しました。
最新のWork Plan(12月20日版)では、2012年のWork Planが、新たに
四半期ごとの区分に細分されました。また、Agenda Consultationや
年次改善といった将来のWork Planがより明確にされています。
10月31日版からのその他の主な変更点
• Agenda ConsultationのAgendaの決定の前にFeedback Statement
の公表予定、Round Tablesの実施予定を明示
• ヘッジ(一般、マクロ)のレビュードラフト、EDの公表時期の延期
• リースの再公開草案の公表目標の明示(2012年第2四半期)
IASB Work Plan (12月20日版)参照
2011年
2012年
Q4
Q1
MoU
Joint
再公開草案
✓
✓
Target IFRS
✓
Q2
Q3
Q4
Agenda Consultation
3year Public Consultation
FS/RT
Agenda決定
IASB Work Plan(12月X日版)の骨子
金融危機関連プロジェクト
金融商品(減損)
金融商品(一般ヘッジ)
Review Draft
金融商品(マクロヘッジ)
Target ED
✓
MoU プロジェクト
リース
収益
再公開草案
コメント期間
✓
✓
✓
✓
その他のプロジェクト
Review Draft or
Revised ED
保険契約
✓
Target
Completion
年次改善(2009-2011)
年次改善(2010-2012)
Target ED
年次改善(2011-2013)
Target ED
IFRS 1号の改訂
コメント期間
連結 投資企業
コメント期間
経過措置ガイダンス
(IFRS 10号の修正の提案)
コメント期間
✓
RT
Target IFRS
Post Implementation Review
IFRS 8号 事業セグメント
Initiate Review
IFRS 3号 企業結合
ED: 公開草案
Target Completion
Initiate Review
FS: Feedback Statement
RT: Round Tables
02
収益認識:
再公開草案
IASBは、2011年11月14日に、収益認識の新しい基準の再公開草
案「顧客との契約から生じる収益」を公表しました。再公開草案では、
5つのステップに従って収益の認識、測定を実施するという2010年6
月公表の当初の公開草案の原則的な考えを引き継いでいますが、
その後の審議を経て、複数の重要な変更が反映されています。
ステップ1 顧客との「契約」の識別
• 契約には、書面、口頭、企業の商慣習によるものを含む
• 同一の顧客と同時又はほぼ同時に締結された契約について、
一定の条件のもとで、契約を「結合」
• 契約の範囲又は価格の変更について、新たな履行義務の追加
の有無なども勘案して判断
発生可能性(A)
最も発生の可能
性が高い金額
複数の財又はサービスが、1つに束ねられているか?
(a) 財又はサービスが密接に関連し、企業は移転に伴い顧客との契
約に基づき、統合するための重要なサービスを提供している
かつ
(b) 財又はサービスの束が、契約履行のために重要な変更またはカ
スタマイズがされている
No
Yes
区別できるか?(以下のいずれかを満たす)
(a) 企業が通常、財又はサービスを別個に
販売している
(b) 顧客は、当該財又はサービスを独立し
て、又は容易に利用可能な他の資源と
一緒に利用することができる
金額(B)
(A)×(B)
40%
2,000
800
30%
1,000
300
20%
600
120
10%
0
0
確率加重平均値
• 区別できる別個の履行義務ごとに財又はサービスの収益を認識
• 一定の要件を満たす財又はサービスの束は単一の履行義務
別個の履行義務を
識別する
• 変動性ある対価を含む取引価格については、「期待値」と「最も
発生の可能性が高い金額」のうち企業の状況を描写する金額で
算定
(「期待値」と「最も発生の可能性が高い金額」のイメージ)
期待値
ステップ2 別個の「履行義務」の識別
Yes
ステップ3 取引価格の算定
1,220
• 契約に重要な財務要素が含まれている場合は、貨幣の時間価
値を反映(一年以内の影響については実務的便宜の規定あり)
• 顧客の信用リスクの影響(もしくは調整)は、収益の金額に隣接
した別個の表示科目として表示
(信用リスクの表示のイメージ)
収益
1,000
当初1,000の収益を認識し、2%の信
(20)
用リスク(債権の回収不能)を見込ん 信用リスク
でいる場合の損益計算書(包括利益 売上原価
(700)
計算書)
売上総利益
280
ステップ4 取引価格の配分
No
単一の
履行義務
(実務上の便宜)
移転パターンが同一の場合
は、単一の履行義務とできる
• 複数の履行義務を含む契約については、独立販売価格(直接
観察可能でない場合は見積り)に比例して、取引価格を配分
• 独立販売価格の見積り方法
(a) 調整後市場評価アプローチ
(b) 見積コストにマージンを加算するアプローチ
(c)残余アプローチ(独立販売価格の変動幅が著しい場合ま
たは不確実な場合に限定)
03
収益認識:
再公開草案
(続き)
ステップ5 履行義務の充足(一定の期間に充足される履行義務)
その他の主なポイント
以下の(a)、(b)のいずれかを満たす場合、一定の期間に充足される
• (不利な履行義務)
- 一定期間にわたり充足され、一年を超えて充足される履行
義務について不利テストを実施
- 不利とは、履行義務を決済するもっとも小さなコスト(履行義
務充足のための直接関連コストと退出のために支払うコスト
のいずれか小さいコスト)が取引価格を超過する場合
(a)
企業の履行により、顧客の支配する資産を創出する又は価値を高める
もしくは
(b)
企業の履行により、転用可能な資産を創出しない場合
かつ、以下のいずれかを満たす
企業の履行につれ
て、顧客が企業の
履行による便益を
同時に受け取り消
費する
他の企業が残存す
る履行義務を引き
継ぐ場合でも、既に
企業が履行した作
業を、再実施する
必要がない
企業が、現在まで
に完了した履行に
ついての支払を受
ける権利を有して
いる
ステップ5 履行義務の充足(一定時点で充足される履行義務)
以下の指標を総合的に検討して、支配の移転を判断
• 企業が資産について支払いを受ける権利を有している
• 顧客が資産の法的所有権を有している
• 企業が資産の物理的占有を移転している
• 顧客が、所有に関する重要なリスクと経済価値を有している
• 顧客が資産を検収した
合理的に確実の制限
• 企業が権利を有すると見込まれる対価の金額に変動性がある場
合、企業が認識する(その時点までの累積した)収益の金額は、
企業の権利が、合理的に確実と見込まれる(reasonably
assured)金額に制限される。
• 企業が顧客への知的財産のライセンス供与により、顧客の収益
の計上に連動して対価を受領する場合には、顧客の売上計上
まで、「合理的に確実」とはならない。
• (契約履行コスト)
- 契約に直接関連し、企業の資源を創出するか資源の価値を
増加させ、回収が見込まれるコストの資産計上を要求
• (契約獲得の増分コスト)
- 一定の要件を満たす契約獲得増分コストの資産計上を要求
• (製品保証)
- 顧客が個別に製品保証サービスを購入できる場合等には別
個の履行義務として認識するが、個別に購入できない場合
には、IAS 37号にしたがった引当金処理
• (ライセンス供与及び資産権)
- 公開草案の提案での独占的か非独占的かによる会計処理
の区別を排除し、原則として通常の財又はサービスの履行
義務と同様に、一定時点で充足する履行義務として処理
• (開示)
- 中間財務報告でも、基準の適用における重要な判断を除き、
年次財務諸表とほぼ同等な開示規定を提案
• (適用日、経過措置、早期適用)
- 2015年1月1日開始事業年度より早くはならないことを決定済
- 一定(4つ)の経過軽減措置を除いて、遡及適用を要求
- 早期適用を認める(米国会計基準(案)では、認められない)
再公開草案に対するコメントは、2012年3月13日まで募集されてい
ます。
04
米国の動向:
SECスタッフ
ペーパー
AICPA年次総会
2011年11月16日、米国SECスタッフによる 「米国会計基準とIFRS
の比較 (“A Comparison of U.S. GAAP and IFRS”)」および「実務にお
けるIFRSの分析 (“An Analysis of IFRS in Practice”)」の2つのスタッ
フペーパーが、公表されました。SECスタッフによるスタッフペーパー
の公表は、5月の「IFRSを米国の財務報告システムに組込むための
ワークプラン(“Exploring a Possible Method of Incorporation”)」
(2011年6月発行 10 Minutes Vol.13で解説)以来となります。
SECスタッフペーパー 「米国会計基準とIFRSの比較」
(対象)
• 2010年6月30日現在の米国会計基準と同年1月1日現在のIFRS
(内容)
• M
OU項目とその他のジョイントプロジェクトの状況に言及(進行中
中のジョイントプロジェクトについては分析の対象外)
• 双方の詳細ガイダンスの有無(米国基準:有/IFRS:無)と、概
念フレームワークの差異を説明
• 個別の会計基準(29項目に区分)の比
較
、分析を実施
2011年12月5日に開催されたAICPA年次総会におけるSECチー
フアカウンタントのスピーチのなかで、当初、2011年中に発表する予
定であった米国においてIFRSを米国会計基準に取り込む方法とそ
の時期の決定について、遅れる旨が言及されました。
AICPA年次総会でのSECチーフアカウンタントのスピーチの骨子
•
•
•
•
•
•
ワークプランについて、従前の進捗報告に整合した包括的な報
告書の完成のコミットを継続している
SECスタッフの報告書の作成まで、さらに数か月を要する
SECスタッフは、委員会の考察に対応するアプローチを開発中
である
多くのアジェンダがあるため、現時点で正確なスケジュールを提
示することは困難である
投資家、資本市場に最大限の便益をもたらすという理想に従い、
慎重に検討していく
5月公表のスタッフペーパーに対する反響を考慮し、反映する
SECスタッフペーパー 「実務におけるIFRSの分析」
(対象)
• 2009年のFortune Global 500社のうち、IFRSに準拠して財務諸表
表を作成している183社(SEC登録企業76社(47社は現在登録、
29社は過去登録)、SEC未登録会社の双方を含む)の直近の
年次連結財務諸表を分析(22カ国を対象、80%はEUに所在)
(内容)
• 分析の結果、SECスタッフの意見として、財務諸表は概ねIFRSに準
に準拠しているとしながら、2つの課題を指摘
課題
内容
IFRSへの
準拠
• 財務諸表の透明性や明瞭性が阻害され、企業の取引内
容及び会計処理の理解が困難なケース(会計方針等の記
記述不足、IFRSの用語と異なる用語の使用など)
• IFRSへの準拠性に疑問のあるケース(いくつかの企業)
• 最近のSEC登録企業のIFRSに準拠した財務諸表のレビューのな
• IFRSの適用の多様性により、国や業種を超えた企業の
比
較
なかでの、主なコメントについて記載(170社のSE
C登録外国会社
較
可能性が損なわれているケース
社のうち、約140社について分
析)
((考えられる原因)IFRSの規定における選択肢の存在、
比
較
可能性
特定の領域での明確なガイダンスの欠如、IFRSへの準拠
違反など)
• 国の基準設定主体や規制当局がガイダンスを発行する
ケースがあることで、比
較
可能性が、その国内では高まる一
一方、グローバルでは損なわれるケース
調査対象会社の内訳
分類
調査対象
ドイツ35社、フランス34社、英国26社、中国14社、
所在国別
スペイン11社、オランダ10社、オーストラリア9社、スイス9社、
(全183社)
イタリア8社、スウェーデン6社、ベルギー5社、その他16社
銀行38社、石油精製14社、通信電話12社、
産業別 食品及び薬品店11社、電力・ガス11社、建設10社、
自動車(部品)10社、保険9社、鉱山・石油生産6社、
(全183社) ビル資材及びガラス5社、化学5社、エネルギー5社、
医薬5社、その他(23業種)42社
(AICPA年次総会におけるIASB ハンス フーヘルフォルスト議長の
スピーチについては、右の05ページを参照)
05
IFRS Conference
AICPA年次総会
ハンス フーヘル
フォルスト議長の
スピーチ
また、12月5日に米国(ワシントン)で開催されたAICPA年次総会で、
IFRS Conferenceが、2011年10月27日、11月24日の両日に、それ
IASBのハンス
フーヘルフォルスト議長、FASBのレスリー サイドマン
ぞれ、ブラジル(サンパウロ)とオーストラリア(メルボルン)で開催され、
議長等のスピーチやパネルディスカッションがありました。
IASBのハンス フーヘルフォルスト議長をはじめとしたスピーチやパ
ネルディスカッションがありました。
IASB フーヘルフォルスト議長のスピーチからの抜粋(ワシントン)
IASB フーヘルフォルスト議長のスピーチからの抜粋(メルボルン)
• IFRSの適用の整合性の懸念は、米国に限らず、世界中で回避
できないが、基準設定機構や証券当局などとともに改善を進め
ていく。
• 仮にIFRSが米国で適用されても、SECは、現状のパワーを保
有し続ける。
• 他国で多く採用されているエンドースメントモデルのキーとなる
のは、エンドースしない場合の要件を限定することで、エンドー
スされない領域を極めて稀な場合に限ることである。
• 初めてのリエゾン(サテライト)オフィス(東京)の新設に期待。
IASB フーヘルフォルスト議長のスピーチからの抜粋(サンパウロ)
(金融商品会計のリフォーム)
• IASBとFASBのコンバージェンスの達成は非常に困難だが、決
して差異が非常に大きいわけではない。
(グローバルスタンダードの見通し)
• 会計以外よりも、会計のグローバル基準の設定が成功している
のは、グローバル資本市場の形成が不可欠なためである。
• インドと中国は米国の決定に大きく影響される。世界は、「IFRS
を適用すれば」から「いつどのように適用するか」を考える時期
に移行している。
(グローバルスタンダードの見通し)
• ビッグ4(中国、インド、日本、米国)を除くG20の大半が適用済。
• 中国の会計基準はIFRSに非常に類似し、完全適用は近い。
• インドは実質的な基準改訂の最中であり、完全適用のために、
いくつかの障害を乗り越える必要がある。
• 日本は、コンバージェンスの達成に向かい、任意適用もすでに
認められ、さらに多くの会社が適用する見込み。移行時期の議
論もあるが、まずは、適用の有無の決定を優先すべき。
• 米国は、すでに洗練された財務報告基準を長年有しているた
め、移行は、慎重に考えられる必要がある。
• 米国がグローバル会計基準を支援するとコミットすることも重要。
• 「実務におけるIFRSの分析」(左04ページ)で言及されている適用
用上の不整合は、米国基準、IFRSに関わらず存在する。
• 「米国会計基準とIFRSの比較」(左04ページ)の差異は極めて限
限定的だが、完全なコンバージェンスには、長い年月を要する。
• 金融危機の結果、透明性と投資家保護の必要性を認識、透明
性を高めるための、高品質な財務報告基準が不可欠。
(ラテンアメリカのIFRSの適用)
• ブラジル企業は、カーブアウトなしのIFRSの完全適用で国際的
に認められ、実際に、世界各地での資金調達に成功している。
• ブラジルで同時に導入された小規模企業向けのIFRS(IFRS for
SMEs)は、50万社以上の企業での適用が見込まれている。
• ラテンアメリカのその他の国でもIFRSは「共通言語」として浸透
している。
(将来の検討事項の優先順位)
① 残っているFASBとのコンバージェンスの完了
② コンバージェンス後のアジェンダの検討
③ IFRSを未だ完全にコミットしていない大きな経済圏との協議
④ IASBの独立基準設定主体としての各種機関との関係強化
注: 各スピーチの要点は、スピーチ全文の完全な翻訳ではありません。
スピーチの原文は、IASB、AICPAそれぞれのウェブサイトをご参照ください。
06
前号2011年10月号(*)では、IFRSを巡る状況の変化を受けての、
日本企業のIFRSプロジェクトの対応についてご紹介しました。今号で
は、本誌6月号からの「IFRSプロジェクト」の推進過程で直面する課題
についての連載に戻り、次号と併せて2回にわたってグループ会社
展開に関する課題と解決策について、事例を含めて記載します。
グループ会社展開の進捗状況
前号で記載の通り、現在の日本のIFRSを取り巻く状況下でも、IFRS
導入に向けたプロジェクトを推進している企業は多く存在します。当
該プロジェクトでは、IFRSの強制適用への対応を目的としているとい
うよりは、IFRSという共通の会計基準をグループ会社全体に適用する
ことによって、会計処理自体、および当該会計処理を実現するため
の業務・システムの標準化、さらにはその結果としてグループ経営管
理の統合を図ることを、より重要な目的としています。
また、多くの日本企業におけるIFRSプロジェクトでは、(3月決算会
社の場合)2015年3月期にIFRSに準拠した財務諸表の開示ができる
体制を目指していました。この場合、2013年4月に開始する2014年3
月期が比較対象年度となることから、実際にはあと1年あまりの時間
でIFRSに準拠した会計処理、そのための新しい業務プロセスとシス
テムの完成を目指していました。このようなプロジェクトを推進してき
た企業の多くでは、そろそろグループ会社展開がプロジェクトの主要
なタスクとなる時期に差し掛かっています。
いった領域では、日々の業務/システム機能が会計処理のための基
礎データを生成します。従って、IFRS適用時のグループ各社のシス
テムの状態、すなわちグループで標準化されたシステムが導入され
ているのか、あるいはグループ会社それぞれで別個のシステムが稼
働しているのかによって、グループ本社のIFRSプロジェクトが直面す
る課題は異なり、タスクの内容も様々です。IFRSプロジェクトで成し遂
げるべきタスクは、概して【図表1】の通りまとめることができます。
【図表1】グループ会社展開タスク
会計処理方針の展開
IFRSプロジェクト
事例紹介
• IFRSプロジェクト
の課題
③ グループ会社
展開(前編)
グループ会社展開のタスクと課題
一方、会計上の仕訳が定義されただけでは、あるべき会計処理は
達成されません。例えば、IFRS適用時に日本企業の業務プロセス/
システムへの影響が大きいと言われている収益認識、固定資産と
システムの展開
IFRSプロジェクトにとっての「グループ会社展開」は非常に多くの課
題を含みます。会計処理方針の検討、検討結果のグループ会社へ
の周知、およびグループ会社内での詳細な会計処理手順の検討な
どのタスクの推進にあたって、その内容は一律ではなく、グループ会
社内の経理部門の習熟度、それまでの会計処理方針の統一度など
によって、課題の内容も、課題の解決のためにプロジェクトで実施す
べきタスクの内容も大きく異なります。
予備調査
段階
IFRSに準拠した会計処理の影響が想定
される取引が存在するか否かの確認
会計処理
方針検討
段階
IFRSを基にした会計処理方針のグルー
プ各社への周知と実現可能性の確認
現場への
展開段階
IFRSを基にしたグループ会計処理マ
ニュアルの展開と、従業員に対する教育
プログラムの実行
予備調査
段階
IFRSによる業務プロセス/システムへの
影響が想定されるか否かの確認
システム
基本構想
策定段階
グループ共通システムの導入対象範
囲、導入ロードマップの作成
システム
構築段階
グループ標準システムを導入する会社、
独自システムを継続使用する会社等、
状況別のシステム対応支援
(*) 本誌のバックナンバーは、PwC Japan IFRS情報提供ウェブサイト[www.pwc.com/jp/ifrs]に掲載しています。是非ご一読ください。
07
IFRSプロジェクト
事例紹介
• IFRSプロジェクト
の課題
③ グループ会社
展開(前編)
(続き)
会計処理方針の展開における課題(事例)
A社は、グローバルに事業を展開し、事業拠点が数十カ国におよ
ぶとともに、その地域も、欧州、北米、南米、アジア、アフリカ等新興
国を含む多地域にわたっている会社です。このA社で、IFRSに基づく
会計処理方針の展開時に直面した課題をご紹介します。
予備調査段階で直面した課題
 IFRS適用時の影響調査を実施するにあたり、対象国が多く、グ
プロジェクトチームの拡大
 IFRSプロジェクトの推進のため、推進結果としてのグループ会社
全体へのIFRS適用、および経営管理統合のため、グループ本
社におけるIFRSプロジェクトだけでは限界があると判断し、各グ
ループ会社からもプロジェクトメンバーを配置
 地域ごとにIFRSプロジェクト責任者を配置し、地域内の調査、検
討、展開をリードする専任者とするとともに、地域内のミーティン
グを四半期に一度程度開催して共通理解を促進
ループ本社のプロジェクトだけでは人的リソースに限界がある
 対象国ごとにグループ会社を分類して会計処理上の影響を調
査しようとしたが、国ごとの商習慣による独特の取引形態があり、
グループ本社のプロジェクトにおいて、取引の実態を理解するこ
とが困難である
会計処理方針検討段階で直面した課題
 IFRSに準拠して、あるべきグループの会計処理方針は策定でき
たが、当該会計処理方針をグループ会社の日常的な記帳レベ
ルで実現できるのか否かが、グループ内の各社によって異なり、
統一的な展開方針の策定が困難である
現場への展開段階で直面した課題
 グループ会社が存在する国、あるいは会社によって、従業員の
会計スキル習熟度にばらつきがあり、習熟度が低い会社につい
ては、グループ会計マニュアルを理解して新しい会計処理を実
現することが難しい
課題への対応(事例)
A社では、上記課題への対応策を実施しています。この対応策は、
IFRSをグループ内で適用するために、当面は実施可能な現実的な
対応を採用しながら、グループ内で統合された経営管理実現のため
の長期的な視点を踏まえたものでした。そして、同時にグループ全
体の参画と、子会社とのコミュニケーションに時間とコストを費やすこ
とに特徴があります。
会計処理方針展開の段階的アプローチ
 グループ会社内の会計スキル習熟度、システムの状況、各国法
規制の違いから、一度に全てのグループ会社においてIFRSの
基準に準拠した会計処理を実現することにリスクが大きいと判断
 まず、IFRS適用後最初の2年間は、従来の各国の会計基準によ
る会計処理の適用、帳簿の作成を継続しながら、決算時の組替
によりIFRSへ対応する方法を採用し、この期間は、決算処理に
従来よりコストがかかることを容認
 IFRS適用3年目からはグループ各社でもIFRに準拠した財務諸
表を日常的に運用する体制とし、そのためのシステム改修、また
は新システム導入を実施
標準化への手厚いサポート
 新しい経理要員が配置された際に、国や地域に関わらず、いか
なるグループ会社でも、同じ会計処理が適用できる体制を構築
することを目標に、業務標準化を徹底することに投資
 例えば、グループ会計処理マニュアルは、標準版を英語で作成
し、各国で翻訳版を準備し、かつ紙媒体の装丁、電子化、イント
ラネットへの掲載等により、全世界のグループ会社の利便性を
高めるとともに、社員への周知を支援
また、A社では、会計処理方針のグループ会社展開だけでなく会
計システムのグループ標準化を目指していたため、システム面での
課題にも直面しました。システム面での課題については、次回のこの
項でご紹介したいと考えます。
08
コラム
IASB/ASBJ 定期会合を実施
IASB、金融資産と金融負債の相殺の基準を改訂
IASBとASBJの代表者は、2011年10月31日、11月1日に、14回目と
なる定期会合をロンドンで開催(前回は、2011年6月)しました。両者
は、IFRSと米国会計基準の改善、コンバージェンスを目標とした共同
作業について議論するとともに、IASBとFASBが取り組んでいる、以
下の個別プロジェクトについての意見交換を行いました。
IASBは、2011年12月16日に、「金融資産と金融負債の相殺(IAS
32号の修正)」を公表しました。
(金融商品)
• IASBとFASBで直近で議論されている金融資産の減損モデル
(収益認識)
• IASBとFASBより公表予定の再公開草案に向けた検討状況
(11月14日公表済:表紙、02、03ページ参照)
(リース)
• IASBとFASB より公表予定の再公開草案に向けた検討状況
(投資企業)
この改訂によって、「現在法的に強制可能な相殺権」の意味と、「あ
る種の総額決済システムが純額決済と同等と考えられる」ことが、明
確にされました。この改訂は、2014年1月1日以降開始事業年度より
適用され、遡及適用が要求されています。
金融資産と金融負債の相殺の要件については、IFRSと米国会計
基準のコンバージェンスが、完全には達成されておらず、IASBと
FASBは新たな開示規定を設けることで比較可能性を確保することと
しました。このため、併せて「開示-金融資産と金融負債の相殺
(IFRS 7号の修正)」が公表されました。
(金融資産と金融負債の相殺の議論の詳細(公開草案)について
は、2011年2月発行 10 Minutes Vol. 11で解説しています。)
IASB、IFRS 10号の経過措置を明確化する公開草案を公表
IASBは、2011年12月20日に、IFRS 10号を一部改訂する公開草案
を公表しました。今回の改訂(案)により、IFRS 10号を最初に適用す
る際の負担を軽減することが想定されます。今回の改訂は、既に
次回の会合は2012年第2四半期の早期に東京で開催する予定です。 IFRSを適用している企業のための経過措置の改訂であり、初度適用
企業向けの扱いは含まれていません。
• IASBが、2011年8月に公表した公開草案における提案内容
IASB、IFRS 9号の強制適用延期を決定
IASBは、2011年12月16日に、IFRS 9号を改訂し、強制適用時期に
ついて、当初の2013年1月1日以降開始事業年度を、2015年1月1日
以降開始事業年度に変更しました。この改訂によって、金融商品会
計基準改訂プロジェクトの減損及びヘッジ会計を含む全てのフェー
ズが、同一の強制適用日となることが想定されています。
この改訂では、IFRS 9号を適用する際に、比較財務諸表を修正再
表示する要求の軽減措置も併せて規定されています。この軽減措置
は、当初、IFRS 9号を、2012年より前の事業年度より適用する企業に
のみ認められていましたが、追加の開示を行うことで、2012年以降に
早期適用を行う全ての企業にも同様の軽減措置が認められることに
なります。
この改訂の適用時期は、IFRS 10号の適用時期と一致させることが
想定されており、2012年3月21日までコメントが募集されています。
企業会計審議会の開催状況
金融庁 企業審議会総会・企画調整部会合同会議が、2011年11月
10日、12月22日の両日に開催され、国際会計基準(IFRS)に関する
討議が実施されました。各回とも、各委員、専門委員の意見が収集さ
れましたが、特段の決定事項はありませんでした。
How PwC can help
PwCがお手伝い
できること
1. 研修サービス
3. 会計基準適用アドバイザリー・サービス
IFRSの規定の解説に加え、業種特有の論点や欧州での適用事例
などを豊富に取り上げた研修会を実施いたします。また、貴社固有
の論点についてのディスカッションも行います。
新会計基準の適用方法や新規取引、特定案件への会計基準の適
用について技術的支援を行います。IFRS適用前においては、IFRS
導入を見据えたアドバイスを提供します。
2. 予備調査・コンバージョン支援サービス
4. 財務報告プロセス改善支援サービス
(1) IFRSクイックレビュー
企業がIFRS適用にあたって解決すべき課題を6つの観点
(業務プロセス、システム、組織、内部統制、教育制度、管理
会計)から整理し、これらの課題について、解決の方向性と
コストの概算等を提示します。
本格的な予備調査を実施せず、簡易的にIFRS適用の影響
を把握したい会社へのサービスです。
(2) 予備調査
IFRSの適用を検討するために必要な調査を行います。財務
数値への影響のみならず、業務プロセスやシステム、事業計
画などIFRS適用がもたらす影響の概要を把握し、IFRS適用
までの実行計画案を策定します。
(3) IFRSコンバージョン支援サービス
IFRSの適用プロセスをいくつかのサブフェーズに区切り、
IFRS適用後の会計処理方針策定、グループ会計マニュア
ル作成、必要な業務プロセス改革、システム改修/構築等、
貴社のIFRS適用を全面的に支援します。
グループ会計マニュアルの作成・導入や決算早期化、決算プロセス
効率化・標準化など、グループレベルでの財務報告体制の改善に
ついて、J-SOX対応を図りつつ支援します。
5. 業務プロセス改善支援サービス
IFRS適用により影響を受ける広範なシステム・業務プロセスについ
て、IFRS適用の実現を図る取組を支援します。また、IFRS適用を
好機に行うさまざまな業務改革についても全面的に支援します。
6. 連結システム・会計システム等導入支援サービス
IFRS適用後の業務を効率的に運用するために必要な連結システ
ム・会計システム及び様々な業務システムの導入を構想立案・要
件定義から実際の導入運用までを全面的に支援します。
7. IASBの動向についての情報提供サービス
IASBの公表するディスカッションペーパー、公開草案等の情報およ
びその解説をいち早く提供します。
PwCの3フェーズ・アプローチ
Phase 1
Phase 2
Phase 3
IFRS
クイック
レビュー
予備調査
IFRSの適用
会計/業務プロセス/情報システム
定着化
1週間
3~6ヶ月
12~30ヶ月
6~12ヶ月
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