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図 解 でわかる! 「外 貨 建 てのれん」 はじめに

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図 解 でわかる! 「外 貨 建 てのれん」 はじめに
図 解 でわかる!
M&A 会 計 日 本 基 準 と IFRS
第 4回 「正 ののれん」、「負 ののれん」、「非 支 配 持 分 に係 るのれん」、
「外 貨 建 てのれん」
あらた監 査 法 人 公 認 会 計 士 清 水 毅
公認会計士 山田 雅治
はじめに
国 際 財 務 報 告 基 準 (以 下 「IFRS」)では、2008 年 1 月 に公 表 された国 際 財 務 報 告 基
準 第 3 号 (以 下 「IFRS3R」)の改 正 によりに「のれん」については、原 則 非 支 配 持 分 に
対 する「のれん」も計 上 することが認 められるようになりました。IFRS3R は 2009 年 7 月
1日 以 降 開 始 する事 業 年 度 より強 制 適 用 になります。IFRS では、今 回 の改 正 前 より正
の「の れん」つ い ては 償 却 せず 減 損 会 計 の みを 適 用 し、負 の「 のれん」 につい ては 一 括
PL 計 上 してきました。一 方 、2008 年 12 月 に企 業 会 計 基 準 委 員 会 から公 表 された改
正 「 企 業 結 合 会 計 基 準 」( 以 下 「 改 正 日 本 基 準 」)に おい ては 、正 の 「の れん」につい て
は、引 き続 き償 却 が求 められますが、負 の「のれん」については、IFRS に合 わせて一 括
PL 計 上 するようになりました。改 正 日 本 基 準 は 2010 年 4 月 より強 制 適 用 になります
が、2009 年 4 月 以 降 早 期 適 用 することが可 能 です。今 回 は当 該 「のれん」の会 計 処 理
について、IFRS および日 本 基 準 の改 正 点 、日 本 基 準 と IFRS の違 いについて解 説 しま
す。なお、文 中 意 見 に関 する部 分 は筆 者 個 人 の見 解 です。
1.「のれん」とは
「のれん」とは、M&A において支 払 った買 収 価 額 のうち、特 定 の資 産 に配 分 できない
部 分 をいいます。買 収 後 の取 得 原 価 配 分 (Purchase Price Allocation、以 下 「PPA」)
において、受 入 れた無 形 資 産 のうち、識 別 可 能 性 要 件 を満 たすものはそれぞれ適 当 な
科 目 により資 産 計 上 することになります(【図 表 1】参 照 )。
PPA を実 施 する際 、取 得 原 価 (買 収 価 額 )のうち有 形 ・無 形 の具 体 的 な受 入 資 産 と
しては配 分 できない部 分 がでてきます。取 得 原 価 (買 収 価 額 )に対 象 企 業 ・対 象 事 業 に
用 い ら れ てい る 具 体 的 な資 産 の 価 額 の ほ か に 、個 別 の 資 産 に 結 び つ け ら れ ない 超 過
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収 益 力 やシナジーの価 値 が含 まれているためです。
改 正 基 準 に おい て「のれ ん」は、「 被 取 得 企 業 又 は取 得 した 事 業 の 取 得 原 価 が 、取
得 した資 産 及 び引 き受 けた負 債 に配 分 された純 額 を超 過 する額 をいい、不 足 する額 は
負 ののれんという 。」 と定 義 され ており、差 額 としての概 念 であり、個 別 に 識 別 して測 定
はされません。IFRS においても、のれんは「買 収 コストと取 得 した識 別 可 能 資 産 ・負 債
及 び偶 発 債 務 の 公 正 価 値 に対 する取 得 企 業 の 持 分 との 差 異 として 発 生 する」とあり、
この点 において両 者 の差 異 はないと考 えられます
改 正 前 の 日 本 基 準 の 実 務 にお い ては 、企 業 結 合 会 計 に お い て 無 形 資 産 の 識 別 が
強 制 されておらず、会 社 の取 得 価 額 から対 象 会 社 の純 資 産 時 価 を差 し引 いた金 額 が、
そのまま「のれん」として計 上 されることが多 かったのですが、改 正 日 本 基 準 や IFRS に
おいては、研 究 開 発 費 や識 別 可 能 な無 形 固 定 資 産 を 時 価 で認 識 した 後 の差 額 が「の
れん」として計 上 されます(【図 表 1】参 照 )。
【図 表 1】 のれんと無 形 固 定 資 産
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2.のれんの認 識 ・測 定
改 正 前 の IFRS3においては、親 会 社 の投 資 額 に対 応 する「のれん」だけを認 識 して
きました。IFRS3R においては、上 記 の方 法 以 外 に、100%取 得 ではない企 業 結 合 にお
いて非 支 配 持 分 ( 日 本 基 準 の少 数 株 主 持 分 に 相 当 します)全 体 を 公 正 価 値 で測 定 す
る方 法 (「全 部 のれん方 式 」)も認 められました。この方 法 を適 用 した場 合 、非 支 配 持 分
も含 めた全 部 のれんが認 識 されます。すなわち、株 式 を取 得 した結 果 、子 会 社 となるよ
うなケースでは、従 来 のように親 会 社 の持 分 部 分 に対 応 する購 入 のれんだけを計 上 す
る の では なく 、 非 支 配 持 分 に か か わ る の れ ん も 計 上 され る こ とに なり ま す ( 【 図 表 2 】 参
照 )。なお、全 部 のれんの議 論 と前 回 説 明 した「部 分 時 価 法 」・「全 部 時 価 法 」の議 論 が
混 乱 しやすいので、【図 表 3】と比 べてみてください。
【図 表 2】 全 部 のれん方 式 (IFRS の改 正 )
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【図 表 3】 全 部 時 価 法 と部 分 時 価 法 (日 本 基 準 の改 正 )
【図 表 4】 部 分 時 価 法 ⇒全 部 時 価 法 ⇒全 部 のれん法
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3 負 ののれん
被 取 得 企 業 の取 得 原 価 が、取 得 した資 産 および引 き受 けた負 債 に配 分 された純 額
に 満 た ない 場 合 に 貸 方 にの れんす なわ ち 「 負 の のれ ん 」が 発 生 し ます 。改 正 前 の 日 本
基 準 では、その発 生 原 因 を特 定 することが通 常 困 難 であるといった理 由 で、「正 ののれ
ん」との会 計 処 理 の対 称 性 を重 視 し、「正 ののれん」と同 様 に 20 年 以 内 での規 則 的 な
償 却 を求 め、企 業 結 合 日 に全 額 を収 益 計 上 することは認 められていませんでした。しか
し、改 正 基 準 では、「負 ののれん」は IFRS と同 様 に、まず識 別 した資 産 、負 債 の公 正
価 値 を確 認 し、その後 即 時 に利 益 認 識 されることになりました。
IFRS3R では、「負 ののれん」が発 生 した場 合 にはバーゲン・パーチェスによる利 益 と
して認 識 されることになります。「正 ののれん」は資 産 として計 上 されるべき要 件 を満 たし
ているが、「負 ののれん」は負 債 として計 上 されるべき要 件 を満 たしていないとの考 え方
によるものです。IFRS3R では「負 ののれん」に該 当 する差 額 はバーゲン・パーチェスに
よるものであると考 えています 。バーゲン・パーチェスとは、売 却 側 に当 該 事 業 を時 価 よ
りも低 い価 格 で処 分 せざるを得 ないという通 常 の状 況 下 では起 こりにくい理 由 がある場
合 に発 生 する差 額 であるとする考 え方 です。IFRS では、「負 ののれん」は発 生 原 因 が
特 定 できないものを含 む算 定 上 の差 額 として、すべて取 得 日 の利 益 として処 理 すること
になっています。
ただし日 本 基 準 でも IFRS でも「負 ののれん」が生 じると見 込 まれる場 合 には、すべて
の 識 別 可 能 資 産 お よ び 負 債 が 把 握 され て い る か 、ま た そ れ ら に 対 す る 取 得 原 価 の 配
分 が適 切 に行 われているかどうかを見 直 すことが必 要 となります。この見 直 しによっても、
なお、取 得 価 額 が受 入 れた資 産 や引 受 けた負 債 に配 分 された純 額 を下 回 る場 合 には、
その不 足 額 を発 生 した事 業 年 度 の利 益 として処 理 されることになります。
現 在 、日 本 の 株 式 市 場 は 低 迷 していて 、PBR が1を 割 る 企 業 が 数 多 くあるため 、会
社 を買 収 すると、多 額 の負 ののれんが計 上 され ることになり 、改 正 基 準 を適 用 している
と、会 社 を買 ったとたんに多 額 の特 別 利 益 を計 上 することになります。
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【図 表 5】 負 ののれんについて
【図 表 6】 「のれん」まとめ 改 正 前 vs.改 正 後
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この記 事 は、『週 刊 経 営 財 務 』 2932 号 (2009 年 8 月 31 日 )にあらた監 査 法 人 として
掲 載 した もの です 。発 行 所 である 税 務 研 究 会 の 許 可 を 得 て、あらた 監 査 法 人 がウェブ
サイトに掲 載 しているものですので、ほかへの転 載 ·転 用 はご遠 慮 ください。
© (2009) PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved.
“PricewaterhouseCoopers”
refers
to
the
Japanese
firm
of
PricewaterhouseCoopers Aarata or, as the context requires, the
PricewaterhouseCoopers global network or other member firms of the network,
each of which is a separate and independent legal entity.
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