Comments
Description
Transcript
インフォメーション・ インテグレーション: 新世代の情報技術
インフォメーション・ インテグレーション: 新世代の情報技術 M. A. Roth D. C. Wolfson J. C. Kleewein C. J. Nelin 共著 ここ数年のインターネットとe-ビジネスの爆発的 普及は、エンタープライズ・アプリケーションで 利用できる情報の量と種類の急増という「2次爆発」 を引き起こしました。業界アナリストは、今後3年 間で有史以来のあらゆるデータを上回る量のデー タが生み出されると予測しています。インターネ ット・ベースのビジネス・トランザクション・モ デルの採用は、「情報の爆発」に対処するための ツールやテクノロジーの開発を大幅に上回るスピ ードで進んでおり、多くの企業では、処理すべき データの急増と多様性に既存のシステムが対処し きれないと考えています。 インフォメーション・ インテグレーションこそ、企業が今日直面してい る課題です。エンタープライズ・アプリケーショ ンは、データベース、アプリケーション・サーバ ー、コンテンツ管理システム、データウェアハウ ス、ワークフロー・システム、検索エンジン、メ ッセージ・キュー、Webクローラー、マイニング /分析パッケージ、その他のエンタープライズ・ インテグレーション・アプリケーションと情報を やりとりしなければなりません。また、各種プロ グラム・インターフェースを使用し、種々の言語 やフォーマットを理解する必要があります。さら に、複数の配信メカニズムにより生成される各種 フォーマットでデータを抽出したり、結合したり する必要もあります。データベース管理システム、 コンテンツ管理システム、中間層キャッシュ、デ ータウェアハウスなどのデータ管理システムの間 にこれまで存在した境界が曖昧になり、これらの サービスとそれらが提供するデータを全て統合し たビューを提供するプラットフォームが大いに求 められていることは明らかです。 現在の傾向がこのまま続けば、今後3年間で有史以 来のあらゆるデータを上回る量のデータが生み出 されることになり1、またインターネットの広範な 普及により、ほぼ全てのデータがURL(Uniform Resource Locator)からクリック1つでアクセスでき るようになっています。この情報の爆発は、業界 の枠を越えた素晴らしいビジネス・チャンスをも たらします。利用できる大量のデータから重要な 情報をすばやく抽出し、貴重なビジネス資産に変 えることができる企業こそ、市場を支配する上で IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 優位に立ちます。 しかし、こうした取り組みは簡単なことではあり ません。今や、エンタープライズ・システムの守 備範囲は、社内のデータ・センターの枠を越え、 お客様、サプライヤー、パートナー、電子市場に まで及んでいます。エンタープライズ・システム は、データベース、アプリケーション・サーバー、 コンテンツ・マネージメント・システム、データ ウェアハウス、ワークフロー・システム、検索エ ンジン、メッセージ・キュー、Webクローラー、 マイニング/分析パッケージ、その他のエンター プライズ・アプリケーションと情報をやりとりし ま す 。 ODBC ( Open Database Connectivity ) 、 JDBC**(Java** Database Connectivity)、Webサー ビス、Javaオブジェクト、J2EE**(Java 2 Platform, Enterprise Edition)などの多様なプログラミング・ インターフェースを必要とし、SQL(構造化照会 言 語 ) 、 XML ( Extensible Markup Language ) 、 XPath ( XML パ ス 言 語 ) 、 WSDL ( Web Services Description Language ) 、 SOAP ( Simple Object Access Protocol)など、種々のデータ・モデルや言 語を扱います。また、リアルタイム(株式相場表 示器、ニュース・ワイヤー)、現行(データベー ス)、直前(中間層キャッシュ、データベース・ レプリカ)、 履歴(データウェアハウス)など、 さまざまな時間特性にデータを結び付けます。デ ータは、多種多様な配信メカニズム(アプリケー ション、データベース、ファイル、CD-ROM、連 続的なデータ・フィード、電子メール、Webダウ ンロード)により、各種フォーマット(リレーシ ョナル表、XML文書、イメージ、ビデオ、サウン ド)で生成されます。 Copyright 2002 by International Business Machines Corporation. Copying in printed form for private use is permitted without payment of royalty provided that (1) each reproduction is done without alteration and (2) the Journal reference and IBM copyright notice are included on the first page. The title and abstract, but no other portions, of this paper may be copied or distributed royalty free without further permission by computer-based and other information-service systems. Permission to republish any other portion of this paper must be obtained from the Editor. 0018-8670/02/$5.00 2002 IBM ROTH ET AL. 1 エンタープライズ・ソフトウェア・アプリケーシ ョンにとり、今日の課題は インフォメーション・ インテグレーションです。インフォメーション・ インテグレーションとは、データ管理システム、 コンテンツ管理システム、データウェアハウス、 その他のエンタープライズ・アプリケーションの 中核要素を共通のプラットフォームに結合するテ クノロジー・アプローチです。本稿では、インフ ォメーション・インテグレーションの課題の特徴 を示し、データの急増と多様性について、また現 在市販されているデータ管理システムを透過的に 管理するためのエンドツーエンド・ソリューショ ンを提供するアーキテクチャーのコンポーネント について説明します。 プラットフォームの基礎となるのは、リレーショ ナルとネイティブのXMLデータ・ストアを提供す るだけでなく、リッチ・コンテンツ・サーバーの 「フェデレーション(連合)」にアクセスできる ようにする堅牢なデータ管理システムです。その ファウンデーション層は、数十年に及ぶデータベ ース・テクノロジーの絶え間ない発展を利用して、 堅牢なデータ管理に伴って生じる記憶、検索、ス ケーラビリティー、信頼性、アベイラビリティー の課題に対処します。インテグレーション・サー ビス層は、ファウンデーションと緊密に結合され ており、ビジネス・インテリジェンス、コンテン ツ・マネージメント、ビジネス・プロセス・イン テグレーションにおける並列テクノロジーの進歩 を利用して、複雑なエンタープライズ・アプリケ ーションの開発・管理作業を容易にします。統合 インターフェース層は、ファウンデーション層と インテグレーション層が提供する種々のサービス やデータに対し、標準ベースのプログラミング・ モデルと照会言語を提供します。 本稿の次のセクションでは、データ管理インフラ ストラクチャーとエンタープライズ・ソフトウェ ア・インフラストラクチャーの発展を簡潔に考察 します。その次のセクションでは、各業界のシナ リオを通じて、インフォメーション・インテグレ ーションの課題の範囲を示し、ソリューションの 要件の概要を述べます。その次の2つのセクション では、これらの要件を満たす次世代のエンタープ ライズ・ソフトウェア・テクノロジー・プラット フォームを示し、このプラットフォームがエンド ツーエンドのインフォメーション・インテグレー ション・ソリューションを提供するための、先に 述べた要件にどのようにして対処するかを説明し ます。そして、最後のセクションで要約します。 2 ROTH ET AL. エンタープライズ・ソフトウェア・テクノ ロジーの発展 データ管理システムは、過去30年に渡りエンター プライズ・ソフトウェア・インフラストラクチャ ーの中核をなしており 2 、図1はその発展を示した ものです。1970年代初めのリレーショナル・デー タ・モデル3、4とデータ独立性の概念の登場は、デ ータ管理業界に革命をもたらし、瞬く間にネット ワーク/階層型大規模データ管理システムに取っ て代わりました。その後20年に渡り、IBMの研究 開発チームの卓越したリーダーシップにより、記 憶・検索技法、並行性制御と回復、コスト・ベー スの最適化5などの照会処理テクノロジーにおける 重要な技術革新を通して、リレーショナル・デー タベースはハイパフォーマンス、ハイボリューム の照会処理エンジンへと変化しました。 分散 シス テムと並列処理技法は、グローバル企業が大量の 分散データを管理することを可能にしました6。拡 張性のある データベース・アーキテクチャーは、 新しいビジネス・ニーズに応じてデータ・タイプ、 アクセス方法、索引付けスキームを容易に導入す ることを可能にしました7。連合データベース・テ クノロジーは、異機種分散データ・ソースに透過 的にアクセスする強力で柔軟な手段をもたらしま した8、9。 データベース管理システム(DBMS)テクノロジー が発展してビジネス・データを管理できるように なると、ビジネス・ロジックやビジネス・プロセ スの管理作業を容易にするその他の重要なテクノ ロジーも同時に発展しました。データウェアハウ ス、データ・マイニング、OLAP(on-line analytical processing)テクノロジー 10 は、 ビジネス・インテ リジェンス を加えることにより、ビジネス・デー タに対して発見重視の分析や仮説主導の分析を行 って傾向やパターンを特定したり、「what-if」シ ナリオを実行したりする手段をもたらしました。 デジタル・ライブラリーや コンテンツ 管理システ ム11が発展して、チェックイン/チェックアウト・ サービス、権利管理、階層ストレージ・マイグレ ーションが実現され、大量のデジタル・メディア を管理できるようになりました。メッセージング・ システムやメッセージ・ブローカー12は、エンター プライズ・アプリケーション・インテグレーショ ン のためのインフラストラクチャーを提供し、独 立した各々のアプリケーションが非同期でスケー ラブルに相互通信することを可能にしました。ワ ークフロー・システム13は、ビジネス・プロセスの 自動化を支援し、受注処理業務などのプロセスを 手順を追って管理し、プロセスのタスクを適切な リソースに割り当て、自動化された手順をタイミ ングよく呼び出すインフラストラクチャーを提供 しました。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 図1 インフォメーション・インテグレーションへの発展 データ管理システムやエンタープライズ管理シス テムと同時にビジネス・アプリケーションも発展 し、双方の優れた機能を利用して、現在のほぼ全 てのビジネスの基盤となる高度なソフトウェア・ パッケージが生み出されました。従来、これらの システムを統合する作業はエンタープライズ・ア プリケーション開発者の仕事でしたが、もはやこ のモデルでは対応できなくなっています。カスタ ム・メイドのレガシー・インテグレーション・シ ステムは、インターネットの広範な普及によって 生じたスケーラビリティーや信頼性の要件に対応 することができません。システム間でデータを転 送したり、あるフォーマットから別のフォーマッ トにデータを変換したりするには、膨大な開発リ ソースやコンピューティング・リソースが必要で す。今日の「24時間365日」休みなく動き続けるグ ローバル市場で競争力を保つため、エンタープラ イズ・アプリケーションに必要とされているのは、 過去30年にわたるエンタープライズ・データ管理 の進歩を単一の統合インターフェースに結集した 新しいインフォメーション・インテグレーション・ プラットフォームです。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 多くの商用システムや学術プロジェクトが、包括 的なインフォメーション・インテグレーション・ プラットフォームの種々の側面に対処してきまし た。一般に、これらのアプローチの多くは、特定 の用途向けに最適化された専用システムを構築す るために「ゼロから」出発します。例えば、 Tamino14 やIpedo15 などの製品は、XML文書向けに 最適化されたデータ・ストアを提供することを目 的としています。同様に、データ・フェデレーシ ョンにも、しっかりした研究基盤といくつかの商 用インプリメンテーションがあります。TSIMMIS16、 DISCO17、HERMES18 、Information Manifold19 などの プロジェクトは、調停、適合、スケーラビリティ ーといった、連合データベース・テクノロジーの 多様な側面を探索する専用の照会処理システムを 構築しました。Nimble20 、Callixa21 、InfoShark22 な どの製品は、データベース・エンジンの外部にあ るデータをフェデレートします。Garlic9 や DB2* Relational Connect8 は、連合機能によって従来のリ レーショナル・データベース・エンジンを拡張し ています。DiscoveryLink*23 は、このテクノロジー を基盤にしたライフ・サイエンス・コミュニティ ー向けの商用アプリケーションです。 ROTH ET AL. 3 図2 金融サービスのシナリオ 実際に、DiscoveryLinkの成功により、商用データ ベース・システムから 始まった インフォメーショ ン・インテグレーション・アプローチの商業的な 価値と堅牢性は立証されています。図1に示すよう に、現在、世界中でDBMSテクノロジーへの投資が 大規模に行われているのには正当な理由がありま す。データベースは、従来のビジネス・データの 記憶、検索、信頼性の要件にきわめて自然でかつ 確実に対処し、種々のデータやアクセス・パター ンに容易に対応することができます。DBMSアーキ テクチャーを全てのレベルで利用し、機能強化し たプラットフォームこそ、堅牢なエンドツーエン ド・インフォメーション・インテグレーションを 実現するのに最も有利である、とIBMは考えてい ます。 課題 現在の傾向は、インフォメーション・インテグレ ーションが業界の枠を越えた課題であることを示 しています。金融サービスから製造業に至るまで の全ての業界が、インターネット・ベースのビジ ネス・モデルによりもたらされるデータの急増と 4 ROTH ET AL. 多様性、そして留まることのない要求の影響を受 けています。このセクションでは、3つの業界のシ ナリオを示しながらインテグレーションの課題を 説明し、ソリューションの一般的な要件の概要を 述べます。 金融サービス: 最初のシナリオは、いくつかの 市場調査刊行物を購読する金融サービス会社に関 す る も の で す 2 。 こ れ ら の 刊 行 物 は 、 RIXML (Research Information Exchange Markup Language: 投資調査結果を標準フォーマットに結合して、レ ポートのメタデータを記述するためのXMLボキャ ブラリー)でフォーマットされたデータを提供し ます24。レポートは、社内外の多様な提供者から得 られ、リアルタイム・メッセージ配信、電子メー ル配布リスト、Webダウンロード、CD-ROMなどの 種々のメカニズムにより提供されます。図2に、会 社全体におけるそのような調査情報の流れを示し ます。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 図3 通信のシナリオ レポートは、受領後にネイティブのXMLフォーマ ットでアーカイブされ、そのオーディオ/ビデオ・ クリップは適切なメディア・サーバーに送られま す。次いで、文書から会社名、株価、収益予測な どの重要なメタデータが抽出され、リレーショナ ル表に格納されます。この会社は世界各地に拠点 があるため、情報は複数のサイトに直ちに複製さ れます。この情報は、買い/売り/持ち越しポジ ションの変化を発見し、証券/債券トレーダーや 重要なお客様への推奨に使用されます。マイニン グ・アプリケーションにより、元の文書と抽出さ れたメタデータはさらに詳細に分析され、「合併」、 「買収」、「倒産」などのキーワードを探すこと で内容が分類され、要約されます。要約情報は、 履歴情報と結合され、社内の市場調査部門や投資 銀行部門に提供されます。これらの部門は、要約 情報をスプレッドシートやその他のドキュメント に保管されている金融情報と結合してトレンド予 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 測を行い、企業合併・買収の可能性を明らかにし ます。 通信: 他の複数の企業との合併を完了したある 通信会社は、カスタムメイドの顧客サービス・シ ステムを利用してクライアントにサポートを提供 しています。図3に示すこのシステムは、今回の合 併の一環として取得された複数のコール・センタ ーで構成されています。お客様からの電話は、担 当のセンターに転送され、記録され、オーディオ・ サーバーに格納されます。オーディオ・データは、 テキスト・ファイルにも変換され、テキスト・リ ポジトリに格納されます。電話に応対する際、サ ービス担当者は「障害報告票」を開き、それを使 用して問題解決の進捗状況を追跡します。 ROTH ET AL. 5 図4 貨物運送業務のシナリオ 担当者はまず、そのお客様に関する全ての関連情 報を呼び出しますが、これらの情報は複数のサイ トにさまざまなフォーマットで分散していたり、 複製されていたりする可能性があります。例えば、 課金情報やアカウント情報は売掛管理部門から、 技術仕様は製品開発グループからそれぞれ得られ、 どちらの部門もコール・センターとは別の場所に あるかもしれません。そうした社内の異なるサイ ト間での情報転送は、XMLを使用して行われます。 次いで、サービス担当者は問題の診断に役立つ高 度な検索エンジンを使用してトラブルシューティ ングを始めます。この検索には、キー・フレーズ と以前の障害報告票から得られた問題のカテゴリ ーが利用されます。これは、お客様からの電話の 内容から生成されたか、お客様からの手紙やフィ ールド技術員が作成したメモから抽出されたもの です。 初期診断の後、サービス担当者はフィールド技術 員にディスパッチされるキューにサービス要求を 登録し、予約番号をお客様に伝えます。フィール ド技術員用アプリケーションは、キューから要求 を削除し、適切な技術員に割り当てます。割り当 てられた技術員はモバイル・デバイスで要求を受 け取り、修理を開始します。一方、製品管理部門 は検索エンジンを使用して、よくある問題点やお 6 ROTH ET AL. 客様の使用パターンを探し、品質保証上の問題を 特定し、望ましい機能や新製品の要件を見いだし ます。 貨物運送業務: 貨物運送業者は、民間航空会社 の中から最安の貨物運賃を見つけるサービスをお 客様に提供します。図4にこのプロセスを示します。 お客様やそのアプリケーションは、XMLメッセー ジ(おそらくSOAPを使用して)を運送業者に送信 することにより貨物予約を要求します。要求が着 信すると、それを処理するワークフローが開始さ れます。ワークフローは、元の要求をアーカイブ し、その要求情報によって顧客履歴を更新します。 航空会社情報システムは、お客様の要求をその貨 物を運送できる一連の航空会社と照合し、外部の フライト・スケジュール・システムに連絡して搭 載可能なフライトを特定します。次いで、航空会 社情報システムは、各航空会社に対するWebサー ビス要求を呼び出すことにより、当該の各航空会 社に連絡して見積もりを依頼します。その回答か ら落札会社が割り出され、お客様に通知されます。 入札と回答は将来の分析のために記録され、航空 会社とのパートナーシップのモニター、よりよい 契約運賃の獲得、運送業界の傾向や新しいビジネ ス・チャンスの見極めなどに使用されます。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 インフォメーション・インテグレーションの要件: 前述のシナリオを扱うシステムは、独自のAPI(ア プリケーション・プログラミング・インターフェ ース)セットとツールを備えた各種のデータ管理 システムやエンタープライズ・アプリケーション に依存せざるを得ません。それに伴い、企業はそ れらを管理する複雑な社内統合・管理ソフトウェ アを開発しなければなりません。これら3つのシナ リオは異なる業界に関するものですが、DBMS、デ ータウェアハウス、コンテンツ・マネージメント・ システム、その他のデータ変換・統合サービスの 間にこれまで存在した境界が曖昧になっているこ とを示しています。これらのシナリオの類似点は、 堅牢なインフォメーション・インテグレーション・ プラットフォームに共通する一連の要件を示して います。 エンタープライズ・アプリケーションには、優れ たデータ・モデルとしてXMLのサポートが必要で す。リレーショナル・データ・モデルは、過去30 年に渡りビジネス・アプリケーションの原動力と なってきましたが、今やXMLがポータブル・デー タの 共通語 となっています。エンタープライズ・ インテグレーションは、XMLに大きく依存します。 XMLは、リレーショナル・モデルとは異なり、半 構造化データと非構造化データのどちらを表現す るのにも適しており、それらのデータを記述する ための標準のメタデータ表現も備えています。こ の柔軟性により、金融サービス会社は複数の発行 者からレポートを受け取ることが可能となり、貨 物運送業者は複数の航空会社と入札の交渉をする ための共通言語が利用できるようになり、通信会 社は合併によって取得した多様な顧客サポート・ システムを統合することが可能となります。 企業は、自社のエンタープライズ・アプリケーシ ョンに種々のデータ・ソースを利用しています。 金融サービス会社は、リアルタイム・データ配信、 データベース、スプレッドシート、メディア・サ ーバーなどに依存しています。貨物運送業者は、 外部のフライト・スケジュール・システムや航空 会社へのリアルタイム・アクセスに依存していま す。通信会社のアプリケーションは、複数の独立 した垂直アプリケーションにアクセスする必要が あります。これらのシナリオでは、データが複数 のソースから収集されると同時に、中央リポジト リーに統合される「情報の集中化」と、複数の独 立したソースのデータを検索の一環としてアクセ スするだけで、元のソースから移動するようなこ とはしない「フェデレーション」が利用されます。 データ・ソースによっては、スキーマに適合して いるものもあれば、情報ポータルのように適合し IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 ていないものもあります。企業は多くのソースか ら情報を受け取るため、ソースから利用可能なデ ータを記述するメタデータがデータと同様に重要 です。 今日のエンタープライズ・システムは、高度な検 索サービスやデータ変換サービスを必要としてお り、そのパフォーマンス要件は一層高まっていま す。前述のシナリオでは、多様なシステムに種々 のフォーマットで格納されたデータに対するパラ メトリック検索、全文検索、マイニング、デジタ ル資産管理サービスが必要です。現在、特定の種 類の検索を扱うための専用システムは存在します が、それぞれAPIが異なっています。しかし、統合 インターフェースにより全てのデータやサービス にアクセスできる単一のシステムがあれば、アプ リケーション開発が簡素化され、パフォーマンス が向上するはずです。 統合インターフェースにより全てのデータや サービスにアクセスできる 単一のシステムがあれば、開発が簡素化され、 パフォーマンスが向上するはずです。 前述のシナリオはまた、ビジネス・プロセスが本 質的に非同期であることも示しています。問題を 報告したお客様は予約番号に満足し、問題が修復 されるまで電話をつないで待つ必要はありません。 多忙な証券トレーダーは、情報をいちいち調べて 回るのではなく、興味のある出来事が発生したと きに通知を受けるほうを好むかもしれません。ま た、連続可用性要件とは、障害が発生してもアプ リケーションが稼働し続けなければならないこと を意味します。データ・ソースやアプリケーショ ンは、定期的に起動と終了が行われます。また、 ハードウェアやネットワークの障害によりデータ・ フィードが中断することもあります。たとえ通信 会社の顧客サービス・システムが停止しても、フ ィールド技術員は各自に割り当てられた修理作業 を続ける必要があります。貨物運送業者は、特定 の航空会社が手配できなくとも、利用可能な航空 会社と入札の交渉を行う必要があります。これら の例を見れば、メッセージング・システムとワー クフロー・システムがエンタープライズ・アプリ ケーションにとり、データ管理と同様に欠くこと のできないものであることが分かります。 ROTH ET AL. 7 図5 3層のインフォメーション・インテグレーション・アーキテクチャー さらに、これらのシナリオのアプリケーションの 複雑さは、オープン・スタンダードが不可欠であ ることを示しています。こうしたアプリケーショ ンでは、データ・ソースのホスト、管理システム、 アプリケーションが巧みに組み合わされます。イ ンターフェースを規定する標準と一貫したプログ ラミング・モデルがなければ、この動的な環境に おいて新しいソースを統合し、管理するのに必要 な労力は膨大なものとなる恐れがあり、しかもイ ンテグレーション・ソフトウェアの開発に必要な スタッフとスキルの確保に必要なコストが、シス テム自体の価値を直ちに上回ることにもなりかね ません。 8 ROTH ET AL. アーキテクチャー このセクションでは、インフォメーション・イン テグレーションの課題に対処する堅牢なテクノロ ジー・プラットフォームのための3層のアーキテク チャーについて説明します。図5に、このアーキテ クチャーを示します。ファウンデーション層は、 異なるソース、異なる形式のデータの記憶、検索、 変換をサポートします。ファウンデーション層の 上に構築されるインテグレーション層はエンター プライズ・インテグレーション・アプリケーショ ンから成り、データ・アクセス・サービスをエン タープライズ・アプリケーションとビジネス・プ ロセスに透過的に組み込むインフラストラクチャ ーを提供します。最上位層は、ファウンデーショ ン層とインテグレーション層が提供する種々のサ ービスやデータにアクセスするための、標準ベー スのプログラミング・モデルと照会言語サポート を提供します。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 図6 ファウンデーション・アーキテクチャー ファウンデーション層: 図に示すように、ファ ウンデーション層はインフォメーション・インテ グレーション・プラットフォームの中心であり、 異種データを記憶し検索するための中核サービス を提供します。ファウンデーション層は、データ・ インテグレーション機能を備えた、あらゆるレベ ルで拡張されたハイパフォーマンスDBMSエンジン を基盤としています。こうした拡張には、ネイテ ィブのデータ・ストアとしてのXML、ネイティブ のデータ問い合わせ言語 25 としてのXQueryや、外 部データがエンジンによりネイティブに管理され ているかのようにそのデータにアクセスできる連 合データ・アクセス・コンポーネントのサポート が含まれます。 図6に、このようなエンジンのコンポーネントを示 します。最下位のレベルはデータ・アクセス・コ ンポーネントであり、永続的ストレージのデータ を効率的に記憶し検索するAPIを提供します。ネイ ティブ・データには2つのデータ・アクセス・コン ポーネントが提供されます。構造化データは、リ レーショナル・データ・アクセス・コンポーネン トにより記憶、索引付け、検索が行われ、ネイテ ィブのXMLデータ・ストアは、階層XML構造の効 率的な記憶、索引付け、ナビゲートを行うルーチ IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 ンを提供する、新しいデータ・アクセス・コンポ ーネントによりアクセスされます。 ネイティブのデータ・ストア用データ・アクセス・ コンポーネントの他に、インテグレーション・エ ンジンは、外部データ用の連合データ・アクセス・ コンポーネントを備えています26。外部データベー ス、ファイル・システム、文書ストア、ゲノム・ データベース、マルチメディア・オブジェクト・ サーバーなどの多様なデータ・ソースと豊富なコ ンテンツ・プロバイダーが、このコンポーネント によって透過的にアクセスできるようになります。 外部データ・ソースには、ラッパー27を介してアク セスします。ラッパーでは、インテグレーション・ エンジンがデータを記憶・検索し、トランザクシ ョンを管理し、外部データに関する機能を実行す るための実行プランを作成することができるイン ターフェースが提供されます。統合照会サポート だけではなく、イメージ検索やマルチメディア・ ストリーミング、バイオ情報科学モデリング23など のコンテンツ固有機能も、連合データ・アクセス・ コンポーネントにより、インフォメーション・イ ンテグレーション・クライアントにとってアクセ ス可能になります。 ROTH ET AL. 9 照会コンパイラーはデータ・アクセス・コンポー ネント上に位置し、XQueryとSQL問い合わせ言語 を提供します。SQL問い合わせ言語を用いると、 データを効率的に記憶し、検索することができま す。どちらの言語を使用しても、要求が照会コン パイラーに渡され、照会コンパイラーがそれを翻 訳し、要求を処理するための実行プランを作成し ます。照会コンパイラーは、言語固有の字句アナ ライザー/パーサーを使用して要求を翻訳し、 XQGM(eXtended Query Graph Model)構造を取り 込みます。XQGMは、Starburst Query Graph Model7 (QGM)の拡張版であり、XMLデータ・モデル・ プリミティブの表示や、外部データ・ソースへの 連合アクセスなど、QGMで可能な表現より豊富な セマンティック表現が可能です。照会コンパイラ ーは、XQGMを分析し、要求を実行するためのい くつかの方法について検討し、最もコストのかか らないものからプランを選択します。分析の一部 として、照会コンパイラーは、XMLデータ・スト アの索引とナビゲーション・アルゴリズムについ て検討し、外部データ・アクセスを認識して、外 部アクセス用に効率的なプランを作成する適切な ラッパー照会プランニング・ルーチンを呼び出し ます。ランタイム実行エンジンは、選ばれたプラ ンを実行し、リレーショナル・データ・ストア、 XMLデータ・ストア、連合アクセス層とやりとり して、適切なデータを組み合わせて元の要求を満 たします。ランタイム・エンジンには、XMLデー タ・アクセス用のXPath処理オペレーター28と連合 アクセス用のオペレーターが含まれます。 照会処理やデータ・アクセス・コンポーネントの 他に、インフォメーション・エンジンは、認証、 コード・ページ管理、ロギング、回復、トランザ クション管理、WebSphere*が提供するトランザク ション・モニターへのインターフェースなど、デ ータ管理システムに必要なシステム・サービスを 提供します29。 インテグレーション・サービス層: 記憶と検索 レベルのデータ・インテグレーションでは、今日 のエンタープライズ・アプリケーションに対して 十分とはいえません。複数のソースや複数の形式 のデータへのアクセスよりさらに重要なことは、 おそらく、 どの 情報を利用することができ、それ を どのように 利用するかを知ることでしょう。イ ンテグレーション層は、利用できる大量の情報を ナビゲートし、エンタープライズ・アプリケーシ ョンに有効なコンテキストにそれを配置するため のインフラストラクチャーを提供します。インテ グレーション層が提供する主なサービスを次に示 します。 メタデータ: エンタープライズ・アプリケーシ ョンが、ファウンデーション層を介してアクセス できる多様なデータ・ソースを十分に利用するに は、どのようなコンテンツやサービスが利用でき 10 ROTH ET AL. るかを示すメタデータが非常に重要になります。 このようなメタデータは、ファウンデーション層 が管理し、インテグレーション層は、クライアン ト・アプリケーションによるナビゲーション用の 情報をカプセル化し、要約します。このアプロー チにより、クライアント・アプリケーションは、 同じAPIと照会言語によって、メタデータとベース・ データの両方を照会することができます。 メタデータには2種類あります。システム・メタデ ータは、リソースとそのリソース上で実行できる サービスを示し、 アプリケーション ・メタデータ は、データ・オブジェクトと、それが他のオブジ ェクトにどのように関係しているかについてのド メイン固有の知識を提供します。例えば、システ ム・メタデータには、データ・ソース、関数シグ ニチャー、データ形式、索引情報についての情報 が含まれます。これらは、システムがベース・デ ータの管理や要求処理を行うために使用しますが、 利用できるコンテンツやサービスをダイナミック に発見するクライアント・アプリケーションにも、 価値ある情報源となりえます。存在論、スキーマ・ インテグレーション・テクノロジー、ツールは、 関連するドメインの異なるアプリケーションのデ ータを共通のスキーマにマッピングするために使 用することができます30-32。アプリケーション・メ タデータは、多くの場合、データに関するドメイ ン固有の注釈で構成されており、ユーザーはそれ らを使用することにより、データとそのデータが 他のデータにどのように関連しているかをより適 切に理解することができます。それらはまた、デ ータをある表現から別の表現に変換したり、ユー ザーの検索を興味のあるオブジェクトに集中させ る能力を向上したりするのに役立ちます。金融サ ービス・シナリオでは、調査レポートで示される 業界、企業、アナリストのリストなどのデータが アプリケーション・メタデータの例です。スキー マ・マッピングとスキーマ・インテグレーション がメタデータ管理の鍵となります。 コンテンツ管理サービス : エンタープライズ・ アプリケーションが、複数のデジタル資産からな る複雑なビジネス・オブジェクトを作成、保管、 操作する際、多くの場合アプリケーション・メタ データが生じます。例えば、金融サービス調査レ ポートは、XML文書、複数のPDF(ポータブル文 書形式)ファイル、オーディオ・クリップかビデ オ・クリップから作られます。通信の障害報告票 は、顧客アカウント情報、オーディオ・クリップ、 複数のテキスト文書から作られます。インテグレ ーション層は、チェックイン/チェックアウト・ サービス、バージョン管理、アクセス管理とデジ タル権利管理、階層ストレージ・マイグレーショ ン・サービスなどのオブジェクトやコンポーネン トを管理する中核サービスを提供します33。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 図7 インテグレーション検索サービス インテグレーション層は、メディア・ストリーミ ングやドキュメント・レンダリング、イメージ検 索など、デジタル資産に関連したコンテンツ固有 のアクションを備えた大規模なデジタル資産のた めの URLアドレッシング 機能を提供します。クラ イアント・アプリケーションは、メタデータを照 会することにより興味のあるオブジェクトを検索 することができ、インテグレーション・エンジン が、検索に適合するオブジェクトのURLを戻しま す。その後、クライアントがURLによってオブジ ェクトに直接アクセスし、操作します。 照会コンパイラーは、こうした言語構成を利用し て、組み合わされた検索照会を最適化することが できます。最後に、ファウンデーション層に組み 込まれたネイティブのマイニング・アルゴリズム が、機能抽出、要約、分類サービスを提供し、こ れらのマイニング・サービスも照会言語によって 呼び出すことができます。さらに、マイニング・ アルゴリズムをファウンデーション層に組み込む ことにより、照会コンパイラーはこれらの検索を 最適化することができ、その結果優れたパフォー マンスがもたらされます。 テキスト検索とデータ・マイニング : 非構造化 情報をエンタープライズ・アプリケーションに利 用するには、分析・分類を行わなければなりませ ん。また、リアルタイムの決定には、応答の適時 性が品質の鍵となる要素です。インテグレーショ ン・サービス層は、ファウンデーション層インフ ラストラクチャーと緊密に結合され、統合検索の ためのいくつかの機能を提供することによりこう した分析を可能にします。 共通のインターフェースや照会言語による統合検 索、マイニングの主な利点は、データの 使用可能 性 です。例えば、テキスト検索と機能抽出をデー タベース・トリガーと組み合わせることにより、 不明なコンテンツのデータを分析し、関係者に迅 速に転送することができます。 統合検索機能を図7に示します。ファウンデーショ ン層に組み込まれた最先端のテキスト索引付けエ ンジンは、構造化データ、XML文書、ユーザー定 義の構造など、統合データに対するロー・テキス ト検索のためのインフラストラクチャーを提供し ます。2つめの統合検索は、照会言語構成により、 1つの照会でテキスト検索とパラメトリック検索を 透過的に組み合わせます。単一言語に対するプロ グラミングの利点に加え、このアプローチにより、 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 ワークフロー、メッセージング、ビジネス・プロ セス・インテグレーション: 常に利用可能な環 境で稼働するグローバル企業には、スケーラブル で耐障害性を有するビジネス・アプリケーション を開発するための非同期通信とメッセージングが 必要です。インテグレーション・サービス層は、 ワークフロー・エンジンを使用して、保証された メッセージ・デリバリーをデータ操作内で統合す る、長期実行のデータ集約アプリケーションとネ イティブ関数の透過的なスケジューリングし管理 を行います。 ROTH ET AL. 11 アプリケーション・インターフェース: アプリ ケーション・インターフェース層は、ファウンデ ーション層とインテグレーション層が提供するデ ータやサービスにアプリケーションがアクセスし 操作できるようにするインターフェースを提供し ます。この層は、複数のAPI、照会言語、最大限の 柔軟性を実現するプログラミング・モデルをサポ ートします。アプリケーションの要件やプログラ マーの設定により、XML文書やXML文書フラグメ ントなど、構造化データ・モデルに従ってデータ を検索することができます。こうしたアプローチ の詳細を以下に示します。 プログラミング・インターフェース : アプリケ ーション・インターフェース層は、組み込みSQL、 ODBC34 、JDBC35 を介して各種プログラミング言語 を使用する、従来のデータベース・プログラミン グを完全にサポートします。これらのAPIには、 XMLデータやリレーショナル・データをサポート する拡張が含まれます36。ODBCやJDBC、その他の 一般的なデータベースAPIは本質的に同期したもの であり、継続的に利用できないデータ、待ち時間 の長いデータ・アクセス、あるいは情報フローの 複数のソースやターゲットを処理するアプリケー ションには適していません。このような種類のア プリケーションでは、アプリケーション層は、非 同期環境向けのアプリケーションの構築ツールだ けでなく、メッセージング 12やWebサービス 37・プ ログラミング・モデルも提供します。 照会言語 : SQLは、構造化データの検索に非常 に強力な言語として実証されています。また、 XQuery25 は、半構造化および非構造化データを照 会するための言語として確立しつつあります。ア プリケーション層はどちらの言語もサポートして おり、いずれかを使用して、SQLデータかXMLデ ータとしてファウンデーション層がサポートする 連合コンテンツにアクセスすることができます38。 照会は、リレーショナル表のデータ、XMLストア、 外部サーバーから検索されるデータを透過的に組 み合わせることができます。SQLを使用してXML データを検索するアプリケーションでは、特定の データ行の列の値として文書または文書フラグメ ントが戻されます。XQueryを選択してリレーショ ナル・データにアクセスするアプリケーションで は、アプリケーション層は、1つの表か複数の表の XMLビューを提供し、照会結果は、このビューに より定義されたタグ付けを持つXML文書として戻 されます。 ソリューション それでは、金融サービス・シナリオに戻り、本稿 で説明したアーキテクチャーがインフォメーショ ン・インテグレーションの課題にどのように対処 するのかを見てみましょう。図8は、投資銀行部門 向けのプラットフォームに構築されたポータル・ アプリケーションを示します。このポータルは、 12 ROTH ET AL. トレーディング部門の「朝のミーテング」の要約 など、外部ベンダーから購入した、または社内の 他の部門が作成した市場調査レポートへのアクセ スを提供します。 図8は、ニューヨークのトレーディング部門が作成 した、朝のコールを要約したXML文書のパスを追 跡したものです。文書には、アナリスト、企業、 業界の名前などコールに関するメタデータを提供 するRIXMLセクションが含まれます。また、オー ディオ・クリップや、コールの内容を複数の言語 で翻訳したいくつかのPDFファイルもあります。 図8の左側は、朝のコールに関する文書の到着を示 します。このインフォメーション・インテグレー ション・プラットフォームは、プログラミング・ インターフェースに組み込まれた非同期リスナー によりレポートを受け取り、その到着後すぐにワ ークフロー・プロセスを開始します。ワークフロ ーの最初のステップでは、元のXML文書をネイテ ィブのXMLストアに保管し、ソース、形式、文書 へのアクセス権に関する情報をシステム・メタデ ータ・ストアに保管します。ワークフローの次の ステップは、索引付けとマイニング・サービスを 呼び出し、朝のコール内容の索引付けし、分類し、 要約を行います。3番目のステップは、PDFファイ ルを抽出し、それらを文書サーバーに転送し、フ ァイルの言語情報をシステム・メタデータ・スト アに記録します。最後のステップでは、オーディ オ・クリップを抽出し、それをストレージ用のス トリーミング・メディア・サーバーに転送します。 図8の右側は、朝のコールと、いくつかの別の朝の コール、業界解説、企業レポートなど、いくつか の他の文書にアクセスするポータル・アプリケー ションを示します。アプリケーションは、最近受 け取った文書に関するXQuery要求を発行し、Web ページに文書の要約を表示します。システム・メ タデータに対するアクセス管理は、XQuery要求処 理の一部として発生するため、アプリケーション がアクセス権を持っている文書のみが検索されま す。戻されるXML文書のコンテンツは、ファウン デーション層の種々のストレージやアクセス・コ ンポーネントから引き出されます。例えば、シス テム・メタデータは文書のソースと構造に関する 情報を提供し、文書の種類と要約は、ワークフロ ー・プロセスのステップで抽出されたマイニング 情報から分かります。インテグレーション・エン ジンは、システム・メタデータとコード・ページ から文書に関連する正確なPDFファイルを引き出 し、ポータル・アプリケーションが連合アクセス・ コンポーネントにより文書サーバーのファイルを 検索するために使用するURLを算出します。同様 に、インテグレーション・エンジンは、ポータル・ アプリケーション用の朝のコールのオーディオ・ クリップに対するURLを作成し、メディア・サー バーのオーディオのストリーミングに使用します。 IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 図8 金融サービスのシナリオのためのインフォメーション・インテグレーション 結論 エンタープライズ・ソフトウェア業界は革命の真 っ只中にあり、エンタープライズ・アプリケーシ ョン開発は岐路に立たされています。単一ユニッ トから成るメインフレームがバック・オフィスの クリーン・ルームで孤軍奮闘するような時代は過 ぎ去りました。今日のエンタープライズ・アプリ ケーションの課題は、企業を越え、インターネッ トを越えて、利用可能な大量のデータをできる限 り迅速に統合し、新たな見解や新たなビジネス・ IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 オポチュニティーをもたらす情報資産に変えるこ とです。本稿で説明したインフォメーション・イ ンテグレーション・テクノロジー・プラットフォ ームのコンポーネントは、数十年に及ぶエンター プライズ・データ管理インフラストラクチャーの 進展を利用し、インフォメーション・インテグレ ーションのための堅牢で統一されたソリューショ ンを提供します。 *IBMの商標または登録商標。 **Sun Microsystems, Inc.の商標または登録商標。 ROTH ET AL. 13 Cited references 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. P. Lyman, H. Varian, A. Dunn, A. Strygin, and K. Swearingen, "How Much Information?" see http://www.sims. berkeley.edu/research/projects/how-much-info/. M. Roth and D. Wolfson, "From Data Management to Information Integration: A Natural Evolution," http://www7b. software.ibm.com/dmdd/library/techarticle/ 0206roth/0206roth.html. E. Codd, "ARelational Model of Data for Large Shared Data Banks," Communications of the ACM 13, No. 6, 377-387 (1970). M. M. Astrahan, M. W. Blasgen, D. D. Chamberlin, K. P. Eswaran, J. Gray, P. P. Griffiths, W. F. King, R. A. Lorie, P. R. McJones, J. W. Mehl, G. R. Putzolu, I. L. Traiger, B. W. Wade, and V. Watson, "System R: A Relational Approach to Database Management," ACM Transactions on Database Systems 1, No. 2, 97-137 (1976). P. Selinger, M. Astrahan, D. Chamberlin, R. Lorie, and T. Price, "Access Path Selection in a Relational Database Management System," Proceedings, ACM SIGMOD International Conference on Management of Data, Boston, MA (May 30-June 1, 1979), pp. 23-34. R. Williams, D. Daniels, L. Haas, G. Lapis, B. Lindsey, P. Ng, R. Obermarck, P. Selinger, A. Walker, P. Wilms, and R. Yost, R*: An Overview of the Architecture, IBM Research Report RJ3325, IBM Research Laboratory, San Jose, CA (December 1981). L. M. Haas, W. Chang, G. M. Lohman, J. McPherson, P. F. Wilms, G. Lapis, B. Lindsey, H. Pirahesh, M. J. Carey, and E. Shekita, "Starburst Mid-Flight: As the Dust Clears," Transactions on Knowledge and Data Engineering 2, No. 1, 143-160 (1990). UDB Relational Connect, see http://www-3.ibm.com/ software/data/db2/relconnect/. M. Tork Roth, P. Schwarz, and L. Haas, "An Architecture for Transparent Access to Diverse Data Sources," Component Database Systems, K. R. Dittrich and A. Geppert, Editors, Morgan Kaufmann Publishers, San Francisco, CA (2001), pp. 175-206. W. F. Cody, J. T. Kreulen, V. Krishna, and W. S. Spangler, "The Integration of Business Intelligence and Knowledge Management," IBM Systems Journal 41, No. 4, 697-713 (2002, this issue). IBM Content Manager, see http://www-3.ibm.com/software/ data/cm/library.html. IBM MQSeries Integrator 2.0: The Next Generation Message Broker, see http://www-3.ibm.com/software/ts/mqseries/ library/whitepapers/mqintegrator/msgbrokers.html. F. Leymann and D. Roller, "Using Flows in Information Integration," IBM Systems Journal 41, No. 4, 732-742 (2002, this issue). See http://www.softwareag.com/tamino/. Ipedo, see http://www.ipedo.com. H. Garcia-Molina, J. Hammer, K. Ireland, Y. Papakonstantinou, J. Ullman, and J. Widom, "Integrating and Accessing Heterogeneous Information Sources in TSIMMIS," Proceedings, AAAI Symposium on Information Gathering, Stanford, CA (March 27-29, 1995), pp. 61-64. A. Tomasic, R. Amouroux, P. Bonnet, O. Kapitskaia, H. Naake, and L. Raschid, "The Distributed Information Search Component (Disco) and the World Wide Web," Proceedings, ACM SIGMOD Conference, Tuscon, AZ (May 13-15, 1997), pp. 546-548. S. Adali, K. Candan, Y. Papakonstantinou, and V. S. Subrahmanian, "Query Caching and Optimization in Distributed Mediator Systems," Proceedings, ACMSIGMOD Conference on Management of Data, Montreal, Canada (June 4-6, 1996), pp. 137-148. 14 ROTH ET AL. 19. A. Levy, A. Rajaraman, and J. J. Ordille, "Querying Heterogeneous Information Sources Using Source Descriptions," Proceedings, 22nd International Conference on Very Large Data Bases, Bombay, India (September 3-6, 1996), pp. 251-262. 20. See http://www.nimble.com. 21. Callixa, see http://www.callixa.com. 22. Infoshark, see http://www.infoshark.com. 23. DiscoveryLink, see http://www-3.ibm.com/solutions/ lifesciences/discoverylink.html. 24. RIXML Specification Users Guide & Data Dictionary Report, see http://www.rixml.org. 25. D. Chamberlin, J. Clark, D. Florescu, J. Robie, J. Sime´on, and M. Stefanescu, XQuery 1.0: An XML Query Language, W3C Working Draft (April 2002). Available at http://www.w3.org/TR/xquery/. 26. L. M. Haas, E. T. Lin, and M. A. Roth, "Data Integration Through Database Federation," IBM Systems Journal 41, No. 4, 578-596 (2002, this issue). 27. M. Tork Roth and P. Schwarz, "Don't Scrap It, Wrap It! A Wrapper Architecture for Legacy Data Sources," Proceedings, 23rd Conference on Very Large Data Bases, Athens, Greece (August 26-29, 1997). 28. See http://www.w3.org/TR/xpath. 29. See http://www-3.ibm.com/software/info1/websphere/. 30. C. A. Goble, R. Stevens, G. Ng, S. Bechhofer, N. W. Paton, P. G. Baker, M. Peim, and A. Brass, "Transparent Access to Multiple Bioinformatics Information Sources," IBM Systems Journal 40, No. 2, 532-551 (2001). 31. S. Ram and V. Ramesh, "Schema Integration: Past, Current and Future," Management of Heterogeneous and Autonomous Database Systems, A. Elmagarmid, M. Rusinkiewicz, and A. Sheth, Editors, Morgan Kaufmann Publishers, San Francisco, CA (1999), pp. 119-155. 32. M. Hernandez, R. Miller, and L. Haas, "Clio: A Semi-Automatic Tool for Schema Mapping," Proceedings, ACM SIGMOD Conference, Santa Barbara, CA (May 21-24, 2001). 33. A. Somani, D. Choy, and J. C. Kleewein, "Bringing Together Content and Data Management Systems: Challenges and Opportunities," IBM Systems Journal 41, No. 4, 686-696 (2002, this issue). 34. See http://www.microsoft.com/data/odbc/default.htm. 35. See http://java.sun.com/products/jdbc/. 36. A. Eisenberg and J. Melton, "SQL/XML and the SQLX Informal Group of Companies," SIGMOD Record 30, No. 3, 105-108 (2001). 37. S. Malaika, C. J. Nelin, R. Qu, B. Reinwald, and D. C. Wolfson, "DB2 and Web Services," IBM Systems Journal 41, No. 4, xxx-xxx (2002, this issue). 38. J. Funderburk, S. Malaika, and B. Reinwald, "XMLProgramming with SQL/XML and XQuery," IBM Systems Journal 41, No. 4, xxx-xxx (2002, this issue). Accepted for publication June 14, 2002. Mary A. Roth IBM Software Group, Silicon Valley Laboratory, 555 Bailey Avenue, San Jose, California 95141 (electronic mail: [email protected]). Ms. Roth is a senior engineer and manager in the Database Technology Institute for e-Business at IBM's ROTH ET AL. IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 576 Silicon Valley Lab. She has over 12 years of experience in database research and development. As a researcher and member of the Garlic project at IBM's Almaden Research Center, she contributed key advances in heterogeneous data integration techniques IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 and federated query optimization and led efforts to transfer Garlic support to DB2. Ms. Roth is leading a team of developers to deliver a key set of components for Xperanto, IBM's information integration initiative for distributed data access and integration. Daniel C. Wolfson IBM Software Group, 11501 Burnett Road, Austin, Texas 78758 (electronic mail: [email protected]). Mr. Wolfson is a Senior Technical Staff Member and manager in the Database Technology Institute for e-Business. With more than 15 years of experience in distributed computing, his interests have ranged broadly across databases, messaging, and transaction systems. He is a lead architect in the information integration area, focusing on DB2 integration with WebSphere, MQSeriesÒ, work-flow, Web services, and asynchronous client protocols. James C. Kleewein IBM Software Group, Silicon Valley Laboratory, 555 Bailey Avenue, San Jose, California 95141 (electronic mail: Mr. Kleewein is a [email protected]). Distinguished Engineer working in database architecture, strategy, and technology at theIBMSilicon Valley Laboratory. He has worked forIBM in the database business for the last 15 years. His technical expertise can be seen across a wide range of IBM data management products, including IMSTM, DB2/MVS, DB2/390, DB2 sysplex data sharing, DB2 Spatial Extender, DataJoinerÒ, and DiscoveryLink. Mr. Kleewein is a lead architect for Xperanto, focusing on expanding the role of DB2 from a structured data store to a structured and semistructured data store by IBM SYSTEMS JOURNAL, VOL 41, NO 4, 2002 addingXML capabilities to the DB2 engine. Constance J. Nelin IBM Software Group, 11501 Burnett Road, Austin, Texas 78758 (electronic mail: [email protected]). Ms. Nelin is a Senior Technical Staff Member in the IBM Database Advanced Technology area. She has worked for IBM since 1987, with a focus on database application development support and tooling. She has responsibility for application development tooling strategy, architecture, and development for data management. This covers the application development support for the full DB2 family spanning the areas of core relational database, federated database, XML, Web services, and messaging features. 本資料中で参照されているIBM製品またはサービスは、IBMが事業を営む全ての 国でこれらを利用可能にする意図があることを示すわけではありません。 International Business Machines Corporationはこの資料を現状のまま提供しま す。権利の不侵害、商品性および特定目的への適合性に関する黙示の保証を含 め、いかなる保証も提供されません。 本書に記載されている情報には技術的に不正確な記述やタイプミスが含まれて いる場合があります。IBMは予告なしに、随時、この文書に記載されている製品 またはプログラム、あるいはその両方に対して、改良または変更、あるいはそ の両方を行うことができます。 本資料に記載されているすべてのパフォーマンス・データは制限された環境で 測定されたものであり、それぞれのお客様固有の動作環境で得られる結果とは 大きく異なる可能性があります。一部の測定値は開発レベルのシステムで得ら れたものである場合もあり、通常利用可能なシステムで同じ測定値が得られる ことを保証するものではありません。また、一部の測定値は、外挿によって推 定されている場合があり、実際の結果は異なる可能性があります。 IBM以外の製品に関する情報は、これらの製品の供給者、出版物、 もしくはそ の他の公に利用可能なソースから入手したものです。IBM は、それらの製品の テストは行っておりません。また、IBM以外の 製品に関するパフォーマンスの 正確性、互換性、またはその他の要求は確証できません。IBM以外の製品の性能 に関する質問は、それらの製品の供給者にお願いします。 ROTH ET AL. 15