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カリプ海の褒層海水から採取した故散虫の生体観察 O b s
大阪償化石研究会艶.特別号" .商事号, p349-363, 1 993.12. 1 ' ! NOM, S pe cVol , NO.9P349-363, De国mber 1 9 9 3 カリプ海の褒層海水から採取した故散虫の生体観察 松岡篤・ O b s e r v a t i o n so fl i v i n gr a d i o l a r i a n sfromt h e s u r f a c ewat町 t h eCaribbeanSea in MATSUOKAA t s u s h i * l ' a c tT h i sp a p e rd四crib関田me f e a t u r e so fl i v i n gr a d i o l a r i a n st h r o u g hl 刕 h tm i c r o ュ A b 8 t s c o p i cobservation, i n c l u d i n gt h e i rpseudopodia , s y m b i o n t sa n dc o l o r .T h i sp a p e rt r e a t s7 sp配i田 which a r ea b u n d a n t l yf o u n di nt h es u r f a c ew a t e rn e a rB a r b a d o si nt h eCa r i b b e a nS e a; Diの'OCOηM 加ncatum, Dic抑印刷eρ1'ofunda, 局閥均郎伽m 雌clidis, Euchitο nia e均~ns, Did戸仰の材is tetrathalam似たtrathalam附; Pte1' ocanium p1'aetextum p1'ae伽tum, slρ;1'00材お scala九S. Keywords:l i v i n gradiolarians , s u r f a c ewater, C a r i b b e a nSea 備軍事:コロンピア大学ラモント・ドハティ地球研究所の はじめに O .R o g e rAnderson 博士には,現生欽散虫の研究について さまざまなご教示をいただいた.Anderson 惇土の共同研究 生物の形怒は何らかの機能に関連していると一般に考え B e n ュ られている.それでは放散虫の般に付随する孔,窪み,刺, 者であり実質的に飼育実験を手始けてこられた Paul 針などといった個々の形態要素はどのような機能に関係し nett 氏からは/'(,ルパドス島で 1 ヶ月にbたり放散虫の採取 ているのだろうか.化石だけを扱っていては解答が得られ 方法・観察方法をはじめ各種の生物実験の手法を教えてい ないので,生きている放散虫の研究を手掻けることになっ ただいた .D使 Breger さんには電子顕微鏡を使用するに た.政散虫の生体を観察してまず感じたことは.生きてい あたり,お世話になった.~<ルパドスのベラーズ研究所のス る放散虫はきわめて多くの情報をもっているということで タッフの方々には,滞在中の研究に際し使宜を計っていただ ある.顕微鏡をのぞくと赤や黄色といった軟体部の鮮やか いた.以上の方 4 に心よりお礼申し上げる.研究費のー郁と な色彩がまず目にはいる.放散虫は優雅に仮足をのばして して文部省科学研究費補助金 (no. 04郎4089) を使用した. 水中を浮かぴ.ときには仮足を急激に引っ込めて餌をとる. 低料の採取および...方法 仮足を拡大して観察すると,無数の共生生物が仮足に沿っ て移動している.放散虫の殻だけをみていてはとうてい想 放散虫の生体鼠料はパルパドス島西方約 2km のカリプ海 像できない光景が,顕微鏡下でくりひろげられる. の表層海水 (5m 以浅)より.プランクトンネット(メッシュ この論文の目的は,生きている放散虫がもっ多くの情報 は 36μm) を引いて採取した.双眼実体顕微鏡のもとで雑多 の一部をカラー写真を添えて示すことにある.生きている なプランクトンからピベ・y トをもちいて放散虫を分離し, 姿と見比べる意味で,同じ水塊から得られた同種の放散虫 生体観察用の獣料とした.観察した試料の大半は,飼育実 般の電子顕微鏡写真も提示する.本論文ではパルパドス近 験にもちいた個体である.飼育実敏は,水温と光量を調節 海のカリブ海表層水に多産する以下の 7 種を取り扱う: できるように設計した飼育義置 (Anderson D i c t y o c o r y n e ρ rofunda, H戸時仰印刷m euclidお. E u c h i t o nホ aelegans, 説め帽ocyr. 治 tetrathalamus tetrathalamus, Pterocanium ρraet,α ωmρrae附加m, S p i r o c y r t i sscala市. を使用し.放散虫 1 個体ずつをガラス管に入れて行った. Di・的oco 明e t叩 ncatum, e t al. , 1 9 8 9 ) 放散忠生体の観察には倒立型の光学顕微鏡をもちいた.し たがって,生体観察や写真撮最多は放散虫の下方からなされ ている.電子顕微鏡観察のための放散虫の般は.プランク E a r t hScie町田. Co I . l e g eo fGen e r a lEducati剖1, Nヘ lg 3 t aUniversity , N i i g a t a950-21 , ] a p a n 新潟大学教養部地学教室. Departmen北 of トン試料を硫酸で煮鴻し,有機物や炭厳塩般などを溶解し た残漬から拾い上げた. 3 4 9 3 5 0 松岡篤 示す.積によって観察にかけた時聞が大き〈異なることか 光学顕微鏡による観禽事項 ら,記事E 内容の詳しさについてはかなりの差がある.以下 個々の穫についての観察結果を記述するのに先だって, の種の配列は,観察個体数およぴ観察時間の多い順となっ 光学顕微鏡で観察される事項の一般的な説明を以下に述べ ている . る. 浪度の組合せをかえて行った飼育実験 (Matsuoka 1.仮足 derson, 放散虫カ惜の外部に放射している鎗維状の軟体部を仮足 Dic,かQCOηne truncatum については,温度・塩分 & An. 1992) をとおして約30例国体の観察を行った. DicちIOCOηne prof抑ぬと Hymen ÎIJstrum euclidis につい (開eudopodia) と総称する. 1 個体の放散虫が 2 積類以上 ては,天然環績と同じ温度・塩分漉度で飼育したそれぞれ の仮足をもつことが多い. Spumellarida 目については.軟 約 4(}/国体について観察した . 体部から多数放射される仮足をアクソボディア (axo・ は.上記 2 種と同じ条件で飼育した 5 個体とプランクトン E u c h i t o n i aelegans について Did ymocyr. podia) ,アクソポディアより太く 1 本だけ鞭状に出される サンプルから分離した数個体について観察した. 仮足をアクソフラジェルム (axof!age!l um) として区別した. t i st e t r a t h a l a m u s tetrathalamus, P t e r o c a n i u mp r a e t e x . Nassellarida 自についてもいくつかの仮I己が区別されたが, tum ρraetextum. 品iro伊がs scalaris の 3 種については, 特別な名称はもちいず,すべて仮足とよぷ.仮足の役割と プランクトンサンプルから分離したそれぞれ数個体につい しては浮遊,浮遊盗事争の調節,捕食,共生生物の保持など て観察を行った. が考えられる.生体観察によって仮足の機能が特定できる 1 .D i c t y o c o r y n et r u n c a t u m( E h r e n b e r g ) 場合もあるが,未知の部分の方が多い. .F i g .1: Pl .3 , F i g .1 ) ( P l .1 本種は Spumellarida 目, Spongodiscidae 科に属する. 2.共生生物 パルパドス近海の表層海水に生息する放散虫は,かなり 本種の殻成長は 4 つのステージに区分される (Matsuoka, の種が共生生物をもっている.共生生物は大別すると共生 1 9 9 2 ).ステージ l の幼体殻は三角形平板状で均質なスポ 自巨額と共生バクテリアに区分され,両者は大きさが異なる. ンジ殻からなる.殻の断面は薄い両凸レンズ状の形態をな 共生漬懇のサイズは直径5-8μm 程度である.共生パクテ す.ステージ 2 の殻では,三角形の頂点から腕がのび始め リアの粒径は,光学顕徴鏡での計測限界(1. 5μm) より小き い.放散虫の共生 íii類は微細構造の観察から, D ino f !a g e l . るとともに腕のあいだにスポンジ状にパタジウムの成長が みられる.パタジウムが十分に発達せず,レース状の外観 late, Prasinophyte などいくつかの分類群からなることが を呈するのがこのステージの殻の特徴である.ステージ 3 明らかにされている(Anderson , 1983). しかし,光学顕微 では腕とパタジウムがともに付加し,スポンジ般の累重が 鏡での観察だけではそれらを区別することはむずかしいの 著しくなる.本報告で図版に示した個体はいずれもこのス で,ここでは一指して共生議類として取り扱う.共生生物 テージのものである (Pl. 1 .F i g .1 : の種類や分布場所は種ごとに特徴があり.近似種の識刷に テージ 4 の殺はパタジウムの成長が腕の成長を上回り,膨 Pl .3 , F i g .1 ) .ス 1 9 9 2 ) . れた三角形の外観を呈する.このステージでは,殻の厚み 放散虫の軟体部は,赤や貨などの色彩をもつことが多い. 凸レンズ状を示す.三角形の殻の片側にスポンジのメソシ 有効な場合がある(松岡, 方向の成長が著しいために,殻の断面形態がよ〈膨れた両 3. 般体留の色 1, F i g .1 ) .殻 軟体部が色っーいてみえる原因としては,放散虫自身の細胞 ュよりも少し大きな殻孔が認められる (Pl. 質や細胞内器官が色をもっている場合と共生生物や捕食物 孔は三角形の中心からややずれた .2 本の腕のあいだに位 質の色に上る場合とが考えられる.共生生物が実際に観察 置する.この殻孔の有無により,殻には表と裏の区別があ される場合をのぞいて.光学顕微鏡をとおして観察される る. 色調が何によるものかを特定することはむずかしい.ここ 般の外部にみらtLる軟体部としては.アクソフラジェル では光学顕微鏡で観察される色を軟体部の色とよぷ.本論 ムとアクソボディアとがある.アクソフラジエルムは鞭状 文で示す軟体部の色は,パルパドス近海で 5 月末から 8 月 で,通常アクソポディアより長い.前述した殻の片面にみ 初めに採取された放散虫について観察きれたものであり. られる殻孔は.アクソフラジエルムが通っていた孔である. 別の場所あるいは他の時期に採取される放散虫は, r尚穫で アクソボディアはスポンジ殻のメッシュのあいだから,放 あっても異なる色調を呈する可能性もある. 射状に外部環境にでる.アクソフラジェルムがのびる向き とほ反対側の腕周辺のアクソポディアは.他のものより多 観痕結果および考察 少短い傾向があり,殻を一定の姿勢に保つためにアクソボ 今回取り扱った 7 種について,殻の電子顕微鏡写真を P l a t e1- 2 に,生体の光学顕微鏡写真を Plate 3- 5 に ディアの長さを調節しているものと思われる.浮遊姿勢は 乎板状の殻を水平にしていることが多い.アクソボディア 3 5 1 カリプ海の表層海水から採取した放散虫の生体観察 は.餌を捕獲する役富 IJ をもっている.浮遊小物体がアクソ 共生生物としては赤褐色の共生バクテリアがみられる.共 ボディアに触れると急激に収縮し,その小物体を殻に近づ 生バクテリアの数は一般に少なし D. tru棺catum にみられ ける.複数のアクソポテ'ィアの連携により,小物体は短時 るような共生ノ f クテリアの凝集部は観察されていない.共生 間に殻の表面近くまで引き込まれる.収縮したアクソボデ パクテリアは,アクソボディア内を放散虫の原形質流動によ ィアは, ~j(繍時に比較するとゆっくりした速度で再び伸張 り移動する. し,次の捕獲の機会に備える.このような行動を緑り返し 軟体部は全体に赤昧がかっているが,中央部にはひときわ て,積極的に運動性のある微小生物を捕獲する.アクソフ 鮮やかな赤色を呈する部分が認められる.また,中心部には ラジェルムにはアクソボディアにみられるような急激な運 無色の部分がある.鮮やかな赤色部の形態は成長 l こ伴って変 動能力はなし殻の下面から下方に垂れ下がるようにのぴ 化する.未成熟の個体では馬蹄形に近い形状を示し,アクソ る. フラジェルムがでる付近で赤色の部分が途切れている.成熟 D .truncatum は余生生物として,赤褐色粒状の共生バ した個体では,相対的に赤色部の面積が広くなり,アクソフ クテリアをもっ.共生バクテリアは殻表面近くに集まるこ ラジェルムの付近の途切れが認められなくなる.いずれにし ともあれば,アクツボディア中に認められることもある. ても,鮮やかな赤色部はアクソフラジェルムとその対角の院 アクソポディア中の分布様式にもいくつかのケースがあり. を結ぷ線に対して対称、の分布を示す.長期間飼育した個体で アクソボディ、ア全体に均等に分布する場合や.一部のアク はしだいに鑓色し,最終的には無色になってしまう. ソボディアの先端部に濃築する場合などがある.共生パク 3 . H戸neniastrum e u c l i d i sHaeckel ( P . I1 .F i g .3; Pl .3 , F i g s .3 4 ) テリアは放散虫の原形質流動により.アクソボディアに沿 ってその基部から先端部へ,またはその逆向きに移動させ 本種は SpumeIl arida 9, Spongodiscidae 科に属する.平 られる.本種には殻の表雨近くに付着する共生藻類は観察 板状で 3 本の腕をもっ.腕の先端から 1 本ないし数本の刺 されていない.しかし.超薄片の透過型電子顕微鏡による がでる.腕の成長が先行し,それを追いかけるようにパタ 観療では,細胞の中心嚢内に共生藻類がバクテリアととも に存在することが明らかにされている (Anderson &M at. suoka , 1 9 9 2 ) . 殺の内部は,黄色ないし少し赤みがかった黄色に色づい ジウムが発達する.成熟した個体では正三角形に近い外形 を示し匂殻表面はスポンジ殻に狙われる.本種には , D . tmncatum や D. かゆtnda にみられるようなアクソフラジ ェルムが通っていた殻孔は観察きれていない. てみえる.これが放自主忠の軟f宇都そのものの色なのか,共 仮忌にはアクソボディアとアクソフラジェルムとがある. 生藻類によるものであるのか,あるいはそれらが複合した 仮足の性質については D. tru担catum や D.pr.ゆtnda と同 結果;であるのかは不明である.パルパドス近海で得られる 様である.三角形般の平板状の部分に孔が訟められないこと スポンジ殺で 3 本の腕をもっ Spumellarida 目の放散虫の から,本積のアクソフラジェルムは平板状殻の側面で腕のあ なかで.軟体部の色が黄色で特徴づけられる種は限られてお いだにあたる部分から出ていると考えられる. り,この色が本種を同定する際に有効な指標となる.長期間 共生生物としては赤褐色の共生バクテリアがみられ,その 勤l 宵した個体ではしだいに槌色し,最終的には無色になって 数は一般に多い.共生バクテリアは殻表面やアクソボディア しまう. に濃集する.特定のアクソポテ'ィアにのみ共生バクテリアの 2 . Dictyocoryneρrofunda E h r e n b e r g 凝集部が観察されることもある(松岡, . I1, F i g .2 ; Pl .3 .F i g .2 ) ( P 1 9 9 2 ) . 軟体部は全体に褐色がかつてみえるが, ζ れは共生バク 本種 1 :1: SpùmeIlarida 目,Spongodiscidae 科に属する本 テリアによる.アクソフラジェルムがでる近〈に鮮やかな 種の殻成長は基本的には前述の D. truncatum のそれと同 赤色に色づいた部分が認められる.赤色部は一般にスポッ 様である.ただ,成熟した個体でも , D. tmncatum のように ト状で,アクソフラジェルムと対角の腕を結ぶ線に対して 三辺が外に膨れた三角形の外形を示すことはない.また,殻 対称に分布する.成熟した個体の方が赤色部の分布が広い 成長の最終段階における厚み方向の成長も顕著ではない .D. 傾向がある.長期間飼育した個体ではしだいに慢色し,最 truncatum と同織に,スポンジのメヅシュよりも少し大きな 終的には無色になってしまう. 殻孔が,三角形の中心からややずれた場所に認められる.こ 4 . Euc h i t o n i ae / e g a n s( E h r e n b e r g ) ( P I .1, F i g s .4-6; PI .4 , F i g s .1 4 ) の殺孔はアクソフラジェルムが通っていた干しである. {反足にはアクソフラジヱルムとアクソポディアとがある. 本種は SpumeIl arida 目, Porodiscidae 科に属する.平板 仮足の性質についても D. truncaおim と同様である.本種の 状のスポンジ殺で 3 本の腕をもっ.本種の殻形成について アクソフラジェルムら,殻の下面から下方に垂れ下がるよう は, にのびる. 体殻である中心部は殻孔をもたないドーム状の般からなる. Anderson& B e n n e t t (198ω に述べられている.幼 3 5 2 松岡篤 このドーム状の般に同心円状の殻が付加し,つぎに腕の成 がみられる.幼体では中心の円盤状殻に沿うように (P1. 3 , 長が始まる. Fig.5) ,またもう少し成長した倒体では,鼓状殻内で滞ー球 3 つの腕聞の角度のうち 2 つは 120度より 3, F i g .6) 分布する. 大きくほぼ等しい.残りの l つは, 120度未満で通常 90度 放の般散虫細胞を取り囲むように (PI. より小さい.したがって腕の先端を結ぷ三角形は,正三角 鼓状殻が閉じられると,共生藻類は自由に出入りができな 形ではなく高き方向 iニのぴた二等辺三角形となる.腕の先 くなると考えられるので.放散忠と共生藻類の共生関係は 端には数本の刺がみられる.腕の成長を追いかけるように 放散虫の個体発生のかなり初期に結ぼれるのであろう. 腕のあいだにパタジウムが形成される.般成長の最終段階 放散虫の中心部は赤色を呈する.その周りの軟体調i は淡 では腕の成長は止まり,殻表面のスポンジ殻の付加が進行 い赤色である.赤色の程度は個体により変異がある. する.この付加はパタジウムの縁では顕著であるが.殺の 6. P t er o e a n i u mpraet,extumρraetextum ( E h r e n b e r g ) ( P . 12 , F i g .4: P. I5 , F i g s .1 2 ) 中心部分では少ない.ドーム状の幼体殻は成熟個体でもス ポンジ燃のあいだから観察される (Pl. 1, F i g .6 ) . 本種は Naぉellarida 目,Theoperidae 科に属する.本緩 仮足にはアクソポディアとアクソフラジェルムとがある. は cephalis およぴ thorax の 2 室からなる. Cephalis には 仮足の性質は前述の 3 種と共通する.アクソフラジェルム 内部骨針の apical spine の延長である apicalhorn と ver・ は必ず二等辺三角形の底辺に相当する部分からのぴる.殻 t i c a lspine の延長である小さな剥がみられる .Thorax の上 の平板部分にはアクソフラジェルムが通っていた殻孔は認 部には多数の短い刺がみられる .Thorax の下部からは 3 本 められない. の底足がのびる.底足は内部骨針の 2 本の Primary 共生生物としては赤褐色の共生バクテリアと黄色球状の l a t e r a l spine と dorsal spine の延長にあたる.底足のあいだをつな 共生部類がみられる.両者は放散虫に対して共生形式が異 ぐように,thorax の下織から多孔質の薄い膜状の殻が発達 なっている(松岡. 1992 ),すなわち,共生バクテリアは放 するー 散虫の細胞内に内郎共生し,放散血の原形質流動により放 {反足 l 立軟体部全体から放射状にでる.また, apical horn , 散虫の軟体部やアクソポディアの中を移動する.一方,共 v e r t i c a l spine の延長の事IJ ,thorax 上部の小刺,3 生議類は放散虫が表弱するか死ぬと放散忠から離れてしま といった殻の突起部の先端からは必ず仮足がのびる. 本の底足 うことから,放散虫の細胞の周辺で外部共生しているとみ 共生生物としては,黄色で球状の共生藻類が認められる. られる.共生藻類の数は放散虫の表面積に比例して,小さ それらは, thorax 内あるいは底足のあいだの薄膜に凶まれ い個体では少なし大きい個体では多い (Pl. 4, F i g s .1 - るように分布する. 軟体調l には一部に鮮やかな赤色の部分が認められるー赤色 4 )• 軟体部の色は無色に近いが,共生バクテリアが濃集する の程度は個体により変異がある. 部分は赤褐色にみえる.中心部のドーム状般の部分は放散 7, S p i r o c y r t i ss e a l a r i sH a e c k e l 虫の大きさにかかわらず,まわりより淡色で透明感がある. ( P . l2 , F i g s .5閑 6; P. l5 , F i g s . 3 4 ) 5 . Didyrr悶eyrtis t e t r a t h a / a m u st e t r a t h a / a m u s( H a e c k e l ) ( Pl .2 , F i g s .1 3 ; P. I3 , F i g s .5 幽 6) 本種は S p u m e l l arida 目, Coccodiscidae 科の Artis. 種は,いわゆる塔状 Nassellar匂と呼ばれるグループにはい cinae 亜科に属する.本種の鍛形成については, Anderson e t 本種は Na鑓ellarida 目, Artostrobiidae 科に属する.本 る .Cepalis , thorax , abdomen とそれに統< p o s t . a b d o m i n a lchamber からなり,殻の dista! end は大きく附 a l . (1986) に示されている.中心には円盤状の二重鍛があ いている.Cephalis には短い apical horn がみられるが,こ る.この内盤状殻には多数の殻孔が認められるが.中央の れは内部骨針の apical spine の延長である.また,cephalis 殻孔がやや大きい.円盤状殻の周辺から放射状に 10 数本の には口状の関口部があり,その中央部には内郡骨針の verti 劇がでる.劇の先舗は分岐し,そ札ぞれが連結して全体と c a lspine して車給状の外観を呈する (Pl. 2, F i g .1 ) .ついで.殻 はこれまでの成長方向とは直交する方向に成長し,付加し た殺は両耳告が閉じて鼓状となる (Pl. 2, F i g .2). さらに成 長すると殻の両端に帽子状の殺が付き,成熟した個体では 最も外側を麟細なスポンジ状の般が覆う (P l. 2, F i g . 3 ) . 仮足にはアクソボディアとアクソフラジェルムとがある. が関口都の外側に InJ かつてのぴる. 仮足は 3 種類に区別される. 1 つ目は殻全体から放射状 にのぴる多数の仮足で. 3 種の仮足のなかで最も制11 い. 2 つ H は distal end から下方にのびる仮足である.この仮足 は数本あり,互いに平行でまっすぐにのぴる .3 つ凪は t c e . phalis の関口部からのぴる仮足である.図版に示した例 (P\. 5, F i g s .3-4) では,開口部からわずかにのぞいているにす アクソフラジエルムは 1 本で,段状殻の片側だけにのびる ぎないが,飼育個体を静穏に保っと殺長の 5 倍以上にのぴ ( P . l3 , F i g .5) ,アクソボディアは軟体部の中心部から放 る禄子が観察されている. 射状にのぴる. 共生生物としては黄色で球状の共生議類 共生生物としては,赤色~赤黄色で球状の共生藻類がみ カリプ海の表燭海水から採取した欽散虫の生体観察 られる.共生寝類は,塔状の鰻内に入っているが,殻内の 軟体部よりも般の distal end 側に分布することが多い. 共生生物をのぞいた軟体部の色は無色に近い. B わりに Dictyoco砂時e trunca.伽m や h・c加coη咽e pro.ルnd包の殻 にみられるスポンジメッシュより少し大きな殻孔は,アクソ フラジェルムの出口であることが明らかになった.これは, 生きている放散息を観察することによって殻にあいている 孔のもつ意味がわかった例である.このように放散虫の生体 観察を積み重ねることによって,軟体部と鍛形態との関係を York, 365pp目 P. , 1985 , Ac o n c e p t u a landq u a n t i t a . nl i v i n gs p e c i e s t i v ea n a l y s i so fs k e l e t a lmorphogen田Îs i o fs o l i t a r yr a d i o l a r i a :Euchi,ω"“ e匂'ans a n dso n g a s . a r .Mic岬回leontol. , 9, 441栴 454. t e rtet向指. M 一一一一一,一一一一一, a ndBryan , M. , 1989, E x p e r i m e n t a land obl提rvational studi田 of r a d i o l a r i a np h y s i o l o g i c a lecol・ ogy二3. 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Symhi.棚:, 12 , 2 3 7 2 4 7 . 一一一一一 and Ma細則ta , 放散虫の一生のごく限られた機会にしか使われないが非常 に定要な機能と関連した形質もあるはずである.飼育実験を 実施することにより,放散虫の生活環全体にわたる生体観察 を行うことはさらに重要であろう. 放散息の生活様式,生殖様式,生化学的特性,遺伝学的特 性s 外部環境に対する生理耐性,共生生物との相互作用など, その生物学的側商はあまりにも未知な部分が多い.放散虫の 殻形成についての理解を深めるためには,“放散虫の生物 学"についての総合的な研究が望まれる. 文献 Anderson, O .R. , 1983 , R a d i o l a r i a .S p r i n g e rVerlag, New 3 5 3 松岡 篤, 1992 ,放散虫と共生生物の観察一平板状の Sp凶nel larida 目についてー.化石.“, 20-28. Matsuoka , A., 1992, S k e l e t a l grow廿1 o fas p o n g i o s e nl a b o r a t o r yc u l ュ r a d i o l a r i a nD税関'KOηne t柑ncatum i a r .Mic材団le岬101. , 19 , 2 8 7 2 9 7 . t u r e .M 一一一一一- a nd Anderson , O.R., 1992 , E x p e r i m e n t a 1 and 。b駒rvational s t u d i e so fr a d i o l a r i a nphysiological 氏。1・ o g y :5 .T e m p e r a t u r ea n ds a l i n i t yto1町ance o fD i c t y o c o r ュ a r .Micrゅd回n品。1., 19 , 2鈎・313. ynet柑ncatum. M 3 5 4 草公開 鷺 E x p l a n a t i o no fP l a t e1 S c a n n i n ge l e c t r o nm ホ C r o g r a p h so fr a d i o l a r i a ns k e l e t o n s . l. Dたち町oηne tnmωtum(田町enberg) ,民ale b a r; 1ωμm 2 .Dic,駒co ηne 抑ルn血Ehrenberg,記ale bar=200μm 3 .Hymen郎trum e u c l i d i sHaeckel , s c a l eb a r=200,μm 4 .Euchitl抑iae匂伊附(Ehrenberg) , s c a l eb a r= 40,μm 5 .E u c h i t o n i ae匂ll1lS 畑町田berg). s c a l eb a r= 100,μm 6 .Euchii政mia e,均'ans(白陀nberg). s c a l eb a r= 2ωμm カリプ海の表層海水から採取した放散虫の生体観察 3 5 5 P l a t e1 3 5 6 松岡篤 Explanationo fP l a t e2 S c a n n i n ge l e c t r o nm i c r o g r a p h so fr a d i o l a r i a ns k e l e t o n s . 1 .Didyt聞の対is f e t r a t h a l a m u st e t r a t h a l a m u s(H aecke!) , s c a l eb a r= 40μm 2 .Did戸施。のtrlis f e t r a t h a l a m u s tetratha加nus (H aecke!) , s c a l eb a r= 100,μm 3 .Di,砂問。のMお fefrathalamus tetrat,加 /amus (Haecke!) , s c a l eb a r= 100,μm 4 .P t erocaniump r a e t e x t u mpraetex加m (Ehrenberg) , s c a l ebar ニ 100μm 5 ..s砂IroC)伊1is sωlaris Haeckel , s c a l eb a r=40,μm , a p i c a lv i e w 6 .Spiroのm拍 scalaris Haeckel , s c a l eb a r=100μm カリブ海の表層海水から採取した放散虫の生体観察 3 5 7 P l a t e2 3 5 8 松岡篤 E x p l a n a t i o no fP l a t e3 L i g h tmicro髭opÎC i m a g e so fl i v i n g radiolari創15“ A1: a x o f l a g e l l u m .S a :s y m b i o t i ca l g a e .S b :s y m b i o t i c b a c t e r i a . 1 .Dictyocoηme 御糊CIltum (殴rrenberg). s c a l eb a r= 100,μm 2 .Dictyoco明e r o f u 7 U ワ lE hren b e r g .s c a l eb a r=100μm 3 .H戸nen包s的tm e u c l i d i sH a e c k e l .s c a l eb a r=100μm 4 .H少時四白trum 仰clidis Haeckel , s c a l eb a r=100μm 5 .Di・φmocyrlis t e t r a t h a l m n u stetrat,加 lamus (Haeckel ) .s c a l eb a r= 50,μm 6. 却dymocyt秘 tetrathalmnus tetrat,加 Imnω(Haeckel). s c a l eb a r=ぬμm カリプ海の表磨海水から採取した放散虫の生体観察 3 5 9 P l a t e3 4 獅a -ー 5 16 3 6 0 松岡篤 Explanationo fP l a t e4 L j g h tm i c r o s c o p i ci m a g e so fl i v i n gr a d i o l a r i a n s .Al If i g u r e sa r et h esamem a g n i f i c a t i o n .S ca l eb a r= 100μm ( i nF i g .4 ) .A f :axoflagellum, S a :s y m b i o t i calgae, S b :s y m b i o t i cb a c t e r i a . 1 .Euchit,側必 ele.酔ns(日古田her芭} 2 .Euchiton必 elegans (臨時nberg) 3 .E u c h i t o n i ae勾'ans (臨時nberg) 4 .Euchito帽 ia e l e g a n s (Ehr四berg) 3 6 1 カリプ海の表層海水から採取した放散虫の生体観察 P l a t e4 守h 円 . . ~ ー 4 3 6 2 松岡篤 Explanationo fP l a t e5 L i g h tm i c r o s c o p i ci m a g e so fl i v i n gr a d i o l a r i a n s .A I If i g u r e sa r ethe ( inF i g .4 ) .S a :s y r n b i o t i ca l g a e . 1 .P t e r o c a n i u mpmetl副um pmet,出um (日官enberg) 2 .Pterocani:酬 3. 身障・rocyrtis 4 . Spi仰の材is pme段ttum praetex抑制(日rrenberg) s c a l a r i sHaeckel s c a l a r i sH a e c k e l 姐me m a g n i f i c a t i o n .S c a l eb a r=50μm カリブ海の表 11 海水から採取した放散息の生体観察 3 6 3 P l a t e5