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インド投資ガイド 2015年 www.pwc.com/jp インドの税制および規制の

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インド投資ガイド 2015年 www.pwc.com/jp インドの税制および規制の
インド投資ガイド
2015年
インドの税制および規制の
フレームワークの概要
www.pwc.com/jp
目次
はじめに
外国投資規制
資金拠出形態オプション
外国為替管理規定
直接税
個人所得税
間接税
合併および買収(M&A)
移転価格税制(TP)
04
08
12
16
18
30
34
38
42
はじめに
インドは、購買力平価換算の GDP において世界で 3 位に位置
しており、今年およびそれ以降の成長という点で新興国および世
界をリードすることが期待されています。国際通貨基金(IMF)に
よると、世界全体の成長率が 2015 年に 3.3%、2016 年に 3.8%
と予測される中で、インドは 2014 年の 7.3% の成長率を超え、
毎年 7.5% ずつ成長することが予測されています 1。
世界銀行もインドの 2015 年の成長率を 7.5%と予測しています。
インド政府は 2014-15 年度の暫定的な成長率を 7.2% と見積
もりました 2。また、インド準備銀行(RBI)は 2015-16 年度の
インド経済の成長率を 7.6% と予測しています。
ほぼ全ての分野で 7% を超える成長率の予測を受けて世界でも
インド国内でも積極的な傾向が見受けられます。今年の新興国の
平均成長率が 4.2% であることを勘案すると、新興国の中でイン
ドがその成長をより加速させることは容易に予測できます。
現政府が任期 1 年目を終えようとする中で、インドは確固たる
経済成長の時代へと突入しました。‘Jan-Dhan Yojana’ と呼ばれ
る全ての家族に銀行口座を開設させて経済とのつながりを持た
せるミッション、‘Swachh Bharat Abhiyan’ と呼ばれる衛生およ
び予防的な健康管理に関するキャンペーン、ならびに ‘Housing
for all by 2022’は持続的な成長を確保する新たな取り組みです。
インドは、インフラを整備し、ビジネス環境を改善し、安定した
予見可能な税制を構築し、より多くの外国直接投資(FDI)を引
きつけ、国際的な関係を育み、民間への権限委譲を行うなどの
成長志向の取り組みを進めることで、その経済の活力をより強化
できると考えられています。
以下の項目がその兆候と言うことができます。
•
インドを世界の製造拠点とするために、 政府は ‘Make in
India’ プロジェクトを昨年公表しました。当プロジェクトでは
製造業生産高の GDP への貢献割合を現状の 16% から 2025
年に 25%、最終的に 60% とする野心的なターゲットが設定
されています。投資を促進し、イノベーションを奨励し、ハイ
クラスのインフラを構築することを目標とする政府の ‘Make
in India’ プログラムには、特定の重要な産業(自動車産業、
航空宇宙産業、防衛産業など)への投資を促進させることが
期待されています。
•
石炭ブロックの電子入札、労働監督官の自由裁量権削減、
および労務問題に関するコンプライアンスプロセスの単一窓
口の設置、ならびに政府が 2016 年 4 月に導入を予定して
いる物品サービス税(GST)により、長期的に製造業の成長
が促進されることが予想されます。
インドの人口は世界 2 位を占めています。ほぼ 3 分の 2 が労
働人口から構成される 12 億人以上の人口ボーナスは別として、
インドは改革派の政府により公表される各種の方針により投資の
中心地となってきています。高齢化が進む世界において、インド
は将来の人材の宝庫と言うことができます。
全世界
先進国経済
新興国経済
インド
2016
中国
2015
2014
ブラジル
ロシア
南アフリカ
メキシコ
-4
-2
0
2
出典:IMF, 世界経済概況(WEO)2015年7月更新
1
世界経済概況公表カンファレンス , 2015 年 7 月
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2015/update/02/index.htm
2
2011-12年を基準値とする総付加価値(GVA)の成長
4
PwC
4
6
8
10
•
2015 年 4 月に、ムーディーズは政策立案者によりインド経
済成長のための対策が採られることを期待して、インドのソ
ブリン格付けアウトルックを、‘stable’ から ‘positive’ に格
上げし、投資家心理を後押ししました。
•
S&P は、新政府着任後 120 日以内に、継続的な財政規律と
インド経済の健全な展望を期待してインドのソブリン格付け
アウトルックの格付けを ‘negative’ から ‘stable’ に格上げし
ました。
安定した民主主義政府と比較的自由な市場経済のインドは、
魅力的な投資先の 1 つになります。
マクロ経済
鉱工業生産指数(IIP)は上昇傾向を示しています。2015 年 4
月の指数は 179.7 となり、2014 年 4 月と比較して 4.1% 上昇して
います。これは、投資および消費財の健全な拡大を呼ぶ経済再生
が進行中であるとの政府の見解を裏付けるものとなります。22 の
製造業産業グループのうち、16 のグループで 2015 年 4 月に前
年同期比でプラス成長が見られました。製造業における 2015 年
4 月の IIP は 190.6 となり、2014 年 4 月と比較して 5.1% 上昇し
ています。機械装置産業では 20.6%と最も高いプラス成長を示し、
次いで木材および木材コルク加工品(家具を除く)産業(ストロー
および板材品目)で 16.2% のプラス成長、そして電気機械および
器具産業で 13.4% のプラス成長を示しています。
耐久消費財および非耐久消費財は 1.3% および 4.4% の成長率
を記録し、消費財全体では 3.3% の成長となっています。ナレン
ドラ・モディ首相率いる政府による開発推進施策とともに、消費
需要の回復は経済成長をさらに加速させています。
インドはマクロ経済対策を打ち出してきており、インフレーション、
経常赤字、財務状況のなど課題はありますが、政府はこれらの構
造的問題の解決策を実行しています。
インフレーションは過去 1 年間漸減しています。新政府に変わり
1 年経過する前の 2015 年 4 月には、インフレ率は 4.87% に下落
しました。2014 年 4 月のインフレ率が 8.48% であったことを勘案
すると、このインフレ率の下落は経済成長を推進することが期待さ
れます。2015 年 5 月のインフレ率は 5% となりましたが、警戒さ
れるレベルではありません。このインフレ率が安定した場合、政府
の目標である 2017 年に 4% プラスマイナス 2% というインフレ率
を達成することが可能となると考えられます。不安定な物価が将来
の投資計画に悪影響を及ぼすのと同じで、安定した物価は投資家
に対して良いメッセージとなります。
世界的な原油価格の下落は、政府の財政赤字削減に寄与し、
インフレシナリオに良い影響を与えることが見込まれます。
2014-15 年の経済調査において、インド政府が優先的に取り組
んでいる政策には、エネルギー価格の自由化、公共福祉政策の効
率化、賃金と物価の悪循環の断絶および農民サポートの合理化、
APMC(Agricultural Produce Marketing Committee)法の改正
などが挙げられます。
高い経常赤字(商業およびサービスにおける輸出と輸入の差)
はインドにとって継続的な懸念であり、マクロ経済の重要な指
標です。高い経常赤字はマクロ経済において、通貨の切り下げ
圧力、国内市場の競争力低下、外貨準備の低下などの不安定
な状況の要因になります。インドの経常赤字は減少に転じてい
ます。2014-15 年の第 4 四半期において、主として貿易赤字
の減少により、インド経常赤字は 13 億米ドルもしくは GDP の
0.2% まで急減しています。
インド準備銀行によると 2014-15 年全体の経常赤字は GDP
の 1.3% となっています。経常赤字の減少は主として原油価格の
下落によるものです。
さらに、投資家は経済だけでなく通貨に対しても信頼を失い、
実際にインドにおいて他国通貨と比べてルピーの価値が著しく下
がるという局面もありました。インド政府とインド準備銀行は経常
赤字改善のための方策として、輸出の促進や金などの高価な嗜好
品の輸入抑制を行っています。
インド投資ガイド 2015年版
5
高い財政赤字もマクロ経済において、高い経常赤字、高いイン
フレーション、政府負債の増加、高い利率などの要因となり、投
資家の意思決定に影響を与えます。国債格付け機関も、ソブリン
の格付けに財政赤字を判断項目として重要視しています。インド
は FRBM(Fiscal Responsibility and Budget Management)法
にて財務状況を管理しています。2007-08 年に財政赤字は GDP
の 3%以下でしたが、グローバル経済が拡大するに従い 200910 年には 6.5%まで上昇しました。しかしながら、2013-14 年
には 4.5%に低下し、2014-15 年には 4.1%、2016-17 年には 3%
まで低減することをターゲットにしています。
6
PwC
政府は財政赤字対策として、石油価格の規制緩和、ターゲット
を定めた補助金、LPG シリンダーの制限などを開始しました。世
界の石油価格の急激な上昇がない限り、予算案に掲げた目標を
達成することは可能と見られています。
マクロ経済の安定および外的ショックに対する耐久力と経済的
楽観性から、インドは世界において魅力的な投資先となる潜在的
な可能性が大いにあると言えます。
まとめ
インドマクロ経済における新たな方針、規制および改善ならびに成長への見込みは次の開発段階に
向かっています。インドに対するインド国内および海外での投資には実りある対価を期待することがで
きます。より重要なことは、これらの投資および投資による変化は長期にわたり持続する可能性がある
ことです。投資家にとってこれらの積極的な開発を最大限活用する時期が来ていると言えます。
インド投資ガイド 2015年版
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外国投資規制
参入形態
外国企業がインドで事業開始を検討するにあたって、以下の参
入形態オプションがあります。
インド法人としての参入
完全子会社
外国企業は、事業活動のためにインドに完全子会社を設立す
ることができます。子会社はインド居住者として取り扱われ、非公
開会社、公開会社には、それぞれ最低 2 名、7 名の株主が必要
です。加えて、最低1名のインド居住取締役を選任する必要があ
ります。
また、企業が行う事業は、FDI 政策に準じていなければなりま
せん。
インドのパートナーとの共同出資によるジョイントベンチャー(JV)
使用するブランドや技術の観点から完全子会社設立が望まし
い形態である一方で、インドのパートナーとの戦略的提携のもと
JV を設立する場合もあります。通常、同じ事業分野に従事して
いるか、または外国企業のインド投資計画と有効なシナジーをも
たらすパートナーを選択する傾向があります。
また、セクターによっ
ては、外国投資の制限により JV 形態を選択する必要がある場合
もあります。
リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(LLP)
LLP はインドにおける複数の要素が混ざった法人形態です。永
久継承権を持つ独立した法人であるという法人形態の利点や、組
織的柔軟性を持っているというパートナーシップの利点が合わさっ
た形態と言えます。LLP には少なくとも2 人のパートナーが必要で、
それぞれのパートナーの負う債務は制限されています。
LLP は会社形態と比較して、年次の法定遵守事項が緩和され
ており、設立・管理・清算しやすさの点から法人形態として選ば
れつつあります。会社に適用される配当分配税や自己株の買い戻
しにかかわる税は LLP には適用されません。
LLP の設立には外国投資促進委員会(FIPB)の事前承認が必
要です。
外国法人としての参入
駐在員事務所(LOs)
インド参入を検討している外国企業が、駐在員事務所を設置
することは一般的です。当該事務所の活動は、市場情報の収集、
インドにおける潜在的な顧客への自社および自社製品の情報提
供に限られています。当該事務所は外国会社と既存または潜在
的なインド顧客との間の通信チャネルとして活動を行います。当
該事務所は、RBI の規制によって、インドで情報収集行為以外
の事業活動に従事できないため、所得を得ることは認められて
いません。
8
PwC
支店や事務所の開設に関する外国為替管理規定によれば、外
国法人は以下の活動に限定して駐在員事務所を開設することがで
きます。
• インドで親会社や海外グループ会社を代表する
• インドでの輸出入を促進する
• 親会社や海外グループ会社とインド企業の間で技術や、財務
での提携を促進させる
• 親会社とインド企業の間の通信チャネルとしての役割を果たす
駐在員事務所は、100%の FDI が自動承認ルートで認められ
ているセクターを主要事業としている外国企業の場合、RBI の事
前承認にて設立することができます。その他の場合は、中央政府
の追加承認を得なければいけません。駐在員事務所の設立を検
討している外国企業は、最低 50,000 米ドルの自己資本と、自国
での直前の会計年度 3 年間にて利益を示す業績がなければなり
ません。
さらに、登記局(ROC)に登録し、かつ駐在員事務所のある
管轄区の警察庁長官(DGP)に対しても一定の詳細の報告義務
があります。
支店
外国で製造や販売に従事する外国企業は、インドにて、RBI の
事前許可を得て以下の目的で支店を設立することができます。
• 製品の輸出入
• 専門的、コンサルティングサービスの提供
• インド企業と外国企業(親会社や海外グループ会社)間と技術、
財務提携関係を向上させるために親会社が行っている調査の
実行
•
•
•
•
インドにおける外国企業の売買エージェントとしての活動
IT やソフトウエア開発サービス
外国企業およびグループ会社の製品に対する技術的サポート
外国航空会社、船舶会社としての活動
支店は、100%の FDI が自動承認ルートで認められているセク
ターを主要事業としている外国企業の場合 RBI の事前承認にて
設立することができます。その他の場合は、中央政府の承認を得
なければいけません。
支店の設立を検討している外国企業は、最低 100,000 米ドル
の自己資本と、自国での直前の会計年度 3 年間の利益を示す業
績がなければなりません。
• プロジェクト資金は、海外から送金される
• プロジェクト資金は、2 国間もしくは多国間の国際資金援助機
関から提供される
• プロジェクトは適切な機関からの承認を得ている
• プロジェクトを委託するインドの企業または機関は、公的金融
機関、もしくはインドの銀行からローンを提供される
上記の条件が満たされない場合、外国企業は銀行を通じて
RBI から事前承認を得なければなりません。
支店や駐在員事務所と同様にプロジェクト事務所も登記局
(ROC)に登録し、かつ事務所のある管轄区の警察庁長官(DGP)
に対しても一定の報告義務があります。
通常、支店は製造活動と小売業には従事することができません。
しかし、一定の条件を満たす場合、外国企業は、SEZ 内におい
て製造活動を行う支店を開設することができます。
インドにおける外国直接投資方針
しかしながら、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、アフ
ガニスタン、イラン、中国、香港、マカオにて登録された企業に
よる駐在員事務所、プロジェクト事務所、支店の開設には自動承
認ルートは適用されません。
• 民間企業に開放されていない事業やセクター 例:原子力エ
ネルギー、鉄道運行(鉄道インフラにおいて認められる特定
の活動を除く)
• 政府機関、民間機関の宝くじ、オンライン宝くじなど
• カジノを含むギャンブル、賭博に関する事業
• 農業(管理下にある開拓事業を除く)
• 農園業(紅茶農園を除く)
• 不動産業およびファームハウスの建設
• チ ットファンド(Chit fund)
、 ニ ディカ ン パ ニ ー(Nidhi
company)
、譲渡可能な開発権の取引に関する事業
• 葉巻、紙巻煙草、煙草代替品の製造業
また、登記局(ROC)に登録し、かつ支店のある管轄区の警
察庁長官(DGP)に対しても一定の詳細の報告義務があります。
プロジェクト事務所
特定のプロジェクトを遂行する目的で外国企業は一時的にプロ
ジェクト事務所をインドで開設することができます。
RBI はプロジェクトを遂行するためにインド企業やプロジェクト
を管轄する機関との契約を締結した外国企業に対して、プロジェ
クト事務所開設の許可を与えています。さらに、以下のいずれか
の条件を満たす必要があります。
現在、FDI は以下を除く全てのセクターで認められています。
インド投資ガイド 2015年版
9
方針では、20 のセクターで外国直接投資の条件や上限、必
要な承認を規定しています。これらのセクターには金融サービス、
民間航空、通信およびメディア、小売業などが含まれます。
インドへの外国投資は次のルートにより行うことができます。
• FIPB の事前承認が不要な自動認可ルート
• 財務省下の外国投資促進委員会(FIPB)か産業政策推進局
(DIPP)または両方による事前承認ルート
–– 現金以外の対価への投資(一定の条件下の資本財、機械
設備の輸入、開業費、創業費または株式を対価とする株式
の発行)
–– バングラディシュ籍またはパキスタン籍の市民、企業による
防衛産業、航空宇宙産業や原子力エネルギー産業など外
国投資が禁止されている分野以外への投資
–– 持株会社としてダウンストリームインベストメントのみ行っ
ている企業への投資、もしくはいずれの事業およびダウン
ストリームインベストメントを行っていない企業への投資。
さらに、コア・インベストメント・カンパニー(CIC)にあ
たるインドの持株会社は、RBI によって定められたガイドラ
インの条件を満たす必要があります。
FIPB および DIPP の判断は、承認申請から通常 12 週間から
16 週間以内に行われます。外国投資の申請は、案件の利点や
セクター政策に沿って案件ごとに判断されます。一般的に、優
先産業、インフラストラクチャーセクター、輸出競争力が高いと
見込まれる事業、大規模な雇用機会を創出する事業、農業セク
ターと関連する事業、社会的妥当性のある事業、資本注入およ
び技術導入に関連する事業、農業分野に関連する事業が優先さ
れます。
300 億ルピーを超える外国資本投資を含む FIPB の事前承認
ルートの外国投資の申請は、詳細な検討のために事前に CCEA
(Cabinet Committee of External Affairs)に提出されなければ
なりません。
外国直接投資額の計算
FDI の方針では、外国企業により直接インドの会社になされた
投資は、非居住者により所有または支配されるインド企業からの
投資と合わせて、外国投資額の上限もしくはセクターごとの上限
計算に含まれます。
非居住者により所有または支配されるインド企業によるダウン
ストリームインベストメントもまたセクターごとの上限計算が求め
られ、DIPP,FIPB および産業支援事務局(SIA)へ通知しなけ
ればなりません。
1991 年以来、外国投資規制は一貫して緩和の方向で動いて
おります。この傾向は継続しており、政府は昨年 1 年間に下記の
変更を行いました。
• 保険セクターの FDI 上限を 26% から 49% に緩和する
• 鉄道セクターの建設、 運行、 保守の特定の活動について
100% の FDI が自動認可ルートにて開放
10 PwC
• 防衛セクターの FDI 上限を政府の承認を条件として 26% から
49% に緩和する
• 医療機器製造に関する 100%FDI を認める
• 建設および開発セクターの FDI 方針を緩和する
外国ベンチャーキャピタル(FVCIs)による私募投資の
許可
外国ベンチャーキャピタル(FVCI)は、一定の条件のもと、私
募あるいは第三者から購入する形式で、適格証券(株式、株式
関連証券、債券、債権関連証券、IVCU の社債、ベンチャーキャ
ピタルファンド(VCF)など)に投資することができます。
登録外国証券投資家(RFPIs)による証券投資
既存の証券投資家、例えばインド証券投資委員会(SEBI)に
登録された FII や QFI は広くRFPI に分類されます。
個別の RFPI による投資額は投資対象の全払込資本の 10% が
上限となり、RFPI 全体の合計投資額は投資対象の全払込資本の
24% が上限となります。24%の制限は、インド企業の取締役会
決議と株主総会特別決議および事前の RBI への通知によって、セ
クターの上限まで引き上げることが認められています。さらに FDI
方針で複合セクター上限が定められている場合、RFPI による投
資は当該上限を超えてはいけません。RFPI による 49% までの投
資は FDI 方針に規定されていたとしても特別な承認は求められて
いません。
RFPI はインドの証券取引所に登録された仲買人を通じて、もし
くは SEBI の規定にのっとって公募または私募されたインド企業の
株式や転換社債を売買することができます。また、RFPI は、RBI
や SEBI の規定する上限内において政府債券や社債へ投資するこ
とができます。
LLP への外国直接投資
海外直接投資が自動認可ルートで認められているセクターお
よび事業に従事している LLP に対して、FIPB の承認を条件に
100%海外直接投資が可能です。なお、そのようなセクターや事
業はセクターや外国直接投資に関する一切の要件が設けられてい
ないことが条件となっています。LLP における海外投資が認めら
れる条件は、以下のとおりです。
•
•
•
•
•
LLP に対する海外直接投資は、現金出資のみ認められている
LLP によるダウンストリームインベストメントは認められていない
LLP は、ECB を利用できない
FII や FVCI は LLP に投資できない
持分の取得による投資
評価基準
居住者から非居住者に対してまたはその反対に非居住者から
居住者に対して発行あるいは譲渡される株式は以下の株式評価ガ
イドラインに沿う必要があります。
• 株式の評価は、その評価が独立企業間価格になるように国際
的に認められた価格設定方法によってなされなければなりま
せん。また、インドの株式市場に上場していない企業の株式
の場合は、勅許会計士もしくは SEBI に登録された商業銀行
によって証明される必要があります。しかしながら、上場企業
の株式譲渡の場合、対価は、SEBI ガイドラインによって定め
られている価格を下回ってはなりません。
• 居住者から非居住者に対して発行または譲渡される非上場
企業の株式価格は算定された株式評価額を下回ってはなり
ません。
• 非居住者から居住者へ譲渡される株式価格は居住者から非居
住者へ譲渡される際の最低価格を上回ってはなりません。
• 会社設立の際に非居住者(NRI を含む)に株式を発行する場
合には、定款で規定されている額面金額で株式発行すること
ができます。
非居住者から居住者への株式譲渡の場合(上場、
非上場問わず)
、
対価は居住者から非居住者への譲渡最低価格を上回ってはなりま
せん。
インド投資ガイド 2015年版
11
資金拠出形態オプション
インドに会社[子会社もしくはジョイントベンチャー(JV)
]を
所有している外国企業がインドの会社に資金を拠出する場合には、
以下のオプションがあります。
出資金
出資金は企業の株式となります。株主資本株式から構成されて
おり、その保有者に対して、議決権や配当を受け取る権利、株
式価値の値上がり益を享受する権利が与えられます。ただし、会
社清算の場合には、株式保有者への配当は、債券保有者やその
他債権者、優先株式保有者の清算配当の後になります。
外国企業へのインド企業の株式の割り当てに際しては、セクター
ごとの FDI の出資上限規定に準拠する必要があります。
出資に対する資金還流は、清算時または株式譲渡時に限られ
ます。会社法上、条件付で自己株式の買戻しも認められています。
減資も一定の条件のもとで裁判所の許可を得て実行することがで
きます。なお、出資に対する資金還流は FDI の制限を受けます。
一部払込済株式やワラントは、FDI 方針、2013 年会社法、
SEBI ガイドラインの規定に沿って外国居住者に対して発行するこ
とができます。一部払込済株式やワラントの価格設定および変換
式は事前に決定する必要があり、対価の 25%(プレミアムを含む)
は事前に受領する必要があります。残りの対価は、一部払込済株
式の場合は 12 カ月以内、ワラントの場合は 18 カ月以内に受領
しなければなりません。一部払込済株式の残りの対価を受領する
期限に関する規定は、RBI により特定の場合に免除されることが
あります。
強制転換権付優先株式・社債
インド企業は、強制転換権付優先株式・社債を発行して外国
からの投資を集めることができます。転換時の計算式や転換価格
は発行時にあらかじめ決める必要があります。
12 PwC
適用されるガイドラインは下記のとおりです。
• 価格の保証のない強制転換権付優先株式・社債のみ発行可
能です
• 任意転換に関する条項は、強制転換権付優先株式・社債のみ、
FDI 規定および以下の条件のもと認められます。
–– ロックイン期間は、最低 1 年
–– ロックイン期間は、これらの証券が割り当てられた日から効
力を持つ
–– 1 年のロックイン期間後、FDI 方針に基づき、非居住者の
投資家は RBI による価格設定の規定に基づき、転換が可能
優先株式の配当率は、財務省によって規定された限度を超える
ことはできません。現在は、State Bank of India(SBI)のプライ
ムローンレートから 3%高い料率で設定されています。
対外商業借入(ECBs)
ECB とは、最低平均満期 3 年以上の非居住者からの商業ローン
(銀行ローン、バイヤーズ・クレジット、サプライヤーズ・クレジッ
ト、証券化証券)を指します。
ECB は自動認可ルートでも事前承認ルートでも利用可能です。
工業、インフラ、サービスセクターに属する企業など適格な借り
手は ECB を通じて広く認められている貸し手から認められた資金
使途のために資金調達を行います。事前承認ルートでは、RBI に
よる事前承認が必要です。どちらのルートでも外国為替管理規制
法の規定に従って定期的な報告が必要となります。
ECB の最低満期は、2,000 万米ドルを超えない場合は 3 年、
2,000 万米ドルから 7,500 万米ドルまでは 5 年となります。
外国為替管理法は、ECB による借り入れコストの上限を定めて
います。コストには利息および外国通貨のその他コストが含まれ、
合計して下記を超えてはなりません。
平均満期
コスト合計
3年から5年
6カ月LIBOR + 350ベーシスポイント
5年以上
6カ月LIBOR + 500ベーシスポイント
その他のコミットメントフィー、前払いフィー、その他 INR で支
払うフィーや源泉税は合計借入コストから除外されます。その他
のコミットメントフィー、前払いフィー、その他インドルピーで支払
うフィーや源泉税は合計借り入れコストから免除されます。
ECB は、国際金融機関、設備サプライヤー、外国株主など、
一定の貸し手のみ提供可能です。外国株主から ECB を取得する
場合、その株主は最低 25%以上の株式を直接保有している必要
があります。500 万米ドルを超える外国株主からの ECB の場合、
ECB は直接投資額の 4 倍を超えてはいけません。間接株主から
の ECB は、その株主が少なくとも間接的に借り手の 51%以上の
株式を保有している場合に認められます。貸し手と借り手が共通
の親会社の下である場合、グループ会社間の ECB も認められて
います。
ECB は、産業セクター、インフラストラクチャーセクター、一
定のサービスセクター(ホテル、病院、ソフトウエア)において
は自動認可ルートが認められています。しかしながら、その他の
サービスセクターにおける ECB は貸し手が直接または間接株主で
グループ企業である場合のみ、銀行の承認により認められます。
ECB は使用用途に規制が設けられています。ECB は、資本財
の輸入(Foreign Trade Policy により規定)
、新規プロジェクトの
遂行、既存製造ユニットのリノベーション、拡大(土地取得を含む)
などに使用可能です。ECB は以下の用途では認められていません。
•
•
•
•
貸し付け、資本市場への投資、もしくはインド企業の買収
不動産セクターの活動
一般事業目的(下記記載を除く)
インドルピー建借入の返済(事前承認ルートにより承認された
通信、インフラストラクチャー、電力セクターかつ 100 億米ド
ル未満のスキームに関するものを除く)
製造、インフラ、ホテル、病院、ソフトウエアサービスセクター
に従事する事業者は以下の条件のもと、外国直接株主から運転
資金を含めた一般事業への使途目的のために、返済最低 7 年間
据え置きの ECB を自動認可ルートで利用することができます。
•
•
•
•
貸し手の株主は 25%以上の株式を直接保有
ECB は認められた用途以外の用途に使用してはならない
7 年の据え置き期間後に返済を開始しなければならない
期限前返済は認められない
ECB は、特定の上限内でルピー建もしくは外貨にて自動認可
ルートで利用することができます。上限を上回る ECB を利用する
には RBI の事前承認を得る必要があります。
インド投資ガイド 2015年版
13
株式担保
インド会社の発起人は、ECB の保証を目的に、銀行が反対し
ておらず、ECB に関する条件を満たしていることを条件として、借
り手企業もしくはそのグループのインド企業の株式を担保に供す
ることができます。インド会社の非居住者株主は、信用枠を確保
するために、保有株を担保に入れることができます。
グローバル預託証書(GDR)、米国預託証書(ADR)、
外貨建転換社債(FCCB)
GDR、ADR、FCCB を通じた外国投資は FDI として取り扱われ
ます。インド企業は規制に従った上で、国際市場で GDR、ADR、
FCCB の発行を通じて資金調達を行うことができます。
GDR、ADR、FCCB の発行については、 財務省、FIPB、RBI
の事前承認は必要ありません。ただし、発行後に FDI がセクター
別出資上限や政策要件を超える場合には、FIPB の事前承認が必
要となります。ADR、GDR を利用した不動産や株式市場への投
資は禁じられていますが、その他使用用途に制限はありません。
FCCB は ECB に適用される全ての規制の適用を受けます。イン
ド企業は規定に従い、自動認可ルートでの既存の FCCB の借換
は銀行の承認を条件に実施することができます。
外貨建他社株転換条項付社債(FCEBs)
インド企業は政府が公表した FCEB スキームに基づいて FCEB を
発行することができます。当該スキームの特徴は以下のとおりです。
• FCEB は外貨建ての社債であり、元利の支払いは外貨建てで
行われます。
• FCEB は、上場会社の発起人グループの一部である会社が発
行します。当該上場企業は、FDI の適格者でなければならず、
かつ他社の株式を保有している必要があります。FCEB はイン
ド国外の居住者が購入可能であり、社債に付与されている条
項に基づき、他社の株式に転換可能となっています。
14 PwC
• 当該スキームによる投資案件は、FDI および ECB の要件を充
足する必要があります。FECB の調達資金はプロモーターグ
ループ企業に投資可能であり、投資が下記の要件を満たして
いることを保証する必要があります。
–– ECB の条件で規定された使途を目的としている
–– インド国内の資本市場や不動産市場に投資されていない
• 海外の子会社や JV に関する直接投資のガイドラインにのっ
とって海外の子会社や JV への投資も認められています。
2007 年 5 月 1 日以降に発行された、その他の優先株式や社
債(非転換社債、任意転換社債、部分転換社債など)は負債と
して扱われ、借り手、貸し手、金額、満期、使用使途などに関し
て全て ECB の規制対象となります。
インド投資ガイド 2015年版
15
外国為替管理規制
外国為替取引は、1999年外国為替管理法(以下、FEMAという)
によって規制されています。外国為替取引は当座勘定取引と資本
勘定取引に区分されます。資本勘定取引とは、FEMA第6条3項に
て規定されている取引を含めて非居住者がインド国内の資産また
は負債を取得する取引や、居住者がインド国外の資産または負債
(偶発債務を含む)を取得する取引を指し、当座勘定取引とは、そ
れ以外の全ての取引を指します。
CATルールのもと、次の取引にかかる1居住者個人による外
貨取得は、規制緩和送金スキーム(LRS)5にて規定された各年度
250,000米ドルを上限(RBI事前承認が必要になる送金の範囲内)
として可能です。
当座勘定取引において、禁じられているもしくはインド中央政や
インド準備銀行(RBI)による事前承認が必要となるネガティブリス
トに該当する取引以外は、自由に外国為替取引を行うことができ
ます。
当座勘定取引
RBIは当座勘定における送金を監視および認可する権限を承認
取引銀行(authorised dealer bank RBI公認の金融機関)
に委譲し
ています。別途禁止または制限が加えられている取引を除いて全
ての当座勘定取引が許可されています。
ネパール、ブータン
以外の国への海外
旅行
贈答、寄付
雇用のための
海外渡航
海外移住
海外の近親者の世話
出張
海外での医療処置
に関する費用
海外留学
その他の当座勘定
取引
CATルール3において、次の取引にかかる外国為替取引は禁じられ
ています。
•
•
•
•
レースや競馬やその他のいかなる趣味による所得からの送金
宝くじの賞金からの送金
宝くじ、発禁雑誌、サッカー賭博、馬券の購入のための送金
インド企業の外国のジョイントベンチャーや100%子会社への
出資としての輸出コミッションの支払
• ルピーステートクレジットルートを利用した場合の輸出コミッシ
ョンの支払(紅茶およびタバコの輸出額10%までのコミッショ
ンを除く)
• 電話のコールバックサービスに関連する支払
• 非居住者が特別ルピー勘定スキームにより保有するファンドの
利息収入の支払
CATルールは政府による事前承認が必要となる外貨取得取引4
を別途に規定しています。
しかしその支払が送金者の外国為替口
座からなされる場合には事前承認は不要です。
しかしながら、出稼ぎ、海外医療、海外留学を目的とした外貨取
得については、1居住者個人でも250,000米ドルを超過する取得
が許可されています。その場合は承認手続きは不要ですが、出稼
ぎ先、医療施設、大学などの所在する国による証憑文書の提出が
必要となります。
個人以外の居住者により通常の取引により行われる当座勘定
取引は制限が設けられておりませんが、会社の場合には以下に列
挙された取引についてそれぞれ制限が設けられています。
• インド国外から提供されたコンサルタントサービスに対する送
金で、インフラプロジェクトに関するものは1プロジェクト当たり
1事業年度1,000万米ドルまで、インフラプロジェクト以外のプ
ロジェクトに関するものは1プロジェクト当たり1事業年度100
万米ドルまで
Foreign Exchange Management (Current Account Transactions) Rules, 2000
Foreign Exchange Management (Current Account Transactions)
Rules, 2000 に定めるスケジュールⅡに規定
5
Liberalised Remittance Scheme (LRS) 居住者個人として、許可される当座勘定取引
もしくは資本勘定取引、もしくはその両取引。
送金可能な上限総額は 250,000 米ドル。なお、CAT ルールにて禁止されている
もしくは違法な取引にかかわる送金は対象外となります。
3
4
16 PwC
• 投資額の5%もしくは100,000米ドルのいずれか高い方を上限
としたインドでの法人設立前費用の支払
• 直近3事業年度における外国為替収益の1%を上限とした最大
500万米ドルまでの特定目的の寄付
• 取引ごとに25,000米ドルもしくは売却収入の5%のいずれか
高い方を上限とした住居もしくは商業施設の売却にかかわる
外国の代理人に対する手数料
海外における事業拠点の設立を目的とする場合には、承認銀行
は初期費用の送金を直近2会計年度の平均売上高か平均利益の
15%、
もしくは純資産の25%のいずれか高い方を上限として許可
することになります。
しかしながら、経常的に発生する会議費などに
ついては、下記の要件を満たす場合には通常の事業において発生
する費用として、直近2会計年度の平均売上高もしくは平均利益の
10%を上限として送金をすることができます。
上記のそれぞれの目的について制限を超える送金は、RBIの事
前承認が必要になります。
• 海外の支店や事務所が開設されている場合もしくは駐在員が
派遣元のインド企業が行っている通常の事業活動を現地で行
う場合
• 海外の支店、事務所もしくは駐在員が法令を遵守している場合
• 海外の事務所(販売業またはその他の事業)
、支店もしくは駐在
員が偶発債務を含めてインドの本社が負うべき債務を生じさ
せないこと、そして、余剰資金をRBIの事前承認なくして海外で
投資しないこと、余剰資金はインドに送金すること
資本勘定取引
RBIはインド国内もしくは国外の居住者が行うことができる資本
勘定取引を限定列挙にて規定しており、以下の資本勘定取引は原
則としてRBIにより特別にまたは一般的に許可された範囲内での
み行うことができます。
•
•
•
•
•
•
インド国内の居住者による外国有価証券への投資
インド国外の居住者によるインド国内投資
外貨による借入および貸付
インド国内居住者と国外居住者間との間の当座資金の預け入れ
通貨の輸出入
インド国内外における不動産売買など
LRSでは居住者は認可された当座勘定取引に関して各年度にて
250,000米ドルまで送金可能です。認可された資本勘定取引は下
記のとおりです。
•
•
•
•
•
インド国外での外国為替口座の開設
インド国外での不動産の取得
海外への投資
海外での100%子会社もしくはジョイントベンチャーの設立
インド非居住者の親類へのインドルピー建もしくは外貨建ローン
また、100%子会社もしくはジョイントベンチャーの海外投資に
関して、インド企業の純資産(直近の貸借対照表監査日時点)の
400%(2013年は100%)が上限となりました。ただし、投資額が
自動認可ルートにおける適格制限以内(すなわち直近の貸借対照
表監査日時点における純資産の400%以内)の場合でも投資額が
10億米ドルもしくはそれ同等額超 える場合にはRBIの事前の承認
が必要となります。
資本の本国送金
インドに投資された外国資本は税金納付後の余剰利益を含め
て本国へ送金することができます。
インド国内での不動産取得
外国人はインド居住者からの相続でない限りインドでの不動産
取得は認められていません。
しかし、RBIの事前承認無しでも5年を
超過しないリースによる不動産の売買は可能です。設立許可され
た外国企業のインドの支店、
プロジェクトオフィスは、事業に必要な
インド国内での不動産を取得することが認められています。設立が
認可された駐在員事務所の場合には5年を超過しないリースでの
不動産取得が認められています。
ロイヤルティとノウハウ
インド企業は、商標および技術ロイヤルティの支払いについて
制限を受けることなく自動認可ルートで当該支払いを実行するこ
とができます。
支店/プロジェクト事務所からの送金
外国企業のインド支店から国外の本社への利益送金に関して事
前承認は不要です。
ただし、承認銀行(authorised dealer bank)
に
所定の文書を提出する必要があります。外国企業の支店、
プロジェ
クトオフィス、駐在員事務所の閉鎖に伴う残余資金の送金は、承認
銀行(authorised dealer bank)への所定の書類を提出することによ
り許可されます。
インド投資ガイド 2015年版
17
直接税
概要
会社の居住ステータス
インドにおいて所得税を課し、徴収し、管理する権限はインド
憲法によって中央政府に付与されています。インドでは、中央政
府によって施行された所得税法(1961 年)によって課せられます。
所得税規則(1962 年)には、所得税法の規定に従うための具
体的な手続きが記載されています。所得税法は、中央政府の
財務省の下にある直接税中央理事会(Central Board of Direct
Taxes)によって管理されています。直接税中央理事会は、所得
税法の適切な執行のため、さまざまな通達、指示、通知を随時
発行しています。
2014 年 3 月 31 日まで、インドで設立された会社、またはそ
の業務の支配および管理が全てインドで行われている会社はイン
ドに居住しているとされてきました。
納税者および申告書提出期限
インドにおける課税事業年度は 4 月 1 日から翌年の 3 月 31
日となっています。国際取引、または一定の国内取引にかかわ
る会計士による移転価格証明書を提出する必要のない企業につ
いては、課税事業年度が終了した年の 9 月末までに申告書を提
出する必要があります。前述の移転価格証明書を提出する必要
のある企業については、課税事業年度が終了した年の 11 月末
までに申告書を提出する必要があります。CBDT は一部の納税者
の申告期限を緩和する権限を有しています。
2015 年 4 月 1 日以降は、インドで設立された会社、またはそ
の実質的な管理の場所がインドに所在する会社はインドに居住し
ていると取り扱われます。
すなわち、居住地国の判定に際して支配および管理が全てイン
ドで行われているという要件が実質的支配地(POEM)基準に置
き換わりました。実質的支配地は会社全体として重要な管理と事
業上の意思決定がどこで行われているかを指します。
リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(LLP)の
居住ステータス
リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(LLP)は会社
形態に代わる形態で、有限責任のメリットがある一方で、パート
ナーシップの場合は、お互いの合意に基づき、パートナーシップ
のメンバーに内部管理の柔軟性を与えています。LLP は年間を通
して支配および管理が全てインド国外で行われている場合を除い
て、インドの居住者として取り扱われます。
法人税率
居住者/非居住者
基本税率
付加税
居住者
30%
1 億ルピー超の所得については、 所得税の
12%、 1,000 万ルピー超 1 億ルピー以下の
所得については所得税の 7%、 1,000 万ル
ピー以下の所得については、なし
非居住者
40%
1 億ルピー超の所得については、 所得税の
5%、 1,000 万ルピー超 1 億ルピー以下の
所得については所得税の 2.5%、 1,000 万
ルピー以下の所得については、なし
18 PwC
教育税
所得税と付加税
(適用される場合)
の 合 計 に 対し て
3%
実効税率
所得が 1 億ルピー超の場合:34.61%
所得が 1,000 万ルピー超 1 億ルピー
以下の場合:33.06%
所得が 1,000 万ルピー以下の場合:
30.9%
所得が 1 億ルピー超の場合:43.26%
所得が 1,000 万ルピー超 1 億ルピー
以下の場合:42.02%
所得が 1,000 万ルピー以下の場合:
41.2%
企業における課税所得の範囲
インド居住者である企業についてはその全世界所得が課税対
象となります。非居住者である企業については、以下の所得につ
いてのみ課税されます。
• インドで発生した所得
• インドで受領された、または受領されたと見なされた所得
• インド国内に所在する資産から発生した所得、インド国内源
泉所得、インド国内の事業に関連して発生した所得、インド
国内に所在する資本資産の移転によって発生した所得(給与、
利息、ロイヤルティ、技術サービス料など)
注意 : ‘事業に関連’ という用語はインドの税法上、租税条
約の事業所得において用いられる恒久的施設(PE)の代
替として用いられます。‘事業に関連’ は PE よりやや広い
概念で考えられています。
インド国外で設立された会社の株式または持分の間
接譲渡
所得税法において、インド国外で設立された会社の株式また
は持分の価値が直接的または間接的にインドに所在する資産に
実質的に由来するものである場合には、その株式または持分は
インドに所在するとみなされます。従って、そのような資産を間
接譲渡したことにより生じた所得はインドで課税されます。この点
について、次のように規定されています。
「実質的に」の意味
• インドにおける資産(有形資産・無形資産含む)の価値が
1 億ルピーを上回る場合
• その会社/事業体におけるインドの資産の価値の占める割合
がその会社/事業体の資産の価値 * の少なくとも 50%である
* 資産の価値は負債を差し引かない公正価値(FMV)を意味します
少数株主に対する緩和措置
所得税法では、譲渡日以前 12 カ月間において、非居住者お
よびその関連者ともに、その会社または事業体の価値がインドに
所在する資産に由来する会社または事業体を支配または管理する
権利を有しておらず、かつその議決権または株式または持分保有
割合が 5%を超えない場合には、間接譲渡から生じるキャピタル
ゲインはインドでは免税となる緩和措置が設けられております。
外国法人の合併または分割にともなって生じるインド法人株式
の間接譲渡については、所得税法が定める特定の条件を満たし
た場合には、キャピタルゲインは免税となります。
そのような外国法人または事業体から投資を受けているインド
法人は、所定の期間内に、税務当局に対して必要な情報を提出
しなければなりません。期限内に情報を開示しない場合には、所
得税法に規定された罰則規定が適用されます。
所得税法における非居住者または外国法人に対する
ロイヤルティと技術支援料の課税
インドに恒久的施設(Permanent Establishment)を有しな
い非居住者が、居住者から受け取るロイヤルティ、または技術支
援料については、2014-15 年度までその総額に対して基本税率
25%のインド源泉税(および付加税、教育目的税)が課されま
した。
2015 年度の税制改正において 2015-16 年度以降の課税年度
においてはロイヤルティおよび技術支援料に対する税率は 25%
から 10%に引き下げられました。
居住者によって支払われるロイヤルティ、または技術支援料の
基礎となる権利、資産または契約が、非居住者がインド国内に
有する恒久的施設に関連するものである場合には、ロイヤルティ、
または技術支援料の総額から経費を差し引いた正味の所得に対
して課税がなされます。租税条約においてより低い税率が定めら
れている場合、またロイヤルティ・技術支援料というものがより
狭義に解されている場合には、当該租税条約の規定が優先して
適用されます。
ロイヤルティの課税に関する議論
「ロイヤルティ」という表現は、全ての、またはいかなる種類
の資産、または情報の移転に関して受領すべき対価と定義されて
います。しかしながら、ロイヤルティの意味、性質、範囲、およ
び課税の可能性についてはこれまで相応の議論がなされてきまし
た。それらの議論のうち主なものは以下のとおりです。
• コンピューター・ソフトウエアの使用に係る対価の支払いは、
ロイヤルティと呼べるのか。
• ロイヤルティ支払いの基礎となる権利、資産または情報は、
ロイヤルティの支払者によって直接利用されなければならない
のか、またはそれらの権利、資産または情報がインド国内に
所在しなければならないのか、そしてロイヤルティの支払者に
よって、それらが管理・保有されていなければならないのか。
• 法令内で使用される「プロセス」という用語の意味など
上記のような議論に対応するため、所得税法に規定されるロイ
ヤルティの定義が 2012 年に以下のとおりに改定され、当該改定
は 1976 年 6 月 1 日から遡及して適用されることとされました。
• コンピューター・ソフトウエアの使用、または使用する権利に
対する対価はロイヤルティであり、いかなる権利、資産または
情報に係る権利の移転というものには、コンピューター・ソフ
トウエアを使用するいかなる権利(ライセンスの付与を含む)
の移転が含まれ、当該権利の移転の際の経路、移転方法を
問わない。
• 以下の条件を満たさない場合であっても、いかなる権利、資
産または情報の対価はロイヤルティである。
–– ロイヤルティ支払いの基礎となる権利、資産または情報が
ロイヤルティの支払者によって管理保有されていること
–– かかる権利、資産または情報がロイヤルティの支払者によっ
て直接利用されていること
–– かかる権利、資産または情報が、インド国内に所在すること
• 「プロセス」という用語は、人工衛星による送受信(あらゆる
信号の人工衛星への送信、増幅、および人工衛星からの受信
に伴う変換を含む)
、ケーブル、光ファイバーその他類似の技
術による送受信を含み、当該送受信が機密通信か公開通信で
あるかを問わない。
インド投資ガイド 2015年版
19
所得の計算
加えて、製造業を営む企業が 2005 年 4 月 1 日以降に取得、
導入した新規の製造設備、および 2013 年 3 月期以降において
は、発電、送電事業に供される新規の機械設備に対して、取得価
額の 20%の割増償却が認められています。さらに 2015-16 年度
から 2019-20 年度までの期間については、アンドラプラデシュ州、
ビハール州、テランガーナ州と西ベンガル州(インドの東部およ
び東南部の州)の指定された後進地域への投資については、割
増償却率は 20%に代わって 35%が適用されます。
会社の課税所得は以下に区分される :
•
•
•
•
事業所得
不動産所得
キャピタルゲイン
その他源泉の所得
事業所得
事業所得は全ての事業収益の合計から、所得税法に規定され
る控除項目を差し引くことで算出されます。
所得税法では、事業に関連する費用として収益から控除できる
経費項目を定めています。これらの経費項目には、事業所の賃
借料や借入金に係る支払利息などが含まれます。以下に掲げた
費用については、経費として認められないことが明確にされてい
ます。-個人的な支出、資本的支出(例外的に控除が認められ
ている一定の資本的支出は除く)
、違法行為のために要した費用、
所得を隠匿するために要した費用、所得税、富裕税その他の税
金を回避するために要した費用。
減価償却
課税事業年度内に保有・使用された資産に対しては、以下の
償却率による減価償却が認められています
工場建物
10%
器具備品
10%
生産設備機械(一般)
15%
コンピューター(ソフトウェアを含む)
60%
自動車(自動車運送業に使用されているものを除く)
15%
無形資産(ノウハウ、特許、著作権、商標、ライセンス、フラン
チャイズ権、その他同種の事業上、商業上の権利)
25%
省エネルギー設備、環境汚染防止設備といった優遇設備につ
いてはより高い償却率が認められています。発電、送電事業に
ついては、別途下記をご参照ください。
新規資産については、当該資産が課税事業年度内で 180 日
以上保有・使用されていた場合には 1 年分の減価償却が認めら
れています。それに満たない場合には、上記の半分の償却率を
適用することになります。
20 PwC
発電・送電事業を営む企業においては、上記の償却率を使用
することができると同時に、所得税規則(1962 年)に規定され
る定額法償却の償却率を使用することが可能です。当該償却率は
1.95%から 33.40%とさまざまです。
投資による所得控除
2014 年 3 月期または 2015 年 3 月期にそれぞれ 10 億ルピー
以上の新規設備投資を行った場合には、取得価額の 15%の所得
控除が認められています。
上記の恩典はその適用を範囲を拡大すべく、2015 年 3 月期
から 2017 年 3 月期の間に、それぞれ 25,000 万ルピー以上の
新規設備投資を行った場合にも、取得価額の 15%の所得控除を
認めることとされました。
2015-16 年度から 2019-20 年度までの期間については、アン
ドラプラデシュ州、ビハール州、テランガーナ州と西ベンガル州
の指定された後進地域への投資については、さらに取得価額の
15%の所得控除が適用されます。この所得控除には最低投資金
額の基準は設けられておりません。
ただし、新規設備投資には以下のものは含まれないこととされて
います。インド国内外で既に使用に供されていた機械設備(中古
資産)
、事務所スペース、または住居・宿泊施設で使用される設備、
オフィス用品(コンピューター、ソフトウエアを含む)
、自動車、お
よび他の法令により既に所得控除が認められたその他の機械設備。
当該所得控除を適用した機械設備については 5 年以上保有す
ることが義務付けられており、5 年未満で売却、または廃棄した
場合には売却、または廃棄した課税事業年度において、過去に
適用した所得控除が戻し入れられ、課税の対象となります。
CSR 活動に要した費用の損金不算入
会社法(2013 年)に規定される CSR 活動に要した費用は、
所得税法セクション 37(1)(事業目的の経費について損金算入
を認める一般規定)に規定される経費として認められず、損金に
算入することができません。
ただし、別途所得税法において個別に損金算入が認められて
いる CSR 費用については、当該個別規定に定める条件を充足す
る限りにおいて、損金算入が認められます。
科学研究開発
一定の条件を満たす場合、自社内の R&D 設備を持つバイオテ
クノロジー企業や製造業(特定品目の製造は除く)に従事する企
業内で発生した科学研究開発費の 2 倍の額を加重控除すること
が認められています。現時点では、当該税額控除は、2016-17
年度まで適用可能とされています。
さらに、2011-12 年度より、国立研究所、国立大学、国立工
科大学、その他政府により認可された科学研究プログラムの発生
費用には 200%の加重控除が認められています。
国内企業に対して支払った科学研究開発費用について、その
国内企業が以下の要件に該当する場合には 125%の加重控除が
認められています。
• 科学研究開発が当該国内企業の主な事業である場合
• 関係当局から事前の認可を受けている場合
• その他所定の要件を満たしている場合
特別経済地域(SEZ)
政府は輸出企業に対して国際的競争力を伴う円滑な環境を提
供する目的で、SEZ 政策を導入しました。SEZ とは、認められた
活動に関してはインド国外とみなされ、関税免除を受けることが
できる場所を指します。
SEZ 開発業者は、SEZ 開発業からの所得と利益に関して、政
府が SEZ と認定した年から 15 年間のうち連続する 10 年間につ
いて、100%の免税期間が認められています。2011 年 6 月以降、
配当分配税の免除は廃止されました。また、2011-12 年度より、
MAT の免除も廃止されました。ただし、SEZ 開発業者の支出に
ついては、関税、物品税、中央売上税などが免除となります。
認可された SEZ に事業を設立した場合には、製品やサービ
スの輸出から得られた利益のうち、最初の 5 年間はその利益の
100%、次の 10 年間は 50%(最後の 5 年間については、さら
に追加の条件があります)が免税対象となります。当該免税期間
は SEZ に設立された事業が製品やサービスの生産・提供を開始
した年から起算されます。
特定の事業における投資控除
以下の事業については、設備投資額(土地、のれん、および
金融商品は除く)の 100%の所得控除が認められています。
• 2009 年 4 月 1 日以降に設立、運営を開始したコールドチェー
ン事業
• 2009 年 4 月 1 日以降に設立、運営を開始した農作物保管の
ための倉庫事業
• 2007 年 4 月 1 日以降に敷設、運営を開始した国際天然ガス、
原油、石油パイプライン事業(パイプラインネットワークをつ
なぐ貯蔵庫事業を含む)
• 2010 年 4 月 1 日以降にインド国内に建設、運営を開始した
二つ星以上のホテル事業
• 2010 年 4 月 1 日以降に設立、運営を開始した、100 床以
上の患者用ベッドを収容する病院
• 2010 年 4 月 1 日以降に開始された、スラム街開発および復
興のための住宅開発プロジェクト
• 2011 年 4 月 1 日以降に開始された、中央政府、あるいは州
政府の計画事業に沿った住宅開発プロジェクト
• 2011 年 4 月 1 日以降に開始された新工場またはあるいは既
存工場の新設備での肥料生産
• 2012 年 4 月 1 日以降に設立または運営を開始した 1962 年
関税法上の通達または承認を受けた国内の貯蔵庫またはコン
テナ輸送ステーション
• 2012 年 4 月 1 日以降に開始した養蜂または蜂蜜または蜜ろ
うの製造
• 2012 年 4 月 1 日以降に設立または運営を開始した砂糖保管
の倉庫事業
2012 年 4 月 1 日以降に開始された特定の事業、具体的には
コールドチェーン事業、農作物保管のための倉庫事業、100 床
以上の患者用ベッドを収容する病院事業、中央政府、あるいは
州政府の計画事業に沿った住宅開発プロジェクト、肥料生産事
業については、2012 年 4 月 1 日以降に発生した設備投資額の
150%の投資控除が認められています。
インド投資ガイド 2015年版
21
その他食品加工施設などに係る免税期間
2001 年 4 月 1 日以降に開始した果物や野菜の加工、保存、包
装や穀物の貯蔵・輸送に従事する企業は、最初の 5 年間の利益
に対して 100%所得税が免除されます。また次の 5 年間は、30%
(法人でない場合は 25%)の控除が認められます。
さらに、当該免除期間は、2009 年 4 月 1 月以前に、食肉製品、
水産製品、乳製品の加工、保存、包装の事業を開始した企業に
も適用されることになりました。
インフラ開発に従事する企業に対する控除
インフラ分野に関連する事業に対しては以下のような利益対象の
税制上の優遇を受けることができます。
分野
対象
期間
電力
• 発電
• 送電・配電
• 大規模な改修と設備更新
• オペレーションの 最 初 の • 2017年3月31日までにオペ
15年間のうちの連続した
レーションを開始
10年
港湾・空港
• 港湾または空港の開発または運営と維持
• 内陸水路、内陸港、海上航路に対しても適用
• オペレーションの 最 初 の • 新しいインフラ施設
15年間のうちの連続した • 政府または関係機関との合意
10年
道路・高速道路
• 港または空港の開発または運営と維持
• 有料道路を含む道路、橋
• 高速道路とそれに伴う住宅供給その他付随した開発
• オペレーションの 最 初 の • 新しいインフラ施設
20年間のうちの連続した • 政府または関係機関との合意
10年
水事業
• 水供給プロジェクト、灌漑プロジェクト、衛生、下水道や
廃棄物管理システム
• オペレーションの 最 初 の • 新しいインフラ施設
20年間のうちの連続した • 政府または関係機関との合意
10年
22 PwC
要件
非居住者に対する推定課税の仕組み
所得税法では非居住者の納税者の課税所得を総収入に対する一定の割合にて算定する特別の規定が設けられています。
この推定課
税により不確実性とコンプライアンスが軽減されることが期待されています。
項目
運送
オイル・ガス
適用
運送事業に従事する非居住者
鉱物油のための探査、抽出、生産 航 空 事 業に従 事 する非 居
のためにプラントの供給や機械の 住者
レンタルに関連したサービスやサ
ポートに従事する非居住者
ターンキー電力プロジェクト
に関連して、工場や機械の土
木工事や組立、テストや試運
転に従事する非居住者(これ
らのプロジェクトはインド中央
政府によって承認される必要
があります)
推定利益率
インドのあらゆる港から輸送さ
れ、またはインド国外のあらゆる
港からインドに向けて輸送され
たまたは輸送されたとみなされ
る乗客、家畜、郵便物または商
品について、非居住者または当
該非居住者に代わる者に対して
支払われる金額の7.5%
非居住者がプラントの供給や機械
のレンタルに関連して提供したサ
ービスやサポートのに伴って支払
われるまたは受け取る金額の10%
インド国内またはインド国
外からの乗客、家畜、郵便
物または商品の輸送に対し
て受け取る金額の5%
非居住者または当該非居住
者に代わる者に対してインド
国内外で支払われる金額の
10%
あり
(以下の注を参照)
なし
あり
(以下の注を参照)
会計帳簿を備え なし
付けることでよ
り低い利益率や
欠損を適用する
選択肢の有無
航空
ターンキー電力プロジェクト
注 : 非居住者の納税者は会計帳簿を備え付けて会計監査受けることで、実際の利益利率が推定利益率よりも低い場合には、確定申告書にて、推定利益率
よりも実際の利益率を用いて課税所得を計算する選択もできます。
インド投資ガイド 2015年版
23
支店の所得
外国法人の支店はインドで稼得した所得について、外国法人
に適用される税率にて課税されます。支店から本社への利益送金
は源泉徴収の対象外となります。
本社費の損金算入の制限
非居住者が会計帳簿を備え付けている場合で、本社で負担し
た一般経費を支店にて損金算入できる金額には以下の上限が設
けられています。
• 関連する年度における「調整所得」の 5%に等しい金額
• インドでの事業に起因するして生じた本社費の実額
キャピタルゲイン
以下の資産の移転によって生じたキャピタルゲイン
A.短期資本資産(下記B.を除く)
B.短期資本資産のうち、移転の際に証券取引税(Securities Transaction
Tax)が課される上場株式、株式投資信託、事業投資信託(特別目的会社の
発行する株式の移転によって取得された事業投資信託は除く)
税率 *
居住者
非居住者
通常税率
通常税率
15%
C.長期資本資産のうち、移転の際に証券取引税が課される上場株式、株 免税
式投資信託、事業投資信託(特別目的会社の発行する株式の移転によっ
て取得された事業投資信託は除く)
15%
免税
D.長期資本資産のうち、上場株式、投資信託、割引債券で上記C.以外のもの
10%
10%
E.その他の長期資本資産
20%
20%
F. 長期資本資産のうち、非居住者が保有する非上場株式
* 付加税、教育目的税が加算されます
24 PwC
該当なし
10%(物価スライド補正や為替変動
補正はありません)
短期資本資産とは、その資産の保有期間が 36 カ月を超えない
もの(ただし、上場株式、株式投資信託、割引債券については
12 カ月を超えないもの)を言います。また、非上場株式、投資
信託のうち、2014 年 4 月 1 日から 2014 年 7 月 10 日までの間
に移転した資産で、その保有期間が 12 カ月を超えないものにつ
いては短期資本資産に分類されます。
政府によって発行される物価連動国債を除く長期資本資産につ
いて、居住者に対しては取得価額の調整など、物価スライド補正
や為替変動補正が認められています。
外国機関投資家の所得の定義
証券取引から生じる外国機関投資家への所得の性質について、
税金に係る予測可能性を増すために所得税法が改正され、インド
証券取引委員会の定める規制に則ってなされた外国機関投資家
による証券投資は、資本資産取引に分類されることとされました。
従って、外国機関投資家によるこれら証券の移転については、資
本資産取引として取り扱われることとなります。外国機関投資家は
2014 年 6 月 1 日から、国外金融資産投資(Foreign Portofolio
Investment)制度によって規制されることとなりました。
不動産からの所得
事務所、住宅の賃貸から得た所得はインドでは不動産所得の
区分にて課税されます。以下の費用以外は所得から控除すること
はできません。
• レンタル収入の 30%の通常控除
• 賃貸不動産の取得に係る借入利息
贈与税
インドには贈与税はありません。ただし、所得税の規定におい
て受贈益に対する課税が規定されています。
個人から受けた贈与
対価なしに合計 5 万ルピーを超える金額、収入印紙額が 5 万
ルピーを超える不動産、あるいは適正市場価格が 5 万ルピーを
超える不動産を受領した場合は、「その他の所得」として課税対
象となります。ただし、以下の場合は課税の対象外となります :
• 親戚(配偶者、兄弟、配偶者の兄弟、直系尊属、直系卑属)
からの受領
• 結婚の際の受領
• 遺言または相続による受領
• 贈与者の死亡による受領
非公開会社から受けた株式
非公開会社の株式を無償または低廉な対価にて取得した場合
には、以下のように課税されます。
• 無償で取得した場合:当該株式の時価を所得として扱う
• 低廉な対価にて取得した場合:当該株式の時価と対価との差
額を所得として扱う
なお、所得が 5 万ルピーを超えない場合には課税はされません。
非公開会社が時価を上回る発行価格にて株式を発行した場合
には、上回る部分がその会社の所得として取り扱われます。
その他収益
その他特定の項目によって定義されない収益はその他収益とし
て課税の対象となります。その他収益に対する税金を算出するに
際しては、当該その他収益を得るために必要とされる費用につい
ては経費項目として個別に損金算入が認められています。
インド投資ガイド 2015年版
25
配当
源泉税
内国法人は、配当を支払うに際して 15%(および付加税、教
育目的税)の配当分配税(Dividend Distribution Tax)を配当
決議日、配当分配日、または実際の配当支払日のいずれか最も
早い時期に納付する必要があります。ただし、以下のような配当
を受領している会社が配当を支払う場合には配当分配税は課され
ません。
居住者、非居住者は、特定の費用を支払う場合には源泉徴収
を行う義務が課されています。源泉徴収の対象となる費用および
その税率は以下のとおりです。
居住者に対する支払
支払の性質
金額基準 (注1)
源泉税率
• インドの内国法人である子会社から支払われた配当で、当該
子会社が配当を支払う段階で既に配当分配税が支払われてい
る場合
• 海外の子会社から支払われた配当で、15%の税金が既に支
払われている場合
証券に対する利息
なし
10%
証券に対する利息以外の利息
5,000ルピー
10%
専門・技術サービスの対価
3万ルピー
10%
委託料、仲介料
5,000ルピー
10%
配当分配税の対象となった配当は、その配当の受領者である
株主においては課税の対象とはなりません。
工場、機械、設備の賃貸料
18万ルピー
2%
土地、建物、家具の賃貸料
18万ルピー
10%
その他法人税の論点
請負の対価の支払(個人、HUFに
対するものを除く)
3万ルピー(単一の支
払)7.5万ルピー(支
払の合計)
2%
請負の対価の支払(個人、HUFに
対するもの)
3万ルピー(単一の支
払)7.5万ルピー(支
払の合計)
1%
ロイヤリティまたは技術支援料
3万ルピー
10%
会社以外の全ての者に適用される代替最低税
通常の所得税法の規定による税金の支払額が(所得税法の規
定に基づく)調整後総所得の 18.5%を下回る(会社以外の)者
については、調整後総所得の 18.5%の代替最低税(Alternate
MinimumTax) が課されます。 納付した代替最低税は、 所得
税法の規定に基づき、10 年間繰り越して、将来の法人税から
控除することができます。個人、ヒンズー非分割家族(Hindu
Undivided Family)
、団体、組合などの場合には、調整後総所
得が 200 万ルピーを超えなければ代替最低税は課税されません。
調整後の会計利益の 18.5%は内国法人および外国法人が最低限
支払わなければならない税となっています。しかし、外国法人は
特定の所得(例えば、株式の売却益、利息、ロイヤルティまたは
技術支援料)については、その所得に対する税金の支払額が最
低代替税の計算に基づく税額よりも低い場合であっても、最低代
替税は課税されないこととなっています。この外国法人に対する
緩和措置は長期間における法廷での論争の末に設けられました。
この緩和措置は 2015-16 年度から適用されます。
会社以外の全ての者に適用される代替最低税
通常の所得税法の規定による税金の支払額が(所得税法の規
定に基づく)調整後総所得の 18.5%を下回る(会社以外の)者
については、調整後総所得の 18.5%の代替最低税(Alternate
Minimum Tax)が課されます。納付した代替最低税は、所得
税法の規定に基 づき、10 年間繰り越して、将来の法人税から
控除することができます。個人、ヒンズー非分割家族(Hindu
Undivided Family)
、団体、組合などの場合には、調整後総所
得が 200 万ルピーを超えなければ代替最低税は課税されません。
26 PwC
(注2)
注:
1. 費用の種類ごとに異なる金額基準が定められています。
1 課税年度における同一の者に対する(他の特別の定
めがある場合の除く)支払金額の合計が上記の金額基
準を上回る場合に支払者に源泉義務が課せられます。
2. 証 券 以 外 の 利 息 に 対 する 源 泉 徴 収 の 金 額 基 準 は
5,000 ルピーですが、銀行、協同組合または郵便局
の預金から受ける利息対する源泉徴収の金額基準は
1 万ルピーです。
仮に上記の費用の受領者が PAN を有していない場合には、
関連する条文で規定された税率、適用税率、または 20%
のいずれか高い税率が適用されます。
自己株式の取得に対する課税
非居住者に対する支払
支払の性質
源泉税率
配当
0%
外貨に対する利息
20%
融資契約において外貨建で借り入れられる融資また
は長期のインフラ債(またはルピー建債)に対する利
息(2012年7月から2017年7月の間に借り入れら
れるもの)
5%
インド法人によって発行される長期のインフラ債(ル
ピー建建あるいは政府債)に対する利息(2013年6
月から2017年7月の間に借り入れられるもの)
5%
ロイヤルティまたは技術支援料
10%
非課税とならない長期のキャピタルゲイン
20%
競馬による所得
30%
その他の所得
40%
注:
• 付加税、教育税を加味した税率が源泉徴収の実効税率
となります。
• 特定の投資信託からの所得については免税とされてい
ます。
• インド法人から受け取った配当は、株主においては非課
税となります。
• 株式指向性ファンドや会社の株式の譲渡から生じる短期
キャピタルゲインについて証券取引税が課されている場
合、15%で課税されます。
• 上場会社や株式指向性ファンドから生じる長期のキャピ
タルゲインについて証券取引税が課されている場合、
免税となります。
• 非居住法人への支払については源泉徴収義務が課され
るか否かの金額基準は設けられておりません。
• 仮に上記の費用の受領者が PAN を有していない場合
は、関連する条文で規定された税率、適用税率、また
は 20%のいずれか高い税率が適用されます。
自己株式の取得対価と発行価額の差額に対しては、20%の税
率(および付加税、教育目的税)が課され、自己株式を取得し
た会社が負担することとされています。自己株式の取得対価を受
領した株主においては課税はされません。
非居住者に対する税制
税務上の居住者証明(TRC)
非居住者が租税条約に基づく恩典を利用しようとする場合には、
当該非居住者が居住する国の税務当局が発行する税務上の居住
者証明の写し、およびその他必要な書類、情報を提出する必要が
あります。
税務情報交換協定(TIEA)
2011 年以降、インドはバハマ、バミューダ、ベリーズ、英領
ヴァージン諸島、ケイマン諸島、ガーンジー、マン島、ジャージー、
リベリア、モナコ、およびサンマリノといった国や地域と税務情報
交換協定を締結してきました。税務情報交換協定締結の目的は、
世界各国の国や地域との情報交換によって税務に関する国際協
力を促進することにあります。
一定の地域に所在する者との取引
反租税回避のための諸施策は、インドと効果的な情報交換を
行っていない国や地域に所在する者との取引を抑制するために導
入されました。これらの政策は、インド政府に対して、インドと情
報交換を行わない国、または地域を「特定法域」として指定する
権限を与えています。特定法域に所在する納税者、または相手方
との取引は関連者との取引と見なされ、移転価格税制に関する各
種の規定が適用されることとなります。特定法域に所在する者と
取引することで、さらに以下のような影響があります。
• インド税務当局が、特定法域に所在する金融機関から必要な
情報を得られることが確約されなければ、当該金融機関に対
する支払いについては、経費としての損金算入が認められま
せん。
• インド税務当局に対して必要な情報、および事前に定められ
た書類を提出しなければ、特定法域に所在する者に対する支
払いについては、経費としての損金算入が認められません。
• 特定法域に所在する者から受領する支払いについては、当該
特定法域に所在する者がその支払いの根拠、またはその支払
いを受領する者が受領する根拠を疎明にするのでなければ、
インドにおいて自動的に課税の対象とされます。特定法域に
所在する者に対する支払いはより高い税率での源泉税の対象
となります。
• 特定法域に所在する者に対する支払いはより高い税率での源
泉税の対象となります。
一般的租税回避行為包括否認規定(GAAR)
当初 GAAR は 2015 年 4 月 1 日から施行される予定でした。
しかし、当該規定の施行は 2 年延期、すなわち 2017-18 年度
からとされました。当該延期は OECD による BEPS プロジェクトと
当該プロジェクトへのインドの積極的な参加をきっかけにしたも
のです。
租税回避行為包括否認規定は、納税者が行う取引などを、許
容しがたい回避行為(Impermissible Avoidance Agreement)と
して認定する権限を税務当局に付与しています。かかる取引と認
定されれば、所得税法、または租税条約における税務上の恩典
が否認されることとなります。租税回避行為包括否認規定が適用
されるのは、取引などの主たる目的が、単に税務上の恩典を得る
ためだけであると認められる場合であり、納税者が行う取引など
の一部、または全部を許容しがたい回避行為として認定すること
ができます。
インド投資ガイド 2015年版
27
ただし、以下の場合においては租税回避行為包括否認規定は適
用されません。
• 取引の参加者全員に対する税務上の便益の合計額が一課税
事業年度で 3,000 万ルピーを超えない場合
• インド証券取引委員会に登録済みの外国機関投資家であって
租税条約上の恩典を利用しない場合、および外国機関投資家
に対する非居住者からの投資
• 2017 年 3 月までに行われた投資
富裕税
富裕税は 2015-16 年度以降廃止されました。
ブラックマネーを抑制するための対策
所得税法とは別にインド国外のブラックマネーに対する法律が
導入されました。国外の所得と資産の非開示に対しては、懲役と
厳しいペナルティを課す厳しい処置が導入されています。
税務訴訟の手続き
税務訴訟の手続きは以下のとおりです。
税務調査官
税務調査
紛争解決機構(DRP)は
代替的な紛争解決の仕組み
(税務当局の一組織)
28 PwC
下級税務裁判所
(CIT(A))
/DRP
下級税務裁判所(CIT(A))は第一段階の異議申立機関
(税務当局の一組織)
上級税務裁判所(法務省)
最終的な事実認定
高等裁判所
法律解釈
最高裁判所
最高法廷
代替的な紛争解決の手段
事前照会制度(AAR)
AAR は非居住者によって行われるまたは居住者が非居住者と行
う既存の取引または今後予定される取引で、税務当局との間で係
争が生じていないものについて課税関係を確定させるために用い
ることができます。AAR は一定の要件基で国内取引も申請するこ
とができます。AAR は申請から 6 カ月以内に判決を下すことが規
定されております。しかし、実務上 1 年から 2 年の期間を要して
います。納税者および税務当局は AAR の判決に従わなければな
りません。なお、判決に異議がある場合には、高等裁判所、最
高裁判所への控訴が認められています。
Income Tax Settlement Commission(ITSC)
ITSC は法解釈または事実認定を巡る税務問題を解決するため
に設けられた独立機関です。ITSC には申請できるのは一納税者
につき 1 回に限定されています。ITSC を利用するメリットとして
ペナルティ、起訴が免除があります。また、ITSC は申請から 18
カ月以内に判決を出すことが求められています。納税者および税
務当局は ITSC の判決に従わなければなりません。なお、判決に
異議がある場合には、高等裁判所、最高裁判所への控訴が認め
られています。
相互協議(MAP)
相互協議は租税条約に基づいてクロスボーダー取引に係る二
重課税の解消を目的に 2 カ国間で開かれる会議です。その会議
の結果を納税者が受け入れた場合には、税務当局はそれに従わ
なければなりません。
事前確認制度(APA)
APA では税務当局の APA 担当官が納税者と議論しながら独立
企業間価格を決定します。APA では納税者が対象となる取引と
関連する事項を決定するための、機能、資産、リスク(FAR)プ
ロファイルの詳細な情報の共有が求められます。APA はインドで
は新しい手続きで、APA 担当官による納税者との議論や実地検
分が行われており、この点で通常の移転価格調査よりも納税者の
事業をより理解しようとする税務当局の姿勢がうかがえます。
インド投資ガイド 2015年版
29
個人所得税
インドで働く外国人のみに対する特別な税体制はありません。
個人所得税の課税は課税年度(インドの課税年度は 4 月 1 日か
ら翌年 3 月 31 日まで)の居住ステータスに基づいて決定されます。
居住ステータスは実際にインドに滞在した日数によって区分され
ています。
国内法によって、以下のいずれかをみたす場合に居住者とみな
されます。
• 課税年度において 182 日以上滞在している(182 日ルール)
• 課税年度において 60 日以上滞在しており、かつ過去 4 年間
の滞在期間が 365 日以上である(60 日ルール)
ただし、
インド国民がインド国外で就労するためにインドを離れる、
またはインド国外のインド国民やインド生まれ(PIO)の人がインド
を訪問する場合には 182 日ルールのみが適用されます。
上記の条件のいずれも満たさない場合には非居住者(NR)と
なります。
居住者とみなされ、かつ以下のいずれかを満たす場合には、
非通常の居住者(RNOR)とみなされます。
• 過去 10 年のうち 9 年はインドにおける非居住者であった
• 過去 7 年間のインドでの滞在が 729 日以下である
上記の条件を満たさない場合は通常の居住者(ROR)とみな
されます。
インドにおける滞在日数の算定に当たっては、入国日および出
国日が 1 日の滞在日数となります。外国人がインドおよび母国の
両方において税務上の居住者とみなされた場合、租税条約により
居住者ステータスが決定されます。
課税範囲
居住ステータスによる課税範囲は以下のとおりです。
• ROR:課税年度における世界所得
• RNOR:インドにて受領した所得、インドで発生した所得、イ
ンドからコントロールされているビジネスから発生した所得、
またはインドにおける専門的職業からの所得
• NR:インドにて受領した所得またはインドで発生した所得
給与所得への課税
インドにて提供されたサービスの対価である給与所得は、所得
を受領する場所にかかわらずインドで課税されます。
課税所得には雇用地(Office of employment)で発生した現
金および現物で受領した全ての対価を含みます。雇用主が給与
だけを提供するとは限りません。給与、手数料、ボーナス、コミッ
ションの他に、主な報酬としては手当て、個人負担費の支払い、
教育費、ベネフィットがあります。当該報酬は従業員に直接支払
われたか否かにかかわらず、所得に含まれます。
雇用主から提供された住宅手当は通常、給与の 15%もしくは
実際の家賃のいずれか低いほうに課税されます。ホテルでの宿
泊は、給与の 24%もしくは実際の金額のいずれか低いほうに
課税され、食費および洗濯費は全額課税対象となります。直接
または間接的に現在または以前の雇用主から無償もしくは特別
価格で割り当てられた特定の証券や貢献に対して支払われる株式
(Sweat equity)、および雇用主により認定された年金基金口座
への拠出が 10 万ルピーを超えた場合に、手当として従業員に課
税されます。雇用主から提供される自動車および運転手について
も手当として優遇税率にて課税対象となります。
インドにおける従業員給与については状況により課税上の問題
点が異なり、また当局の見解もさまざまです。従って、税負担お
よび リスクを軽減するためにも給与パッケージ全体について専門
的なアドバイスを受けることが重要です。
30 PwC
源泉税
給与所得に対して雇用主は源泉徴収を行い、給与が支払われ
た月の翌月 7 日までに納付する必要があります。ただし 3 月分の
みは 4 月 30 日まで納付期限が延長されます。この規定は雇用主
がインドの居住者でなくても適用されます。
租税条約
納税者が他の国で居住者となっている場合、当該納税者は租
税条約によってインドでの税金が軽減されることがあります。租税
条約では、どちらの国において納税者が税務上の居住者とみなさ
れるかを複数の方法によって評価しています。
ほとんどの租税条約では、他の国の居住者のインド滞在が課税
年度において 183 日未満であり、その他の条件を満たす場合、イ
ンドにおける給与所得の課税を免除しています(短期滞在免除)
。
しかし、租税条約の恩恵を受けるためには、当該納税者は自
国の税務当局より当該納税者が自国の居住者であることを証明す
る居住者証明書を入手する必要があります。租税条約が締結され
ていない国の個人については、国内法によって短期滞在免除が
適用されます。その場合、インドにおける滞在が 90 日を超えて
おらず、その他の条件を満たしている必要があります。
個人所得税率
インドにおける個人所得税は累進課税の形態をとっており、
2015-16 年度の税率は以下のとおりです。
課税所得(ルピー)
加算額(ルピー)
前の段階を超える所得
に対する税率
0 ~ 250,000
-
0%
250,001 ~
500,000
-
10%
500,001 ~
1,000,000
25,000
20%
1,000,001 ~
1,25,000
30%
高齢者(60 歳以上)は、300,000 ルピーまでの所得につい
て所得税を支払う必要がありません。超高齢者(80 歳以上)は
500,000 ルピーまで所得税が免除されます。
所得が 250,000 ルピーから 500,000 ルピーの個人は 2,000
ルピーまで税額控除が受けられます。また、1,000 万ルピー超の
所得がある個人については 12%のサーチャージが課されます。さ
らに、上記に加えて、教育目的税 3%および付加税(該当する場
合)が課されます。
税務登録
個人は納税者番号(PAN)を取得する必要があります。PAN
は税務申告および源泉徴収の書類などに必要となります。
確定申告
各年度末に、規定されたフォームに基づいて確定申告を行い
ます。確定申告の締め切りは 7 月 31 日です。提出期限が遅れた
確定申告は対象課税年度終了から 2 年以内であれば提出するこ
とができます。所得の合計が 500,000 ルピーを超える場合、通
常の居住者で外国資産を保有している場合、もしくはインド国外
の口座を有している場合には、電子申告が義務づけられています。
2015-16 年度から一定の保有財産に対して課税する富裕税が廃
止されました。
その他
ビザ
インドに入国する外国人はビザを取得する必要があります。ビ
ザは各国インド領事館または高等弁務官事務所で滞在目的およ
び滞在期間に応じて発行されます。外国人は雇用ビザなしでイン
ドにて就労することができません。雇用ビザは高度なスキルを有
している、もしくは専門職の雇用について、規定の所得を超える
場合に発行されます。当該ビザの期間は通常 1 年から 2 年です。
ビザはインドにて延長することができます。
ビジネスミーティングやジョイントベンチャーの設立を目的に訪
問する外国人はビジネスビザを取得します。ビジネスビザはイン
ド国内にて雇用ビザに変更することができません。
インド投資ガイド 2015年版
31
外国人登録(FRRO)
雇用ビザを保有する外国人またはインドに 180 日を超えて滞在
する外国人は到着後 14 日以内に外国人登録局(FRRO)に登録
する必要があります。FRRO に規定の書類を提出後、在留資格を
得ることができます。
インド国外での給与支払
現行の外国為替管理法では、給与に対する税金がインドで支
払われていることを条件に、インドのオフィス、支店、もしくは子
会社に出向している外国企業の従業員がインド国外に外貨で銀行
口座を保有し、給与の全額をインド国外で受領することを認めて
います。
社会保障(積立基金)
政府は、2008 年 10 月にインド国内の企業で働く外国人従業
員に対して、強制的に加入を義務付ける社会保障制度を導入しま
した。 ただし、従業員がインドと社会保障協定が締結されている
国から派遣されており、下記の条件を満たす場合、インドの社会
保障制度の加入は免れることができます。
• 母国にて市民または居住者として社会保障制度に拠出して
いる、および
• 社会保障協定にて定められた期間において「一時派遣労働
者」の地位を享受している(その従業員が母国の当局より母
国の社会保険に加入していることを証する証明書を受領して
いること)
同様に、インドが 2008 年 10 月 1 日以前に包括的経済連携
協定を締結した国からの従業員は以下の要件を満たした場合に
はインドの社会保障制度の加入は免れることができます。
• 母国にて市民または居住者として社会保障制度に拠出して
いる、および
• 協定にて相手国の自然人によるインドへの社会保障制度への
拠出免除が明示されている
シンガポールはインドと 2008 年 10 月 1 日以前に包括的経
済連携協定を締結した唯一の国です。インドはこれまでに、18
カ国と社会保障協定を締結しました。しかしながら、実際に運
用されているのは、ベルギー、ドイツ、スイス、ルクセンブルク、
オランダ、デンマーク、韓国、フランス、ハンガリー、フィンランド、
スウェーデン、チェコ共和国、ノルウェーおよびカナダとの間で
締結した社会保障協定のみです。従業員はそれぞれ給与(主
に基本給、補填手当、残留手当からなる。賞与、住宅手当など
は除く)の 12%を従業員積立基金(Employee’ s Provident
Fund)に拠出します。
雇用主は同額(給与の 12%)を拠出し、雇用主分と従業員
分とを併せて翌月 20 日までに預託します。雇用主負担の 12%
のうち、給与の 8.33%が、従業員年金基金に配分され、残りは
従業員積立基金に配分されます。しかし、外国人が 2014 年 9
月 1 日以降にインドの社会保険に加入している会社で勤務を開
始し、かつその月給が 15,000 ルピー以上の場合には上記のよ
うな従業員年金基金への配分は不要となり、雇用主負担分の全
てが従業員積立基金に配分されます。
積立基金の累積残高は、以下の場合に払い戻し可能です。
• 被雇用者が退職した場合もしくは 58 歳に達した場合のいずれ
か遅い方
• 身体的もしくは精神的な恒久的障害により退職した場合(医
師の証明が必要)
• 規定にある特定の疾患による場合
• 社会保障協定を締結する国からの労働者が退職(離任)した
場合
社会保障協定を締結している国から派遣されている外国人の場
合には、積立基金は直接その外国人の銀行口座または雇用者を
通じて払い戻されます。また、それ以外の場合には、その外国人
のインドの銀行口座に払い戻しが行われます。また、外国人が払
い戻しを受け取る目的でインドの銀行口座を維持することができ
るように規制緩和がされています。
32 PwC
従業員年金基金への積立額は、退職その他年金の払い戻しに
関する規定で決められている一定の事由に該当した場合に払い戻
されます。原則として、外国人はインドの会社に対して 10 年以
上勤務していないと年金の払い戻しを受け取る権利が与えられま
せん。しかし、社会保障協定を締結している国から派遣されてい
る外国人の場合には、インドの会社に対して 10 年以上勤務して
いない場合であっても、年金の払い戻しを受ける権利が与えられ
ています。
海外からインドへの出向に際しては、適切な出向形態のストラ
クチャーおよびそれをサポートする十分な書類の整備が必要とな
ります。重要な検討事項は以下のとおりです。
•
•
•
•
•
•
•
外為法
法人税(恒久的施設のリスク)
源泉税
移転価格税制
サービス税
会社法
インドの社会保険
ブラックマネー法
ブラックマネーを抑制する目的で、通称ブラックマネー法と呼
ば れ る 新し い 法 律[The Black Money (Undisclosed Income
and Foreign Assets) and Imposition of Tax Act, 2015.]が国
会で承認されました。この法律は ROR に該当する納税者を適用
対象として、未開示の国外所得、国外資産が検出された場合、
確定申告書における国外所得、国外資産の開示漏れがあった場
合などに対する厳しい罰則規定を設けていることがこの法律の特
徴として挙げられます。未開示の国外所得、国外資産が検出さ
れ場合には、ブラックマネー法に基づく30%の税率による税金
に加えて、その税金の 300%の罰金および最長 10 年の禁固刑
が課されます。また、確定申告書にて未開示または不正確な情
報を開示した場合には、100 万ルピーの罰金および最長 7 年の
禁固刑が課されます。
インド投資ガイド 2015年版
33
間接税
概要
インドは連邦制を採用していることから、課税権は中央政府と
州政府の双方に付与されています。中央政府は、直接税、関税、
物品税、サービス税、中央売上税を課し、州政府は付加価値税、
入境税、オクトロイ(物品入市税)などを課しています。
現在のインド間接税は複数の法律が重層的になっていること
から、将来的には GST(Goods and Services Tax)に一本化さ
れることが期待されています。
以下では、現在のインド間接税の状況とともに、GST の概要、
今後の施行予定などを説明させていただきます。
関税
関税は輸入品または輸出品に対して中央政府より課税されます。
輸出品に関しては、一部の限られた製品に対してのみ関税が課さ
れます。適用税率は 1975 年関税法(CTA)による分類に従って
決定されます。
関税は、国際税関機構による関税品目国際統一商品分類シス
テム(HSN)と、それに基づく6 桁のコード分類に則しています。
関税は輸入品または輸出品の取引価格に対して課税されます。
インドにおける取引価格の評価方法は基本的に WTO のそれと一
致していますが、中央政府は独自の評価方法を公表しています。
通常、関税は、商品・製品が輸入された際の価格に基づき、取引
価格に対して課されるものですが、関連者からの輸入については、
税関の特別評価局(Special Valuation Branch)によって輸入額の
査定が行われます。
インドの関税は以下の複数の税目から構成されています。
• 基本関税(BCD)― CTA の別表第一で公表された実効税
率で課される関税の基本構成要素であり、物品の輸入仕入価
格(CIF に荷揚料 1%を加算したもの)に対して適用されます。
• BCD は、現在、農産物およびその他の指定された物品を除
いて、最大 10%に設定されています。ただし、インド中央政
府は、特定の製品について関税の一部または全部を免除す
る権限を持っています。さらに、2 国間または多国間貿易協
定によって、関税の優遇や免除が適用されることがあります。
• 相殺関税(CVD)― インドで類似品目を製造した場合に課
される物品税と同等のものとして課されます。CVD は荷揚げ
時の評価額と基本関税の合計額に基づいて計算されます。た
だし、特定の小売目的の一般消費財は、商品に記載されてい
る特別減額後の最高小売価格(MRP)に基づき計算されます。
物品税が現状 12.5%であることから、CVD も同率の 12.5%
とされています。
• 教育税 2%、2 次高等教育税 1%が関税の合計額に加算され
ます。
• 上記に追加して、一部の例外を除き、特別追加関税(ADC)4%
が課されます。ADC は輸入品の査定価格と関税の総額(BCD
と CVD、および教育税、2 次高等教育税)に課されます。
34 PwC
BCD および教育税ならびに 2 次高等教育税は、輸入取引の原
価に含まれ、輸入取引においてはコストとなります。一定の条件
を満たすことを前提に、その他の関税については控除または還付
が可能です。物品が製造目的で輸入されている場合、インドの製
造業者は輸入時に支払った CVD および ADC について、販売時
の受取物品税から控除することができます。役務の提供者も役務
提供時のサービス税から CVD の控除をとることができます。
中央政府は、一定の条件のもとで、インド国内での小売販売
目的で輸入された特定の品目については ADC を免除しています。
同様に、中央政府はインド国内での取引を目的として輸入された
物品が通達などにおける要件を満たす場合、支払われた ADC つ
いて還付を認めています。
中央付加価値税(物品税)
中央付加価値税(CENVAT)は、一般に物品税と言われ、イ
ンド国内で生産され、販売される製品に対して中央政府によって
課税されます。CENVAT は、HSN 分類を基礎とする物品税率表
を基に物品税と整合する形で採用された税率で課税されます。物
品税の標準税率は 12.5%です。
ほとんどの小売目的の一般消費財に対する物品税は、商品に
印刷されている MRP に基づいて計算されます。ただし、MRP の
15%から 55%の範囲において物品税の課税標準について減額
が許容されることがあります。
MRP による査定の対象とならない商品は、一般的に、独立し
た買い手に販売した取引価格に基づいて物品税が課されます。
また、中央政府は、商品の価格に応じて課税を行うため、その
課税標準を決定する権限を有しています。
物品税は純粋な付加価値税として運用され、納税額を計算す
るにあたっては仮受物品税からの仮払物品税の控除が認められて
います。物品・資本財に課された物品税それ自体だけでなく、輸
入品に課された CVD、ADC、および役務提供に際して課されたサー
ビス税についても、CENVAT 控除規則に規定される一定の例外
を除いて、税額控除をとることが可能です。
物品税は一定の製品、産業および地域において免除されてい
るため、インドで製造業を営む者には非常に魅力的な事業機会
が提供されていると言えます。
サービス税
サービス税は 1994 年に初めてインドで導入されました。導入
当初、サービス税の対象範囲はごく限られたものでしたが、その
課税対象は年々拡大され、さまざまなサービスを細かく分類する
必要が生じました。結果としてそれらをどのように区分するかにつ
いての問題が発生したために、2012 年にネガティブリスト方式
が採用されました。この新しい課税方式においては、ネガティブ
リストに明示されているサービス以外に対しては原則サービス税
が課されることとなっています。
基本的にサービス税を納付するのは役務の提供者の側ですが、
陸上運輸、資金援助、法律事務、海外からの役務提供など、特
定の役務の場合には役務の受領者がサービス税を納付することと
なります。また、一定のケースでは、役務の提供者と受領者の間
で納付義務が一定割合で案分されることもあります。
インド投資ガイド 2015年版
35
2015 年 6 月 1 日 以 降、 サ ー ビ ス 税 の 税 率 は 実 効 税 率
12.36%から 14%に引き上げられました。
サービス税については、役務の提供者、受領者双方に対してイ
ンターネットを通じた簡便な登録手続が定められていますが、複
数の場所において役務を提供する、または役務を受領する場合
には、全ての場所について集約された一括登録をすることもでき
ますし、それぞれの場所について、個別に登録することを選択す
ることもできます。また、物品税と同様、サービス税も純粋な付
加価値税とされており、物品税・サービス税双方が連邦税である
ことから、相互に控除をとることが許容されています。
サービス税における仮払税額の控除制度は、CENVAT 控除規
則の下に一本化され、製造業者に与えられている優遇制度が、
サービス提供の事業者にも拡大適用されています。
サービス税における課税標準は役務提供料の総額とされており、
一定の場合には事前に定められた評価方法によって課税標準が算
定されます。
サービス税はサービスの消費に基づ いて課される税ですが、
サービスというものの性質上、その役務の提供地、または消費地、
役務の完了時点や引き渡し時点を確定することに時として困難が
伴います。インドのサービス税に関して、この点は近年大幅に改
善されてきました。課税地に関する規則(2011 年)
、役務の提
供地に関する規則(2012 年)といったものが、ネガティブリスト
に基づくサービス税体系が認める課税・非課税地域の規定ととも
に導入され、役務の完了・引き渡しにかかわる時点、および場
所の決定に関する手続きが大幅に簡素化されました。
ネガティブリストに記載されたものに加え、一定のサービス、具
体的には教育、インフラ事業(道路や橋の建設)
、医療、スポー
ツイベントへの資金提供などについてはサービス税の課税対象外
とされています。また、運輸、フィナンシャルリース、賃貸など
の一定のサービスについては減免措置も設けられており、減免率
は 10%から 70%とさまざまです。サービスを輸出する場合には、
税務上不利になることがないよう、仮払税額の還付や払い戻しが
可能となっています。
売上税
インド国内での動産の販売については、中央政府または州政府
が中央販売税を課すこととされています。インドの規制では、州
内の商品の販売に対する売上税課税権を州議会に付与している
一方で、州外取引に対しては、中央売上税(CST)が課されます。
CST は商品販売の起点となった州の付加価値税法に基づく税
率が適用されます。登録事業者間の売買(転売目的、または他
の製品を生産するための原材料・投入財として使用する目的での
売買)
、および鉱山業、電気通信業などの一定の事業活動につい
ては 2%の CST が課されますが、その際には購入者の側から販
売者に対して適切な申告書類(Form C)の提出が必要とされて
います。
州外取引において、商品販売の起点となった州で課された CST
については、購入側となる州で控除をとることはできません。
36 PwC
州付加価値税
2005 年 4 月 1 日以降、ほとんどの州で州売上税は州付加価
値税(VAT)に切り替えられました。現在、全てのインドの州で
VAT への移行が完了しました。
VAT 税制では州内で購入された商品に対して支払われた VAT
は仮払税額として控除をとることが可能です。この仮払税額は、
商品の販売に課される VAT および CST の納付額から控除するこ
とができます。これにより、価値が付加された部分にのみ課税さ
れるため、税の重層的な課税は回避されます。現状、インドへの
輸入品に対しては VAT が課されていません。また、輸出品に対
する VAT は 0%となっています。これにより輸出製品のために購
入・使用された原材料、または輸出するために入された商品に課
された VAT は、還付請求することが可能となります。日用品につ
いては、日々の市民生活におけるその重要性から、異なる税率が
個々の日用品に適用されます。州 VAT の税率は 1%から 20%ま
でとさまざまです。これらの異なる税率によってカバーされない商
品については、12.5%から 15.5%の範囲でその他税率が適用さ
れます。VAT の対象から小規模業者を外すために売上高基準が
定められています。小規模業者は VAT に代えて、より低い税率の
一括適用を選択することも可能です。
オクトロイ(物品入市税)
・エントリータックス(越境税)
エントリータックスは州政府が徴収し、消費、使用、販売目的
で州外から持ち込まれた一定の商品に対して課されます。エント
リータックスは、VAT 導入後も引き続き課されていますが、特定
の州では、州での仮受 VAT 納税額と相殺することができます。
エントリータックスは購入商品の対価として支払った購入価額に
課され、特定の商品の価額はその購入時の請求書原本で確認さ
れることとなります。
オクトロイは市が課税する税であり、一定の商品が市の境界線
を越えて市内に持ち込まれた場合に課されます。従って同じ州の
ある市から他の市に商品が移動する場合、それらの市が異なる地
方自治体の管轄に属する場合には同一州内であっても課税される
こととなります。
物品・サービス税(GST)
2006 年、中央政府は全国的に統一された GST へ移行するた
めに大きな一歩を踏み出しました。GST が実現すれば、CVD、
物品税、サービス税、州 VAT およびその他の州税が GST に一本
化されることになるため、インド税制における歴史的な転換点とな
ります。
現在のところ GST では中央政府と州政府の 2 層による税率モ
デルが想定されており、商品とサービスに対して単一の標準税
率が賦課されることが想定されています。提案されているモデル
では、中央と州の GST は商品売買とサービス提供にかかわる
課税標準額に対して課されます。中央政府と州政府はそれぞれ
GST 法律で制定し、徴税を行い、管轄します。
一旦、GST の制度がインド全体に導入されると、間接税の観点
からはインド市場は単一になります。GST の導入は商取引にとっ
て好ましい税制と考えられます。または間接税の管理上も納税者
にとって好ましい改正となることが予想されます。
インドにおける GST 導入に関する現状
過去 1 年間に GST の導入について大きな前進があ
りました。中央政府と州政府は GST の概要につい
て合意しました。
まず第一歩として、商品とサービスの提供に対して
中央政府と州政府が課税するために、憲法の改正
が必要となります。憲法の改正法案には国会の上
院と下院で可決されることが求められています。議
会で可決された後は、少なくとも半分の州議会に
おいて、承認される必要があります。
現在、憲法改正法案は下院で可決され、上院で審
議されています。
憲法改正の後は、中央政府と州政府は GST を導
入するために、それぞれの法律を可決する必要が
あります。
中央政府は 2016 年 4 月 1 日までに GST を導入す
る意思があることを繰り返し説明してきました。州政
府の懸念事項を解消するための具体的な措置もとり
ました。しかしながら税率や商品の評価の仕方、移
行のための規定など、いくつかの重要な点に関する
詳細は明らかにされていません。
いずれにしてもインドの GST 導入は目前に迫って
います。
印紙税
印紙税は、手形、約束手形、保険契約書、株式
や社債および不動産の移転契約書などの文書に対
してさまざまな税率で課されています。
研究開発税(R&D Cess)
研究開発税 5%が、技術輸入に関する全ての支払
いに対して課されます。「技術」には、デザイン、
製図、出版物、技術者の役務などの輸入が含まれ
ます。
インド投資ガイド 2015年版
37
合併および買収(M&A)
インドの M&A の枠組み
インドの規制の枠組みでは、多くの法的形態を通して大まかに
取得および組織再編の形態を定めていますが、それぞれの形態
にかかわる課税関係および規制面における難易度は形態により異
なります。主な形態は以下のとおりです。
• 株式買収
• 事業譲受または資産譲受
• 合併および会社分割
株式買収
株式を譲渡した者に係る課税関係
インド企業の株式譲渡はキャピタルゲインとして課税されます。
ただし、租税条約がある場合は、その恩恵を享受することができ
ます。譲渡した株式が上場株式または非上場株式かにより課税関
係が異なります。
上場株式
• 12 カ月を超えて保有した株式を譲渡したことによる長期キャピ
タルゲインについては、証券取引所を通じて取引された場合
には課税されません。しかし、居住者により証券取引所外で
取引された場合には 10% (
* 物価補正を除く)
または 20% (
* 物
価補正を含む)のうちいずれか有利な方で課税されます。また、
非居住者が株式譲渡者である場合の長期キャピタルゲインは
10% *(物価補正を除く)の税率にて課税されます。
• 短期キャピタルゲインについては、証券取引所を通じて取引さ
れた場合には 15%の税率にて課税されます。証券取引所外
で取引された場合には非上場株式と同様に課税されます。
非上場株式
• 株式の譲渡者が非居住者の場合には、公開会社の株式の譲
渡に係る長期キャピタルゲインは 10% *(物価補正を除く)
の税率で、非公開会社の株式の譲渡に係る長期キャピタルゲ
インは 20% *(物価補正を含む)の税率でそれぞれ課税さ
れます。また、株式の譲渡者が居住者の場合には 20% *(物
価補正を含む)の税率で課税されます。
• 非上場株式が長期保有株式に分類されるためには 36 カ月以
上の保有期間が必要となります。
• 短期キャピタルゲインについては株式の譲渡者が国内法人の
場合には 30% *、外国法人の場合には 40% * の税率がそれ
ぞれ適用されます。
* 付加税と教育目的税が加算されます
38 PwC
株式の間接譲渡
外国法人の株式の価値がインドに所在する資産またはインド企
業の株式の価値に「実質的」に起因している場合において、そ
の外国会社の株式の異動があったときは、その価値の起因となっ
たインドに所在する資産(インド企業の株式を含む)も異動があっ
たとしてインドで課税されます。2015 年度税制改正では、上記「実
質的に」という定義について具体的にその判定を行う目的で金額
基準と資産の比率基準を設けました。
インドに所在する資産の時価(負債を控除しない)が、a)1 億
ルピー超である場合、および b) その外国法人の保有する資産の価
値の少なくとも 50% を占めている場合には、そのインド企業の株
式の価値が「実質的」にインドに所在する資産またはインド企業
の株式の価値に起因していると判定されることとなりました。
インドでの株式の間接譲渡に伴う課税所得の計算はインドに所
在する資産の価値の占める割合に基づいて行われます。
また、2015 年度の税制改正では少数株主を株式の間接譲渡
課税の対象外とする緩和措置も導入されました。具体的には、
外国法人の株式の所有割合が 5% 以下で、かつその外国法人
の経営に従事できる権利を持っていない少数株主がその対象と
なります。
この株式の間接譲渡課税制度のもとではどの国に所在する会
社の株式譲渡であってもインドに所在する資産がその会社の価
値の起因となっている場合にはインドで課税ができることとなっ
ています。
株式を取得した者に係る課税関係
• 上場企業株式を取得する場合には買付規制法に従う必要があ
ります。上場企業の 25%以上の議決権の取得もしくはインド
上場企業の支配権の獲得をする場合は、公開買い付け(Open
Offer)を実施する必要があります。
• 株式譲渡契約書は譲渡対価の 0.25%の印紙税の対象となり
ます。ただし、株式が電子記録方式である場合には印紙税は
課されません。
• 株式取得に係る借入利息はその株式から得られる配当所得が
非課税であることから損金不算入になると考えられます。
• 法人が非公開会社株式を低廉で取得する場合には時価との差
額が所得として課税されます。
源泉徴収税
• 買主(非居住者を含む)は非居住者である売主への支払の際
にキャピタルゲインに対する源泉徴収義務が課されています。
また源泉徴収した税金を納めるためには買主はインドでの源泉
徴収番号を取得する必要があります。
• 株式売買に係る当事者は、インドの税務当局に源泉徴収税率
を軽減する申請をすることで株式の取引前に源泉徴収に係る
課税関係を確定させることができます。
繰越欠損金
• 上場企業の場合には株主の変更は繰越欠損金の利用に影響
を与えません。
• 非上場企業が繰越欠損金を利用する場合には、その事業年
度における少なくとも 51% の株主が繰越欠損金の基となった
欠損が発生した事業年度と同じ株主である必要があります。
• インド企業が上場・非上場であるかに関わらず繰越欠損金の
うち損金未算入の減価償却費に起因するものについてはその
利用に株主変更の影響は受けません。
株式評価
RBI は居住者と非居住者の間で行われるインド企業の株式売買
取引に係る価格算定について規定しています。RBI は国際的に認
められた算定方法に従って当事者間で株式を評価することができ
るように標準化した株価の算定方法を設けています。
事業譲受または資産譲渡
インドでの事業の譲受には下記の 2 つのモデルがあります。
• 資産譲受モデル:買手が譲り受ける資産を選別し、負債や不
要な資産は譲り受けない
• 事業譲受モデル:買手が事業に付随する資産、負債を含めて
事業全体を譲り受ける
資産譲受モデル
売手に係る課税関係
• 動産の譲渡は特定の税率にて VAT または売上税の課税対象
となります。
• 営業権のような自己創設の無形資産に係る取得原価はキャピ
タルゲインを算定する際には通常考慮されません。
• 譲受資産の中に不動産が含まれている場合には、キャピタル
ゲインを計算する際に印紙税の担当官により算定された価格
を最低価格として実際の売買価格と比較されます。
買主に係る課税関係
• 買主は譲り受ける不動産が所在する州の税率により印紙税を
課されます。
• 買主は譲り受ける動産についても印紙税を課されます。
ただし、
契約の更改、現物引渡、もしくはその両方により印紙税を抑
えることができます。
• 買主は支払った対価に相当する減価償却費を享受することが
できます。
事業譲受モデル
売主に係る課税関係
• キャピタルゲインは売却価格から所定の方法により計算された
売却した事業に係る純資産価額を差し引いて計算されます。
• 売却した事業が 3 年を超えて継続していた場合にはその売却
益は長期キャピタルゲインとして課税されます。事業譲渡の場
合には物価補正は適用されません。
• 長期キャピタルゲインには 20% * の税率が、短期キャピタル
ゲインには 30% * の税率がそれぞれ適用されます。
• 事業譲渡は通常 VAT または売上税の課税対象とはなりま
せん。
買主に係る課税関係
事業譲受では購入対価が資産評価鑑定に基づいておのおのの
譲受資産に賦課されます。そして賦課された金額に基づき事業の
用に供される建物、設備、その他一定の要件を満たす無形資産
を減価償却することができます。
資金調達コスト
資産または事業の譲受に伴う借入利子は一定の要件を満たす
場合には損金算入することができます。
• 資産ごとにキャピタルゲインが算出され、各資産の保有期間
によって短期キャピタルゲインまたは長期キャピタルゲインとし
て課税されます。償却資産の売却は全て短期キャピタルゲイ
ンに分類されます。
• キャピタルゲインは資産の売却価格から当該資産の取得原価
を差し引いて計算されます。長期キャピタルゲインを計算する
場合の取得原価は、毎期税務当局から通知されるコストイン
フレ指数に基づいて計算されます。
* 付加税と教育目的税が加算されます
インド投資ガイド 2015年版
39
合併および会社分割
買収した企業を合併または会社分割によって買主の企業グルー
プに統合することがあります。合併や会社分割においては裁判所
の承認などを含めていくつかの手続きが必要となります。一定の
要件を満たす場合には非課税で合併および会社分割を行うことが
できます。
合併
ここでは裁判所の承認を得て 1 つまたは複数の会社が他の会
社に合併されることを想定しています。合併を非課税で行うため
には以下の要件を満たす必要があります。
• 全ての資産および負債が承継されること
• 被合併会社の 75%以上(価値を基準に算定)の株主が合併
法人の株主になること
会社分割
ここでは裁判所の承認を得て事業全体またはその一部を他の会
社に分割することを想定しています。会社分割を非課税で行うた
めには以下の要件を満たす必要があります。
• 分割の対象となった全ての資産および負債が簿価で分割承継
法人に承継されていること
• 分割された事業が分割後も継続されること
• 会社分割の対価として分割法人の株主に発行される分割承継
法人の株式が分割法人の株主の持株割合に応じて発行される
こと
• 分割法人の株主の少なくとも 75% 以上(価値を基準に算定)
が分割承継法人の株主となること
繰越欠損金と損金未算入の減価償却額の引継制限
合併
• 合併法人は被合併会社の繰越欠損金と損金未算入の減価
償却額を引き継ぐことができます。
• ただし、事業継続要件や資産引継要件など一定の要件を満た
す必要があります。
会社分割
• 分割承継法人は分割法人から分割の対象となった事業に直接
関係する繰越欠損金や損金未算入の減価償却額を引き継ぐこ
とができます。
• 間接的に分割の対象となった事業に関係しているものも一定
の割合に応じて引き継ぐことができます。
40 PwC
その他
• 合併および会社分割は通常州ごとに定められた印紙税の
対象となります。
• 合併および会社分割を行う場合には証券取引所(上場
会社のみ)
、高等裁判所、その他の規制当局の承認が求
められます。現在、証券取引所および SEBI(Securities
and Exchange Board of India)から承認を得るための手
続きが公表されています。しかし、その手続きは相応の
時間を要するものであり、スケジュールに余裕がない場合
には遅延の原因となり得ます。
インド投資ガイド 2015年版
41
移転価格税制(TP)
インドにおける移転価格税制は、インド所得税法第 92 条から
第 92 条Fにおいて規定され、2001 年 4 月 1 日より施行されま
した。移転価格税制に関する規定は、インドから他国への所得移
転の防止を目的としています。移転価格税制は、導入以降、イン
ドで活動する多国籍企業に多大な影響を与える、重要な国際税
務の対処項目となっています。OECD のガイドラインに基づいて、
インドの移転価格税制においても、移転価格の検証方法や文書
化義務が規定されています。
場合には、その取引は関連者との取引とみなされる可能性があり
ます。また、2014-15 年度より、第三者は必ずしも非居住者で
ある必要はなくなりました。
規定および規則
• 関連者への支払い
• 税免除(タックスホリデー)の適用を受けている事業部と他の
事業部との取引
インドにおける移転価格税制の規定では、関連者(AE)との
取引価格は独立企業間価格に基づいて検証されることを求めてい
ます。また 2012-13 年度より、移転価格税制が特定の国内取引
についても適用されることとなりました。なお、移転価格税制は
独立企業間価格を検証し、その所得調整がインドの所得の減少
や損失の拡大をもたらす場合には適用はされません。これは海外
への所得移転を防ぐという移転価格税制の趣旨によるものです。
対象取引
対象となる取引は「国際取引」とされ、関連者間で行われる有
形固定資産または無形固定資産の売買、賃借、サービスの授受、
コストシェア取引、さまざまなタイプの金融取引、保証、事業再
編または組織再編、利益、損失または資産を生むその他の取引
が含まれます。特定の取引が移転価格の対象取引に含められるこ
とを明確にする観点から、2012 年度の税制改正では、用語の定
義を改正し、さまざまな無形資産を含めるようにしました。
関連者は居住者と非居住者であることもあれば、両者が非居
住者であることもあります。外国法人のインドにおける恒久的施設
(PE)は当該外国法人にとっての関連者となります。従って、外
国法人と当該外国法人のインドにおける PE との間の取引は移転
価格の対象取引に含まれます。
関連者
ある会社に対して他の 1 社が直接的または間接的に、経営、
支配、資本に参加している場合、それらの会社は関連者とされ
ます。また、同一の者が両者の経営、支配、資本に参加してい
る場合には、その両者も関連者とされます。関連者は以下を含
むさまざまな要素が考慮され、判定が行われます。
•
•
•
•
•
•
•
•
議決権の 26%以上を直接的または間接的に保有している
全資産の 51%以上に相当する額を貸し付けている
借入金の 10%以上を保証している
一方の会社が他社の過半数の取締役または一人以上の上級
取締役を選任している、または、同一の者が両者の特定の取
締役を選任している
一方の会社が保有する知的財産権に依存している
一方の会社が他社または他社が指定する会社から 90%以上
の原材料を購入し、その価格や取引条件について他社または
他社が指定する会社が影響力を持っている
製造した製品の販売価格に影響力を行使している
相互の利害関係がある(現在規定はない)
さらに、第三者との取引であっても、その取引に関して関連者
と第三者との間で何らかの合意がある場合、または取引条件が
実質的には関連者と第三者との間で決めれらていると考えられる
42 PwC
移転価格税制の対象となる国内取引
2012-13 年度より、以下のような一定の国内取引も移転価格
税制の対象となることとなりました。
なお、国内取引が移転価格税制の対象となるのは、上記の
取引合計が該当課税年度で 5,000 万ルピーを超える場合です
(2015 年度の税制改正にて 2015-16 年度以降の課税年度につ
いては当該基準金額を 2 億ルピーに引き上げられました)。
独立企業間価格の検証
最も適切な検証方法
独立企業間価格の検証方法として、以下の方法が規定されて
います。
•
•
•
•
•
•
独立価格比準法(CUP)
再販売価格基準法(RPM)
原価基準法(CPM)
利益分割法(PSM)
取引単位営業利益法(TNMM)
その他、直接税中央委員会が認める方法
優先される検証方法は存在せず、取引の性質や種類、関連者
やその役割、およびその他の要因を考慮して最も適正な検証方
法が決められます。
関連者との国際取引および国内取引に関してインドの移転価格
税制は独立企業間価格の検証を求めています。
複数年度のデータの使用
セーフ・ハーバー・ルール
2014-15 年度より、移転価格の検証に際して複数年度のデー
タを使用できるようにルールを改正することが公表されております。
現行では、移転価格の検証に際して、原則として単年度分のデー
タのみ使用が認められ、例外として納税者が移転価格の検証に際
して影響を及ぼすことが明確に主張することができる場合にのみ
3 年度分のデータの使用が認められています。
2013年9月18日に、直接税中央委員会(CBDT)はセーフ・ハー
バー・ルールを公表いたしました。セーフ・ハーバー・ルールにお
いては、税務当局が詳細な検証なしに納税者の取引価格の妥当
性を認めるケースが定められました。
このルールを導入することで
移転価格税制に関する税務訴訟が減ることが期待されています。
以下にセーフ・ハーバー・ルールの概要をまとめましたのでご参照
ください。
直接税中央委員会(CBDT)は、一定の条件のもと、複数年のデー
タ主体の使用に関して詳細な規定を含む草案を公表しました。こ
れらは 2014 年 4 月 1 日から、すなわち 2014-15 年度の課税年
度から適用されます。CBDT は草案を最終化するために、草案つ
いて幅広く意見を求めています。
対象となる国際取引
セーフ・ハーバー
ソフトウエア開発
年間取引金額が :
IT アウトソーシング受託業務
⿠⿠50億ルピー以下の場合には、営
業利益率で20%以上
⿠⿠50億ルピー以上の場合には、営
業利益率で22%以上
知的業務受託
営業利益率で 25%以上
レンジの概念
2014-15 年度より、独立企業間価格の算定に関して従来の
算術平均概念に変わり、レンジ概念の使用が認められることなり
ました。しかし、例えばレンジ概念の定義や最低ライン、レンジ
を構成する比較対象企業の数、検証対象取引がレンジの対象外
となった場合における移転価格調整額の計算方法などの詳細な
ルールについていまだ公表されておりません。下記に移転価格の
レンジに関します改正の流れをまとめましたのでご参照ください。
年度
レンジ
2001-2 年度
算術平均値の 5%。 移転価格の所得調整金額を計
か ら 2008-09 算する際に、 許容範囲の 5%部分について所得調
年度
整金額から除外できるか否かに関して議論となって
いました。その後、2012 年度の税制改正において、
許容範囲の 5%部分については所得調整金額から控
除することはできないことが明確にされました。
2009-10 年 度 移転価格取引価格の 5%
か ら 2011-12
年度
2012-13 年度
5%の許容範囲は削除され、 卸売商社の場合には
1%、 その他の業種の場合には 3%とされました。
2013-14 年度
同上
2014-15 年 度 直接税中央委員会(CBDT)は、一定の条件のもと、
以降
複数年のデータ主体の使用に関して詳細な規定を含
む草案を公表しました。 これらは 2014 年 4 月 1
日から、すなわち 2014-15 年度から適用されます。
CBDT は草案を最終化するために、 草案について
幅広く意見を求めています。
インド企業による 100%子会社 前年 6 月 30 日における State Bank
へのグループ間貸付
of India の最優遇税率に以下の料率
を加算した料率 :
⿠⿠150ベーシスポイント(貸付金
が5億ルピー以下の場合)
⿠⿠300ベーシスポイント(貸付金
が5億ルピー超の場合)
インド企業による 100%子会社 ⿠⿠2%以上(保証対象額が10億ル
への借入保証に係る保証料
ピー以下の場合)
⿠⿠1.75%以上(保証対象額が10億
ルピー以上で、借入先となって
いる関係会社が最も高い信用格
付けを得ている場合)
低いリスク負担での受託調査
および受託研究
ソフトウエア開発の場合:営業利益
率 30%以上
大 衆 薬 の 場 合:営 業 利 益 率 29 %
以上
自動車部品の製造輸出
主要自動車部品:営業利益率 12%
以上
非主要自動車部品:営業利益率 8.5%
以上
インド投資ガイド 2015年版
43
セーフ・ハーバー・ルールを適用する場合には、特殊要因
調整や独立企業間価格に関する± 3%の許容範囲の適用を受け
られません。また、相互協議(MAP)の申し立てができません。
さらに、セーフ・ハーバー・ルールは軽課税国との間の取引に
ついては適用できません。
事前確認制度(APA)
2012 年 7 月 1 日より事前確認制度(APA)が導入されました。
APA は納税者と税務当局との間で、独立企業間価格、検証
方法について事前に合意するものです。納税者は将来の取引に
かかる独立企業間価格を確定させるため APA の利用を検討す
ることになります。APA を利用することで、その対象とした国際
取引に係る課税関係を確定させ、将来の移転価格に関する税務
訴訟リスクを低減することができます。
CBDT は中央政府の承認のもと、国際取引を行っている納税
者と協議の上、独立企業間価格の決定、および検証方法につ
いて決定する権限が与えられています。APA は、その対象取引
について納税者および税務当局に対して拘束力をもち、最長で
5 年間有効です。CBDT は 2012 年 8 月 30 日に移転価格の事
前確認制度(1962 年所得税法規則 10F から 10T)の通達を
公表いたしました。通達には具体的な APA の適用、運用のルー
ルおよび手続き(様式も含む)が盛り込まれています。500 件
以上の APA が最初の 3 年で申請されており、このうち 13 件の
ユニラテラルと 1 件のバイラテラルが納税者と CBDT の間で合
意されました。
2014 年 10 月 1 日以降合意した APA について 4 年間のロー
ルバックが適用されます(例えば、2013-14 年度を初年度とす
る APA の場合には、2009-10 年度以降も APA でカバーできる
こととなります)。ロールバック条項およびその手続きに関する
詳細な規則は 2015 年 3 月に発表されました。CBDT はロール
バックに関連する質疑応答集を発行しています。CBDT は米国
の多国籍企業との間で、最初のユニラテラル APA へのロール
バックについて今年の 8 月に署名しました。
文書化および報告の義務
納税者は関連者間で行われた国際取引に関する情報と文書
を毎事業年度備え付けることが義務付けられています。前述の
とおり、移転価格税制は一定の国内取引についてもその対象と
しています。このため、納税者は 2012-13 年度より、一定の
国内取引についても文書の備え付けが義務付けられています。
移転価格税制に関する法令では、取引が独立企業間価格で行
われたことを検証するために必要な情報とその文書化について
規定しています。そのような情報と文書は、法人税申告書の提
出期限(11 月 30 日)までに会社に備え付けることが必要です。
法令にて規定された文書はその課税年度終了時から 8 年間保
管が義務付けられ、毎事業年度ごとに情報と文書の備え付けを
行う必要があります。
44 PwC
移転価格の国際取引の合計が 1,000 万ルピー以下の納税者は、
前述の移転価格の文書化の義務が免除されています。しかし、そ
の場合でも、独立企業間価格の検証のため自主的な文書化が望
まれます。
また、移転価格の文書化の義務はインド国内源泉所得を稼得し
ている外国企業にも適用されます。
会計士の証明書
納税者は関連者との間で行われた全ての国際取引について会
計士の証明書を提出することが義務付けられています。当該証明
書は法人税申告書の提出期限(移転価格取引がある企業の申告
書提出期限は 11 月 30 日)に提出する必要があります。201213 年度より、一定の国内取引も関連者との国際取引同様に会計
士の証明書(Form3CEB のパート C)に記載されることが義務付
けられました。
また、2012-13 年度以降より Form 3CEB は電子申告により提
出することとなりました。会計士は納税者が文書と情報を適切に
備え付けているか意見を述べます。さらに、会計士は移転価格に
関する広範な事項について Form 3CEB 上にて適正でかつ正確で
あると証明することが義務付けられています。
立証責任
独立企業間価格について、一義的な立証責任は納税者側にあ
ります。税務調査において、税務当局が納税者の提供した資料ま
たは情報に基づいて検討した結果、独立企業間価格に基づいて
検討した結果、独立企業間価格に基づいて、または納税者が備
え付けている情報および文書が不十分と判断した場合には、税務
当局は納税者に意見を述べる権利を与えた上で、独立企業間価
格に所得調整金額の計算をする可能性があります。
最高裁判所
高等裁判所
1年から2年
上級税務裁判所
下級税務裁判所(CIT(A))
または紛争救済機構(DPR)
CIT(A)の場合、1年から2年
DRPの場合、9カ月
課税年度終了から3年10カ月後が期限
税務担当官
想定される期間
ペナルティ
移転価格税制に関する法令に違反した場合には以下のペナルティーが課されます。
法令違反
ペナルティの内容
文書および情報の不保持
報告義務がある国際取引の報告漏れ
誤った情報、 文書の保持または提出
取引価格の 2%
移転価格文書の未提出
取引価格の 2%
期限までの Form 3CEB の未提出
10 万ルピー
課税所得が更正された場合において、 納税者に条文の適用や文書整備に不備が認められるとき
更正された税額の 100%から 300%
インド投資ガイド 2015年版
45
お問い合わせ先
PwC Japan インドビジネスデスク
【東京事務所】
岩嶋 泰三
プライスウォーターハウスクーパース株式会社
パートナー 公認会計士
Mobile: 090-2227-9027
Email: [email protected]
尻引 善博
PwC あらた監査法人
ディレクター 公認会計士
Mobile: 080-3703-8848
Email: [email protected]
サンジーヴ スィンハ(Sanjeev Sinha)
プライスウォーターハウスクーパース株式会社
ディレクター(日本語対応可)
Mobile: 080-4718-4898
Email: [email protected]
ムケーシュ アガルワル(Mukesh Agarwal)
プライスウォーターハウスクーパース株式会社
ディレクター
Mobile: 080-4682-9358
Email: [email protected]
ゴウラブ バジョリア(Gaurav Bajoria)
PwC 税理士法人
シニアマネージャー
Mobile: 080-3340-2869
Email: [email protected]
46 PwC
PwC India 日系企業コンサルティンググループ
【デリー/グルガオン事務所】
(コルカタ兼務)
大川 広
プライスウォーターハウスクーパースプライベートリミテッド
マネージャー 税理士
Direct: +91 (0)124 330 6771 / Mobile: +91 9560335454
Email: [email protected]
【ムンバイ事務所】(プネ/アーメダバード兼務)
濱田 孝一
プライスウォーターハウスクーパースプライベートリミテッド
マネージャー 米国公認会計士
Direct: +91 (0)22 6669 1815 / Mobile: +91 7045361369
Email: [email protected]
【バンガロール事務所】(ハイデラバード兼務)
黒柳 康太郎
プライスウォーターハウスクーパースプライベートリミテッド
アソシエイトディレクター 公認会計士
Direct: +91 (80) 4079 4118 / Mobile: +91 9880808512
Email: [email protected]
【チェンナイ事務所】
内田 有哉
プライスウォーターハウスクーパースプライベートリミテッド
マネージャー 公認会計士
Direct: +91 (0) 44 4228 5091 / Mobile: +91 9500050629
Email: [email protected]
PwCについて
PwC Japan のインドビジネスデスクは、インド駐在経験の日本人
2 名および日印のビジネスサポート経験のあるインド人 3 名を含め
合計 12 名で構成されており、PwC インドの主要都市のオフィスに
も 4 名の駐在員を派遣しています。
PwC インドには、デリー、ムンバイ、アーメダバード、プネ、ハイ
デラバード、バンガロール、チェンナイ、コルカタの 8 都市にオフィ
スがあります。PwC インドは総勢 7,000 名以上のプロフェッショナ
ルを有するインド最大級の会計事務所であり、主要都市に日本人
駐在員を 4 名配置して日本語でサービスを提供しています。PwC
ジャパンのインドビジネスデスクは PwC インドと連携して日系企業
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本報告書は、PwCメンバーファームが2015年8月に発行した
『Destination India 2015 Unleashing the prowess』
を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりま
すが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
電子版はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/thoughtleadership.html
オリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。www.pwc.in/assets/pdfs/publications/2015/pwc-destination-india-2015.pdf
日本語版発刊月:2015年11月 管理番号:I201509‒2
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