PwC J HR News 2016年英国税制改正案 HRS アップデート 英国で日本人駐在員業務をご担当されている皆様へ
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PwC J HR News 2016年英国税制改正案 HRS アップデート 英国で日本人駐在員業務をご担当されている皆様へ
www.pwc.co.uk PwC J HR News 英国で日本人駐在員業務をご担当されている皆様へ 2016年英国税制改正案 HRS アップデート 2016年 3 月 23 日 英国政府は3月16日、2016年度英国税制改正 案を発表しました。その中から個人所得税およ び雇用に関連する主な発表事項と、想定される 影響について日本語サマリーをまとめましたの でご利用ください。 また発表直後に行われた私どものビデオコメン タリー、改正の要点をコンパクトにまとめたデー タカードなどを以下のリンクよりご覧いただけま す。 www.pwc.co.uk/budget. 年金 生涯ISA 財務相は年金スキームに対する優遇課税措置 の変更については言及しませんでしたが、2017 年4月6日からの生涯ISAの導入が発表され、年 金とISA(個人貯蓄口座)の境界線が曖昧になり ました。 40 歳未満の成人は生涯 ISA の口座を開設し、 年間の貯蓄額が 4000 ポンドまでは非課税とな ります。50 歳までの貯蓄額については、4ポンド につき1ポンドの割合(25%)で政府から奨励金 (マッチング拠出)が支給されます。 貯蓄された資金は、口座開設から12ヶ月経て ば、いつでも最初の住宅購入資金(上限45万ポ ンド)として使うことができるほか、60歳以降は定 年後の資金として引き出すことができます。 最初の住宅購入以外の人生の重要な出来事の ためにも、この生涯ISAの資金を全額引き出せる かどうかが、今後の政府の検討課題となってい ます。 その他の目的で引き出すことはいつでも可能で すが、政府からの拠出部分については、これに 付随する利息あるいはゲインは政府に返金され るほか、5%の課金が課せられます。また、生涯 ISAを担保とした借入について、全額が返金さ れた場合は課金が発生しない柔軟性をもたせる かどうかについても政府は検討する予定です。 生涯ISAは登録された年金スキームではないた め、雇用主はこれを以って年金自動加入制度 の代用とすることはできません。 積立額が不足している年金スキーム 2015年夏季税制改正案で政府は積立額不足 に陥っている年金スキームの調査を進めている と発表しました。積立不足額の補填のための追 加拠出については、課税対象としないことを採 択しました。この件については引き続きレビュー していくこととしています。 雇用主負担による年金アドバイスの提供 従業員のための年金アドバイスの費用を雇用主 が負担することに係る経済的利益供与について は、所得税および社会保険料の非課税枠の上 限が、2017年4月より現在の150ポンドから500ポ ンドに引き上げられます。 年金アドバイス控除 政府は年金アドバイス控除の導入についてコン サルテーションを行う予定です。これにより、従 業員は55歳に到達する前であれば、財務上の アドバイス費用に充当する目的で確定拠出型 年金から引き出す金額は、500ポンドを上限とし て非課税扱いとすることができます。この制度の 詳細および正確な適用年齢についてはコンサ ルテーションを経て決定されます。 年金ダッシュボード 「年金ダッシュボード」とは個人が自分の退職後 のための貯蓄状況をオンラインで一覧できるデ ジタルツールです。政府は2019年までにこれを 立ち上げる予定です。 Japanese Business Network (JBN) www.pwc.co.uk 雇用関連税 ペイロールに属さない公共セクターの従業 員 退職金 2018年4月より、3万ポンドを超える退職金は、所 得税と共に社会保険料の雇用主負担分の納付 対象となります。また、退職金に対する所得税 の非課税枠も、乱用防止の観点から縮小されま す。このように所得税と社会保険料の取り扱い に整合性を持たせることによって従業員が直接 の影響を受けることはありませんが、雇用主は、 退職金のストラクチャーを考案する際、追加発 生費用についても考慮する必要があります。 コンサルテーションを経て、全ての解雇予告手 当(契約上の規定に拘らず)を他の報酬と同様 に所得税と社会保険料の課税対象とする法律 が導入される予定です。また、契約で規定され た支払の中で賠償金ではなく、通常の報酬扱 いとなって所得税と社会保険料の納付対象とな るものを取りこぼさないための規定も強化されま す。さらに海外勤務対応報酬に対する免税措 置も撤廃されます。 この分野における課税強化についてのコンサル テーションの詳細は今後、発表される予定で す。 サラリーサクリファイス 政府はサラリーサクリファイススキームの増大を 引き続き懸念しています。年金拠出、児童手当 バウチャーおよび自転車通勤を奨励する健康 関連のベネフィットなどについては今後も支援し ていく意向ですが、サラリーサクリファイスの一 環として供与されると所得税および社会保険料 に係る優遇措置の対象となるベネフィットについ ては制限を設けることを検討しています。最終 的には、サラリーサクリファイスの制限が所得税 および社会保険料コストの増大に繋がる場合 は、雇用主は当該ベネフィットを供与する是非 を再検討する必要があるかもしれません。 児童手当バウチャー 雇用主は、現行の児童手当バウチャースキーム を2018年4月まで新規加入者に提供することが できますので、2017年4月から新規加入者を制 限する必要はありません。新しい非課税の児童 手当制度は2017年初めより導入される予定で す。従業員は現在の児童手当バウチャーと、こ の新非課税制度の両方に加入することはできま せんが、2016年税制改正案演説の中で現制度 から新制度への移行をサポートすることが表明 されており、より多くの従業員が恩恵を受けられ る可能性があります。 2017年4月より、公共セクターにおいて自社の従 業員として就労する個人について、IR35(仲介 企業に関する法令)が適用されるかどうかの判 断については、これまで当該個人の判断に拠っ ていましたが、今後は契約の主体である当該個 人の会社に報酬を支払う公共セクターの雇用 主、代理店あるいは第三者が判断することにな ります。こうした雇用主、代理店あるいは第三者 は、IR35が現契約に適用されるかどうかを判断 し、される場合にはリアルタイムインフォメーショ ン(RTI)システムを通して所得税と社会保険料 を控除する必要があります。 社会保険料(NIC) 租税簡素化室は、従業員負担分の社会保険料 を年に一度、累積ベースで計算する方式に移 行した場合、および雇用主負担分の計算にペイ ロール全体のコストを使った場合の影響度を検 討中です。 雇用関連税に影響を与えるその他の項目 任意でペイロール処理できるベネフィット 2017年4月以降、HMRCは現金以外のバウチャ ーおよびクレジットトークンについてもペイロー ルによる処理が可能となります。これにより雇用 主にとってはP11Dによる報告義務がさらに軽減 され、ペイロールを通じてリアルタイムに納税で きるベネフィットの数が増えることになります。 源泉徴収精算認可制度(PSA) 源泉徴収精算認可制度(PSA)のプロセスの簡 素化法案についてのコンサルテーションを行い ます。現在、PSA取得には長期間にわたる膨大 な事務手続を要しており、このプロセスの軽減 が期待されています。 修習生制度に関する課金 2015年の秋の財政演説で発表されたとおり、修 習生制度に関する課徴金制度が2017年4月より 導入されます。2016年の税制改正案では、イン グランドの雇用主についてはオンライン口座を 使って、毎月の課金納付額の10%相当を政府が 補助することが発表されました。 旅費と日当 従業員の旅費および日当に関する税務規定に ついての最近の審議結果を踏まえ、政府は 現 行ルールが全般的によく理解されており、大半 の従業員にとって効果的に機能していると判断 しました。この結果、現行ルールへの変更はあり ません。 Japanese Business Network (JBN) www.pwc.co.uk 社用車への課税 超低排出ガス車に対する優遇措置のレビューを 終えた政府は、社用車については2020/21課税 年以降も二酸化炭素排出量をベースとした課 税制度の継続を表明しました。超低排出ガス車 に対する課税制度の改革についてコンサルテ ーションが行なわれる予定です。 2015年の税制改正案で発表されたとおり、二酸 化炭素排出量が75g/kmを超える全車両につい て、2019/20課税年度においては現物支給によ るベネフィットである社用車に係る課税対象額 が3%引き上げられます。同課税年度における この率の最高値は37%で変更はありません。 ディーゼル車の社用車はガソリン車より率が3% 高い現行ルールは2021年4月まで継続されま す。 排出量がゼロの社用バン 2016/17年度においては、排出量がゼロのバン はベネフィットと見なされる額が通常より20%低く なっていますが、この措置が2017/18年度まで 据え置かれます。この率を40%まで引き上げる計 画は2018/19年まで延期となりました。 報酬 運用成績比例報酬 昨年発表された「運用成績比例報酬(carried interest)」の税務上の取扱いに対する変更が 2016年4月6日より適用されることが確認されまし た。 ファンドが「長期的投資活動」を行っていない限 り、運用成績比例報酬を所得税の課税対象とす るというのが政府の意図です。法案の詳細はま だ入手不可能です。成功比例報酬が完全にキ ャピタルゲイン課税の対象となるための平均保 有期間が4年から3年に縮小されるかどうかにつ いても現時点では不明です。 運用成績比例報酬はキャピタルゲインとして課 税されますが、その税率は、今回の税制改正案 で発表された新税率20%ではなく、従来の28%と なることが確認されました。 偽装報酬と過去の従業員へのローン 政府は「偽装報酬スキーム」を徹底的に取締る 姿勢を打出しました。ほとんどの雇用主はこうし たスキームを運営することはありませんが、過去 から継続している旧スキームで影響を受けるも のがあるかもしれません。こうした旧スキームの 例としては、雇用主が従業員給付信託 (“Employee Benefit Trust=EBT”)を設定し、 信託の資金が従業員へのローンに使われるも のなどがあります。今回発表された改正点は以 下のとおりです。 1. 現在の偽装報酬スキーム取締り規定を迂回 し、偽装報酬スキームを継続利用することの 取締り。 2. 旧偽装報酬スキームの取締り。2019 年 4 月 5 日より過去の未回収ローンに対する新課 税制度が導入されます。偽装報酬スキーム 取締り規定が導入された 2011 年より前にロ ーンが組まれた(あるいは同規定導入後にこ れを迂回した)場合で、2019 年 4 月 5 日時 点で未課税あるいは未返済のものが対象と なります。該当する場合は、雇用主に PAYE と社会保険料の納付義務が発生します。ま た、この改正により、EBT から生じる投資収 益は、同スキームに加入していた全ての従 業員の雇用所得に含まれるようになります (但し、2016 年 11 月 30 日までに HMRC と 精算に関する合意が成立した場合を除く)。 3. 自営業者による同様のスキームの取締り。 「コントラクターローン」が対象となる可能性 が高いと予想されます。 この法改正は 2016 年より財政法に毎年 盛り込 まれます。雇用主がとるべき対策は、未回収ロ ーンの把握および全ての債務が計上されている ことの確認です。また、雇用主が支払うこととな る PAYE および社会保険料の従業員負担分が 確実に回収されるよう、従業員および元従業員 と交渉するプロセスの現実的な困難さについて も考慮しておく必要があります。 従業員が有する自社株の非課税取り扱い: 売却益の非課税枠は10万ポンドまで 雇用主が従業員に対し、従業員としての権利の 一部を放棄する代わりに「従業員株主のステー タス」(ESS株の保有)を提供する場合がありま す。ESS株の主な利点は、その売却益(キャピタ ルゲイン)が非課税であることです。 2016年税制改正案では、その非課税枠に10万 ポンドの上限が設けられました。これを超えた部 分についてはキャピタルゲイン税が通常の税率 で課されます。今回の改正は2016年3月17日以 降に成立したESS契約に適用されるもので、既 存のESS株への影響はありません。またESS株取 得時の所得税の非課税枠は2000 ポンドに据え 置かれました。 Japanese Business Network (JBN) www.pwc.co.uk ペイロールと税務レポーティング 基礎控除及び適用税率 所得税の基礎控除額が2016/17年度の11,000 ポンドから引き上げられ、2017年4月6日より 11,500ポンドとなります。高税率(40%)が適用さ れる最低所得額も同日より2,000ポンド引き上げ られ、45,000ポンドとなります。雇用所得に適用 される所得税の基本税率、高税率および追加 税率はそれぞれ20%、40%、45%に据え置かれま した。昨年発表された個人貯蓄控除枠(基本税 率適用者は1,000ポンドまで、高税率適用者は 500ポンドまで)は全ての貯蓄所得に適用され、 2016年4月6日より導入されます。 キャピタルゲイン税(CGT) 2016年4月6日より、CGTの高税率が28%から20% に、基本税率が18%から10%に引き下げられま す。但し、居住用不動産にかかるキャピタルゲイ ンと運用成績比例報酬については、税率は従 来の28%と18%に据え置かれました。個人投資所 得を有する従業員や株式インセンティブプラン を付与されている従業員は今後CGTが軽減さ れる可能性があります。 と見なされ、英国の所得税、キャピタルゲイン 税、相続税の課税対象となることが発表されまし た。これに該当する個人は、送金ベースの税務 申告ができないため、英国外の所得とゲインを 英国の課税対象から外すことができません。 2016年税制改正案では、2017年4月より英国の 永住者と見なされる個人は、英国外にある資産 については、2017年4月6日時点の時価をもっ て取得価額とすることが確認されました。これに より、2017年4月6日時点で未実現のキャピタル ゲインは、英国のCGTの対象外となります。 2017年財政法には、この「20年中15年を超えた 場合のみなし永住者ルール」によって英国の永 住者と見なされる個人のための暫定的な規定を 含む全ての改正案が盛り込まれる予定です。こ れにより、英国へ送金された金額がどのように課 税されるかについても明確になるでしょう。 社会保険料(NIC) 2015年12月に終了したコンサルテーションを踏 まえ、2018年4月より自営業者のためのクラス 2NICが廃止されます。政府は現在、自営業者 のためのクラス4NICの導入に関するコンサルテ ーションへの回答を審議中です。 税制の刷新 政府はデジタル技術による税務システムの刷新 に取り組んでおり、毎年の確定申告の必要性を 無くしていく意向です。2016年税制改正案では 2018年より、企業(国際間を移動する従業員で 家主である者にとって非常に重要なこととなりま す)は税務記録をデジタル化し、HMRCへの報 告を定期的に行っていれば、納税を年間一括 ではなく、随時行うことができるようにすると発表 されました。政府はまたこうした企業のデジタル 化のプロセスをスムーズに進め、事務作業を最 少限に抑えるため、税法規の簡素化に向けた 様々なオプションを模索する計画です。 「税務のデジタル化」についての詳細な提案が 2016年にコンサルテーションにかけられる予定 です。 ご質問などございましたら、PwC貴社担当者もし くは下記までお問い合わせください。 福田 有紀子(020 7804 9207) [email protected] プレスマン 彩 (020 7212 6059) [email protected] PwC Japan Tax Team – HRS Japanese Business Network PricewaterhouseCoopers LLP +44 (0)20 7212 7299 お問い合わせ: [email protected] 国際間を移動する従業員 永住者規定の変更と送金ベース課税 2015年の夏季税制改正案で、過去20年のうち 英国居住者期間が15年を超えた場合、その個 人は2017年4月6日より税務上は英国の永住者 敬具 ジャパニーズビジネスネットワーク (JBN) JBNへのお問い合わせ: [email protected] ウェブページ: www.pwc.co.uk/japan Japanese Business Network (JBN) www.pwc.co.uk UK PwC ジャパニーズ・ビジネス・ネットワークでは以下のニュースレターを発行しております。最新号およ びバックナンバーは [email protected] までお問い合わせ下さい。 Hotline: 英国・欧州の日系企業にとってのホットトピックを随時、ご紹介しております。 J HR News: 英国・欧州諸国で日系駐在員税務・総務に携わっておられる HR プロフェッショナルの方々のた めのニュースレターです。 Immigration News: 日系企業の英国駐在員の方々のイミグレーション関連業務に携わっておられる HR、 法務プロフェッショナルの方々のためのニュースレターです。 上記のニュースレター購読をご希望の方、またジャパニーズ・ビジネス・ネットワークに関するお問い合 わせは、 [email protected]までご連絡ください。 <個人情報の取り扱いについて> 私どものクライアントの方々、過去にセミナーにお越し頂いた方々、または名刺交換をさせて頂いた方々に対して、皆様に有益と思われる情報(会計、税務、 法務、M&A, 人事関連トピックス ニュースやセミナーのご案内等)をお送りさせて頂いております。皆様の個人情報は、業務上のご連絡のほか、こうした情報 をお知らせする際に使用いたします。また、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のグローバルネットワークに属するPwC各メンバーファーム、ある いはPwC以外の第三者とセミナーを共催した場合は共催者と皆様の個人情報を共有させて頂く場合がございます。今後、私どもからのニュースレターやセミナ ーのご案内等をご希望されない場合は、お手数ですが件名に「J HR News登録解除希望」とご記入の上、[email 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