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資産税ニュース 税制改正及び富裕層・国外財産へ の課税強化の動向 Issue 7, December 2011

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資産税ニュース 税制改正及び富裕層・国外財産へ の課税強化の動向 Issue 7, December 2011
www.pwc.com/jp/tax
資産税ニュース
税制改正及び富裕層・国外財産へ
の課税強化の動向
Issue 7, December 2011
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資産税に関する2011年度税制改正
項目については継続審議の項目が
ひとまず廃案となり、2012年度税制改
正大綱が公表されました。また、最近
の国税庁公表資料等からは富裕層・
国外財産への課税強化の方向が伺
えます。
このニュースレターでは、これらの概
要を整理してお伝えします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 2011年度(平成23年度)税制改正における資産
税関連項目の顛末
2011年度税制改正においては、資産税に関連する項目と
して相続税・贈与税の改正が法案として提出されていまし
た。主な内容は以下のとおりです。
(詳細は、2010年12月発行の資産税ニュース Issue 3を参
照ください。http://www.pwc.com/jp/ja/taxnews-estatetaxation/Issue3.jhtml)
1. 相続税
(1) 基礎控除額の引き下げ
(2) 税率構造の見直し
(3) その他
1) 死亡保険金に係る非課税措置の見直し
2) 未成年者控除額・障害者控除額の引き上げ
2. 贈与税
(1) 税率構造の見直し
(2) 相続時精算課税の対象拡大
上記の内容については税制改正法案として国会に提出さ
れたものの、野党の反対にあって当初の予定である2011
年3月末までに成立しませんでした。その後、法案の名称
が変更されつつも国会において継続審議となっていました。
野田政権・与党民主党は、臨時国会(2011年10月20日~)
において復興財源法案(2011年11月30日成立)とともに成
立させる方針でしたが、2011年11月10日の民主党・自民
党・公明党の3党税制調査会長の協議の結果を受けて、
法案から削除され、当該改正は「不成立」となりました。
資産税ニュース
これらの項目については、「平成24年度税制改正又は税制抜本改革にあわせて成案を得るよう、各党それぞれ努力する」
とされていますが、2012年度税制改正大綱には盛り込まれておりません。 今後の社会保障と税の一体改革の議論の中
で、再度俎上に上がり検討されるものと思われますが、当初の2011年度税制改正案と同じものになるか、違う内容になる
か等は現時点では不明であり、今後改正の動向を注視していく必要があります。
なお、主要な資産税関連の改正項目は削除されてしまいましたが、削除されずに2011年度税制改正として成立した資産
税関連項目に「配偶者の税額軽減・贈与税の配偶者控除に係る当初申告要件の廃止」があります。 これらの制度は、当
初の相続税及び贈与税の申告書に当該制度の適用を受ける旨の記載をした場合に限り適用を受けることができるもので
あり、当初申告で失念した場合に後から修正申告や更正の請求により適用を受けることはできませんでしたが、修正申告
書又は更正請求書に当該制度の適用を受ける旨その他の事項を記載した書類等の添付をすれば適用を受けることがで
きることに改正されました。この改正は、施行日(2011年12月2日)以後に申告期限が到来する相続税・贈与税から適用に
なります。
2. 2012年度(平成24年度)税制改正(資産税関連項目)
2012年度税制改正大綱が2011年12月10日に発表されました。 その中では富裕層・国外財産に対する課税強化に関連
する内容が含まれています。
「国外財産に係る情報の把握への対応」として、国外財産に係る所得税・相続税等の適正な課税・徴収に資するため、5
千万円を超える国外財産を保有する個人(居住者)に対し、その保有する国外財産に係る調書の提出を求める制度が創
設される予定です(適用開始予定時期:2013年12月31日の国外財産を2014年3月15日までに調書提出)。
その「提出促進策」として、国外財産に係る所得等の申告漏れがあった場合の加算税について、次の措置が講じられる
予定です。
① 調書に国外財産の記載がある部分については、過少申告加算税等を5%軽減(所得税・相続税)
② 調書の不提出・記載不備に係る部分については、過少申告加算税等を5%加重(所得税)
さらに以下の罰則等の措置も講じられる予定です。
① 国外財産調書に関する調査に係る質問検査権の規定の整備
② 国外財産調書の不提出・虚偽記載に対する罰則を設け、法定刑は1年以下の懲役又は50万円以下の罰
金として、併せて、情状免除規定が設けられる予定です。(2015年1月1日以後に提出の国外財産調書から
適用)
2011年11月4日にフランスのカンヌ(G20サミット)において、日本は、「租税に関する相互行政支援に関する条約」(略称
「税務行政執行共助条約」)及び「租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書」(以下、「改正議定書」と
いう)に署名しました。今後、国会の批准手続き等を経てから効力が生ずること(現時点で効力発生時期は未定)になりま
す。
本条約は、本条約の締約国間で、租税に関する様々な行政支援(情報交換、徴収共助、送達共助)を相互に行うことを
規定しています。この条約が発効すると、例えば国外財産に対して日本の政府が外国政府に対して差押え等の徴収依
頼を要請することができるようになります。本年11月3日現在判明している本条約への署名国は、次の32カ国です。
日本
韓国
オーストラリア
インドネシア
イギリス
フランス
ドイツ
イタリア
スペイン
ポルトガル
オランダ
ベルギー
デンマーク
ノルウェー
スウェーデン
フィンランド
アイスランド
アイルランド
ロシア
ポーランド
スロベニア
アゼルバイジャン
ウクライナ
グルジア
モルドバ
トルコ
南アフリカ
アメリカ
カナダ
メキシコ
アルゼンチン
ブラジル
当該条約の締結にともなって、2012年度税制改正では、当該条約に関する国内担保法を整備する観点から、以下のよう
な所要の措置が講じられる予定です(2015年7月1日から適用予定)。
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①
②
③
④
外国租税債権の優先権の否定に関する規定の整備
徴収共助等を実施しない事由の整備
徴収共助等の実施のための手続等の整備
送達共助の実施のための手続等の整備
また、相続税は相続人に連帯納付義務が課せられていますが、次の場合には連帯納付義務を解除するという改正が予
定されています(2012年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税から適用、同日において滞納となっている相続税
についても同様の扱い)。
① 申告期限等から5年を経過した場合(5年経過前に連帯納付義務の履行請求がされているものはその後も
継続して履行を求めることができる)
② 納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合
3. 最近の税務調査の実績(資産税関連)
2010事務年度(2010年7月~2011年6月)の相続税の調査状況が国税庁から公表されました。当該資料からは、国外財
産関連事案に係る調査実績は2009事務年度は531件の実地調査件数であったのに対し、2010事務年度は695件と前年
比130.9%であったことがわかりました。調査件数の増加に伴い、非違件数(いわゆる申告漏れによる修正又は更正の件数
です)も85件から116件に増加し、前年比136.5%となっています。
2010 事務年度における所得税の調査状況についても国税庁から公表されました。当該資料の中では「いわゆる「富裕層」
への対応」と項目を設けています。「富裕層」の定義は明確にされていませんが、有価証券・不動産等の大口所有者、経
常的な所得が特に高額な者など、いわゆる「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に、
積極的に調査を実施しているとあります。「富裕層」に対する調査件数は 4,793 件(前年比 156.6%)、追徴税額の総額は
149 億円(前年比 126.1%)であり、調査 1 件当たりの平均追徴税額も 312 万円(所得税全体では 162 万円/件)であるこ
とが明らかにされています。
当該資料の中では「海外取引を行っている者への調査状況」との項目も設けており、経済社会の国際化に適切に対応し
ていくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外取引を行っている者や海外資産を保有している者などに対し
て、国外送金等調書や租税条約に基づく情報交換制度などを効果的に活用し、積極的に調査に取り組んでいるとありま
す。その調査件数は 3,727 件、うち海外投資に関連するものは 1,446 件で 1 件当たりの平均申告漏れ金額は 1,641 万
円であることが明らかにされています。
また、2010 年度(2010 年 4 月~2011 年 3 月)における租税条約等に基づく情報交換事績の概要についても国税庁か
ら公表されました。当該資料によれば日本の国税庁から海外税務当局に発した情報交換の要請件数は、2008 年度 274
件、2009 年度 315 件、2010 年度 646 件となっており、最近は前年度の 2 倍超の件数もの情報交換要請を海外の税務
当局対して行っています。
以上のことからもわかるとおり、日本の税務当局は「富裕層」及び「国外財産」に対する税務調査を積極的に行い、これら
に対する課税強化を行政執行として行っています。この流れは、今後も当面続くものと考えられますので、富裕層及び国
外財産を有している人はミスと申告漏れがないように今後も留意が必要です。
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