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欧州 VAT に巻き込まれる事例 Indirect Tax News In brief
Indirect Tax News 欧州 VAT に巻き込まれる事例 Issue 1, December 2015 In brief PwC 税理士法人の間接税サービスチームは、国内消費税およびクロスボーダーの間接税(付加価値税等) に関する税務アドバイザリーサービスを数多くご提供しております。間接税サービスチームは、さらなるサービ ス向上を目的として、Indirect Tax News を定期的に発信し、日ごろより付加価値税等の間接税の問題に直面 される皆様に、間接税に関するトピックスをご紹介していきます。皆様のビジネスにおかれまして、少しでもお 役立ていただけましたら幸いです。 今回は、日本の会社が欧州の付加価値税(VAT)に巻き込まれる典型例として、現地で資産の譲渡を行うケ ースを取り上げ、申告義務が生じる理由や申告義務が生じない場合などについてお伝えいたします。 In detail 1. 日本の会社が欧州 VAT に巻き込まれる典型例 日本の会社が EU のある国の VAT を支払うことになったり、または、日本の会社が EU のある国で VAT の申 告義務を課されることとなったりする典型的なケースとして、取引対象となる製品が EU 域内(または特定の EU 加盟国内)でのみ移動している場合に日本の会社が商流に介在するケースがあります。 EU の VAT に限らず、モノに対して付加価値税や売上税が課される場合は、モノの所在や移動が課税地判 断の基準となるのが通常です。取引を行う者、特に商流の間に介在する中間事業者の所在地国や税務上の 居住地は、原則として、課税地判断には影響を与えません。この点は日本の消費税も同様です。 2. 現地で商品を転売する場合 事例 日本の機械メーカー(B 社)はドイツの C 社のドイツ国内の工場で使われる機械を納入する。B 社が製造する 機械本体は日本から納入するものの、機械を構成する部品の一部は、ドイツ国内の部品メーカーA 社から調 達する。A 社から調達する部品は、最終顧客である C 社の工場に直接輸送される。機械の据付・組立は契 約外であり、C 社が第三者に委託して行う。 この事例では、機械本体については日本から EU(ドイツ)への輸入であり、例えば購入者である C 社を輸入 者として通関すれば、輸入 VAT は C 社において支払うこととなり、日本の B 社はドイツの VAT には直接関 係しません。しかし、C 社から調達する部品については、ドイツ国内で買い受けてさらにドイツ国内に納品して いることから、A 社から B 社への販売取引、B 社から C 社への販売取引、いずれについてもドイツ VAT が課 されます。すなわち、部品メーカーA 社(ドイツ)は日本の B 社に対してドイツ VAT(19%)を請求書に載せて 請求、B 社はさらに C 社に対してドイツ VAT(19%)を請求する必要があります。 www.pwc.com/jp/tax Indirect Tax News ドイツ国内課税売上を行っている B 社は、ドイツにおいて VAT 登録を行い、一定の課税期間ごと(月次また は四半期ごと)に VAT 申告書を提出する必要があります。B 社は、その申告書において、C 社から回収する ドイツ VAT19%を納付し、A 社に支払うドイツ VAT19%を前段階税として控除することとなります。 VAT は事業者にとっては原則として費用中立であり、VAT がコストになることはありませんが、VAT 登録や申 告手続が発生する場合には、その事務処理のためのコストが発生します。 なお、上記の事例のように、日本の会社が現地で課税売上を行っている場合には、通常、VAT リファンド申 請と呼ばれる、非 EU 居住者のための特別な還付申請手続によって前段階税の還付を受けることは認められ ません。VAT 登録・申告義務が生じる取引(国内課税売上)を行っている以上は、VAT リファンド申請ではな く、VAT 申告書の中で前段階税の控除を申告すべきという整理だからです。 3. 資産の譲渡に対して適用されるリバースチャージ VAT は、原則として、資産を譲渡する者あるいはサービスの提供者が、相手方(資産の購入者あるいはサー ビスの受益者)に対して VAT を請求し、相手方から回収する VAT を、申告により税務当局に納税するという 仕組みです。しかし、ある特別な場合には、納税義務が買主側に転嫁されることがあります。これをリバースチ ャージといいます。リバースチャージが適用される場合は、資産を譲渡する者あるいはサービスの提供者は、 相手方に対して VAT を請求せず、その相手方が自身の VAT 申告において当該リバースチャージ取引にか かる納税額を申告します。相手方は、あくまでモノやサービスの買手であるので、基本的には、リバースチャ ージにより申告する VAT と同額が前段階税控除の対象となります。 EU においては、リバースチャージが適用される典型的な場面としては、外国の事業者がある EU 加盟国の事 業者に対してサービスを提供する場合があります。事業者間取引の場合、サービスの課税地は、原則として、 サービスの受益者の所在地国とされます。このとき、一般的にリバースチャージが適用され、サービス提供者 である外国の事業者が現地の VAT 申告を行う事務負担は回避されます。 資産の譲渡については、リバースチャージの適用場面は限定的です。しかし、最近では、フランス、オランダ をはじめ、外国の事業者が行う資産の譲渡一般にリバースチャージを適用する EU 加盟国が増加しています。 外国の事業者が現地の事業者に対して行う資産の譲渡に対してリバースチャージが適用されれば、現地の 事業者が自身の VAT 申告においてリバースチャージにかかる納税額を申告することとなるので、請求書上 は VAT を載せません。そのような場合は、VAT 登録・申告義務がなく、通常、前段階税は VAT リファンド申 請手続を利用して還付申請することになります。 ただし、動産の譲渡一般についてリバースチャージの適用が認められる国であっても、例えば、商流に外国 の中間事業者が 2 社連なって介在するような場合(四者取引)にも問題なく提供されるかについては、慎重に 検討する必要があります。リバースチャージ適用の条件として、顧客が現地居住者であること、または、顧客 が現地で VAT 登録されていることを要求している場合があります。 PwC 2 Indirect Tax News Let’s talk より詳しい情報、または個別案件への取り組みにつきましては、当法人の貴社担当者もしくは下記までお問 い合わせください。 PwC 税理士法人 〒100-6015 東京都千代田区霞が関 3 丁目 2 番 5 号 霞が関ビル 15 階 電話 : 03-5251-2400(代表) www.pwc.com/jp/tax パートナー 村上 高士 03-5251-2341 [email protected] シニアマネージャー 中田 幸康 03-5251-2530 [email protected] マネージャー 溝口 豪 03-5251-2540 [email protected] PwC 税理士法人は、PwC のメンバーファームです。公認会計士、税理士など約 520 人を有する日本最大級のタックスアドバイザーとして、法人・個人の申 告をはじめ、金融・不動産関連、移転価格、M&A、事業再編、国際税務、連結納税制度など幅広い分野において税務コンサルティングを提供しています。 PwC は、世界 157 カ国 におよぶグローバルネットワークに 208,000 人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスの提供を通じて、 企業・団体や個人の価値創造を支援しています。詳細は www.pwc.com をご覧ください。 本書は概略的な内容を紹介する目的のみで作成していますので、プロフェッショナルによるコンサルティングの代替となるものではありません。 © 2015 PwC 税理士法人 無断複写・転載を禁じます。 PwC とはメンバーファームである PwC 税理士法人、または日本における PwC メンバーファームおよび(または)その指定子会社または PwC のネットワーク を指しています。各メンバーファームおよび子会社は、別組織となっています。詳細は www.pwc.com/structure をご覧ください。 PwC 3