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国際税務研究会 「国際税務」 2013 年 4 月号掲載 インド進出にあたって知っておくべき間接税」

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国際税務研究会 「国際税務」 2013 年 4 月号掲載 インド進出にあたって知っておくべき間接税」
国際税務研究会 「国際税務」 2013 年 4 月号掲載
「海外進出のためのチェックポイント: インド 第 5 回
インド進出にあたって知っておくべき間接税」
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース
インドビジネスデスク ディレクター 高野 一弘
1. インド間接税制の概要
インドでは,中央政府および各州政府や,市町村といった地方政府にも間接税の課税権が付与されています。このよう
な状況から,各州や,市町村が独自の間接税制度を採用しており,存在している間接税の数は多数に上ります。
国税については,インド国内ですべての対象取引に対して同様に課せられます。加えて,州税についても,物の販売に
関する税制としては,インド国内すべてで「州 VAT(付加価値税」)もしくは「CST(中央売上税)」という制度に基づき,課
税されています。
本稿では,インドでビジネスを行う上で基本となります,国税(関税,物品税,サービスタックス)および州税(州 VAT,
CST)について概要を解説します。
2. 関税
関税はいわゆる関税制度であり,中央政府(国)が輸入された物品に対して課す,間接税の一つとされます。日本の制
度上は,関税は間接税ではありますが,消費税制度(いわゆる「付加価値税」)とは別途独立した制度とされています。し
かしながら,インドの場合は,付加関税として課税されるものが,いわゆる「付加価値税」を構成し,日本の消費税制度で
言うところの「仕入税額控除の対象」となります。つまり,日本の消費税制度上の「輸入消費税」に相当するものが,「付加
関税」として課税されます。
インドの関税は,基本関税(BCD),相殺関税(CVD),特別追加関税(ADC)に教育税などのセス(追加税)で構成され
ており,基本関税を標準税率の 10%を前提とすると,算定される関税は以下のとおりとなります。
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CIF価値を100とした場合の計算例
CIF 価値
基本関税 (BCD) 税率 10%
小計
相殺関税(CVD) 税率 12%
小計
関税セス BCDおよびCVDの3%
小計
特別追加税(SAD) 税率 4%
合計
100
10
110
13.2
123.20
0.69
123.89
4.96
128.85
上記のうち,CVD および ADC はいわゆる仕入税額控除の対象として,受取間接税と相殺することが可能です。ただし,
相殺関税は以下に説明する物品税見合いとして課税される間接税であるため,輸入者が物品税法上の製造業者となら
ない限り,当該輸入者は物品税法上の課税事業者となることができません。課税事業者となれないケースでは,CVD は
仮払間接税ではなく,コストとして処理されることとなります。ただし,輸入事業者が製造業者に該当しない場合であって
も,その輸入事業者の顧客が製造業者である場合は,支払った CVD を顧客である製造業者に転嫁し,その顧客である
製造業者において仕入税額控除を適用することが認められています。この場合,当該輸入事業者が,ファースト ステー
ジ ディーラーとして税務当局に登録することに合わせて,タックスインボイスを顧客である製造業者に開示することが必
要となります。タックスインボイスの開示がネックとなって,顧客への CVD の移転処理は実務的にはあまり採用されてい
ません。
また,ADC は州 VAT 見合いとして課される税でありますが,付加関税であり,国税となります。したがって,ADC を州税
である州 VAT と相殺することは認められません。輸入業者が製造業者でないケースで,ADC の免除を受けられない場
合は,輸入時に一旦 ADC の納税を行い,その後,還付申請を行うこととなります。還付までには,相応の期間を要する
ことが一般的なため,ビジネスプランを作成する際には資金繰りの面からも,インド間接税を検討しておくことが必要とな
ります。
3. 物品税
物品税(Excise Duty,CENVAT)は,中央政府によってインド国内の動産や製品の製造業者に課される間接税です。
物品税は,HS 分類を基礎とする物品税率表による率で課税されます。物品税の標準税率は 12%で,これに加えて教
育税2%と二次高等教育税1%が物品税合計額に適用されるため,実効税率は 12.36%となります。
ほとんどの小売目的の一般消費者用商品に対する物品税は,商品に印刷されている MRP(Maximum Retail Price)に基
づいて計算されます。ただし,MRP の 15%から 55%の範囲において減額が許容されることがあります。MRP による査定
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の対象とならない商品は,取引価格に基づいて物品税が課されます。また,中央政府は,商品の価格に応じて課税を行
うため,その課税標準となるべき価格を決定する権限を有しています。
物品税は VAT が変更されたものであり,生産者が国内で調達した品目に対して支払った物品税および輸入品に対す
る付加関税(CVD と ADC)をクレジットとして控除することが認められています。課税対象となる最終商品の生産者は,
最終商品とその生産と最終商品のために使用したサービス(インプットサービス)に対して支払ったサービス税について
もクレジットとして控除することができます。控除の対象とできるサービスの内容は以下のとおりです。
・広告や販売促進サービス
・調達に関するサービス
・工場や関連する事務所の開設,近代化,改装,修理で使用したサービス
・経理,監査,資金調達,採用,品質管理,教育訓練,コンピューターネットワーキング,信用調査に関わる活動
4. サービス税
サービス税は 1994 年財政法第5章に規定された特定の課税サービスに対して課税されていました。2012 年7月1日か
らはネガティブリストが導入され,ネガティブリストに記載されているサービス以外のすべてのサービスが課税サービスとさ
れました。サービス税の税率は 12%で,さらに教育税2%と二次高等教育税1%が課されます。したがって,サービス税
の実効税率は 12.36%となります。
サービス税の納税義務はサービスの提供者にあります。ただし,商品の陸路輸送や財政援助サービスなどの指定された
サービスについては,サービスの受領者に納税義務があります。
さらに,2012‐13 年度の予算案において共同租税債務が導入され,下記のような場合にはサービス提供者とサービス受
領者の両者が共同でサービス税の納税義務を負うこととなりました。
・乗客を運ぶための車の手配
・人材派遣
・雇用契約
サービス提供者がインド国外よりインド国内のサービス受領者にサービスを提供した場合は,サービスの輸入として,サ
ービス税の対象とされます。このようなケースでは,サービスの提供者がサービス税の納税義務者として,必要なコンプラ
イアンスをインド国内で実施することは困難と認められることから,いわゆるリバース チャージ メカニズムが採用され,サ
ービス受領者がサービス税の納税義務者となります。
サービス税の納税義務者は,一定の条件を満たした支払いサービス税およびサービスの提供のために使用した資本財
や原材料に課された物品税を,サービス税債務と相殺することが認められます。
また,中央政府は 2005 年にサービス輸出に関する規則により,サービス輸出に対してはサービス税を課さないとしまし
た。従前,輸出か否かの判定において,そのサービスがインド国内において利用されないことという条件がついていたた
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め,輸出要件を充足することが困難といわれていましたが,このような条件はすでに撤廃されているため,サービス税の
輸出免税要件をクリアすることは容易になっています。
5. 中央売上税
インド国内で,州をまたぐ物品の販売に対しては,中央売上税(CST)が課されます。貿易,または製造や特別な活動
(採鉱,電気通信ネットワーク等)の原材料の使用を目的とした商品の売買は,購入業者によるフォーム C の提示を条件
に,2%の税率で CST が課されます。当該フォームの提示がない場合,販売元の州 VAT 税率が適用されます。CST は,
支払者にとっては,他州から仕入れたことにより生じたコストとして取り扱われます。つまり仕入税額控除を適用すること
ができませんので,適用される税率は慎重に検討しておく必要があります。
物品・サービス税(GST)の導入により,CST は段階的に廃止される予定です。正式導入までは,CST と州 VAT が並
存することとなります。
6. 州 VAT
インド国内における州内での物品の販売に対しては,州 VAT が課されます。VAT 税制では州内で購入した商品に対し
て支払った VAT は VAT 租税債務と相殺することが可能です。
インドへの輸入品に対して,現在州 VAT は課されていません。また輸出品に対しては州 VAT は0%となっています。輸
出品生産のために購入・使用された原材料または輸出品のために購入された商品に課された VAT は,還付の対象とな
ります。
7. まとめ
以上,簡単にインドの主要な間接税制について説明しました。複数の課税主体による,多数の間接税制度によって制度
自体が非常に複雑なものとなっています。商流・物流の組み合わせにより,課される間接税の税目が異なることになるこ
とも起こり得ますし,間接税のコストに与えるインパクトが甚大となることも想定されます。インド投資においては,このよう
な複雑な間接税制について,十分な検討を行った上で,商流,物流など決定することが肝要となると考えます。
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