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3 連結納税における中間納付額の計算 C A S E 最初連結事業年度における

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3 連結納税における中間納付額の計算 C A S E 最初連結事業年度における
Selection
C A S E
3
連結納税における中間納付額の計算
税理士法人プライスウォーター
ハウスクーパース 税理士
UESTION
飯島 哉文
最初連結事業年度における
中間納付額の計算について
P 社(3 月決算法人)は、A 社と B 社が
連結納税の開始により連結親法人である
共同株式移転により平成 23 年 4 月 1 日に
P 社は、申請特例年度である最初連結事業
設立した法人です。この株式移転によりグ
年度に係り連結中間申告書を提出しなけれ
ループ内資本関係の整理が一段落したので、
ばなりません。当該連結中間申告に係る連
P 社は設立直後に法人税法 4 条の 3 第 6
結法人税の中間納付額の計算方法を教えて
項の連結納税の申請特例を利用して、次の
ください。なお、P 社グループでは、仮決
内容の連結納税の承認の申請を行い、平成
算による連結中間申告は考慮しておりませ
23 年 6 月 26 日付けでその承認を受けま
ん。
なお、本件の検討にあたり、補足すべき
した。
①
平成 24 年 3 月期(設立初年度。平成
23 年 4 月 1 日から平成 24 年 3 月 31
日まで)を最初連結事業年度とする。
②
P 社を連結親法人、A 社、B 社、D 社、
F 社及び G 社(すべて 3 月決算法人)を
各連結法人に係る事実関係は次頁〔図表 2〕
のとおりです。
また、本件の中間納付額の計算で参照す
る各法人の直近事業年度における確定法人
税額の一覧は〔図表 3〕のとおりです。
連結子法人とする(〔図表 1〕参照)。
〔図表 1〕平成 23 年 9 月 30 日現在の
資本関係図
連結納税グループ
P社
(連結親法人)
100%
28 zeimu QA
直前事業年度等
確定法人税額
P社
なし
なし
A社
平成 23 年3月期
24 百万円
B社
平成 23 年3月期
72 百万円
平成 23 年3月期
48 百万円
C社
平成 23 年5月期
(みなし事業年度)
6百万円
平成 23 年3月期
60 百万円
平成 22 年3月期
27 百万円
A社
(連結子法人)
B社
(連結子法人)
D社
100%
100%
E社
平成 22 年 10 月期
(みなし事業年度)
21 百万円
F社
(連結子法人)
D社
(連結子法人)
F社
平成 23 年3月期
3百万円
平成 23 年3月期
45 百万円
平成 23 年7月期
(みなし事業年度)
9百万円
100%
参 考
法法2十二の八・
十二の十七
4の3①⑥⑨⑪
14①七
61の11
81の19①③④
⑦
100%
〔図表 3〕各社の直近事業年度等の
確定法人税額の一覧
G社
(連結子法人)
G社
※上記の金額は平成 23 年9月 30 日までの期間に更正
等による変更はありません。
2011.9
CASE 3
連結納税における中間納付額の計算
〔図表 2〕各連結法人の状況
・ P 社の設立に係る株式移転は、法人税法 2 条 12 の 17 号に規定する適格株式移転に該当します。
・ B 社は平成 23 年 6 月 1 日に、同日を合併の効力発生日(合併の日)として 100 %子会社である C 社(3 月決算法人)を吸収合併し
ています。なお、当該合併は法人税法 2 条 12 の 8 号に規定する適格合併に該当します。
・ D 社は平成 22 年 11 月 1 日に、同日を合併の効力発生日(合併の日)として 100 %子会社である E 社(3 月決算法人)を吸収合併
しています。なお、当該合併は法人税法 2 条 12 の 8 号に規定する適格合併に該当します。
・ F 社は、平成 23 年 1 月 5 日に A 社が全額出資して設立した法人です。
・ G 社は、F 社により最初連結親法人事業年度中の平成 23 年 8 月1日に全株式を取得された法人ですが、G 社は時価評価資産を有し
ていないので、完全支配関係が成立した日(平成 23 年 8 月 1 日)より連結納税に加入し連結法人となっています。
単体申告
C 社(23 年 6 月 1 日
に吸収合併により消滅
B 社の 100%子会社)
平成 5 年 4 月 1 日設立
(3 月決算法人)
単体申告
F 社(連結子法人 A 社の 100%子会社)
平成 23 年 1 月 5 日設立
(3 月決算法人)
G 社(連結子法人 F 社の 100%子法人)
平成 10 年 4 月 1 日設立
(3 月決算法人)
連結申告
(第 2 期目)
連結申告(第 1 期目)
連結申告
(第 2 期目)
連結申告(第 1 期目)
連結申告
(第 2 期目)
連結申告(第 1 期目)
連結申告
(第 2 期目)
連結申告(第 1 期目)
連結申告
(第 2 期目)
H23
6/ 1
単体申告
E 社(22 年 11 月 1 日
に吸収合併により消滅
D 社の 100%子会社)
平成 12 年 1 月 1 日設立
(3 月決算法人)
連結申告(第 1 期目)
株式移転に
より設立
B 社(連結子法人
(株式移転完全子法人)
)
平成元年 4 月 1 日設立
(3 月決算法人)
D 社(連結子法人 B 社の 100%子会社)
平成 10 年 4 月 1 日設立
(3 月決算法人)
確定申告
期限
(第1期)
H24
7/31
単体申告
(みなし
事業年度)
B 社が C 社
を吸収合併
H22
11/ 1
単体申告 単体申告
(みなし事業年度)D 社が E 社
を吸収合併 H23
1/ 5
単体申告
出資により
設立
単体申告
H23
8/ 1
単体申告
(みなし事業年度)
連結申告
(第 2 期目)
連結申告(第 1 期目)
F 社の 100%子会社化
連結加入
2011.9
zeimu QA 29
CASE 3
H22
4/ 1
A 社(連結子法人
(株式移転完全子法人)
)
平成 10 年 4 月 1 日設立
(3 月決算法人)
決算日
(第1期)
H24
3/31
Selection Q&A
H23
4/ 1
P 社(連結親法人
(株式移転完全親法人)
)
平成 23 年 4 月 1 日設立
(3 月決算法人)
中間申告
期限
H23
11/30
連結納税
の承認
H23
6/26
Selection
C A S E
3
連結納税における中間納付額の計算
CASE 3
最初連結事業年度における中間申告
の場合、前連結事業年度が存在しない
ので、被合併法人であるC社分の金額を調整
(加算)します(法法81 の 19 ①・④三)
。
ので、その中間納付額の計算は、最初連結事
① B社プロパー分(合併法人分)
業年度における、各連結法人等の直近事業年
B社プロパーの構成額=
度に係る確定法人税額に基づいて行います。
この中間納付額は、連結親法人が一括して納
付することになります。
なお、本件のように連結親法人が株式移転
直前事業年度の確定法人税額
(平成 23 年3月期の確定法人税額)
×6
直前事業年度の月数
(平成 23 年3月期の月数)
により設立されたばかりで、かつ、当該設立
=
初年度より連結納税を開始する場合であって
も、その中間納付額は、メンバーである連結
② C社分(被合併法人分)
子法人等の直近確定法人税額の実績に基づい
C社に係る構成額=
て計算されますので注意が必要です。以下、
被合併法人の確定法人税額(※)
(平成23 年3月期の確定法人税額)
本件の連結中間納付額を構成する、各連結法
人に係る金額の計算(以下「構成額」といい
ます。)を中心に解説していきます。
分子の計算期間となった事業年度の月数
(平成23 年3月期の月数)
合併の日から連結事業年度開始の日
以後6か月を経過した日の前日まで
×
の月数(平成 23 年6月1日から9月
30 日までの4月)
1 構成額の計算
(1)P 社
設立初年度であることから、中間納付額の
計算の対象となる前事業年度における確定法
=
人税額は存在しません。したがって、P社に
係る構成額はゼロとなります(法法 81 の 19
※
48 百万円
×4月= 16 百万円
12 月
被合併法人の確定法人税額とは、連結事業
①一)。
年度開始の日の1年前の日以後に終了した被
(2)A 社
合併法人の各事業年度(6月以上の事業年度
A社については、以下の計算式に基づき、
に限る。)のうち、最新のものの確定法人税額
構成額を計算します(法法 81 の19 ①一)
。
で当該連結事業年度開始の日から6か月を経
A社に係る構成額=
過した日の前日までに確定したものをいいます。
直前事業年度の確定法人税額
(平成 23 年3月期の確定法人税額)
×6
直前事業年度の月数
(平成23年3月期の月数)
=
24 百万円
×6= 12 百万円
12 月
(3)B 社
B社もA社と同様の計算で、まず B 社プロ
B社に係る構成額は、上述①+②の合計額
である 52 百万円 となります。
(4)D 社
D社もA社と同様の計算で、まずはD社プ
ロパー分の金額を計算します。そしてさらに、
最初連結事業年度の前事業年度中(平成 22
年 11 月1日)に吸収合併した被合併法人 E
社分の金額を調整(加算)します(法法 81
パーの分の金額を計算することになります。
の19 ①・④一)
。
そしてさらに、最初連結事業年度の上期中
① D社プロパー分(合併法人分)
(平成 23 年6月1日)にC社を吸収合併した
30 zeimu QA
72 百万円
×6= 36 百万円
12 月
2011.9
D社プロパーの構成額=
CASE 3
(6)G 社
直前事業年度の確定法人税額
(平成23 年3月期の確定法人税額)
直前事業年度の月数
(平成 23 年3月期の月数)
=
連結事業年度の上期中に新規に連結子法人
×6
が加入した場合には、以下の計算式に基づき、
構成額を計算することになります(法法 81
60 百万円
×6= 30 百万円
12 月
の19 ③二)
。
G社に係る構成額=
② E社分(被合併法人分)
連結加入法人の確定法人税額(※)
(平成23 年3月期の確定法人税額)
E社に係る構成額=
被合併法人の確定法人税額(※)
(平成22 年10 月期の確定法人税額)
分子の計算期間となった事業年度の月数
(平成 23 年3月期の月数)
分子の計算期間となった事業年度の月数
(平成 22 年10 月期の月数)
加入日から連結事業年度開始の日以後6
× か月を経過した日の前日までの月数(平成
23 年8月1日から9月 30 日までの2月)
合併法人の前事業年度開始の日
から合併の日の前日までの月数
(平成22 年4月1日から平成 22
年10 月 31 日までの7月)
×6
※
45 百万円
×2月= 7.5 百万円
12 月
連結加入法人の確定法人税額とは、連結事
業年度開始の日の1年前の日以後に終了した
21 百万円
7月
×6 = 10.5 百万円
×
7月
12 月
加入連結子法人の各事業年度(6月以上の事
被合併法人の確定法人税額とは、連結事業
人税額で当該連結事業年度開始の日から6か
年度開始の日の1年前の日以後に終了した被
月を経過した日の前日までに確定したものを
合併法人の各事業年度(6月以上の事業年度
いいます。
=
※
に限る。)のうち、最新のものの確定法人税額で
業年度に限る。)のうち、最新のものの確定法
(7)P 社が納付する連結中間納付額
上記(1)∼(6)までをまとめると、P 社が
当該連結事業年度開始の日から6か月を経過
した日の前日までに確定したものをいいます。
納付すべき連結中間納付額は〔図表 4〕のと
D社に係る構成額は、上述①+②の合計額
おりとなります。
である 40.5 百万円 となります。
(5)F 社
〔図表 4〕連結中間納付額
連結法人
P社
F社も、A社と同様の計算で構成額を計算
することになります(法法 81 の19 ①一・⑦)
。
F社に係る構成額=
直前事業年度の確定法人税額
(平成 23 年3月期の確定法人税額)
×6
直前事業年度の月数
(平成23 年3月期の月数)
=
3百万円
×6= 6 百万円
3月(※)
CASE 3
合併法人の前事業年度の月数
(平成23 年3月期の月数)
=
Selection Q&A
×
連結納税における中間納付額の計算
2
単位:百万円
金額
0
A社
B社
12
52
D社
40.5
F社
G社
6
7.5
連結中間申告に係る中間納付額
118
飯島 哉文
IIJIMA saimon
連結中間納付額の計算方法(まとめ)
本設例における連結法人ごとの計算をまと
めると、次頁〔図表 5〕のとおりとなります。
※ 1月に満たない端数は切り上げます。
2011.9
税理士法人プライスウ
ォーターハウスクーパ
ース マネージャー・
税理士。
1978年神奈川県鎌倉市
生まれ。慶應義塾大学
経済学部卒業。2002年
9 月税理士法人プライ
スウォーターハウスク
ーパースに入所。日系
及び外資系企業の申告
書作成業務、税務顧問
業務、
連結納税・組織再
編等に係るアドバイザ
リー業務に従事。
zeimu QA 31
Selection
C A S E
3
CASE 3
連結納税における中間納付額の計算
〔図表 5〕中間納付額の計算方法
中間納付額=①+②+③+④
■原則
①
各連結法人
各法人の直前事業年度の確定法人税額
×6
直前(連結)事業年度の月数
P 社・A 社・B 社・
D社
平成 23 年 3 月期の確定法人税額
×6
12 月
F社
平成 23 年 3 月期の確定法人税額
×6
3月
(法法 81 条の 19 第 1 項)
■組織再編成がある場合
最初連結事業年度中
被合併法人の直前事業年度の
合併の日から連結事業年度
(上期)の適格合併に
確定法人税額
(A)
× 開始の日以後 6 月を経過し (法法 81 条の 19 第 4 項 3 号)
② 係る被合併法人
(A)
の計算期間となった被合併法人の
た日の前日までの月数
事業年度の月数
C 社の平成 23 年 3 月期の確定法人税額
×4月
12 月
C社
③
前事業年度中の適格合
併に係る被合併法人
被合併法人の直前事業年度
の確定法人税額
(A)
(A)
の計算期間となった被合
併法人の事業年度の月数
(
×
合併法人の前事業年度開始の日
から合併の日の前日までの月数
合併法人の前事業年度の月数
E 社の平成 22 年 10 月期の確定法人税額
E社
7月
(
×
)
× 6 (法法 81 条の 19 第 4 項 1 号)
7月
×6
12 月
)
■連結法人の加入がある場合
④
連結事業年度(上期)
に加入がある場合
加入法人の直前事業年度の
確定法人税額
(A)
加入日から連結事業年度開
× 始の日以後 6 月を経過した
(A)
の計算期間となった加入法人の
日の前日までの月数
事業年度の月数
(法法 81 条の 19 第 3 項 2 号)
G 社の平成 23 年 3 月期の確定法人税額
×2月
12 月
G社
コメント
連結納税初年度の場合、連結納税グルー
り親会社を設立した場合には、もともと全
プとしての前期納税実績がないため、中間
然交流のないグループ同士が統合されるた
納付額の計算に当たっては、連結事業年度
め、社内の連絡体制が整っておらず、各連
開始の日から6か月を経過する日に存在す
結法人のステイタスを確認するのが困難な
る各連結法人の前事業年度等の納付額を確
状況のまま中間申告の期限が到来する可能
認する必要があります。具体的には、各連
性が十分考えられます。連結納税導入の緩
結法人に係る前事業年度等のステイタス
和に伴い、今後も連結納税に移行する法人
(組織再編の有無、連結納税加入・離脱の
時期等)を事前に確認していただくことに
前述したような難点も考慮に入れて、連結
なります。
納税初年度での中間納付額の計算に取り組
また、本設例のように共同株式移転によ
32 zeimu QA
2011.9
グループが増えてくると予想されますが、
まれることをお勧めします。
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