...

2016 年度税制改正と実効税率への影響 Japan Tax Update In brief

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

2016 年度税制改正と実効税率への影響 Japan Tax Update In brief
Japan Tax Update
2016 年度税制改正と実効税率への影響
Issue 120, April 2016
In brief
2016 年度税制改正関連法(「所得税法等の一部を改正する法律」、「地方法人税法」、「地方税法等の一部
を改正する法律」)が 2016 年 3 月 29 日に可決成立し、同年 4 月 1 日より施行されました(地方法人税、住民
税に係る改正は 2017 年 4 月 1 日に施行)。本ニュースレターでは、法人税率等の引下げと地方法人税の税
率見直しに伴う、実効税率への影響について解説いたします。
In detail
1. 法人の実効税率に影響を与える2016年度税制改正内容
(1) 法人税率の引下げと地方税の税率の見直し
2016 年度(平成 28 年度)税制改正により、法人税の税率が、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度は
23.4%、2018 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度は 23.2%に引き下げられました。
外形標準課税制度の見直しにおいては、所得割の税率が改正前の 60%程度まで引き下げられる一方で、
外形標準課税(付加価値割、資本割)は改正前の 1.67 倍に拡大され、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事
業年度から所得割の税率は 6%から 3.6%(地方法人特別税を含んだ税率)に、付加価値割と資本割の税率は、
それぞれ 0.72%から 1.2%、0.3%から 0.5%に改正されました(図表1)。
地方法人特別税は、2008 年度税制の抜本的な改正において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われ
るまでの間の暫定措置として、法人事業税の一部を分離して導入されたもので、法人事業税のうち所得割額
または収入割額の標準税率相当額を課税標準として計算されます。2014 年度の税制改正により、地方法人
特別税の概ね 3 分の 1 が法人事業税に復元されましたが、今般の改正により、2016 年 4 月 1 日以後開始
事業年度では、税率が 93.5%から 414.2%に引き上げられ、2017 年 4 月 1 日以後開始事業年度から廃止され
て法人事業税に復元されます。
地方法人課税の偏在是正のため、2014 年度税制改正により地方法人税が創設され、法人住民税住民割の
税率が引き下げられましたが、今般の改正により、2017 年 4 月 1 日開始事業年度より、地方法人税率を引き
上げる一方で、法人住民税住民割の税率がさらに引き下げられます(図表 2)。本件改正は単体申告納税法
人では適用となる実効税率には影響を及ぼしませんが、連結申告納税法人では地方法人税の税率引上げ
に伴う繰延税金資産の見直しが必要となります。
www.pwc.com/jp/tax
Japan Tax Update
【図表 1 外形標準課税の税率の改正】
事業年度開始日
付加価値割
資本割
年 400 万円以下の所得
所
年 400 万円超 800 万円以
得
下の所得
割
年 800 万円超の所得
2016 年 4 月 1 日前
開始事業年度
0.72%
0.3%
3.1% (1.6%)
4.6% (2.3%)
2016 年 4 月 1 日以後
開始事業年度
1.2%
0.5%
1.9% (0.3%)
2.7% (0.5%)
6.0% (3.1%)
3.6% (0.7%)
地方法人特別税の税率
93.5%
414.2% (注)
所得割のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率
(注) 地方法人特別税は 2017 年 4 月 1 日以後開始事業年度から廃止され、法人事業税に復元
【図表 2 地方法人税、法人住民税法人割の税率の改正】
2017 年 4 月 1 日前開始事業年度
事業年度開始日
標準税率
制限税率
道府県民税法人税割
3.2%
4.2%
市町村民税法人税割
9.7%
12.1%
地方法人税
4.4%
2017 年 4 月 1 日以後開始事業年度
標準税率
1.0%
6.0%
制限税率
2.0%
8.4%
10.3%
(2) 改正後の法人税率と実効税率
以上の改正により、2016 年 4 月 1 日以後開始事業年度の法人税率と実効税率は、外形標準課税の適用法
人と非適用法人それぞれについて、図表 3、4 の通りとなります。
【図表 3 外形標準課税適用法人の法人税率と実効税率(標準税率)】
2016 年 4 月 1 日前
2016 年 4 月 1 日以後
事業年度開始日
開始事業年度
開始事業年度
法人税
23.9%
23.4%
地方法人税
(法人税 X4.4%)1.052%
(法人税 X4.4%)1.030%
法人税計
24.95%
24.43%
都道府県民税
(法人税 X3.2%)0.765%
(法人税 X3.2%)0.749%
市町村民税
(法人税 X9.7%)2.318%
(法人税 X9.7%)2.270%
法人住民税計
3.083%
3.019%
事業税(所得割)
3.10%
0.70%
地方法人特別税
(所得割 X93.5%)2.90%
(所得割 X414.2%)2.90%
事業税(所得割)計
6.00%
3.60%
表面税率
34.03%
31.05%
実効税率
32.11%
29.97%
2017 年 4 月 1 日以後
開始事業年度
23.4%
(法人税 X10.3%)2.41%
25.81%
(法人税 X1%)0.234%
(法人税 X6%)1.404%
1.638%
3.60%
0
3.60%
31.05%
29.97%
2018 年 4 月 1 日以後
開始事業年度
23.2%
(法人税 X10.3%)2.39%
25.59%
(法人税 X1%)0.232%
(法人税 X6%)1.392%
1.624%
3.60%
0
3.60%
30.81%
29.74%
2017 年 4 月 1 日以後
開始事業年度
23.4%
(法人税 X10.3%)2.41%
25.81%
(法人税 X1%)0.234%
(法人税 X6%)1.404%
1.638%
9.60%
0
9.60%
37.05%
33.80%
2018 年 4 月 1 日以後
開始事業年度
23.2%
(法人税 X10.3%)2.39%
25.59%
(法人税 X1%)0.232%
(法人税 X6%)1.392%
1.624%
9.60%
0
9.60%
36.81%
33.59%
【図表 4 外形標準課税非適用法人の法人税率と実効税率(標準税率)】
事業年度開始日
法人税
地方法人税
法人税計
都道府県民税
市町村民税
法人住民税計
事業税(所得割)
地方法人特別税
事業税(所得割)計
表面税率
実効税率
PwC
2016 年 4 月 1 日前
開始事業年度
23.9%
(法人税 X4.4%)1.052%
24.95%
(法人税 X3.2%)0.765%
(法人税 X9.7%)2.318%
3.083%
6.70%
(所得割 X43.2%)2.89%
9.59%
37.63%
34.33%
2016 年 4 月 1 日以後
開始事業年度
23.4%
(法人税 X4.4%)1.030%
24.43%
(法人税 X3.2%)0.749%
(法人税 X9.7%)2.270%
3.019%
6.70%
(所得割 X43.2%)2.89%
9.59%
37.04%
33.80%
2
Japan Tax Update
2. 東京都(事業税及び法人住民税に超過税率が適用されている地方公共団体)における税率
地方税法では、標準税率を超えて課せられる税率の上限が規定されており、東京都等の大都市圏において
超過税率が適用されております。2016年度の地方税法の改正を受けて東京都条例が改正され、外形標準課
税制度における所得割の税率が改正前の3.4%から0.88%(標準税率は0.7%)に引き下げられ、2016年4月1日
以後開始事業年度から適用されます。
法人住民税法人税割の税率は、4月27日現在でまだ改正されておりません。2016年3月14日に公表された
「企業会計基準適用指針第27号 税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(以下「適用指針」)
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/zeikouka2015_2/zeikouka_2015_2_1.pdf では、改正地方
税法等を受けた改正条例が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立していない場合は、「改正地方
税法等に規定されている標準税率に、決算日において成立している条例に規定されている超過課税による
税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える差分を考慮する税率」(適用指針第7項(2)②イ)によるこ
ととしています。差分を考慮する税率を算定する方法として、①改正地方税法等に規定されている標準税率
に、決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率が改正直前の地方税法等の標
準税率を超える数値を加えて算定する方法、②改正地方税法等に規定されている標準税率に、決算日にお
いて成立している条例に規定されている超過課税による税率における改正直前の地方税法等の標準税率に
対する割合を乗じて算定する方法、の2つが示されています(適用指針第8項)。下記図表の2017年4月1日以
後開始事業年度における、事業税所得割の税率は上記②、法人住民税法人税割の税率は上記①により試
算しています。
【図表5 外形標準課税適用法人の法人税率と実効税率:東京都】
2016 年 4 月 1 日前
2016 年 4 月 1 日以後
事業年度開始日
開始事業年度
開始事業年度
法人税
23.9%
23.4%
地方法人税
(法人税 X4.4%)1.052%
(法人税 X4.4%)1.030%
法人税計
24.95%
24.43%
都道府県民税
(法人税 X4.2%)1.004%
(法人税 X4.2%)0.983%
市町村民税
(法人税 X12.1%)2.892%
(法人税 X12.1%)2.831%
法人住民税計
3.896%
3.814%
事業税(所得割)
3.40%
0.88%
(所得割(注)X414.2%)
地方法人特別税
(所得割(注)X93.5%)2.90%
2.90%
事業税(所得割)計
6.30%
3.78%
表面税率
35.15%
32.02%
実効税率
33.06%
30.86%
(注) 標準税率による
【図表 6 外形標準課税非適用法人の法人税率と実効税率:東京都】
2016 年 4 月 1 日前
2016 年 4 月 1 日以後
事業年度開始日
開始事業年度
開始事業年度
法人税
23.9%
23.4%
(法人税
X4.4%)1.030%
地方法人税
(法人税 X4.4%)1.052%
法人税計
都道府県民税
市町村民税
法人住民税計
事業税(所得割)
地方法人特別税
事業税(所得割)計
表面税率
実効税率
(注) 標準税率による
PwC
24.95%
(法人税 X4.2%)1.004%
(法人税 X12.1%)2.892%
3.896%
7.18%
(所得割(注)X43.2%)2.89%
10.07%
38.92%
35.36%
24.43%
(法人税 X4.2%)0.983%
(法人税 X12.1%)2.831%
3.814%
7.18%
(所得割(注)X43.2%)2.89%
10.07%
38.32%
34.81%
2017 年 4 月 1 日以後
開始事業年度 推定値
23.4%
(法人税 X10.3%)2.41%
25.81%
(法人税 X2%)0.468%
(法人税 X8.4%)1.966%
2.434%
3.78%
2018 年 4 月 1 日以後
開始事業年度 推定値
23.2%
(法人税 X10.3%)2.39%
25.59%
(法人税 X2%)0.464%
(法人税 X8.4%)1.949%
2.413%
3.78%
0
0
3.78%
32.02%
30.86%
3.78%
31.78%
30.62%
2017 年 4 月 1 日以後
開始事業年度 推定値
23.4%
(法人税 X10.3%)2.41%
2018 年 4 月 1 日以後
開始事業年度 推定値
23.2%
(法人税 X10.3%)2.39%
25.81%
(法人税 X2%)0.468%
(法人税 X8.4%)1.966%
2.434%
10.08%
0
10.08%
38.32%
34.81%
25.59%
(法人税 X2%)0.464%
(法人税 X8.4%)1.949%
2.413%
10.08%
0
10.08%
38.08%
34.60%
3
Japan Tax Update
3. 改正による繰延税金資産・負債への影響
税効果会計に適用される税率が変更された場合には、決算日現在における改正後の税率を用いて、当期首
における繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を修正する(企業会計基準適用指針第27 号 税効果会計
に適用する税率に関する適用指針会計制度委員会報告第10号 個別財務諸表における税効果会計に関す
る実務指針19項 http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-11-10-2-20160325.pdf )こととされてい
ます。
住民税法人割の税率引下げと地方法人税の税率引上げは、2017 年 4 月 1 日に施行されます。単体申告納
税法人においては、この改正による実効税率への影響はありませんが、連結納税申告法人においては、①
地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断及び②地方税申告における繰延税金資産の回収可
能性の判断によっては、繰延税金資産の金額に影響があります。従って、2016 年 3 月末決算の連結納税申
告法人(2016 年 4 月 1 日以後開始事業年度より連結納税を開始する法人も含む)は、改正後の実効税率(地
方法人税法の税率及び地方税法等改正法による標準税率の増減を織り込んだ住民税率及び事業税率を用
いて算出した実効税率)を適用して、地方法人税等及び住民税の繰延税金資産の計算が必要です。
Let’s talk
より詳しい情報、または個別案件への取り組みにつきましては、当法人の貴社担当者もしくは下記までお問
い合わせください。
PwC 税理士法人
〒100-6015 東京都千代田区霞が関 3 丁目 2 番 5 号 霞が関ビル 15 階
電話 : 03-5251-2400(代表)
Email: [email protected]
www.pwc.com/jp/tax
パートナー
川崎 陽子
03-5251-2450
[email protected]
パートナー
鬼頭 朱実
03-5251-2461
[email protected]
ディレクター
荒井 優美子
03-5251-2475
[email protected]
PwC 税理士法人は、PwC のメンバーファームです。公認会計士、税理士など約 570 人を有する日本最大級のタックスアドバイザーとして、法人・個人の申
告をはじめ、金融・不動産関連、移転価格、M&A、事業再編、国際税務、連結納税制度など幅広い分野において税務コンサルティングを提供しています。
PwC は、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することを Purpose(存在意義)としています。私たちは、世界 157 カ国に及ぶグローバルネットワーク
に 208,000 人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細は www.pwc.com をご覧ください。
本書は概略的な内容を紹介する目的のみで作成していますので、プロフェッショナルによるコンサルティングの代替となるものではありません。
© 2016 PwC 税理士法人 無断複写・転載を禁じます。
PwC とはメンバーファームである PwC 税理士法人、または日本における PwC メンバーファームおよび(または)その指定子会社または PwC のネットワーク
を指しています。各メンバーファームおよび子会社は、別組織となっています。詳細は www.pwc.com/structure をご覧ください。
PwC
4
Fly UP