Comments
Transcript
中央経済社 「税務弘報」 2013 年 4 月号掲載 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース
中央経済社 「税務弘報」 2013 年 4 月号掲載 「25 年度税制改正 実務家 10 人の着眼-所得拡大促進税制・雇用促進税制」 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース マネージング ディレクター 公認会計士・税理士 荒井 優美子 ● 所得拡大促進税制でいう基準事業年度と前事業年度とは違うのですか。 所得拡大促進税制の制度を適用するには,⑴法人の雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する 割合が5%以上であること,⑵雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと,⑶平均給 与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと,の要件を満たす必要があります。 ⑵,⑶の判定における「前事業年度」は本制度適用の年度の直前の事業年度となります。⑴の要件の判定となる「基準 雇用者給与等支給額」とは,2013年4月1日以後最初に開始する事業年度の直前の事業年度(基準事業年度)の給与 等の支給額を指します。すなわち,5%の支給増加額の基準年度は,3月決算法人の場合は2013年3月31日終了事業 年度(以下,「2013年3月期」といいます),12月決算法人の場合は2013年12月期となります。 したがって,3月決算法人が2014年3月期に本制度を適用する場合は,2014年3月期の雇用者給与等支給額が2013年 3月期に比し5%以上増加し,雇用者給与等支給額並びに平均給与等支給額が,いずれも前事業年度の額以上である ことが必要です。 ● 給与支給額によってどれくらい税額に差が出てくるのでしょうか。 それぞれの制度の適用による控除額は,所得拡大促進税制の場合は給与等支給増加額の10%相当額,雇用促進税 制の場合は,40万円に増加雇用者数を乗じた金額で,いずれも法人税額の10%を限度とします。 法人税額への影響としては,給与総額(役員賞与除く)が5億円(平均給与500万円×100人)の企業が基準事業年度よ り5%給与アップさせた場合,250万円の税額控除を受けられることになります(5億円×5%×0.1)。一方,給与は据置 きで,同額の予算枠で雇用者数を増加させた場合,7人以上の雇用によって,雇用促進税制の税額控除の金額のほう が大きくなります。 ● 雇用促進税制とどのように異なりますか。 また,雇用促進税制の税額控除枠が40万円に拡大され,所得拡大促進税制との選択適用になりますが,その選択のポ イントは何でしょうか。 雇用促進税制は企業の雇用者数の増加に対する税制支援であるのに対し,所得拡大促進税制は賃上げに対する税制 支援です。したがって,事業の拡大等で人員増加の計画がある場合は雇用促進税制の適用が考えられます。ただし, PwC 1 雇用者側からみれば,雇用の拡大は社会保険等の負担に伴うコストの増大も伴うことは留意すべきです。改正により,増 加雇用者1人当たりの控除額が倍増とされ,現行制度の増加雇用者の半分で同様の税務メリットが得られることにな ります。雇用促進税制を適用するには,従業員数が前事業年度末に比して10%以上,かつ,5人以上増加していること が要件とされており,毎年の新規雇用に基づく雇用の拡大が必要です。 一方,所得拡大促進税制は,制度の適用要件として雇用者給与等支給額並びに平均給与等支給額が,いずれも前事 業年度の額以上であることが必要とされていることから,雇用増加が伴う場合には,平均給与等支給額の要件が満たせ ない場合もあります。単に給与水準の引上げを行う場合にとどまらず,新たにインセンティブ報酬制度を導入する,福利 厚生を給与支給に変える等の,給与支給額の拡大により,所得拡大促進税制の活用が可能となります。 以上 PwC 2