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ファンドニュース 金融モニタリングレポートの資産運用業への影響 はじめに

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ファンドニュース 金融モニタリングレポートの資産運用業への影響 はじめに
ファンドニュース
金融モニタリングレポートの資産運用業への影響
2015 年 9 月
はじめに
金融庁は、2014 年 9 月に公表された金融モニタリング基本方針に基づき、実施されたモニタリングを通じて得られた
検証結果や課題をまとめることで、金融機関のベストプラクティスの構築や、金融システム・金融市場の健全な発展が図
られることを目的として 2015 年 7 月に金融モニタリングレポート(以下、「モニタリングレポート」)を公表しています。
モニタリングレポートにおいては、第Ⅲ章 3. 市場業務等において、資産運用業についての記載がされており、そこで
の内容は、資産運用に携わる皆様にとって有用な情報と思われることから、それらの内容を紹介してまいります。
(1) モニタリングレポート(資産運用に該当する箇所)の構成について
上記第Ⅲ章 3. 市場業務等については以下のような構成になっています。
3. 市場業務等
(1) 本事務年度のモニタリングについて
(2) モニタリング結果
ア.投資運用業者の運用態勢
(ア) 日本の投資信託の特徴
a.投資信託の規模、普及度
b.投資信託の数、残高、分配頻度、投資対象
(イ) 検証結果
a.ガバナンス、商品開発
b.運用の専門人材の育成・確保
(ウ) 今後の課題
イ.投資信託販売態勢
(ア) 投資信託に対する顧客意識
(イ) 投資信託の販売状況等
(ウ) 検証結果
a. 目標設定・業績評価
b. 営業体制
c. 販売手数料
(エ) 今後の課題
ウ.金融機関の有価証券運用
(省略)
上記の内容にしたがって、(2)以降で説明をおこないます。
(2) 本事務年度のモニタリングについて
本事務年度のモニタリングの部分には、金融資産がそのニーズに即して適切に運用されるために資産運用の各段階
に携わる金融機関が受託者責任を果たすことの必要性が記載されています。その上で、投資運用業者および販売会社
それぞれに対するモニタリングの観点が記載されています。
業者
モニタリングの観点
投資運用業者
ガバナンスの構築状況、商品開発プロセス、運用の
専門人材の育成・確保
販売会社
経営目標や業績評価のあり方、営業推進態勢、販
売手数料体系
投資運用業者および販売会社に対するモニタリング結果については、以下の(3)投資運用業者の運用態勢、および
(4)投資信託販売態勢において、それぞれ説明をおこないます。
(3) 投資運用業者の運用態勢
モニタリングレポートは日本の投資信託の特徴を分析しており、欧米主要国との比較を通して日本のマーケットの分析
をおこなっています。この分析を結果を受けて、日本のマーケットの問題点として以下の点が挙げられています。

残高が少ないこと(GDP 比、一人当たり残高等)

勤労者世代の保有率が低いこと
その上で、投資信託(商品サイド)の問題点として以下も記載されています。

(米国と比較して)一本あたり残高が著しく小さいこと

毎月分配型投資信託が多いこと

(上記を理由に)コスト低減余地が少ないこと

高金利、高金利通貨を組み入れた商品が多いこと

外部への運用委託が多いこと
このような問題点の背景として、主要運用業者に対するアンケート調査および個別ヒアリングによるモニタリングの検証
結果として、金融庁が指摘している点は以下のとおりです。

高分配など、売れ筋商品を組み入れた投資信託が多いこと、これにより、顧客のニーズより短期間での乗換え
売買による手数料確保を図る販売会社の利益を優先しているのではないかという懸念もある

外部委託の比率が高く、投資運用業者内部における運用の専門人材の育成・確保が不十分となっている
上記に関して、金融庁は、ガバナンスおよび商品開発の面において、投資運用業者と販売会社との関係が人的にも
営業面でも強固であること、およびそのメリットとデメリットを指摘した上で、一部の投資運用業者において実施されている、
以下のようなベスト・プラクティスを例示しています。

外部の有識者から信託報酬や商品の顧客適合性について意見を徴収する態勢を整備した事例

インターネットを活用して顧客ニーズを直接把握し、商品を組成し提案した事例
また、運用人材の育成確保としても、外資系、日系それぞれの取り組み事例を説明しています。その上で、今後の課
題として以下が挙げられています。

資産運用業に精通したプロフェッショナルの登用や、独立社外取締役の選任などガバナンスの強化
ほかに、ファンドの大規模化・長寿化による運用コストの削減や、運用の専門人材確保のための人事方策を求めてい
ます。
(4) 投資信託販売態勢
はじめに、投資信託に対する意識調査をもとに、投資信託に対する顧客意識を分析しています。具体的には

安全性を重視する顧客数が多いこと

投資信託を購入しない理由として、商品や仕組みに対する理解不足による購入への不安を挙げる投資信託未
経験者が多いこと

投資信託に対するコストを不満とする顧客が多いこと
を分析結果として挙げています。
これに加えて、投資信託の販売状況等を分析しています。具体的には

海外リートや新興国株式・債券といったリスクの高い有価証券を対象とする毎月分配型の商品が売れ筋となっ
ており、米国と較べて販売手数料も高いこと

平均保有期間は依然として 2 年程度と短い期間で推移しており、短期間での乗換え売買が続いている様子が
うかがえること
を分析結果として挙げています。
上記に対しては、金融庁は顧客の中長期的な資産形成を支援する勧誘・販売態勢を構築する観点から、

営業員に対する業績評価が販売手数料等の収入面に偏重していないか

顧客ニーズや利益に真に適う商品を提供するための営業推進をおこなっているか

サービスに見合った販売手数料体系になっているか
について、主要販売会社に対するアンケート調査および個別ヒアリングに基づくモニタリングによる検証を行っていま
す。
検証の結果、目標設定や業務評価においては、収益額や販売額の比重が減少し、預り資産残高や顧客基盤拡大の
比重が拡大していることが評価されている一方、営業体制や販売手数料についてはそれぞれ今後の課題として、以下
の点が挙げられています。

個別商品販売中心の営業スタイルから脱し、顧客のライフステージや属性に応じて適した運用を提案するという
コンサルティング営業の進展

販売手数料の水準が、販売時のサービスに見合ったものとなっているかの確認
特に、販売手数料と販売時のサービスとの関係については、インターネット販売と対面販売との比較を行うといった問
題提起を行うなど、金融当局の興味の高さが伺えます。
おわりに
貯蓄から投資への流れのなかで、資産運用業に対する期待が高くなる一方、当局が資産運用業に求めるコンプライ
アンス遵守態勢を含む業務水準は今後も高まることが想定されます。資産運用に携わる関係者においては、今後も当局
の資産運用に対するモニタリングについての動向を十分把握する必要があると考えます。
なお、本件の内容などにご質問などありましたら、以下のお問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。
文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。
PwCあらた監査法人
第3金融部(資産運用) シニア・マネージャー
榊
原
康
太
PwC あらた監査法人 第3金融部(資産運用)
お問い合わせフォーム
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