ファンドニュース はじめに 「業種別委員会実務指針「年金基金に対する監査に関する実務指針」及び業種別委員会研究報告 第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の改正について」の公表について
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ファンドニュース はじめに 「業種別委員会実務指針「年金基金に対する監査に関する実務指針」及び業種別委員会研究報告 第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の改正について」の公表について
ファンドニュース 「業種別委員会実務指針「年金基金に対する監査に関する実務指針」及び業種別委員会研究報告 第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の改正について」の公表について 2016 年 3 月 はじめに 日本公認会計士協会は、平成27年12月25日に、「業種別委員会実務指針「年金基金に対する監査に関する実務指 針」」(公開草案)(以下、「実務指針」)、及び「業種別委員会研究報告第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の 改正について」(公開草案)(以下、「研究報告」または「改正された研究報告」)を公表しました。これは、平成25年3月に公表 された業種別委員会研究報告第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の内容のうち、監査上の留意事項に 当たるものを、“監査に関する実務指針”として位置づけ、年金基金の制度や業務に関する内容については、“監査に関 する研究報告”としたものです。これらの公開草案に対する意見募集期限は、平成28年1月25日であり、意見の検討を経 てから最終化が予定されております。 改正前の研究報告は、法令などによる監査が求められていない年金基金の財務諸表に対して、任意で監査を実施す る際の指針を示したものでした。そこでは、年金基金の財務諸表を作成するための資産・負債の認識や測定についての 会計規定がない状況のなかで、“財務報告の枠組み”の概念やそこでの監査対応などを示しました。その後、平成 26 年 2月に監査基準が改正され、平成 26 年4月に監査基準委員会報告書 800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して 作成された財務諸表に対する監査」、監査基準委員会報告書 805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」 及び監査基準委員会研究報告第3号「監査基準委員会報告書 800 及び 805 に係るQ&A」(以下、「Q&A」)が公表さ れたことにより、“財務報告の枠組み”の概念が整理され、特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸 表の監査の取扱いも明らかにされました。こうした流れを受けて、現在行われている年金基金に対する任意監査につい て、特別目的の監査の枠組みに照らした検討が行われ今回の改正に至った次第です。 もっとも、改正前の研究報告と、実務指針及び改正された研究報告との間には、特筆すべき内容の変更はありません。 また今回の実務指針は、既存の監査基準委員会報告書に記載された要求事項を遵守する際の指針を示すものであり、 新しい要求事項を設けているものでもありません。 なお、一般目的の財務報告の枠組というのは、広範囲の利用者に利用されることを前提とした汎用性のある枠組みで あり、法令ないし、一般に公正妥当と認められた会計基準(GAAP)として設定されたものであります。これに対して、特 別目的の財務報告の枠組みというのは、特定の利用者による個別の財務情報に対するニーズに対応するためのテー ラーメード型の枠組みであり、財務諸表の利用者の判断を誤らせないように、信頼性と理解可能性を備えたものでなくて はならない、とされています(Q&A、Q4から一部引用要約)。 本稿においては、実務指針の中から年金基金の理事者に求められれている事項について、主なものを紹介いたします。 <日本公認会計士協会へのリンク> 「業種別委員会実務指針「年金基金に対する監査に関する実務指針」」(公開草案)及び「業種別委員会研究 報告第 10 号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の改正について」(公開草案)の公表について 年金基金の理事者の対応 1. 監査業務の契約条件の合意と監査契約書における記載 年金基金には、関係法令に基づく監査(法定監査)が制度として求められていないため、財務諸表監査を実施する 場合には、任意監査となります。そのため、監査を行う際は事前に契約条件を明らかにしておくことが重要になります。 具体的には、財務諸表監査の目的及び範囲、ならびに財務諸表の作成において適用される財務報告の枠組みを監 査契約書に記載し、これらに加え、たとえば、監査報告書の配布又は利用の制限や監査報告の期限などを追加するこ とが考えられます(実務指針 46 項)。なお、年金基金の財務諸表に関する監査契約書の文例は、実務指針でカバー されています(「付録7 文例」の「1.監査契約書等作成の記載例」)ので、監査を受嘱する監査法人と確認していただ くことになります。 2. 財務報告の枠組みについての理事者の対応 年金基金の財務諸表監査を実施する際には、事前に財務報告の枠組みについて検討する必要があります。現行 の年金基金の実務において決算関係書類を作成する場合に適用される財務報告の枠組みは、厚生年金保険法、確 定給付企業年金法、その他の法令等に定められたものとなっています(実務指針 15 項)。しかしながら、これらの法令 等では、貸借対照表、損益計算書及びその他の業務報告書の表示及び様式を規定していますが、財務諸表を作成 するための資産・負債の認識及び測定についての会計規定はなく、わが国において一般に公正妥当と認められる企 業会計の基準を斟酌する旨の規定も定められておりません。また、通常財務諸表の一部を構成する注記事項につい ての記載も定められておりません(実務指針第 16 項)。このため、先に述べた「一般目的の財務報告の枠組み」として 取り扱うことはできません(実務指針第 18 項)。 そこで、現行の財務報告の枠組みをテーラーメードし、財務諸表の利用者の判断を誤らせないようにするため、必 要と認められる会計の基準を財務諸表に追加的に開示することが必要となります(実務指針第 21 項)。これにより、財 務諸表に信頼性と理解可能性を備えた「特別目的の財務報告の枠組み」が出来上がります。財務諸表へ追加していく 開示内容についても実務指針でカバーされておりますので(「付録7 文例」の「3.財務諸表作成の基礎等の文例」)、 参考とされることをお勧めいたします。 3. 理事者確認書の監査人への提出 理事者に求められる事項の最後は、「理事者確認書の監査人への提出」についてです。これは、監査人が監査意 見を表明する際に要請されるものであり、理事者が適用される財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を作成する責 任を果たした旨(実務指針 157 項)を文書で監査人と確認するものです。理事者確認書の記載例につきましても、実 務指針でカバーされています(「付録7 文例」の「2.理事者確認書の記載例」)。監査契約書を締結する際には、事前 に理事者確認書の内容についても理解しておく必要があります。 おわりに 当実務指針及び研究報告は、改正前の研究報告の内容を踏襲した形で、再度整理がされたものです。前述のとおり、 監査基準委員会報告書 800 及び同 805 に基づく特別目的の枠組みとしての財務諸表の監査が位置付けられ、実務に も浸透してきたことにより、この枠組みによる年金基金の監査も、より受け入れられやすい土壌が構築されてきています。 各基金の運用に対する姿勢はより積極的になってきている側面もみられ、その反面として、拠出者や母体による年金 会計に関する関心も高まり、基金の会計責任(アカウンタビリティ)の重要性も増していくものと考えられます。 なお、内容にご質問などございましたら、以下のお問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。 文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。 PwCあらた監査法人 第3金融部(資産運用) マネージャー 高 野 PwCあらた監査法人 第3金融部(資産運用) お問い合わせフォーム 本冊子は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本冊子の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本冊子に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本冊子に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされ たり、起こされなかったことによって発生した結果について、PwCあらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められ る範囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2016 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. In this document, “PwC” refers to PricewaterhouseCoopers Aarata, which is a member firm of PricewaterhouseCoopers International Limited, each member firm of which is a separate legal entity Please see www.pwc.com/structure for further details. 誠