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会社法の改正に伴う2015年度税制改正 Japan Tax Update In brief

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会社法の改正に伴う2015年度税制改正 Japan Tax Update In brief
Japan Tax Update
会社法の改正に伴う2015年度税制改正
Issue 111, May 2015
In brief
企業統治の在り方や親子会社に関する規律の見直しを盛り込んだ「会社法の一部を改正する法律」(以下
「改正会社法」、2014 年 6 月 20 日可決承認、6 月 27 日公布)が 2015 年 5 月 1 日に施行されました。改正
会社法は、「社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化並びに株式会社及びその属する
企業集団の運営の一層の適正化等を図るため、監査等委員会設置会社制度を創設するとともに、社外取締
役等の要件等を改めるほか、株式会社の完全親会社の株主による代表訴訟の制度の創設、株主による組織
再編等の差止請求制度の拡充等の措置を講ずる必要がある」として、改正法案が 2013 年 11 月 29 日の国
会に提出されたものです。改正会社法の施行を受け、2015 年度税制改正においても、監査等委員会設置会
社制度の新設や、株式併合の反対株主からの買取請求制度の創設に伴う法人税の改正が行われていま
す。
In detail
改正会社法は、「企業統治の在り方」と「親子会社に関する規律」の見直しに係る改正が盛り込まれています。
「企業統治の在り方」見直しでは、業務執行者への適性な監督が行われることを目的として、監査等委員会
設置会社制度の創設や社外取締役及び社外監査役に関する規律の改正等が行われています。「親子会社
に関する規律」の見直しでは、親会社株主の保護の措置としての多重代表訴訟制度の創設、株主総会決議
が不要とされるキャッシュアウト制度の整備、株式等の買取の効力発生日の改正、組織再編等の差止請求の
創設等が行われています。
改正会社法は 2015 年 5 月 1 日から施行されておりますが、上記の改正に合わせて、関連する法人税法施
行令の改正が 2015 年度税制改正により行われ、改正会社法日から適用されています。
1. 監査等委員会設置会社制度の創設に係る改正
(1) 役員給与として損金算入が認められる利益連動給与の要件
(2) 使用人兼務役員とされない役員
2. 株式の併合への反対株主からの株式買取請求権の創設に係る改正
以下では、会社法改正に伴う、2015 年度の法人税法の改正を中心に解説いたします。
www.pwc.com/jp/tax
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1.
監査等委員会設置会社の創設に係る法人税の改正
改正前会社法では、株式会社のガバナンスの形態として、監査役会設置会社と委員会設置会が設けられて
いましたが、改正により、従前の「委員会設置会社」は「指名委員会設置会社」に名称が変更され、新たに「監
査等委員会設置会社」の制度が設けられました。
(1)役員給与として損金算入が認められる利益連動給与の要件
法人税法上、役員に支給される給与は、退職給与や株式報酬等を除き、定期同額給与等の一定の要件を
満たさない場合には損金算入が認められません。法人税法の「役員」は法人の取締役、執行役、会計参与、
監査役を含みますので、上記会社機関の監査役、取締役、執行役に支給される給与は役員給与の損金不
算入の対象となります。
法人の所得の計算上損金算入が認められる役員給与は、定期同額給与、事前確定届出給与、又は同族会
社に該当しない内国法人の業務執行役員に支給される利益連動給与(法法 34①)の何れかに限られます。
このうち、業務執行役員に支給される利益連動給与は、①利益連動給与の算定方法が、有価証券報告書に
記載されている当該事業年度の利益に関する指標を基礎とした客観的なものであること、②損金経理をして
いること等の要件を満たす必要があり、①の要件の一つに、当該事業年度開始の日から 3 カ月経過する日ま
でに、報酬委員会の決定他これに準ずる適正な手続を経ていることが規定されています。
改正により、「適正な手続」について、監査等委員会設置会社の取締役会の決議による決定(監査等委員で
ある取締役の過半数が決議に賛成している場合の決定に限る)が追加されました(法令 69⑨四)。なお、監
査等委員会設置会社のうち、業務執行役員関連者が監査等委員である取締役になっている会社は除かれま
す。
上記の改正は 2015 年 5 月 1 日より施行されます。
(2)使用人兼務役員とされない役員
役員給与のうち、使用人兼務役員に対する支給で使用人としての職務に対する給与は、役員給与の損金算
入制限の対象となりません(法法 34①)。使用人兼務役員とは、役員(社長、理事長等を除く 1)のうち、部長、
課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者を言
います(法法 34⑤)。改正により、指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役が、使用
人兼務役員に含まれない役員に加えられました(法令71①四)。
上記の改正は 2015 年 5 月 1 日より施行されます。
1
使用人兼務役員に含まれない役員
一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員
四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事
五 同族会社の役員のうち所定の要件を満たしている者
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(3)税制適格となるストックオプションの被付与者
所得税法の特別措置として、法人の取締役、執行役若しくは使用人が付与を受けた、会社法の規定による新
株予約権について、一定の要件を満たす場合には、新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的
利益が非課税とされています(措法29の2)。本規定につきましては、会社法改正に伴う見直しがありませんの
で、監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社の取締役、指名委員会設置会社の取締役と執行役が
受けるストックオプションについては、税制適格ストックオプションとしての制度設計が可能と思われます。
2.
株式の併合への反対株主からの株式買取請求権の創設に係る改正
法人の株主等(法人株主及び個人株主)が、法人の合併、分割、有償減資その他の事由により金銭等の資産
の交付を受けた場合には、みなし配当課税が課せられる場合があります 2。改正前の法人税法では、株式併
合や全部取得条項付種類株式を用いたキャッシュアウト、即ち株式併合の結果交付を受けた端数株式の買
取代金の交付(会社法 235)や、全部取得条項付種類株式の(発行法人による)取得の対価として交付を受け
た端数株式の買取代金の交付(会社法 234②)、全部取得条項付種類株式の取得決議に係る取得の価格
の決定の申立てをし、取得の対価として交付を受けた端数株式の買取代金の交付(会社法 172)については、
みなし配当課税の対象となる自己株式の取得事由から除外されていました(法法 24①四、法令 23③九、十)。
改正により、株式併合に反対する株主の株式買取請求権 3が創設されたことから、当該買取代金の交付につ
いても、みなし配当課税の対象となる自己株式の取得事由から除外されることとされました(法令 23③九)。
上記の改正は法人及び個人の所得計算について、2015 年 5 月1日以後に生じる取得事由について適用さ
れます。
3.
特別支配株主による株式売渡請求権の創設
株式併合や全部取得条項付種類株式を用いたキャッシュアウトは株主総会決議を経ることとされているため、
取引において機動性に欠けることがあります。特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の 10 分の 9 以上
を直接又は間接保有する株主)は、会社の承認(取締役会設置会社では取締役会決議)を経ることで、株主
全員に対して、その有する当該株式会社の株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求する権利が創
設されました(会社法 179、179 の 3)。
売渡株主に対しては、売渡株式の対価として交付する金銭の額を決定することとされている(会社法 179 の 2
①二)から、対価は現金に限られるものと考えられます。
税務上は株主間の譲渡であるため、売渡株主においては売渡株式の譲渡損益を計上することになります。
4.
株式等の買取の効力発生日の改正
改正前は、株式買取請求に係る株式の買取りの効力は、当該株式の代金の支払の時に生ずることとされて
いました(旧会社法 117⑤、470⑤、786⑤、798⑤、807⑤)が、改正により株式買取請求権が生じる組織再編
等の効力発生日とされました(会社法 117⑥、470⑥、786⑥、798⑥、807⑥)。
2
みなし配当課税が生じる発行法人による株式取得事由
一 合併(適格合併を除く)
二 分割型分割(適格分割型分割を除く)
三 資本の払戻し(資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当のうち分割型分割によるもの以外のもの及び出資等減少分配)又は解
散による残余財産の分配
四 自己の株式又は出資の取得(金融商品取引所の市場における購入等を除く)
五 出資の消却(取得した出資について行うものを除く)、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻し
等
六 組織変更(当該組織変更に際して当該組織変更をした法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る)
3
会社法182条の4(反対株主の株式買取請求)株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合
には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ること
を請求することができる。
PwC
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一方で、法人税法、所得税法上は、原則として譲渡の契約日とされ、但し以下の事由による譲渡については
下記の通りとされています(法法 61 の 2①、法基通 2-1-22、所基通 33-6 の 4、37 の 10―19)。会社法の
改正により、組織再編に伴う株式の譲渡については、買取の効力発生日と税務上の株式譲渡益計上時が組
織再編の効力発生日に統一されたことになります。
株式譲渡の形態又は譲渡事由
株式譲渡の日
証券業者等に売却の媒介、取次ぎ若しくは代理の委
託又は売出しの取扱いの委託をしている場合
委託をした有価証券の売却取引成立日
相対取引により有価証券を売却している場合
金融商品取引法第 37 条の 4(契約締結時等の書面の交付)
に規定する書面に記載される約定日、売買契約書の締結日な
どの当該相対取引の約定が成立した日
合併、分割、株式交換の効力発生日
(新設合併等の場合)
新設合併設立法人、新設分割設立法人、株式移転完全親法
人の設立登記の日)
組織再編(合併、分割型分割、株式交換、株式移転)
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