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Transaction M&A News 日本の適格組織再編と海外におけ る課税 www.pwc.com/jp/tax

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Transaction M&A News 日本の適格組織再編と海外におけ る課税 www.pwc.com/jp/tax
www.pwc.com/jp/tax
Transaction M&A News
日本の適格組織再編と海外におけ
る課税
Issue 59, September 2013
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日本におけるいわゆる適格組織再編
が行われた場合でも、当該組織再編
当事法人が海外法人株式を持って
いる場合には、海外で課税が生じる
可能性があります。
1.総説 - 日本における適格組織再編と海外におけ
る課税
日本においていわゆる法人税法上の適格組織再編を行っ
た場合、日本では当該組織再編に伴って資産・負債が税
務上の簿価で引き継ぎないし譲渡が行われたと考えること
から、法人税の課税関係は生じないこととなります。しかし
本ニュースレターでは、海外における
ながら、組織再編税制はあくまでも日本の法人税法上の
課税の可能性について触れ、日本の
税務を含めた影響を解説いたします。 制度であり、当該組織再編により海外で課税が生じないか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
否かという点については別途検討をする必要があります。
具体的には、日本における適格組織再編に伴って海外子
会社株式が合併法人や分割承継法人に引き継がれた場
合、海外では株式が時価で譲渡されたとみなされて当該
子会社や支店の所在地国において課税関係が発生する
ことがあります。
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2.日本における適格組織再編が行われた場合の海外における課税の例
以下のような例で日本および海外での課税関係を考えてみたいと思います。
(例)海外子会社 a 社を有する日本法人 A 社と日本法人 B 社の適格合併(合併存続法人:B 社)
適格合併
日本法人 A
日本法人 B
海外子会社 a
(合併後)
日本法人 B
海外子会社 a
日本法人 A 社と日本法人 B 社の合併が適格合併に該当するのであれば、日本法人 A 社の資産・負債は税務上の簿価
で日本法人 B 社に引き継がれたとみなされることから、日本法人 A における譲渡損益は税務上繰延べられることになり
ます。合併の場合には消費税も課されません。なお、印紙税や登録免許税などは課される可能性があります。
しかしながら、上の例では日本法人 A 社が海外子会社 a 社の株式を保有していたことから、この a 社の所在地国におけ
る課税関係を別途確認する必要があります。a 社が以下の国に所在している場合、例えば以下のような課税が生じること
が考えられます(なお、以下はあくまで例示であり、実際に組織再編を実行する際には各国・地域ごとに詳細な検討を行
う必要があります)。
a 社所在地国
当該国における課税の概要
中国
a 社持分の譲渡とみなされ、譲渡益に対して税率 10%で課税される可能性があります。なお、詳細に
ついては Transaction M&A News Issue 52 をご参照ください。
韓国
海外における組織再編により韓国でどのような課税が生じるかという点について明確な規定はありませ
んが、韓国にて株式譲渡益課税や証券取引税が課される可能性があります。譲渡益課税と証券取引
税の詳細につきましては、Transaction M&A News Issue 51 をご参照ください。
シンガポール
印紙税が課される可能性があります。なお、海外の一定の組織再編については、印紙税が免除される
可能性があります。
米国
連邦税についてはいわゆる FIRPTA に基づく源泉課税および株式譲渡益課税が課される可能性が
あります。また、本組織再編により a 社株主の大幅な変更が生じる場合には、a 社が有していた繰越欠
損金の使用制限が課される可能性があります。州税は各州によって取り扱いが異なることから、該当
州の税法を個別に確認する必要があります。
フランス
日本の税務当局が本件組織再編によって日本では課税繰延措置が認められる旨が記載された証明
書が発行された場合には、フランスでは株式譲渡益に対する課税はないものとされます(日仏租税条
約第 13 条第 2 項(b))。
また、国によっては、日本の会社法で規定されているような組織再編の制度が現地会社法に存在していない場合があり
ます。例えば、香港には「合併」という制度自体がありません。シンガポールのように、会社分割制度がない国もあります。
このような国・地域では、日本で行われた組織再編により現地でどのような課税関係が発生するかということが現地法令
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上明確になっておらず、場合によっては当局と交渉・照会を行う必要があります。こうした交渉には長い時間を要すること
もあるため、事前に十分な準備をしておく必要があります。
3.日本における外国税額控除
仮に海外で課税が生じたとしても、当該税金について日本で外国税額控除の対象になれば最終的な税負担は緩和され
ることになります。
しかしながら、韓国の証券取引税やシンガポールの印紙税は所得に対して課された税金(外国法人税)ではないことから、
外国税額控除の対象になりません。
一方、中国における株式譲渡益課税は外国法人税に該当するため、外国税額控除の対象にはなります。しかしながら、
本件は適格組織再編であり、この取引のみでは日本の法人税上は所得が発生していない(繰り延べられている)ことにな
ります。当該事業年度において所得が生じていない以上、外国税額控除限度額の計算の基礎となる国外所得も生じて
いないこととなります。この組織再編以外の取引で十分な国外所得が生じていれば外国税額控除を適用できる可能性が
ありますが、そうでない場合には外国税額控除を事実上適用できない可能性があることになります。
4.結び
以上のように、海外で税金が発生したとしても十分に外国税額控除をとれない場合には、海外で生じた税金はそのままコ
ストとなってしまうことになります。こうしたことから、海外法人株式を持っている日本法人が組織再編により当該株式を合
併法人等に移していく場合には、日本のみならず海外の課税関係についても事前に十分な検討が必要になります。中
国など、特にアジア諸国では当局との交渉が必要になってくる局面もあることから、できるだけ早い段階から専門家を交
えた検討が必要になると考えられます。
より詳しい情報、または個別案件への取り組みにつきましては下記担当者にご連絡ください。
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース
トランザクション/ M&A 部
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