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株式併合及び株式売渡請求による スクイーズアウトにおける税務上の取り扱い Transaction M&A News

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株式併合及び株式売渡請求による スクイーズアウトにおける税務上の取り扱い Transaction M&A News
Transaction M&A News
株式併合及び株式売渡請求による
スクイーズアウトにおける税務上の取り扱い
Issue 80, June 2015
In brief
企業の M&A における少数株主のスクイーズアウトの手法としては、税務上の理由等から、従来多くの事例で
全部取得条項付種類株式を利用する方式が採用されてきました。しかし、2015 年 5 月 1 日に施行された「会
社法の一部を改正する法律」(以下「改正会社法」)においては、株式併合をスクイーズアウトに用いることを
念頭に置いた制度の改正が行われ、また、総株主の議決権の 90%以上を有する特別支配株主による株式
等売渡請求の制度が新たに創設されました。
本ニュースレターでは、これらの制度を利用して少数株主のスクイーズアウトを行う際の株主における税務上
の取り扱いにについてご紹介させて頂きます。
In detail
企業の M&A において、対象企業の株式を公開買い付けした後に、公開買い付けに応募しなかった株主か
ら対象企業の株式を買い取り完全子会社化する、いわゆるスクイーズアウトの代表的な手法としては、①金銭
交付の株式交換、②金銭交付の合併、③全部取得条項付種類株式、④株式併合、を利用した手法があげら
れます。
しかし、①の金銭交付の株式交換と②の金銭交付の合併は株式以外の資産を対価とする組織再編として、
税務上非適格組織再編に該当し、対象会社において一定の資産に係る時価評価課税や、資産及び負債の
移転による譲渡損益課税が生じる懸念があったこと、また、④の株式併合は従来会社法上少数株主の保護
に欠けるとされていたこと等から、これらの手法はスクイーズアウトの手法としては実務上あまり用いられておら
ず、多くの事例で全部取得条項付種類株式を利用する方式が採用されてきました。
1.
株式の併合への反対株主からの株式買取請求権の創設に係る改正
改正会社法においては、株式併合がスクイーズアウトに用いられることを念頭に、少数株主の保護のため、事
前備置手続(会社法 182 条の 2)及び事後備置手続(会社法 182 条の 6)を設け情報開示の充実化を図ると
ともに、差止請求(会社法 182 条の 3)、反対株主の株式買取請求(会社法 182 条の 4)、価格決定申立(会
社法 182 条の 5)の各手続きも新たに設けられました。改正会社法は 2015 年 5 月 1 日から施行されておりま
すが、この改正に合わせて、株式併合に反対する株主の株式買取請求ついて、みなし配当課税の対象とな
る自己株式の取得事由から除外する税制改正が行われています(法令 23③九)。
すなわち、法人の株主等(法人株主及び個人株主)が、法人の合併、分割、有償減資その他の事由により金
銭等の資産の交付を受けた場合には、実質的に株主への利益の還流として、みなし配当課税が課せられる
場合があります(法法 24)。但し、市場からの自己株式の取得や一定の適格組織再編等による自己株式の取
得の場合には、みなし配当課税の対象となる自己株式の取得事由から除外されており、改正前の法人税法
www.pwc.com/jp/tax
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でも、株式併合の結果交付を受けた端数株式の買取代金の交付(会社法 235)については、みなし配当課税
の対象となる自己株式の取得事由から除外されていました(法法 24①四、法令 23③九)。
改正会社法により、株式併合に反対する株主の株式買取請求権1が創設されたことから、当該買取代金の交
付についても、みなし配当課税の対象となる自己株式の取得事由から除外されることとされました(法令 23③
九)。
上記の改正は法人及び個人の所得計算について、2015 年 5 月1日以後に生じる取得事由について適用さ
れます。
(参考) 株式併合及び全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウトに係る少数株主の課税関係
少数株主の課税関係
端数株式の買取
株式併合
改正前
改正後
譲渡損益
譲渡損益
N/A
譲渡損益
価格決定の申し立て
反対株主の買取請求
2.
全部取得条項付種類株式
譲渡損益
譲渡損益
譲渡損益 + みなし配当
特別支配株主による株式売渡請求権の創設
株式併合や全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウトは株主総会決議を経ることとされているため、
取引において機動性に欠けることがあります。改正会社法では、特別支配株主(株式会社の総株主の議決
権の 10 分の 9 以上を直接又は間接保有する株主)に、会社の承認(取締役会設置会社では取締役会決議)
を経ることで、株主全員に対して、その有する当該株式会社の株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを
請求する権利を与える制度が創設されました(会社法 179、179 の 3)。
売渡株主に対しては、売渡株式の対価として交付する金銭の額を決定することとされている(会社法 179 の 2
①二)から、対価は現金に限られるものと考えられます。
税務上は株主間の譲渡であるため、売渡株主においては売渡株式の譲渡損益を計上することになります。
3.
まとめ
上述の通り、改正会社法の下でスクイーズアウトを行う場合には、実務上、株式等売渡請求、全部取得条項
付種類株式の取得及び株式併合という 3 つの手法が利用可能となりますが、いずれの手法を選択すべきか
は、会社法、金融商品取引法、税法上の取り扱い等、様々な要素を総合的に考慮する必要があります。例え
ば、全部取得条項付種類株式の取得を用いた場合には、株式買取請求を行った反対株主においてはみな
し配当課税が生じる可能性があり、法人株主にとってはみなし配当に係る益金不算入のメリットを享受できる
というインセンティブが働き、先行する株式公開買付への応募率が下がる懸念も生じます。このように選択す
る手法により課税関係が異なる場合もあり、今後の実務の動向には留意が必要です。
1
会社法182条の4(反対株主の株式買取請求)株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合
には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ること
を請求することができる。
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