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海外企業買収後の PMI Transaction M&A News In brief

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海外企業買収後の PMI Transaction M&A News In brief
Transaction M&A News
海外企業買収後の PMI
Issue 84, October 2015
In brief
日本企業が海外企業を買収する場合の買収後の PMI においては、被買収企業の所在国における課税関係
について検討を要するのと同時に、我が国の税制についても留意する必要があります。多くの諸外国の実効
税率は日本よりも低いことが想定されますが、一定の PMI に基づいて生じる日本での課税関係次第では、グ
ループ全体の実効税率が日本の実効税率水準あるいはそれ以上にまで及んでしまう可能性も考えられま
す。一方で、PMI に適切に対応することは企業価値の無用な毀損を回避することや税務コーポレートガバナ
ンスの向上に資することとなります。
本ニュースレターでは、海外企業買収時の PMI について、特に日本の税務の観点からの留意点を検討いた
します。
In detail
1.
ポスト マージャー インテグレーションとは
企業買収を意図する企業は、売手との交渉成立後、自社の事業と被買収企業の事業との統合を実施し、既
存事業と買収事業間でのシナジー効果の創出をはじめとした企業価値の向上を目指します。この買収後の
統合プロセスのことを一般にポスト マージャー インテグレーション(以下 PMI)といいます。
PMI は、合併による法人レベルでの統合から、現場レベルでの統合までの様々なレベルでの統合が考えられ
ますが、日本企業が海外企業を買収する際の PMI において税務上、特に留意すべき事項として以下のプロ
セスが考えられます。
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重複解消等のための子会社間の組織再編成
被買収企業の有するオペレーション機能の移転
被買収企業の資本政策の変更(負債の借換えや買収資金のデットプッシュダウンを含む)
被買収企業が有する無形資産について、グループ内の他の法人への移転
重複事業(を営む法人株式)の売却や一部の法人の清算
被買収企業への増資
被買収企業が有する移転価格政策の変更
2.
PMI に関する日本税務の観点からの主要な留意点
上述のような統合プロセスが行われた場合、日本国外で行われたものであっても日本税務上、以下のような
点に留意する必要があります。
(1) タックスヘイブン税制
傘下に収める海外企業のうち、特定の事業を行っている子会社や、現地での租税負担割合が低い等の一定
の子会社で、現地における事業実体があるものと判定される一定の要件(いわゆる適用除外要件)を満たさな
い子会社については、日本のタックスヘイブン税制が適用されることとなり、当該外国子会社の所得が日本の
www.pwc.com/jp/tax
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親会社の所得と合算され、日本の税率で課税されることになります。タックスヘイブン税制の適用の有無は、
外国子会社の各事業年度終了時で判定されますので、買収した海外企業についてタックスヘイブン税制の
適用があると判定された場合、仮に、上述のような PMI から所得が生じてしまうと、当該所得について日本の
親会社の所得と合算され、日本の高税率にて課税を受ける可能性があります。
買収を検討している海外企業について、タックスヘイブン税制の適用があることが事前に想定される場合、売
り手側において、買収前に PMI を実行してもらうことで、少なくとも PMI から生じる所得についてはタックスヘ
イブン税制上の合算所得と取り扱われない可能性があります。ただし、たとえ売り手側での PMI 実施後に買
収を実行したとしても、PMI と同一事業年度内に買収がなされる場合、買収前の PMI から生じた所得につい
ても、日本において課税を受ける可能性がありますので留意が必要です。
また、外国子会社が現地において課税を受けない組織再編成を行う場合において現地の税法上、キャピタ
ルゲインが一定の要件下で免税とされる場合(いわゆるパーティシペーションエグゼンプション)や、課税を繰
り延べるための税法の規定が存在しない場合、あるいは税法そのものがないような場合には、当該組織再編
成から生じるキャピタルゲイン相当額が非課税所得と判定される可能性があります。この場合、タックスヘイブ
ン税制の適用が想定されていた子会社のみならず、組織再編成から非課税所得が生じる結果として、これま
でタックスヘイブン税制の適用が想定されていない外国子会社についても、タックスヘイブン税制の適用を受
け、日本で課税されるケースも考えられますので、外国子会社が組織再編成を行う場合には当該再編行為を
考慮に入れた租税負担割合計算を行う、あるいは適用除外要件の適用について検討するといった、事前の
検討、ならびに税務申告に向けたレポーティングライン設定等の継続的なモニタリングが必要と考えられます。
(2) みなし配当課税
日本の税務上、非適格合併や清算といった一定の事由が生じた場合において、株主はみなし配当課税を受
ける可能性があります。この規定は、外国子会社に関してそれら一定の事由が生じた場合についても適用さ
れますので、外国子会社が組織再編成を行う場合にも、株主としての課税関係について留意が必要となりま
す。なお、みなし配当が生じる場合でも、外国子会社配当益金不算入制度の適用要件を満たせば、日本で
のみなし配当課税は限定的になる可能性があります。ただし、買収直後に実施される組織再編成であれば外
国子会社株式の保有期間(6 カ月)に関する要件を満たさず、外国子会社配当益金不算入制度が適用され
ないことも考えられます。
上述のみなし配当の他、一定の場合には、日本の親会社は外国子会社株式に係る譲渡損益を認識すること
も考えられ、留意を要します。
(3) 移転価格税制
被買収企業がクロスボーダーの関係会社間取引を行っている場合、買収後の PMI に伴って、買収法人側の
移転価格政策に基づいて移転価格の見直しを検討する必要が生じます。この点、移転価格文書の整備やポ
リシーの見直しについて、慎重な検討が必要です。
3.
PMI に関する外国税務の観点からの留意点
PMI によって生じる現地での課税関係についても当然に検討が必要となりますが、例えば、税務デューディリ
ジェンスで検出された潜在的リスクへの対応、キャピタルゲイン課税への対応や組織再編成に係る課税関係
(資金還流における源泉税の取り扱いを含む)、株主変更に基づく欠損金の制限、資本政策変更に基づく過
少資本税制や過大支払利子税制、流通税等が挙げられます。また、買収時には情報の入手可能性が限定
的であった反面、買収後は自社の支配下に入ることから情報へのアクセスは改善することが予想されますが、
キーパーソンのリテンションやその後の KPI の設定等を通じた持続性のある現地税務処理体制を整備する局
面としても重要となります。
また、株主としての課税関係に関して、株式を譲渡する場合の被譲渡法人の所在地における課税関係のみ
ならず、合併に起因して被合併法人が保有していた子会社株式の合併法人への承継や子会社株式の譲渡
に伴う孫会社株式の譲受法人への移動に関しても、これを間接的に譲渡が行われたものとみなしてキャピタ
ルゲイン課税を行うこととしている国もあることから、被間接譲渡法人の所在国における課税関係について検
討を要します。
PwC
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なお、被買収企業グループ内で税効率性を目的とするストラクチャーが構築されている場合、PMI によっては
課税関係に影響を及ぼす可能性がありますので、留意が必要です。
4.
おわりに
海外企業の買収時においては、現地のみならず日本においても予期せぬ課税関係が生じる可能性もありま
すので、海外企業の買収実行前から、PMI およびその課税関係について、事前の周到な検討が必要になり
ます。また、こうした検討を重ねて適切なモニタリングの体制を敷いておくことは、買収事業からもたらされるキ
ャッシュアウトフローを減少させることにより企業価値の毀損回避に貢献するだけでなく、近年当局が重視して
いる税務コーポレートガバナンスへの強化へも資すると考えられます。
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