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図解でわかる! 2 M&A

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図解でわかる! 2 M&A
図解でわかる! M&A 会計 日本基準と IFRS
第 2 回 「企業結合」、「事業」、「支配」の定義
あらた監査法人 公認会計士 清水 毅
公認会計士 三刀屋 淳
はじめに
M&A に関して国際財務報告基準(「IFRS」)では、IFRS 第 3 号「企業結合」(以下「IFRS 3」)お
よび IAS 第 27 号「連結及び個別財務諸表」で規定されています。2008 年 1 月に IFRS 第 3 号が
改訂され(「IFRS3R」)、2009 年 7 月 1 日以降開始する事業年度の企業結合から適用されること
になります。
一方、IFRS とのコンバージェンスを進める日本基準は、ステップ 1 の見直し作業として 2008 年
12 月に企業会計基準第 21 号「企業結合に関する会計基準」が改訂され、2010 年 4 月 1 日以降
実施される企業結合から適用されます。なお、2009 年 4 月 1 日以後開始される事業年度におい
て最初に実施される企業結合から早期適用することができます。
IFRS 第 3 号の改訂においては、「パーチェス法」が「取得法」への呼称が変更されました。日本
基準においては、「持分プーリング法」(資産および負債を帳簿価額で引継ぐ方法)が、IFRS への
コンバージェンスを推進する観点から廃止され、新基準のもとでは、取得者と被取得者を明らかに
し、被取得者の資産、負債についてはすべて時価で評価し貸借対照表を取り込む「パーチェス法」
のみが適用されることになりました。
【図表1】 投資形態の違いにより適用される基準
PricewaterhouseCoopers Aarata
1. 企業結合の意義
企業結合については、下記のとおり定義されています。
IFRS
日本基準
「企業結合」とは、取得企業が
「企業結合」とは、ある企業ま
1 以上の事業の支配を獲得す
たはある企業を構成する事業
る取引またはほかの事象をい
とほかの企業またはほかの
う。
企業を構成する事業が 1 つ
の報告単位に統合されること
をいう。
上記のとおり、企業結合(事業結合)は、日本基準においては、ある企業とほかの企業が1つの
報告単位に統合されることと定義されており、「共同支配企業の形成」および「共通支配下の取
引」の概念が企業結合に含まれています。
改訂された IFRS 第 3 号において、共通支配下にある企業同士の企業結合およびジョイント・ベ
ンチャーの形成については、適用範囲から除外されています。また、現行の IFRS においては、共
通支配下にある企業同士の企業結合に関しては特に規定がありません。
日本基準においては、共同支配企業の形成時および共通支配下の取引については、持分プー
リング法を適用することが、規定されています(【図表2】参照)。
【図表 2】 買収または合併、共通支配下の取引、共同支配企業の形成(日本基準)
PricewaterhouseCoopers Aarata
2. 事業の定義
企業結合の対象となる「事業」については、以下のように規定されています。
IFRS
日本基準
投資家やほかの所有者等に、配
企業活動を行うために組織化さ
当やより低いコストまたはほか
れた、有機的一体として機能する
の経済的な便益の形でリターン
経営資源をいう。
を直接的に提供するための指
揮・管理する能力をもつ統合さ
れた活動や資産の集合をいう。
「事業」の定義については、日本基準、IFRS の間で重要な違いはないと考えられます。なお、
企業結合となるためには、取得した資産および引き受けた負債が「事業」を構成していなければな
りません。取得したものが「事業」の定義に該当するものであれば企業結合会計が適用されます
が、取得したものが上記の「事業」の定義に該当しない「資産グループ」であれば企業結合会計は
適用されず通常の資産の取得に関する会計処理が行われることになります。取得したものが「事
業」であるのか、または「資産グループ」であるのかを識別することが重要となります。たとえば日
本の法形態で、事業を運営している株式の 50%取得、合併、営業譲渡、会社分割等であれば、
通常「事業」を構成すると考えられます。
ただし、建物だけを保有している株式を取得した場合、固定資産の取得となるのか、事業の取
得となるのか、実態を踏まえて検討することになります。
3. 支配の概念
ある会社が、ほかの会社の「支配」を獲得した時に企業結合会計が適用され、当該ほかの会社
は子会社として扱われます。したがって、ある事業の「支配」の獲得は、M&A 会計にとって重要な
概念となります。
IFRS および日本基準における「支配」の規定は以下のとおりです。
IFRS
日本基準
企業活動からの便益を得る
ある企業または企業を構成す
ために、企業の財務および経
る事業の活動から便益を享受
営方針を左右する力。
するために、その企業または
事業の財務および経営方針を
左右する能力を有しているこ
と。
「支配」の概念に IFRS と日本基準の間に重要な差異はないといえます(注: SPC に対する基
準等で差異はありますが)。IFRS および日本基準における支配の有無に関する判断についての
具体的規定は、【図表3】のとおりです。
日本基準では、50%超、40-50%と数値基準が定められていますが、「支配」の概念について、
PricewaterhouseCoopers Aarata
実質的な違いはないと考えられます。
【図表 3】 支配の要件
4. 親会社説と経済的単一説
連結財務諸表の作成目的は、「親会社説」と「経済的単一体説」の 2 つの考え方があります。
「親会社説」は、親会社の株主の視点から財務情報を作成・開示すべきという立場で、連結財務
諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけています。したがって、連結財務諸表の「資本」
に、親会社の「株主持分」のみを反映させる考え方です。これに対して、「経済的単一体説」は、企
業集団全体の視点から財務情報を作成・開示する立場で、連結財務諸表を親会社とは区別され
る企業集団全体の財務諸表と位置づけています。連結財務諸表の「資本」に、企業集団を構成す
るすべての連結会社の「株主持分」を反映させる考え方です。
日本基準は基本的に「親会社説」を採用しています。これに対して、IFRS は「経済的単一体説」
を採用しています。
「親会社説」=日本基準にもとづく会計処理と「経済的単一体説」=IFRS にもとづく会計処理の
差異は、【図表4】のとおりです。
PricewaterhouseCoopers Aarata
【図表 4】 親会社説vs経済的単一体説
5. 取得法の適用
M&A 会計において、「取得法(パーチェス法)」が強制適用されるという点に関しては、IFRS と日
本基準とで差異はなくなりました。
IFRS における「取得法」と日本基準の「パーチェス法」とで名称の違いがありますが、取得日に、
被取得企業の識別可能資産および負債、取得企業が支払った取得の対価を、全て取得日におけ
る公正価値で、認識、測定することに差異はありません。ただし、改訂された IFRS 第 3 号におい
ては、上記取得資産、負債に加え、非支配持分についても取得時に時価で評価することが原則
要求されるようになりました(第1回概説参照)。
PricewaterhouseCoopers Aarata
この記事は、『週刊 経営財務』 2927 号(2009 年 7 月 20 日)にあらた監査法人として掲載したも
のです。発行所である株式会社税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウエブサイトに掲載
しておりますので、他への転載・転用はご遠慮ください。
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(
2009
)
PricewaterhouseCoopers
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“PricewaterhouseCoopers” refers to the Japanese firm of PricewaterhouseCoopers Aarata
or, as the context requires, the PricewaterhouseCoopers global network or other member
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