競争に打ち勝つために 銀行業の未来への展望 変化し続ける日本の銀行業界で競争優位に立つために 何をすべきか?
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競争に打ち勝つために 銀行業の未来への展望 変化し続ける日本の銀行業界で競争優位に立つために 何をすべきか?
変化し続ける日本の銀行業界で競争優位に立つために 何をすべきか? 競争に打ち勝つために 銀行業の未来への展望 www.pwc.com/jp 目次 ご挨拶 3 エグゼクティブサマリー 4 1. 銀行業界の勢力図 : 成長軌道に戻るための取り組み 6 2. グローバル化 新興市場の台頭および新興市場間の 相互依存関係の強まりを成長の機会とする 8 3. 人口構造の変化 人口の減少と高齢化に対する取り組み 16 4. 結論 環境の変化により伝統的なビジネスモデルは 見直しを余儀なくされるが、新しい可能性も 開かれる 22 添付資料: SAAAME 市場の概要 24 添付資料: プロジェクトブルー 29 お問い合わせ先 30 2 銀行業の未来への展望 ご挨拶 本報告書「競争に打ち勝つために:銀行業の未来への展望」は、銀行業界が大きく様変わりする局面にあって、 国内外の市場で日本の銀行がいかにして収益力のある成長を持続していけるかについて考察するもので ある。 利鞘が縮小し、貸出需要が落ち込む中、日本の銀行業界は依然として成長軌道に戻る ことに苦戦している。プロジェクトブルーのフレームワークを活用した PwC 調査の結果、 人口構造やテクノロジー、金融規制、グローバル経済が転換期にあるなかで、日本の銀 行には克服すべき厳しい経営課題が待ち受けていることが浮き彫りとなった(プロジェクト ブルーの概要については本冊子の 29 ページを参照)。 一方で、このような経営環境の変化は、イノベーション、差別化、成長を実現する上で の重要な機会も提供している。本冊子は、いくつかの環境変化をもたらす要因のうち、新 興市場の台頭や新興市場間の相互依存関係の強まりを日本の銀行がどのように活用できる かについて着眼している。また、今後市場の主流となるであろう高齢者層向けの定年後の ソリューションの開発や、世代間の富の移転を支援する機会に加え、これらの変化が銀行 の市場開拓戦略にどのような影響を与えるかについても焦点を当てている。 戦略決定にあたっての検討事項は、国際的な大手金融機関グループ、地方銀行、小規 模金融機関によって異なってくる。しかし、あらゆる業態の金融機関が対処すべき必須の 課題がある。それはこれまでとは全く異なる新市場での競争に打ち勝つために戦略を見直 すことであり、そのためには、従来の事業内容をわずかに変えるだけでは不十分である。 変化し続ける市場においてトップを目指す金融機関は、目先の経営課題に取り組むだけで はなく、5 年後の主要顧客や競合相手を見極め、将来の成功のために今すべき投資や組 織変革は何かを判断しているのである。 本報告書が今後の銀行業界、貴行のビジネスの発展のための有益な情報として、ご活 用いただけることを願っています。本報告書についてご意見やご質問がございましたら、 PwC 担当者または本報告書の 30 ページに記載の問い合わせ先までご連絡いただければ 幸甚です。 近江 惠吾 パートナー 銀行・証券セクター PwC Japan トゥレヴァー・ティセヴェラシンガ (Trevor Tisseverasinghe) パートナー 銀行・証券セクター PwC Japan PwC Japan は、あらた監査法人、京都監査法人、プライスウォーターハウスクーパース株式会社、税理士法人 プライスウォーターハウスクーパースおよびそれらの関連会社の総称です。 各法人は PwC グローバルネットワークの日本におけるメンバーファーム、またはその指定子会社であり、それぞれ独立 した別法人として業務を行っています。 競争に打ち勝つために 3 エグゼクティブ サマリー 日本は世界第三位の経済規模と、(資産額ベースで)第二位の金融市場を誇る。しかし、日本市場の構造 変化への圧力は高まっている。成長機会を見いだす銀行もあれば、脅威にさらされる銀行もあるであろう。 経営課題 利鞘への圧力が増し、貸出需要が低迷する中、コスト削減を図り、新たな市場機会を 追求するために、さまざまな取り組みが必要となる。 スマートフォンやオンライン取引により簡便的かつ即時に取引が可能となったことを受 け、金融サービスに対する顧客の期待は変化してきている。IT を駆使し、より機敏に 変化に対応している銀行セクター内外の競合他社にビジネスを奪われないこと、後れを とらないことが重要になってくる。 将来的に、労働力人口の減少により経済成長と貸出需要は減速する見通しである。 顧客が定年後の生活のために貯金を引き出すようになると、銀行の預金基盤は縮小す る。その結果、日本国債の購買力が低下する。 成長機会 銀行の強力な資金力を用いて、日本の製造業、非製造業の持続的なグローバル化を 支援する。 南米、アジア、アフリカ、中東(PwC は、これらの高成長市場を「SAAAME」と称し ている)におけるプレゼンスを高めている日本企業を支援する。 日本の大手行は既にアジアでのプレゼンスを高めており、今では SAAAME 市場へ参入 することが可能である。中小規模の銀行もまた、自行の顧客が新しい市場で事業を拡 大していることを支援するために、支店などの設置やグリーンフィールド投資といった直 接的な形態や代理店契約といった間接的な形態のいずれかを通して、国際社会におけ るプレゼンスの向上を試みることができる。ただし、国際的に活動する銀行に対しては 国際統一基準行としてより厳しい自己資本規制が課せられるため、国内基準行が海外 展開を図ろうとしても制約がある。そのため、海外展開のメリットとデメリットを十分に 評価しなければならない。 SAAAME 市場では、日本の銀行は、日本の顧客基盤にとどまらず、現地の個人顧客層 や法人顧客層にビジネスを提供する機会が拡大している。 4 銀行業の未来への展望 日本が高齢化社会に向かう中で、銀行 は重要な役割を果たす。具体的には、 顧客のニーズを適切に把握し、それを もとに定年後の生活に対してより適切か つ革新的なソリューションを開発・提供 するという役割である。 高齢化によって、顧客は定年後の長期 にわたる生活に備えるために高利回り の資産運用商品を求めるようになり、資 産運用やウェルスマネジメントなどの提 案機会が大幅に増える。そのため、ウェ ルスマネジメント関連業務に強くない銀 行は、マーケットシェアを失うおそれが ある。 人口構造の変化により、事業用資産や 財産を世代間でより効率的に移転するこ とを可能にする商品やサービスへの需 要も生じる。 グローバル化を進める国際的な企業グ ループの成長を支援するため、顧客分 析、管理会計、リスク管理、グループ 内報告のためのより実効的なインフラを 整備する。 サービスを向上させ、一層の差別化を 図るために IT を利用する。具体的には、 顧客ニーズをより適切に把握し、個々 の要望・選好に合ったサービスの提供 を実現するために、モバイルやソーシャ ルメディアによる交流を活用することが 挙げられる。 労働力人口が減少傾向にある中で、IT を用いてプロセスを合理化することに よって、少人数のスタッフをより付加価 値の高い業務に集中的に投入すること が可能となる。 潜在市場を最大限に活用する これらの多くの経営課題を克服していく 上で、日本の銀行は大きく前進しているも のの、いまだ課題は山積みである。 いくつかの大手行はアジア(特に、中国、 インドの他、最近はタイ、インドネシア) へは精力的に進出しているが、南米、ア フリカ、中東はいまだ相対的に未開拓で ある。日本の顧客への支援とこれらの市 場への投資に加え、SAAAME 市場間で増 加を続けている貿易の流れを捕捉するた めに、現地市場でのプレゼンスを高めるこ とが重要となる。この貿易の流れの多くは、 今では日本などの先進国市場を通さずに 行われるようになってきている。 銀行が新たな馴染みのない市場に進出 する際、現地に関する理解を深め、現地 の顧客や規制当局との関係を構築するこ とが必要となる。このためには、現地の 人材を引き付け、確保することが重要とな る。グループ全体の利益拡大のために国 際ビジネスの重要性が増し、経営幹部と なる人材のキャリア形成においてその価 値が高まってきており、今後より多くの日 本人職員を海外に派遣することが必要と なってくるであろう。 賄が増加傾向にある市場に対しては、マ ネーロンダリング防止に係る有効な統制を 整備することが必須である。 テクノロジーの活用に慣れた顧客層の 需要を満たしつつ、コスト管理・効率性 の向 上 が 必 要であることを踏まえると、 サービスの提供方法を見直すことが必要 となる。大手行にとっては、支店業務の 最適化やプロセスリエンジニアリングが中 核となる。一方、中小規模の銀行の場合 には、競争力を維持するためにさらなる 再編が必要となる可能性が高い。 これらの経営課題に銀行が取り組むた めには、マネジメントの多大な関与や多 額の投資を要する。しかし、転換期にあ る時代の動きを見越して、迅速かつ決断 力をもって行動する銀行にとっては逆に大 きなビジネスチャンスとなるであろう。 また、コミュニケーション手段や管理対 象が拡大するにつれ、それに見合ったガ バナンス、リスク管理、財務システムを整 備し、十分に正確で集約された最新のデー タに基づいて報告が行われることが重要 となる。将来の成功のためには、優れた 戦略策定と並んで、世界レベルのインフ ラを整備することも重要となる。また、現 地顧客に関する知識が乏しい市場や贈収 競争に打ち勝つために 5 1 銀行業界の勢力図 : 成長軌道に戻るための取り組み 日本の銀行は潤沢な資金を有するが、国内での活用機会は限定的で ある。 図表1:資産割合別に見た日本の銀行、 2013年3月31日終了事業年度 11% 912兆円 54% 29% ■都市銀行 ■地方銀行 ■その他 出典:全国銀行協会ウェブサイト 「全国銀行財務諸表分析平成 24 年度決算全国銀 行総合財務諸表」 (2014 年 1 月時点の掲載情報) 日本の銀行業界は、主にメガバンク三 行を含む都市銀行、地方銀行、第二地方 銀行、および信託銀行、信用金庫、信用 組合などで構成されている。 このうち、都市銀行、地方銀行、第二 地方銀行、信託銀行の総資産は 912 兆円 (銀行類型別の資産の内訳については図 表 1 を参照) 、総預金は 641 兆円 1、預 貸率は 70%2 である。 都市銀行は、全国的にネットワークを有 し、海外にも拠点を展開しており、銀行に よってはかなりの広範囲にわたる海外事 業展開を行っている。一方、地方銀行を はじめとする地域金融機関の活動範囲は より限定的である。一部の地方銀行では 海外拠点を設置している例もあるが、大 半は海外展開をしていない。 「余剰資金」の難題 経済成長の低迷が長引いたことにより 貸出需要は減少し、多くの企業や消費者 は、最小限のリスクしかとらないリスク回 避志向となっている。それに呼応して、現 1 譲渡性預金を除く。 2 全国銀行協会ウェブサイト「全国銀行財務諸表分析平成 24 年度決算全国銀行総合財務諸表」(2014 年 1 月時 点の掲載情報) 6 銀行業の未来への展望 在多くの銀行はテクノロジー新興企業やそ の他の革新的なニュービジネスといった、 よりリスクの高い事業への貸出意欲を欠い ており、また、そうした高リスクの融資を 行うための専門知識が不足している場合 もある。このような状況は、銀行の利益率 のみならず、国全体としての新たな成長 機会を探求していく能力にも影響を与えて いる。 リスク回避志向は、個人の金融資産の 半分以上が銀行預金として保有されてい る事実にも反映されている(図表 2 参照)。 これは、その他のほとんどの先進国の市 場よりも高い割合である。 銀行は融資の拡大に向けた取り組みを 続けているが貸出の伸びはまだ十分とは いえない。また、銀行は、預金の一部を 高利回り商品の投資に回すように預金者 を説得することにも成功していない。 銀行の余剰資金の運用先は通常、日本 国債である(図表 3 参照)。銀行にとって 国債の運用利回りは低いが、銀行が国債 を保有することにより国債が国内で消化さ れ、結果として対外債務の増加を防止す る効果がある。一方、国債の利回りが低 いことは、銀行の収益の大部分は貸出金 の資金利鞘が占めていることを意味して いる。 マクロ経済面でのチャレンジ: 岐路に立つ日本と銀行業界 「アベノミクス」の効果は過去20年間の デフレを転換させ、銀行業界および経済全 般の成長と自信の向上につながった。 2020 年のオリンピックは消費と成長を促進する と見られ、その中で、銀行は投資を支援し 先導していく重要な役割を担うことになる。 とはいえ、経済と銀行業界の長期的な 見通しは不透明である。日本は高齢化が 進んでいる。日本人の平均寿命は世界最 高であり、60 歳以上の人口は現時点では 全体の 25% 程度3 であるが、2060 年ま でには 40% 程度になると見込まれている4。 労働力人口が減少すると国内の生産量は 減少し始め、生産拠点の多くが海外へと シフトしていく。既に銀行は、顧客企業の 海外進出に合わせて、急成長中の SAAAME 市場における新たな機会の模索を始 めているが、人口構造の変化による影響 が増すにつれ、このトレンドは加速してい くことになるであろう。 中小の銀行も顧客企業の海外市場進出 の拡大に対応できなければ、大手行に顧 客を奪われるリスクが出てくると考えられ る。一方、日本国内に目を向けると、地 域金融機関にとっての主要な経営課題は、 労働力人口と経済活動が地方から都市へ と継続的にシフトしていく中で、地域産業 をいかにして活性化するかということであ る。 高齢化は政府債務の管理をより困難な ものにするおそれがある。特に、高齢者の 退職後の生活のために預金が引き出され ると、銀行の国債購買力は低下していくと 見られる。一方で、高齢化による預金水準 の低下と消費需要の変化は、家計のリス ク回避的な行動に変化をもたらし、家計 の貯蓄行動をよりダイナミックなものにす るかもしれない。例えば、 これまでよりも期 間が長くなった退職後の生活資金を確保 するために、より高リスクかつ高利回りの 投資を選好するようになることが挙げられ る。また、銀行は高い利回りを確保する ために、よりリスクの高い事業への貸し付 けを行うようになってくることも考えられる。 図表 2:家計の貯蓄:資産の運用先 日本 2.1% 54.0% 7.9% 27.6% 3.9% 4.5% 米国 14.0% 欧州地域 9.3% 35.8% 0 33.7% 11.9% 6.8% 7.2% 20% 40% 28.1% 15.2% 60% 31.7% 80% 3.0% 3.2% 100% ■現預金 ■債券 ■投資信託 ■株式 ■保険および年金 ■その他 出典 : 日本銀行 注 : 日本および米国の数値は 2013年3月31日現在、欧州地域の数値は 2012年12月31日 現在。年間平均為替レート ‐米ドル/円 84.67、米ドル/ユーロ 0.778 図表 3 : 日本の銀行資産、2013年3月31日に 終了する事業年度 16% 13% 53% 18% ■ローン ■国債 ■その他証券 ■その他資産 出典 : 全国銀行協会ウェブサイト「全国銀行財 務諸表分析平成 24 年度決算全国銀行総合財務 諸表」(2014 年 1 月時点の掲載情報) 3 世界人口レビュー(World Population Review) 2013 年 12 月 3 日 4 BBC オンラインレポーティング保健省による試算 競争に打ち勝つために 7 2 グローバル化 新興市場の台頭および新興市場間の 相互依存関係の強まりを成長の機会とする 日本は世界をリードするグローバルな投資大国、生産大国および貿易大国である ̶これらの特性は、最近の一連の買収により一段と強まっている(図表 4 参照)。 図表 4 : 日本の対外投資:2012年における貿易および FDI(直接投資)の流れ Dentsu-Aegis $4.3B Takeda-Nycomed: $13.7B Softbank-Sprint: $20B Marubeni-Gavilon: $5.6B 対外直接投資額 >$10B >$2B >$1B <$1B Kirin̶Schincariol (beer): $2.5B Mitsubishi-copper mine: $5.4B 日本からの輸出金額 ■>$50B ■>$20B ■>$10B ■>$5B ■>$1B ■<$1B 出典 : JETRO およびトムソン・ロイター 8 銀行業の未来への展望 $B=10億米ドル SAAAME の新興市場の経済および銀行業界は、貿易などの相手国で ある G7 の成熟した先進国市場よりも急速に成長している。 SAAAME の新興市場の経済および銀行 業界は、成熟した G7 の先進国よりもはる かに急速に成長している。PwC の予想で は、G7 の銀行業界の総資産は、 向こう 20 年間で上位 7 カ国の新興国(E75)に追 い抜かれ、日本は中国、そして最終的に はインドに追い抜かれる見通しである6。 図表 5:地域別の国際貿易の流れ 目的地 出荷地 現時点では、日本の最大手の銀行でも 自動車産業やエレクトロニクスの企業に比 較すると、グローバル化の面では遅れて いる。SAAAME における成長の加速に鑑 みると、顧客企業の海外進出に合わせて、 これらの市場に進出していくことの重要性 は高まっているといえる。SAAAME 市場 の加速度的な成長は、銀行にとって競争 環境の劇的な変化をもたらすが、この変 化は SAAAME 域内にとどまらない。 北米 欧州 旧ソ連 中南米 アフリカ アジア 中東 北米 6.4 7.8 16.0 13.8 12.3 9.0 14.1 欧州 5.3 7.8 17.3 11.7 11.5 11.7 11.5 旧ソ連 14.0 18.7 17.2 6.2 19.2 19.1 14.7 中南米 9.3 12.6 13.8 16.5 17.9 23.0 15.4 アフリカ 13.8 42.1 16.1 23.6 17.0 22.4 20.1 8.9 12.0 27.4 22.4 21.3 14.1 17.7 12.7 14.6 13.7 17.1 17.3 20.6 19.3 アジア 中東 SAAAME 年平均成長率% 2002-2012 ■<5 ■5-10 ■10-15 ■15-20 ■20-25 ■>25 出典:WTO ここで極めて重要なことは、単に個別の SAAAME 市場が成長しているのではなく、 SAAAME 市場間での取引が急速に増加し ているということである( 図 表 5 参 照 )。 このような取引の多くは、日本を含む先進 国市場を通さずに行われるため、銀行は これらの SAAAME 間の取引拡大の流れを 取り込む方法を見つけるか、取り込めな い場合のリスクを見極める必要がある。 顧客企業の新興市場への進出を支援す るための銀行の海外展開 顧客企業のグローバル化支援 国際的なネットワークの構築により、日 本の銀行は、顧客企業の投資機会を見極 め、顧客企業がこれら投資機会を活用す るための助言や融資、およびその他のサー ビスを提供することができるようになるだ ろう。 さらに、日本の銀行の海外拠点の主要 ターゲットは日系企業であるが、日本の大 手 銀 行にとっては、日系 以 外の企 業 や SAAAME 市場の顧客に対する事業の開拓 にも重要な機会を見出すことができる。 より複雑なサプライチェーンの管理 変化し続けるグローバルな貿易の流れ をいかにして取り込んでいくかを模索して いる銀行にとって、まずはより複雑なサプ ライチェーンの管理について顧客を支援 することが鍵となる。世界貿易機関(WTO) は「ここ数十年間にわたる国際貿易にお ける最も重要な変化の一つは、数々の国々 に跨って製造プロセスの相互連関性が高 まり、物品の製造における特定のプロセ スにおいて個々の国が特化してきているこ とである。 」と述べている7。 サプライチェーンがより細分化されると、 企業は、製造管理の観点と、貿易と消費 の成長から生まれる機会をうまく捉えると いう観点の両方の観点からオペレーション 戦略を構築しなければならない。そこで は、トレードファイナンスの最適化と運転 資金のより効率的な管理が重要な課題と なる。ここでは、グローバル・サプライ チェーン・ファイナンスに対するソリュー ションの提供といったことを含め、銀行が 果たす役割が重要となる。多くの企業は、 いまだに資金管理を行うにあたって、複数 の支払指図システムや複数の銀行を利用 することを余儀なくされている。 従って、 適切なテクノロジーを有する銀行は、より 統合されたクロスボーダーのキャッシュソ リューションの需要に応えることにより利益 を得ることができる。これは、多国籍企業 がより管理しやすい資金管理のインフラを 望んでいるためである。 5 E7 は中国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシア、トルコおよびメキシコを含んでいる。 6 2050年の銀行業、PwC、2011年 7 WTO World Trade Report 2013 より 競争に打ち勝つために 9 インフラ開発の支援 WTO の世界貿易レポート(World Trade Report 2013)は、インフラ投資と製造お よび貿易の成長の間に強い相関があるこ とを指摘している。いくつかの国は、既に アフリカでのインフラプロジェクトに対する 支援を開始しているが、日本企業がアフリ カのインフラ事業に食い込む余地はまだ 多く残されており、銀行にとっても融資や アドバイスを提供するための機会がある。 銀行の真の国際化 日本の銀行、特に大手行による国際業 務への注力を反映して、日本の銀行は再 び最大のクロスボーダーの貸手となった (米国、英国およびドイツを抜いてグロー バル合計の13%)8。 銀行業界の海外展開の次の段階は、現 地でのより強力なネットワークの開拓であ る。日本の銀行は強力な地盤を有してい るが、米国や英国の大手行に匹敵する程 の存在感はない。海外での事業展開にお いて日系の事業法人顧客を外国の銀行に 奪われないためには、国際業務をさらに 充実させていくことが重要である(多くの 外国銀行が日本企業の海外事業を支援す る機会を獲得するために専門のジャパン デスクを設置し始めている)。 より強固な現地基盤を確立することによ り、日本の銀行が現地顧客を獲得し、現 地通貨建ての融資を行うことも可能になる。 こうしたことを可能にするためには、海外 展開にたえうるガバナンスや報告体制の 整備、リスクの識別や意思決定を迅速か つ効果的に行う能力が必要となる。 中小規模の銀行も、顧客の新市場への 進出を支援していくことを切望している。 中小規模の銀行の多くは、現地市場での 8 国際決済銀行四半期レビュー 2013 年 9 月 9 ロイター、2013 年 12 月 18 日 フルサービスの業務体制を構築するため の資金力、資本力、業務展開能力が十分 ではないと見られるが、現地の銀行と提 携することによって、顧客と現地の銀行と の関係構築を支援し、国際的な業務展開 をしている日本の大手行に顧客を奪われ ることを防止することが可能かもしれない。 しかし、これは費用便益分析に基づいて 行うべき事業上の意思決定であり、比較 的大きな資本賦課を伴う場合もある。 買収は、国際的にビジネスを拡大して いく上での重要な要素である。経費節減 の時代を終え、新興国における高い成長 率や、金融危機の影響を受けた他国の銀 行による資産の売却を背景として、日本の 銀行は大手行を中心に国際市場における プレゼンスを高めてきた。その例は次のと おりである。 10 モルガン・スタンレーのメディアリリース、2008 年 9 月 29 日 11 MUFG ウェブサイト、2008 年 8 月 12 日 12 ブルームバーグ、2013 年 5 月 9 日 13 ロイター、2012 年 1 月 17 日 14 フィナンシャルタイムズ、2010 年 11 月 12 日 10 銀行業の未来への展望 2013 年、三菱 UFJ フィナンシャル・グ ループ(以下 MUFG)はタイのアユタ ヤ銀行の支配的保有数の株式を買収し た9。これは東南アジアにおいて日本の 銀行が行った最大の買収である。 2008 年 MUFG は、 モルガン・スタンレー に出資した他 10、米国のユニオン・バ ンカル・コーポレーションを完全子会社 化した 11。 2013 年三井住友フィナンシャルグルー プ(以下 SMFG)は、インドネシアのタ ブンガン・ペンシウナン・ナショナル銀 行に出資し、 最終的に株式の 40% を 取得した12。 2012 年 SMFG は、RBS の航空機リー ス事業を買収した13。 2010 年みずほフィナンシャルグループ は、ブラックロックに出資した14。 これらの重要な取引に加えて、日本の 銀行はアジア全域にわたり一連の小規模 な買収、 戦略的投資および合併事業を 行ってきた。アジアは文化的にも地理的に も近いため、最もシナジーと価値を得るこ とができると考えられることから、重点地 域となっている。しかし、現在のところア 図表 6:いくつかの国における銀行口座保有者の割合 私たちの見解 15歳以上の人口に占める、正規な金融機関に口座を有する人の割合(2011年)単位:% 0 20 40 60 80 100 モーリシャス 南アフリカ ケニア モザンビーク ジンバブエ アンゴラ 国内市場が飽和状態にあるなか、 日本の大手行は、SAAAME 市場 へ の 参 入 を 含 む 日 本 企 業 のグ ローバル化を引き続き支援する機 会を有している。彼らは、自らの 莫大な資金を利用して、これらの 市場における成長から利益を得て、 将来的な国家の経済的な発展に つながる日本企業の戦略的な投 資の支援を行うことができる。 ナイジェリア ガーナ ウガンダ ガボン モーリタニア タンザニア カメルーン コンゴ スーダン セネガル 出典:世界銀行 ジア地域を除くと日本の銀行の国際的な プレゼンスは米国や欧州の大手行に比べ て低く、日本企業のグローバル化を全面 的に支援する能力は限られている。日本 の銀行の中東、インド、サハラ以南のアフ リカおよび南米におけるプレゼンスは、こ れらの地域の経済の強い上昇傾向にも関 わらず、比較的低い水準にとどまっている (これらの地域における事業開発のポテン シャルの概要については 25-28 ページを 参照) 。また、日本の銀行は、現地に進出 している場合であっても、本格的な支店 機能ではなく、駐在員事務所の形で存在 する場合が多い。 日本の銀行にとって SAAAME 市場にお ける成長機会のひとつとして、トレードファ イナンスに対するソリューションニーズの 高まりがある(サプライチェーンファイナ ンス、クロスボーダー/ノーショナル・ キャッシュ・プーリング、トレジャリー業務 の一元化など) 。外資系銀行は、ここ数年 間にわたりトランザクション・バンキング・ ソリューションの開発と、これらの活動を 支えるための高度な IT インフラの構築の ために投資を行ってきた。日本の銀行も、 この領 域にお ける自行の能 力の開 発を 行ってきたものの、他の国際的な金融グ ループと同一の条件で競争していくために は依然としてキャッチアップが必要である。 SAAAME 市場が一段と洗練されてくる につれ、日本の銀行は現地顧客に対して より幅広い商品とサービスを提供し、進化 するニーズを満たすことができる。また、 革新的なサービスを提供する能力を備え た銀行は、従来金融サービスが提供され ていなかった比較的大きな市場にサービ スを提供する機会がある(図表 6 を参照)。 現地の理解と規制当局との関係は重要と なる。また、M-Pesa のモバイル・バンキ ング・モデルの成功事例からも明らかなよ うに、新規の顧客や、若年層、遠隔地域 の顧客を獲得するためには IT が重要に なってくる。15 15 M-Pesa は現在ケニアで 1500 万人の顧客を有している。これはケニアの全銀行の顧客数よりも多い。 競争に打ち勝つために 11 SAAAME 市場がより洗練されてくるにつれ、日本の銀行は現地顧客に 対してより幅広い商品とサービスを提供し、進化するニーズを満たすこ とができる。 適切な行動の判断 下の表で概説されているとおり、国際展開に向けたさまざまなアプローチにはそれぞれ長所と短所がある。これは銀行の置かれたポジ ション、顧客のニーズ、事業機会のタイミング、資本の制約および利用可能な資金量によって異なる。 アプローチ 長 所 短 所 駐在員事務所 低い初期コスト 必要に応じて人員を派遣することによる柔軟性のある運 営経費 プレゼンスを確保するためのもっとも時間のかからない 手段 戦略的提携 現地の知識、人材基盤、既存のネットワークへの即時 アクセス 低コストかつ低リスク 目標とされる機会へのサービス提供能力 支店設立 中程度のコスト 本店における顧客リレーションを活用することによる日本 の企業に対するサービス提供 必要なライセンス獲得における規制 インフラ構築のための時間と多額の投資 本店からの人員派遣と現地採用による適切な人材の配 置に関する課題 限定的な業務提供能力 地場の取引フローを捉える可能性は低い 資本賦課の増加 買収 現地の知識、人材基盤、既存のネットワークへの即時 アクセス 現地の顧客基盤および業務提供チャネルへの即時アク セス 現地における資金調達手段へのアクセス 現地市場では、現地ブランドの方が知名度が高く、信 頼されている可能性がある 営業権に関する高いプレミアムによる高コスト 高い統合リスクを伴う十分に内容が理解されていない 事業 支配持分を取得するにあたっての規制上の承認を得る ための課題 時間がかかる 本店からのリスク管理および監視/ガバナンスに伴う 課題 資本賦課の増加 現地子会社設立 現地の顧客基盤および取引フローへの良好なアクセス 本社のガバナンスおよびガバナンス体制をより容易に導 入することができる 統合プラットホームについて本社のインフラを活用するこ とが容易になる 必要なライセンスに係る規制上の承認を得るための課題 インフラを導入するための費用 顧客基盤の形成にかかる時間 資本賦課の増加 12 銀行業の未来への展望 業務制限 市場への大幅な参入は見込めない パートナーとの協議による戦略実行に対する制約 事業の支配権がないことによる意思決定の遅延の 可能性 図表 7:PwCのグローバル化成熟モデル フェーズ1 「進出」 フェーズ 2 「地域化」 フェーズ 3 「創出」 市 場 調 査 需 要 供 給 成功への鍵 グローバル化の九つの要素 市場販売商品 業 務 調 達 知的財産開発 資 本 人 材 オペレーティングモデル ガバナンス ガバナンスおよびリスク管理 分析の事例:●貴社の現在の位置づけを評価 ●新市場でどのようにして競争していくかを決定 出典:PwC PwC のグローバル化成熟モデル 私たちのリサーチによると、グローバル 化は次の三つの段階で成熟していく。 「進出」の段階では、銀行またはその 他の企業は、国内市場で販売している 自社の商品を、海外の特定市場の顧客 に対して販売する。 「地域化」段階では、現地市場のニー ズを満たすことに焦点を当てる。 「創出」段階では、完全にグローバル 化する。 PwC のグローバル化成熟モデルは、こ れらの要素を統合し、銀行の現時点での 位置づけと、戦略上の目的を実現するた めに何 が 必 要 かを明 確にするためのフ レームワークである(図表 7 参照)。 展開を支援するための 適切なインフラの構築 LIBOR およびマネーロンダリング防止な どの分野における国際的グループへの罰 金が示すように、有効なガバナンスや、コ ンプライアンス、リスク管理の重要性はか つてないほど高まっている。 しかし、特に自国の市場以外での大幅 な事業の拡大は、自国市場に比べて適切 な監視と統制をより困難なものにする可能 性がある。新たな地域への進出は未知の リスクをもたらすとともに、地域によって異 なるさまざまな法体系や規制当局および 労働スタイルのもとでの業務展開が必要と なる。 従来、日本の銀行の海外業務は比較的 限定されており、これは銀行の業務体制 やそれを支えるガバナンスのあり方にも反 映されている。しかし、今日のより複雑で 広範囲にわたる国際業務において必要と されるリスクのモニタリングや管理手法に は、正確で包括的なデータを適時に収集 するためのモニタリングと報告のインフラ によって支えられた、新しいガバナンス、 コンプライアンスおよびリスク管理のモデ ルが求められている。そうしたモデルは、 グループの構造に最も適した形で、中央 集権的、あるいは地域分散的に構成する ことが可能である。そうしたモデルは、顧 客と向き合うフロントオフィスの業務管理、 リスクのモニタリングから、人事や IT と いったサポート機能を含む組織横断的な 管理モデルである必要がある。 顧客リレーションがそれほど緊密でなく 顧客に関する情報が少ない市場において は、マネーロンダリング防止に対する厳格 かつ体系的なアプローチに特段の焦点を 当てることが必要である。 競争に打ち勝つために 13 新しいオペレーティングモデル リスク管理やコンプライアンスは高い優 先度を有するが、これらの要求に対応して ガバナンスや意思決定、レポーティング構 造を再検討をすることは、よりグローバル 化した業務と整合するようにオペレーティ ングモデルを見直すよい機会でもある(図 表 8 参照) 。 多くの日本の大手行における財務およ びリスク管理システムは、数多くの合併に よりつなぎ合わされたもので、主として国 内 業 務のために使 用されてきた。 一 方、 中小規模の銀行ではシステムへの投資が 不十分であり、このことが時間やコストが かかり、ミスが発生しやすい手作業による 業務プロセスへの過度の依存の原因と なってきた。 インフラが今後のビジネスモデルの変化 に適合するものであるかどうかを見直すよ い機会となる。 大手行では国際化が進むにつれ、シス テムの大規模なアップグレードが必要と なってくる。まずは、分析や報告の一貫性 とスピードを確保するためにデータの集中 化が必要となってくるが、理想的には単一 のソースデータによるシステム構築が望ま しい。旧来のシステムやマニュアルプロセ スに依存し続けることは、迅速かつ有効 な報告インフラを備えた競合行に競争優 位を奪われることにつながる。また、不 十分なシステム投資は、現在の複雑で広 範な業務環境において、コンプライアンス 違反の看過や目に見えない損失発生のリ スクを増加させることにもなる。 私たちの見解 日本の銀行の成長に関する課題 に対応するためには、既存のビジ ネスモデルおよび構造の変更が 必要となる。つまり、適切な経営 情報を用いて、より複雑で広範な 国際業務の指揮監督を行うことが できる、一元化された機能的なガ バナンスやより適切な情報に基づ いた意思決定プロセスが必要と なる。 中小規模の銀行では、国際業務を支援 する目的でのシステムの大幅な変更は必 要ではないと考えられるが、現在の業務 図表 8:グローバル化された事業に対する新しい経営モデル 銀行の ビジョンと 戦略 ビジネスモデル ビジネスモデルを 実行するための、 業務サービスの 要件を定義 する。 サービスをできる限り 効率的に提供する ため、 インフラが どのように作用 するかを定義 する。 インフラがどの ように機能す るかを定義 する。 組織構造 Functional model 機能別組織 Organization 組織モデル model Interaction 相互作用モデル model 14 銀行業の未来への展望 Booking & ブッ キングモデル entity model および法的形態 Location model 現地事業のモデル Property, facilities and locations Tax & Legal Structure 出典:PwC どの商品か。 リスクはどの程度か。 どの市場か。 コストはどの程度か。 オペレーティングモデルの定義パラメータ Operational services オペレーショ ナル サービスモデル model Financial 財務モデル model インフラ Process architecture プロセスの基本構造 リターンはどの程度か。 オペレーティングモデル 相互作用 Governance ガバナンス どの顧客か。 Info and tech architecture 情報 ・技術の基本構造 取引ボリューム 資本と流動性の目標 リスク許容量 販売チャネル セグメント化された顧 客の需要と要求される サービスレベル 投資予算 財務目標 経常費用予算 大手行では、国際化が進むにつれシステムの大規模なアップグレード が必要となってくる。まずは、分析や報告の一貫性とスピードを確保す るためにデータの集中化が必要となってくるが、理想的には単一のソー スデータによるシステム構築が望ましい。 競争に打ち勝つために 15 3 人口構造の変化 人口の減少と高齢化に対する取り組み さまざまな国における人口の増加と減少や、世界中で進行している高 齢化は、経済社会のあり方を変容させ、銀行業界のあり方も変化させ ている。市場の需要や、競争、利益に対する影響は、特に日本で顕 著となり、いくつかのビジネスラインの重要性を低下させ、その他のラ インにおける新たな機会を創出することになる。 日本の人口は減少しており、高齢化が 進んでいる(図表 9 は年齢グループごと の人口趨勢を示している)。2013 年には、 人口は過去最大の 24 万 4,000 人減少し た16。現在の出生率、死亡率、移民の割 合が継続する場合、2050 年には人口は 25% 以上減少し、 およそ 9,500 万人となる 17 と考えられている 。生産年齢人口(15 歳 から64 歳) は 1995 年に8,700 万人でピー クに達した後、2050 年までに 6,000 万 人未満に減少することが予想されている18。 5.4 30.2 34.6 19-65 42.4 75.0 41.1 0-19 65-100+ 図表9:年齢階層別の日本の人口(単位:百万人) 45.6 22.9 11.0 5 2.5 0 2.5 5 5 1960 16 BBC オンラインによる保健省の予測。 2014 年 1 月 1 日 17 世界人口レビュー 18 IPSS による人口予測 16 銀行業の未来への展望 ■男性 ■女性 出典:国立社会保障・人口問題研究所 2.5 0 2010 2.5 5 5 2.5 0 2060 2.5 5 私たちの見解 国立社会保障・人口問題研究所 多くの先進国に加えて、中国、インドお よびインドネシアなどの新興国市場におい ても人口の高齢化が加速している。しか し、日本における人口減少のスピードは、 生産年齢人口、総人口共に、出生率や移 民の割合が低いことにより加速されている (移民人口19 は OECD の平均 8.5%に対し て、日本では 2%を下回っている)。 高齢化は、長期的には国内の顧 客基盤の縮小につながるが、短 期から中期的な観点からは高齢化 により生まれるビジネス機会もあ る。日本における人口構造の変化 は、高齢化社会にどのように対応 するかについて、日本が世界の先 駆者としての地位を確立する機会 をもたらす。銀 行 業を含む 金 融 サービスセクターは、高齢化社会 のニーズを満たす新しい金融商品 と販 売 チャネル の 開 発 によって、 この変革の中で果たすべき重要な 役割を有している。具体的には、 以下のようなことが考えられる。 日本の生産年齢人口の減少に伴って労 働力人口が減少していることは、生活水 準を維持するためには生産性の向上と外 需の拡大による成長が必要であることを意 味している。金融サービス業界は、人口 構造変化の先行きを予測し、商品とサー ビスを変化する顧客基盤に適合させること が必要である。 寿命が長くなり、政府による支援が縮 小するにつれ、銀行の競争の場は、融資 の提供から退職後の資金管理の支援へと シフトしていくと考えられる。人口構造の 変化がもたらすビジネス機会をとらえるに は、提供商品と業界構造をどのように適合 させていくかという二つの面がある。今後、 知識と判断力を持った退職者層が増えてく るに従い、銀行の市場における評判や信 用が、市場シェアを維持するうえで非常に 重要となってくる。 その他の国と地域、特にインドおよびア フリカは、若年人口が多く、人口が増加し ており、産業投資と開発に拍車がかかる と考えられる。2050 年までに、インドの 人口は 4 億人増加して 16 億人20、アフリ カの人口は現在の 2 倍の約 20 億人とな る見込み21 で、その大半が 30 歳未満と なる見通しである。銀行の課題は、これら の若年層が銀行とどのような関わり方を望 んでいて、いかにしてこの層に貯蓄や投 資を促すことができるかを見極めることに あり、そこでは今後の情報技術の展開が 重要な要素となる。 投資家ごとにテイラーメイドさ れたコンサルテーションやプラ イベートバンキング 退職後の生活を保障する保険 商品へのシフト リバースモーゲージ パスワードを記憶することが煩 わしいといった問題に対応する ための生体認証を利用したセ キュリティ 通常取引にかかる手数料の値 引き 事業継承や相続といった世代 間の資産の継承の最適化 「考え方が同じ」年長のスタッフ による同世代の顧客への対応 上記を実現させるための戦略を構 築し、IT 投資を行い、先進的な手 法で顧客と向き合う銀行が成果を 得るだろう。 人口構造の変化に対応した商品構成 新しい時代のウェルスマネジメント 日本は世界最大の投資可能な財産を有 しているものの、ウェルスマネージャーは その潜在性を引出すことが難しいと考えて いる。特に、大半の顧客は資産を現金や 国債といった流動資産として保有すること を好む。これは 1990 年代の株価、不動 19 World Population Review 2013 年 12 月 3 日 20 2050 年の世界人口に関する 10 の予測、2014 年 2 月 3 日 21 エコノミスト、2011 年 12 月 17 日 産価格のバブル崩壊と、その後の経済的 な自信の喪失によるものだと考えられる。 現在のところ個人向けにテイラーメイドさ れた金融サービスの利鞘も限定的である。 しかし、資産管理およびウェルスマネジ メント市場は大きく成長する可能性がある。 平均寿命の延長に伴い、より多くの退職 後資金を賄うためには、預金などの低利 回りの運用手段よりも高い運用利回りの投 資手段が必要となる。また、堅実な運用 をする標準的な年金商品に対する需要の 増加は、利回りをさらに低下させることに つながると見られる。これは、運用投資 信託などの高利回りの投資に対する需要 増加の引き金となり、アセットマネージャー とっての重要な成長機会を生み出すことに なる。 国際的なパートナーシップの構築 日本の投資家の外国証券に対する購買 意欲は非常に高まっている。しかし、外 国証券を購入するにあたって、多くの投資 家は外国の仲介業者を通す必要があり、 日本の銀行にとっては機会損失が発生し ている。外国のブローカーと提携すること により、日本の銀行はより多くの利益を得 ることができるかもしれない。 また、外資系金融機関は高い利回りが 得られストラクチャー物の金融商品の開発 を先導するための専門知識や分析能力を 有している。一般的にこうした商品は、日 本の銀行などを通じて投資家へ販売され る。日本の銀行は、提携先である外資系 金融機関との連携を深めることも考えられ よう。 資産の継承 今後、1990 年代のバブル崩壊を経験 していない世代に財産が継承されていく のに伴い、リスク商品への投資意欲も高 まってくることが考えられる。さらに、高 齢の世代は、最も効率的に事業継承を含 めた次世代へ資産の継承を行うための商 品やサービスを求めている。こうしたニー ズは財産の継承を喫緊の課題としている 顧客に対し、取引のきっかけを作ることに なる。また、こうしたきっかけは次世代へ 競争に打ち勝つために 17 の最適な富の移転のための手段の提供だ けではなく、次世代のためのプライベート バンキング型のコンサルティングサービス や高利回りの外国資産への投資機会を提 供するための関係を構築することも含んで いる。 しかし、長期的には高齢化が進み、依 存人口比率が高まっていくと、退職後の 生活資金の需要を満たすために、次世代 に残す財産や貯蓄残高そのものが減少し ていく。これは次世代に移転する財産が 少なくなることを意味している。これを防 ぐための一つの方法として、例えば住宅な どの非流動資産の価値に着目した年金型 の商品の開発に事業機会があると考えら れる。さらには、できる限り資産の価値を 保全するための相続税に関する節税アド バイスや相続のための最適化商品の提供 が事業機会となっていくであろう。 販売チャネルの変更が必要となる 銀行業におけるオンラインおよびモバイ ルテクノロジーの利用に対する顧客のニー ズは急速に増大している。デジタルチャネ ルの利便性により、顧客が支店を訪れる 機会は減少しており、支店の開設や維持 にかかる多額の投資や費用に比べて、回 収できる利益は減少している。現在の支 店営業に依存したモデルを継続する場合、 銀行にとっては経済的負担となり、銀行全 体の収益性に大きな悪影響を及ぼすこと になる。 ことができる。支店取引のコストは、例え ばモバイル取引のおよそ 20 倍、オンライ ン取引の 40 倍以上である(米国におけ る取引コストの比較を示す図表 10 を参 照) 。 収益の減少に直面するなかで銀行は、 支店の人員、賃貸契約やその他の支店の 収益性に関する重要な項目について見直 しを始めている。支店のコストとサービス を再検討することは、支店の存在が銀行 の業務展開モデルのなかにどのように組 み込まれていくのかをより広い視野で再検 討することにつながる。顧客の銀行取引 の利用形態が変わっていくのに伴い、従 来型の支店が提供する価値のあり方も変 化している。顧客は、ワンストップサービ ス、パーソナルな対応、専門的なサービス、 レベルの高いサービス、迅速な問題解決 といったより価値の高いサービスを求める ようになってきている。人口の減少によっ て、利用可能な労働力は減少していくが、 それは同時に戦略的に重要なロケーショ ンにおける中核的拠点の利用の促進を含 めた事業モデルの見直しの機会となる。 実店舗による支店ネットワークの改革に あたっては、次のようなポイントが重要と なる。 顧客の選好や期待への適合 顧客獲得やクロスセルの促進 顧客に対する個別対応のサービス モデルの維持 もっとも付加価値の高い取引を支店に 誘導することによる、支店本来の顧客 対応機能の発揮 営業費用の削減 先進的な銀行は「支店の管理」 から、 全ての販売チャネルにわたる「販売の管 理」に概念を変えてきている。マルチチャ ネルの販売戦略は、物理チャネル、デジ タルチャネル、対面チャネル、音声チャネ ルを含む全ての販売チャネルを網羅する。 この戦略は、銀行が顧客の獲得やサービ スの提供の仕方を最適化する方法を全 チャネルにわたって横断的に検討すること を促し、支店ネットワークを含む銀行全体 の収益および利益を最大化させることに 役立つ。日本の高齢世代が支店で営業を 行うことを好むとはいえ、最適化の余地は まだ残されている。 図 表 11 は、 銀 行 がコストとリターン、 顧客対応とクロスセルの可能性を考慮し て最適な販売手法の組み合わせを決定す る方法を示している。 図表 10:取引コストの比較 米国における平均取引コストは、労務費およびITコストを含む 支店は今後とも引き続き重要な顧客と の接点であり続け、複雑な商品の販売お よび小売業および小規模企業の顧客との 関係構築において重要な役割を果たして いくと考えられる。また、支店は住宅ロー ンの申し込みのような、対面によるやり取 りが重要となる取引においては、最も一般 的なチャネルであり続けると考えられる。 しかし、支店を維持するための高い固定 費を考えると、今後の支店営業は生産性 を飛躍的に伸ばすか大幅にコストダウンす ることが必要となるだろう。定型的な銀行 取引を支店から低コストのチャネルへとシ フトすることにより、コストを大幅に減らす 18 銀行業の未来への展望 コールセンター $4.04 支店 $4.00 $0.61 ATM モバイル $0.19 自動音声応答 $0.17 オンライン $0.09 $=米ドル 出典:CEB タワーグループ 図表 11:先進的な銀行は、顧客ニーズ、 収益機会、 コストのバランスを考慮して 支店モデルの正しい組み合わせを決定する 取引補助機能のある セルフサービス キオスク コミュニティ センター 取引を重視 インストア 支店 フルサービス 支店 先進的な銀行は「支店の管理」 から、全ての販売チャネルにわ たる「販売の管理」にサービス 提 供の概 念を変えてきている。 マルチチャネルの販売戦略は、 物理チャネル、デジタルチャネ ル、対面チャネル、音声チャネ ルを含む全ての販売チャネルを 網羅する。 フラッグシップ 店舗 販売とリレーションを重視 5年間のコスト (設置および営業費を含む) 低 高 出典:PwC 下の表は、五つの出店形態のコストとリターンを評価するための基準を示し、これらの 基準をどのようにして各市場の特定のターゲット顧客に合わせて適用することができるか を示している。これにより銀行の顧客との地理的な関連性が向上し、顧客のニーズや収 入機会とコストのバランスを取ることができ、利益の増大につながる。 新しい支店モデル 取引補助機能のある セルフサービスキオスク 活発な取引を行う個人顧客や小規模事業者を対象とした高 機能キオスク(うち、いくつかはテレビ電話による取引が可 能) 。キオスクの機能を支えるために現場に必要な従業員は 1名のみである。 インストアおよび企業内支店 商業施設や職場で定型取引および口座開設を行うことを望 む多忙な顧客に対し、便利なアクセスを提供する。これらの スリム化された支店のロケーションは、コンビニエンスストアや 企業のオフィスビルを含む。 フルサービス支店 プライバシーの保護や対面での対応を重視する個人顧客や 小規模企業顧客に対し、ワンストップバンキングを提供する。 フルサービス支店は将来的に減少していくと見られている。 残存する支店は、テレビ電話が可能、バックオフィスが自動 化されている、取引、関係性の構築および販売のより良い バランスをとるためにオフィス設計が再構成されるといった特 徴を持つ技術的に優れた支店である。 コミュニティセンター サービスを行う地域のコミュニティごとにカスタマイズされた サービス体験を提供する。従来の支店よりも設置面積が小さ い。従業員は顧客の名前を知っており、コミュニティのイベン トに参加し、 現地企業をサポートするためのネットワーキングセッ ションを支店で主催したりする。 フラッグシップ店舗 銀行取引およびアドバイザリーの専門知識を提供するととも に、先進的な顧客に対する新たな可能性を紹介する。 私たちの見解 国内需要の長期的な落ち込みと 顧客の期待の変化に直面し競争 がより厳しくなると、サービスの提 供方法について見直す必要性が 高まると考えられる。さらに、人 口の減少により、支店の業務に従 事するスタッフを採用することも難 しくなっていく。従って、自動化さ れた取引と対面対応を適切に組 み合わせ、顧客を適切な販売チャ ネルへと誘導することにより生産 性を向上させることや、地域中核 拠点の一層の活用が、収益性を 維持する鍵となる。 競争に打ち勝つために 19 全てのモデルが全ての銀行にとって有用というわけではない。各地域のターゲット顧客層や銀行の戦略的目標に合わせて、支店モデ ルを組み合わせることが、最も有効な戦略である。 適切な支店の組合せを決定するにあたって考慮すべき要件 地域市場の特性 人口密度 主な用途地域 (住宅、市場・商業、産業) コミュニティの集中度 (民族、大学生または 未成年者のいる家庭といった年齢層) 競争 (都市銀行vs地方銀行vsコミュニティバ ンク) 主要な顧客の特性 資産/所得水準 (富裕層vsマスマーケット) 保有する金融商品 (預金、 ローン、投資) デジタル機器の利用度 (高いvs低い) 取引スタイル (セルフサービスvsアドバイスを求める) 成長予測 (高成長、成熟した市場、停滞) 情報セキュリティの強化 情報セキュリティの強化は、オンライン およびモバイルチャネルを通じた取引が 増えるにつれ、極めて重要となる(世界 中のビジネスリーダーを対象とした PwC の 最 近 の CEO 意 識 調 査 で は、 銀 行 の CEO の 70% 以上がサイバー攻撃を成長 に対する脅威と見ていることが明らかに なった 22)。 PwC、CIO マガジンおよび CSO マガジ ンが毎年実施している世界的な調査であ る Global State of Information Security©Survey の最新の結果では、情 報セキュリティのための投資を行う理由の もっとも大きなものは、依然としてコンプ ライアンス上の要請であることが明らかに なった23。しかし、単に規則上のルールに 従うだけでは、銀行は常に変化し続ける サイバー攻撃の脅威に対応することがで きない。同様に、大半の取締役はいまだ 22 133 の銀行の CEO が「2014 年第 17 回世界 CEO 意識調査“Fit for the future”の対象となった。 23 金融業界の IT セキュリティ担当の取締役 993 名が、PwC、CIO magazine および CSO magazine によって実施 される 2014 年の Global State of Information Security® Survey の対象となった(金融サービスおよび産業間 共通の発見事項については、http://www.pwc.com/gx/en/consulting-services/information-security-survey/ download.jhtml を参照) 。 20 銀行業の未来への展望 銀行の検討事項 市場の収益性 (顧客基盤からの収益、成長見込み) 戦略上の焦点 (目的とする市場浸透レベル、市場シェ ア) 現在の能力 (支店やATMの数、生産性レベル、支店 の業績) にサイバーセキュリティを事業全体という よりは主に IT の問題であると捉えている。 しかし、高度化する脅威に対して、その 先を行く対応をしていくためには、サイ バーセキュリティを IT だけの問題ではなく 全社員の問題として取り組んでいく必要が ある。 例えば、最も厳重な保護が必要な最重 要機密データを識別し、それにリソースを 集中させるといった対応が重要である。銀 行は、サイバーリスクをその他の分野のビ ジネスリスク管理と統合し、より頻繁なリ スク評価を実施し、第三者機関とより緊密 に連携することが必要である。全てのリス クをなくすことは不可能なので、取締役会 レベルによって主導される、より明確なリ スク対応およびリスク軽減計画の策定や 実施が必要である。 ケーススタディ:目標とする支店デザイン ある先進的な国際銀行グループは、世界の主要な市場でフラッグシップ店舗を運営している。 こうした支店は、 リテールバンクとしての魅力 的な取引体験を提供するような店舗デザインを採用し、顧客に対し革新的な銀行取引の方法を提供している。特徴的な点としては以下のよ うなものがある。 財務情報や時事ニュースを表示する巨大な双方向メディアウォール タッチパネルを利用して、 サービスメニューを閲覧できる取引施設。顧客はタッチパネルを利用してローンの申し込みを行ったり、携帯電話に 情報を取り込んだりすることができる 遠隔地のアドバイザーと個別的な相談をすることができるテレビ会議エリア 無料のWi-Fi サービス要員による対応を必要とする顧客に対応するためのスタッフのいるサービスエリア ケーススタディ:モバイルの未来は明るい 図表12で示されるとおり、 モバイルペイメントは非常に大きな可能性を期待されている成長市場である。 日本におけるスマートフォンの普及 率は、 過去2年間にわたって急上昇し40%を超える水準となっており、2014年末までには米国を上回ると予想されている。 さまざまな研究によって、2020年までには、 ほとんどの人がモバイルペイメントを利用するようになると予想されている。銀行は、 従来の現金 による取引のモバイルへの移行、 モバイルペイメントに関連する付加価値サービスやその他のこれまで存在しなかったような価値の提供に よってビジネスの拡大を図ることができる。 銀行業以外においても、 モバイルペイメントは企業と消費者のコミュニケーションをより良いものとし、新たなショッピング経験の提供や、広 告およびマーケティングのあり方の変化を通じて、企業と消費者との取引のあり方を変容させていくだろう。 テクノロジー関連の大手企業、小規模な新興企業、 モバイルオペレーターおよび支払のネットワークが決済手段の変革をリードしている。 例えば、現在スマートフォンはカード決済の端末として使用することが可能であり、小規模企業や自営業者の市場へのモバイルペイメントの浸 透を支えている。新たな技術は、 ユーザーとモバイル機器のインタラクションやモバイル機器と環境とのインタラクションのあり方を変容させて いく。 図表 12:モバイルの成長は急速に進んでいる (単位:10億ドル) 2011 2012 2013 2014 2015 2016 37.7% 注:年平均成長率 (2012年∼2016年) 全世界のモバイル ペイメントの総額 $105.9 $171.5 $236.2 $325.3 $448 $617 $=米ドル 出典: Gartner Inc、PwC による分析 競争に打ち勝つために 21 4 結論 環境の変化により伝統的なビジネスモデルは 見直しを余儀なくされるが、 新しい可能性も開かれる 日本の銀行は岐路に立っている。国内市場における借入需要は鈍化し ているが、日本の銀行には、その資本力やノウハウを活用して、今後 さらに進展していく日本企業のグローバル化を支援したり、海外での新 たな顧客の獲得をするといった新しい成長機会がある。また、人口の 高齢化は、国内の生産高と成長にマイナスの影響を及ぼす一方、投 資ビジネスや資産管理ビジネスにおいて機会の拡大をもたらす。 市場の変化による恩恵を受けるために 銀行の経営陣が考えなくてはならない重 要なポイントとして以下の三つが考えら れる。 主要な顧客層の人口統計的な構成や、 地理的な分布は将来どのようになるか。 変化する顧客層に対していかにして存 在感を示し、顧客対応力や顧客ニーズ に対応した商品ラインアップを確保する のか。 業務範囲の拡大やより複雑で変化の速 い市場の需要に対応するために、銀行 のガバナンス、報告態勢、リスク管理シ ステムはどのように変わらなくてはなら ないか。 前途には非常に大きな M&A の可能性、 戦略の転換や組織再編が待ち受けている。 先行する銀行は、既に実際の行動に出て いて、アジアをはじめとして他の SAAAME 22 銀行業の未来への展望 地域にも存在感を広げ、現地顧客をター ゲットとして、急速に成長する商取引の流 れに乗ろうとしている。また、そうした銀 行は、変化を続ける顧客構成や商品に対 する需要、サービスに対する期待に合わ せてビジネスモデルを変化させてきている。 こうした銀行は、変化するビジネス環境の 中で競争力を維持するために、デリバリー モデル、人材の活用、ビジネスインフラ のあり方を常に考え、必要な投資や組織 改革を行っている。 前途には非常に大きな M&A の可能 性、戦略の転換や組織再編が待ち受 けている。先行する銀行は、既に実 際の行動に出ていて、アジアのみな らず他の SAAAME 地域にも存在感 を広げ、現地顧客をターゲットとして、 急速に成長する商取引の流れに乗ろ うとしている。 競争に打ち勝つために 23 添付資料: SAAAME 市場の概要 各 SAAAME 地域における市場機会と現段階における銀行の業務展開状況 24 銀行業の未来への展望 南米地域 市場の概況 地場の銀行は地域全体で存在感のある存在になろうとし、 またグローバルな銀行も存在感を高めようとしているた め、M&Aが活発に行われている。銀行は、厳格化する規制環境に対応する事業構造やフレームワークを構築するため に、多大な時間と労力、資金を投入している。 潜在的な機会につ ながる現在の動向 海外からの直接投資およびポートフォリオ投資は拡大を続けている。 マクロ経済と政治の改革。 中流層の拡大。 2020年までに2,000億米ドルの輸送部門に対する投資が予定されている25。 債券市場における大幅な成長。 成長および安定性の向上につながる取引条件の改善。 GDPに対する国民貯蓄の大幅な増加。 預金および信用ポートフォリオの拡大。 モバイル・バンキング・ユーザーの数は2010年から2015年までに年率65%で増加し、約1,800万人から約1億4,000 万人になる可能性がある26。 主な課題 法律や規制が十分に整備されていない。 スキルのある労働力が不足している。 保護主義的な経済政策の増加。 経済が減速すると、銀行業務や融資の拡大、手数料収入を低下させる可能性が高い。 事業融資や住宅ローンに関する貸付の低迷。 メキシコ、 チリ、 アルゼンチンの市場では、外資系の存在感が高いが、 その他の地域における銀行市場は、国内銀行お よび国有銀行が市場をおさえている。 潜在的な機会 富裕層に対する投資アドバイスや個人向けのウェルスマネジメントのアドバイスに対するニーズは引き続き増加する。 中南米の富裕層の40%以上はブラジルに住んでいる27。2017年までに、 ブラジルにいる富裕層の数は現在の2倍の 400,000人を超える可能性がある28。 モバイルバンキングのユーザー数は増加傾向にある (図表13参照) 。 この地域には膨大な数の銀行サービスへのアク セス手段を持たない人々がいるため、 モバイルバンキングの普及は、 これらの人々に向けた銀行サービスを提供すること によって高い収益性を実現する機会が存在する。 南アメリカは、 オンライン・バンキング・ユーザーの割合が最も高い地域の一つであり、銀行を標的とした犯罪に対するセ キュリティを強化するとともに、 サイバー攻撃の脅威を防ぐための取り組みを強化している。 日本以外の国際的 な銀行の活動事例 クロスボーダー取引の増加は、 アジア、特に中国の投資家を引き付けている。 ブラジルにおける基盤を確保するため、中 国建設銀行はウェストLBの資産を取得した29。 既に南米に660億米ドルを投資しているサンタンデールは、 アルゼンチン、 ブラジル、 メキシコ、 チリ、 ペルー、 プエルトリコ およびウルグアイにおける銀行サービスの利用を拡大する予定である30。当該地域は、 グループ資産の19%とグループ に帰属する利益の52%を占める31。 図表 13:2012年各国の人口と携帯電話普及率 200 人口 (百万人) 200 150 150 100 100 50 ウル グア イ パナ マ コス タリ カ エル サル バド ル パラ グア イ ホン ジュ ラス ボリ ビア グア テマ ラ エク アド ル チリ ベネ ズエ ラ ペル ー アル ゼン チン コロ ンビ ア メキ シコ 0 ブラ ジル 50 0 人口100人あたりの携帯電話契約者数 250 出典:中南米・カリブ経済委員会、世界銀行 25 LatAM Confidential、2014 年 1 月 27 日 26 ピラミッドリサーチ(マージェントの中南米の銀行セクターに関するレポートにおいて引用されている) 27 スタンダードチャータード銀行、2011 年 6 月 22 日 http://www.reuters.com/article/2011/06/22/wealthreport-merrilllatam-idUSN1E75K1L820110622 28 クレディ・スイス、2012 年 10 月 29 American Banker、2012 年 5 月 18 日 30 2012 年 6 月 27 日のミーティングでのサンタンデール銀行のラテンアメリカ部門長、Jesus Zabalza 氏による。 31 前記と同様 競争に打ち勝つために 25 アフリカ 市場の概況 アフリカは急速に成長を続けており、現在も国際的な買収案件が多数進行中である。2013年前半における、 この地域 内の企業を対象とした合併・買収取引の金額は、158億米ドルに達し、2012年の同時期から86%増加している32。 潜在的機会につな がる現在の動向 海外直接投資の流入の増加。 マクロ経済および政治の改革。 中流層の増加。2060年までに人口の42%にまで拡大することが見込まれる33。 2001年から2010年までの9年間の経済成長率が最も高い10の国と地域のうちの六つがアフリカにある34。 石油の確認埋蔵量の増加35。 世界のプラチナ埋蔵量の95%36。 世界の未開の耕作地の60%37。 インフラ整備の余地が多く残されており、多くの大規模プロジェクトが予定されている。 所得水準の向上、新しい技術、 および急速な都市化により、 多くの人々が金融サービスを利用可能になってきている。 アフリカにおける192の日本企業を対象とした調査では、42%以上の企業で直近の5年間に業績が向上してお り、60%近くの企業が事業拡大や投資を計画している38。 主な課題 いまだに貧困層や未開発地域が多い。図表14に示されるとおり、人間開発指数 (平均寿命、教育、所得に基づく指 標) を基準としてみた場合、世界の最貧国の大部分はアフリカの国々である。 法律および規制が十分に整備されていない。 スキルのある労働力が不足している。 不十分なインフラ。 現地の銀行および外資系銀行の両面からの競争圧力の増大。 アフリカへの進出を強力に推し進めアフリカの最大の貿易相手国となった中国との競争。 潜在的な機会 銀行市場の大部分は未開拓のままである。成年人口のうち正規の銀行に口座を持つ者は全体の4分の1に過ぎず、 ク レジットカードを持っている人は全体の3%しかいない39。 少なくとも名目上は、銀行業界の利益率は高い。ナイジェリアを含む多くの国々における正味の金利利鞘は、8%程度 と高い水準にあるが、 これは南アフリカの約二倍、先進国市場での一般的な水準の約4倍である40。 これは貯蓄水準 が低いことや高いインフレ率の影響によるものである。 日本以外の国際的 な銀行の活動事例 スタンダードチャータード銀行は、 アフリカ大陸の年間1兆米ドルに及ぶ消費支出をベースに利益を得るために、2016 年までにアフリカ全土で100店舗の支店を新規に開設する見通しである。同行は2012年に27の新しい支店を開設 し、 また、向こう4年間にわたってデジタルテクノロジーに 「大幅な投資」 を行うとしている41。 中国銀行は、 アフリカの31カ国で事業を展開するエコバンクと提携した42。 ブラジルのブラデスコおよび国営ブラジル銀行は、 アンゴラで営業を行うポルトガルのエスピリト・サント銀行 (BES) と共 同でアフリカに持株会社の設立をすると発表した43。 図表14:人間開発指数の下位16カ国(2010年) 人間開発指数 1.0 0.8 0.6 0.4 0.379 0.349 0.340 0.328 0.317 0.315 0.309 0.305 0.300 0.295 0.295 0.289 0.282 0.261 0.239 0.2 0.140 ジンバブエ コンゴ ニジェール ブルンディ モザンビーク ギニアビス チャド リベリア ブルキナファソ マリ 中央アフリカ 共和国 シエラ・レオネ エチオピア ギニア アフガニスタン スーダン 0.0 出典:国連開発計画 32 トムソン・ロイターによる「2013 年サハラ砂漠以南のアフリカの投資銀行業分析レポート」 33 アフリカ開発銀行、2012 年 10 月(http://www.afdb.org/blogs/afdb-championing-inclusive-growth-across-africa/post/africa-in-the-next-50-years-9795/) 34 エコノミスト、2011 年 1 月 6 日 35 PwC アフリカによる 2013 年 6 月の石油およびガスに関するレビュー(http://www.pwc.com/en_NG/ng/pdf/pwc-africa-oil-and-gas-review.pdf) 36 スタンダード銀行、2011 年 10 月 6 日 (http://www.standardbank.com/Resources/Downloads/Africa%20Macro_5%20trends%20powering%20Africa’ s%20allure%20(Trend%204-Resources).pdf) 37 エコノミスト、2011 年 12 月 3 日 38 ジェトロによる 2013 年調査 (https://www.jetro.go.jp/en/news/announcement/20140206116-news) 39 エコノミスト誌、2013 年 3 月 2 日 40 FBN ホールディングス・メディア・リリース、2013 年 12 月 31 日 41 ブルームバーグ、2013 年 9 月 12 日 (http://www.bloomberg.com/news/2013-09-12/standard-chartered-sees-strong-africa-retail-prospects-on-growth.html) 42 エコバンクによるメディアリリース、2010 年 2 月 5 日 43 エコノミスト誌、2010 年 9 月 16 日 26 銀行業の未来への展望 アジア 市場の概況 近年、 アジア太平洋地域における資産、 ローンおよび預金の伸びは最近になって減速しており、今後数年間における銀 行の業績に対する懸念が生じている。 しかし、当該地域の経済は世界で最も速く成長しており、革新的な銀行サービスの 提供による事業機会が存在している。 潜在的機会につな がる現在の動向 堅調な海外直接投資の流入 (図表15参照) 。 マクロ経済の変革。 中流層の増加。 インフラ投資の増加。 所得水準の向上、新しい技術、 および急速な都市化により、 多くの人々が金融サービスを利用可能になってきている。 アジア太平洋地域における民間セクターの融資は健全なレベルで成長しており、投資を促進している。 2013年から2017年までにモバイルバンキングは年間8%以上で成長する見込みである44。 アジアのリテールバンキングによる収益は上昇を続ける。 主な課題 法律や規制が十分に整備されていない。 スキルのある労働力が不足している。 現地の銀行および外資系銀行の両面からの競争圧力の増大。 インドおよび中国のような主要経済における保護主義的な政策が、外資系銀行の大幅な拡大の妨げとなる。 地域内で経済成長のあり方が異なることにより、 戦略決定がより困難である。 潜在的機会 アジア太平洋では、香港、 シンガポールおよびインドを中心として、大きな資産残高をもつ個人顧客が急速に増加して いる。 インフラ開発のために、資金調達を含め多くの関連需要が発生する。 アジア太平洋のリテール銀行は、IT開発に対して最も多くの投資を行っている45。 これらの銀行は顧客満足度を向上さ せ、 収益の拡大をはかるため、緊縮予算路線から積極投資路線へと戦略を転換してきている。 ここで重点が置かれてい るのはモバイルバンキングである。 日本以外の国際的 な銀行の活動事例 2009年を除き、 シティバンクはインドにおいて資産を安定的に増加させてきた。過去2年の事業年度における平均成 長率は16%であった。2012年3月末時点において、 シティバンクは42店舗の支店を展開し、7,000人を雇用してい る46。 HSBCは、中国における外資系銀行の業務を先導してきた。同行は、他の外資系銀行に先駆けて金先物取引市場へ の参加、投資信託の販売、双方向のクロスボーダーの元建て融資を行ってきた47。 図表15:海外直接投資純流入額(単位:10億米ドル)2007年∼2011年 983 362 中国 194 163 シンガポール 香港 54 42 インドネシア インド 39 38 ベトナム タイ 17 13 パキスタン マレーシア 11 フィリピン 韓国 8 4 4 バングラディッシュ モンゴル 1 ラオス カンボジア 出典:世界銀行 44 2013 年 8 月に公表されたマージェントのアジア太平洋の銀行セクターに関するレポートにおいて引用されたオーバムリ サーチ。 45 2013 年 8 月に公表されたマージェントのアジア太平洋の銀行セクターに関するレポートにおいて引用されたオーバムリ サーチ。 46 新興国市場に関する洞察:金融セクターインド‐2012 年 11 月 47 金先物‐HSBC ウェブサイト (https://globalconnections.hsbc.com/global/en/tools-data/country-guides/cnmarch-2013/hsbc-in-china)、ミューチュアルファンド‐FT‐2013 年 6 月 26 日、元建て貸借‐ロイター 2013 年 9月6日 競争に打ち勝つために 27 中東 市場の概況 地政学的な要因による問題を抱えながらも、中東は、金融危機による不動産価格暴落の影響からほぼ完全に回復した。 中東地域は、地域金融拠点としてのインフラと名声を再び築いている。数年間の低迷の後、中東におけるM&A、株式売 出、 債券発行は活気を取り戻している。 潜在的機会につな がる現在の動向 依然として主要な石油産出地域である (図表16参照) 。 主要市場における海外純投資の増加。 中流層の増加。 インフラ整備の余地が多く残されており、多くの大規模プロジェクトが予定されている。 所得水準の向上、新しい技術、 および急速な都市化により、 多くの人々が金融サービスを利用可能になってきている。 石油価格の高止まりを背景として、 貿易収支、経常収支とも堅調な状態にあり、大きな投資余力をもっている。 湾岸協力会議 (GCC) 参加国では、 引き続きインフラ投資を中心とした政府による景気刺激策による成長が見込ま れる。 イスラム金融の成長は、2017年までに資産額で2.6兆米ドルにまで達するとの予想もある48。 主な課題 法律および規制が十分に整備されていない。 スキルのある労働力が不足している。 現地の銀行および国際銀行の両面からの競争圧力の増大。 湾岸協力会議参加国以外の地域では根深い地政学的リスクが存在している。 未成熟で複雑な規制環境。 2011年5月、 アラブ首長国連邦 (UAE) の中央銀行は、 リテール銀行業に対する新規制を導入した。 これは、 貸付額お よび手数料を制限するものである。 49 当該地域に政府系ファンドが多く集中 (資産額は約1.7兆米ドル) していることにより、 複雑な金融商品および関連ア ドバイスに対するニーズが高まる。 急速な個人資産の蓄積や富裕層の増大。 この地域には、富裕層の割合が高い上位12カ国のうち5カ国が存在して 50 いる (カタール、 クウェート、 バーレーン、UAE、 オマーン) 。 多くの外資系銀行は中東での業務を縮小しているため、 この地域での投資を継続する銀行にはチャンスがある。 潜在的機会 日本以外の国際的 な銀行の活動事例 昨年、J.P.モルガンはこの地域において、何人かの上級経営者の雇用を行い、 カタールを含む複数の市場でM&A案 件の獲得に成功している。JPモルガンはまた、 サウジアラビアマイニングが2012年の終わりに実施した24億米ドルの イスラム金融による資金調達において非イスラム圏の銀行として唯一の貸手となった51。 バークレイズは各地で人員削減を行ったが、中東の投資銀行部門で100人を雇用することを計画し、今年度において 10%の成長を見込んでいる52。 400 300 265 211 200 137 100 115 102 98 77 46 40 48 イスラム金融、価値形成、PwC、2013 年 7 月 (http://www.pwc.com/m1/en/publications/islamic_finance_capability_statement.pdf) 49 Sovereign Wealth Fund Institute によるランキング、2014 年 2 月 14 日ウェブサイトより (http://www.swfinstitute.org/fund-rankings/) 50 グローバルウェルス 2013:複雑な世界における勢力の維持、BCG、2013 年 5 月 51 ロイター、2013 年 1 月 2 日 52 ブルームバーグ、2013 年 3 月 4 日 28 銀行業の未来への展望 31 米国 注:生産残存年数は確定石油埋蔵量/年間生産量で計算されている。 32 カナダ 出典: 2011 年 BP 世界エネルギー統計調査; SWF インスティテュート、ナイト・フランク、ブルームバーグ、PwC による分析 37 ナイジェリア カザフスタン リビア ロシア連邦 アラブ 首長国連邦 クウェート イラク イラン ベネズエラ 0 サウジ アラビア 確定石油埋蔵量 (単位:10億バレル) 図表 16:石油の確認埋蔵量の上位 12カ国(単位:10億バレル)、2010年 添付資料: プロジェクトブルー 下の表に示されているプロジェクトブルーのフレームワーク(www.pwc.com/projectblue)では、現在の 不安定な状況に適応するために必要となる要素が基礎となっている。その上で、金融機関が今後の変化に 対処し、さらには変化をチャンスに変えていくために何をやるべきかについて検討を加えていく流れとなって いる。 適応 計画 私たちの顧客は、現在起きている変化 が、例えば次の質問にあるように、自身の ビジネスにどのような影響を及ぼし、どの ように対応していくかを判断するために、 当該フレームワークを用いている。この新 しい状況において、現在の事業モデルや 経営モデルはいまだに有効だろうか。どの ような自社の強みが、競争優位の確立に つながるのか。将来の変化に備えるため に、今いなくてはいけない人材はどのよう な人で、今投資しなくてはならないことは 何か。 図表 17:プロジェクトブルーのフレームワークと銀行業界への影響 プロジェクトブルーのフレームワーク 私たちの主な検討事項の一つは、これ らの状況の変化が既存のビジネスモデル に対してどの程度の影響を与えるかという ことである。また、これらのトレンドが互 いにどのように作用するかについても検討 している。例えば、日本のような先進国に おける労働年齢人口の縮小によって、成 長率の高い新興国への生産と投資のシフ トがどの程度促進されるかといったことに ついて考察を加えた。 世界的な変化 規制環境 財政的負担 人口構造の変化 人口増加ペースの違い 高齢化 家族構成の変化 信念 技術革新 金融サービス業に影響 を与える複雑な革新 デジタル/モバイル 技術/科学的な研究開発/ イノベーション 社会と行動様式の変化 都市化 グローバルな人の移動 人材 顧客行動の変化̶ ソーシャルメディア 金融機関に対する態度 新興国市場の台頭と 相互依存関係の深化 (SAAAME) 経済的な強み 貿易 海外直接投資 資本収支 資源の分配 人口 国家が影響力をもつ 資本主義の台頭 国家の介入 国/都市の経済戦略 投資戦略 ソブリンウェルスファンド/ 開発銀行 石油/天然ガス / 化石燃料 食糧/水 重要なコモディティー 生態系 気候変動/サステナビリティ 天然資源に対する争奪 政治的・社会的混乱 出典:PwC Project Blue 競争に打ち勝つために 29 お問い合わせ先 本報告書で挙げられた事項について詳細な協議をご希望の方は、貴社の PwC 担当者または下記までにご 連絡下さい。 近江 惠吾 Trevor Tisseverasinghe パートナー [email protected] 080 3351 8628 パートナー [email protected] 080 3520 5224 佐々木 貴司 大木 一昭 パートナー [email protected] 090 6490 9333 パートナー [email protected] 090 6486 5332 伊藤 嘉昭 古明地 正寛 パートナー [email protected] 090 6486 2845 パートナー [email protected] 090 4137 5649 丸山 琢永 足立 晋 パートナー [email protected] 090 6491 4397 パートナー [email protected] 090 1653 7956 村 和之 パートナー [email protected] 090 6045 9165 田中 玲 パートナー [email protected] 090 7680 2652 高木 宏 パートナー [email protected] 03 5251 2400 30 銀行業の未来への展望 www.pwc.com/jp PwC は、世界 157 カ国 に及ぶグローバルネットワークに 184,000 人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスの提供を通じて、企業・団体や個人の価 値創造を支援しています。詳細は www.pwc.com/jp をご覧ください。 PwC Japan は、あらた監査法人、京都監査法人、プライスウォーターハウスクーパース株式会社、税理士法人プライスウォーターハウスクーパースおよびそれらの関連会社の総称です。 各法人は PwC グローバルネットワークの日本におけるメンバーファーム、またはその指定子会社であり、それぞれ独立した別法人として業務を行っています。 本報告書は、PwC メンバーファームが 2014 年 3 月発行した『Survival and success: Securing the future for Japanese banks』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しており ますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。 電子版はこちらからダウンロードできます。 www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/report.jhtml オリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/gx/en/Banking-capital-markets/publications/index.jhtml 日本語版発刊年:2014 年 8 月 管理番号:I201405-1 © 2014 PwC. 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