平成19年度および平成20年度の 総合的財政貢献調査 Total Tax Contribution 2009 www.pwc.com/jp/tax
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平成19年度および平成20年度の 総合的財政貢献調査 Total Tax Contribution 2009 www.pwc.com/jp/tax
www.pwc.com/jp/tax 平成19年度および平成20年度の 総合的財政貢献調査 Total Tax Contribution 2009 日本企業が負担・徴収する税 金および社会保険料等の公的 負担の実額を把握し、産業別 および国際比較をしたPwC調 査報告書。今後の制度改正を議 論する上で不可欠となる公的 負担実証分析の第一回調査。 平成19年度および平成20年度の総合的財政貢献調査 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 目次 第一章 はじめに 1 第二章 Executive summary 2 第三章 総合的財政貢献調査(Total Tax Contribution survey) のフレームワーク 7 負担税目と徴収税目 7 総合的財政貢献(Total Tax Contribution) 7 総合的公的負担率(Total Tax Rate) 7 第四章 平成19年度、平成20年度調査の実施方法 9 第五章 平成19年度、20年度の調査結果 調査への参加と回答状況 14 14 15 調査対象企業が回答した負担税目と徴収税目 税務コンプライアンスコスト 15 総合的財政貢献額 (Total Tax Contribution) 16 負担税目 16 徴収税目 20 地方税 21 分配価値に占める総合的財政貢献の割合 22 総合的財政貢献の国内売上に対する割合 26 雇用に係る公的負担 27 総合的な公的負担率(Total Tax Rate)の平成19年、 平成20年合算ベースでの分析 29 第六章 産業比較 32 第七章 平成19年度と平成20年度の推移 36 第八章 税務コンプライアンスコスト 39 第九章 国際比較 46 表 1 対象税目一覧 10 図 2 調査対象企業の産業別構成 14 表 3 調査対象企業の売上等の概要 15 表 4 調査対象企業の総合的財政貢献額 16 表 5 調査対象企業の主な負担税目の合計額と政府等の歳入金額 17 図 6 調査対象企業の負担税目に占める法人税等の割合 18 図 7 法人税、社会保険料事業主負担分、固定資産税の増減 19 表 8 調査対象企業の主な徴収税目の合計額と政府等の歳入金額 20 図 9 総合的財政貢献額に占める国税と地方税の構成(平成20年度) 21 図 10 分配価値に占める総合的財政貢献額の割合 23 図 11 平成19年度、平成20年度の調査対象企業における総合的な 公的負担率の内訳 25 図 12 平成19年度、平成20年度の調査対象企業における総合的な 公的負担率の分布 25 図 13 平成19年度、平成20年度の総合的な公的負担の 売上高に対する割合の分布 26 表 14 調査対象企業の従業員数と給与総額 27 表 15 調査対象企業の雇用に係る公的負担の総額 27 表 16 従業員一人当たりの雇用に係る公的負担 28 表 17 給与総額に対する雇用に係る公的負担の比率 28 図 18 雇用に係る公的負担の構成(従業員一人当たり) 29 表 19 総合的な公的負担率 (平成19年度および平成20年度の基礎データを合算) 30 図 20 法人税実負担率、狭義の公的負担率、 総合的な公的負担率(全体) 31 図 21 総合的な公的負担率の国税と地方税の構成 31 図 22 平成20年度の調査対象企業の総合的財政貢献額の割合 32 表 23 産業別財務指標の平成19年度と平成20年度の推移 (合算ベース) 34 表 24 産業別の総合的財政貢献額 34 図 25 調査対象企業の製造業、卸・小売業ならびに 電力・ガス・情報通信の総合的な公的負担率の税目構成 35 図 26 35 調査対象企業の総合的な公的負担率(産業比較) 図 27 産業別の法人税実負担率、狭義の公的負担率、 総合的な公的負担率 35 表 28 回答企業の財務データの合計額の推移 36 表 29 主要負担税目および負担税目合計額の推移 37 表 30 主要地方税目の合計額の推移 37 表 31 主要徴収税目の合計額の推移 38 図 32 税務部門の人数の分布 39 図 33 コンプライアンス活動に要する年間延べ日数 -税務部門および非税務部門の構成 40 図 34 コンプライアンス活動に要する税務部門および 非税務部門の年間延べ日数-税目別構成 41 図 35 コンプライアンス活動に要する税務部門の年間延べ日数 -税目別構成 41 図 36 コンプライアンス活動に要する非税務部門の年間延べ日数 -税目別構成 42 図 37 コンプライアンスコストの税目別構成 43 表 38 法人税等の税務コンプライアンスコストの内訳 (一社当たり平均) 43 図 39 国際税務費用の構成 44 図 40 調査対象企業が負担に感じている項目 45 図 41 総合的な公的負担率の国際比較 47 図 42 法人税実負担率、狭義の公的負担率、 総合的な公的負担率の国際比較 48 図 43 雇用に係る税の国際比較 48 図 44 製造業の総合的な公的負担率(国際比較) 49 図 45 製造業の負担税目構成(国際比較) 50 図 46 各国の税務コンプライアンスコスト・人数比較 50 第一章 はじめに 本調査は、PricewaterhouseCoopers 企業の租税および社会保険料負担の実態 LLP (PwC イギリス) が開発し、イギ を把握するために行った第1回調査であ リス、アメリカ等の海外9カ国ですでに る。企業の事業活動に伴い発生する租税 実施した総合的財政貢献調査(Total や社会保険料等の企業の公的負担は、企 Tax Contribution Survey)と同様の手 業の国際競争力や企業立地選択等に影響 法を用いて、税理士法人プライスウォー を与えると考えられるが、従来、国内外 ターハウスクーパースが平成22年1月か の公的負担水準については制度比較によ ら2月にかけて実施したものである。経 る実効税率等により議論されてきた。本 済産業省産業政策局企業行動課の委託事 調査は、企業が事業活動を行う上で実際 業として、日本経済団体連合会(日本経 に負担している税金等の公的負担の全体 団連)の協力のもと、各業界で日本を代 像を明らかにし、同様の調査手法により 表する38企業グループ、95社の参加を 把握された諸外国の企業の公的負担と比 得た。 較しようとする実証分析である。 本調査は平成19年度(2008年3月期) および平成20年度(2009年3月期)の 2010 Total Tax Contribution 1 第二章 Executive summary 調査の目的 ‒‒ 総合的公的負担率(Total Tax Rate) とは、税引前利益(負担税目調整後) ‒‒ 本調査の目的は、日本の大企業の租税 および社会保険料負担を実額で把握す に対する負担税目総額の占める割合と して計算される。 ることにより公的負担の全体像を明ら かにし、同様の調査手法によって行わ れた諸外国のデータと比較可能な実証 データを提供することにより、今後の 税制改正の議論等、多角的分析に役立 てることである。 総合的財政貢献調査(Total Tax Contribution Survey)のフレー ムワーク ‒‒ 本調査では、企業に関連する全ての公 的負担を「負担税目」と「徴収税目」 に区分する。負担税目は、企業が直接 的な費用として負担し、純利益に影響 を与える公的負担項目であり、徴収税 目は、企業が実質的には税務当局の代 理機関として徴収する公的負担項目で ある。 ‒‒ 本調査は、経済産業省および日本経団 連による本調査への参加呼びかけに応 じた38企業グループ95社(以下、「調 査対象企業」)を対象に、電子的に作 成された質問票を電子メールで送付 し、記入された質問票を電子メールで 返信を受ける方法により実施された。 ‒‒ 調査対象企業には、日本の株式時価総 額上位50社のうち28社が含まれ、調 査対象企業の平成20年度の国内売上総 額は125兆5,868億円、従業員数 1,058,752人である。 ‒‒ 質問票において対象とした日本の租税 および社会保険料は54税目である。 ‒‒ 負担税目および徴収税目について把握 ‒‒ 調査対象企業の回答において、実際に納 された金額の合計額を「総合的財政貢 税を行っている負担税目の数は平成20年 献額(Total Tax Contribution)」と 度の各社平均で15.4税目であった。また 定義する。 徴収税目の数は平均で6.5税目であった。 ‒‒ 法人税負担額は、利子・配当等の源泉徴 収および外国税額控除後の日本国内で の法人税支払額である。 2 Total Tax Contribution 2010 平成19年度、平成20年度調査の 実施方法および回答状況 平成19年度、平成20年度の調査結果 主要な検出事項 負担税目 ‒‒ 調査対象企業が平成19年度に納税した 調査の結果、以下の特筆すべき検出事項 負担税目の合計額は、4兆6,874億 が挙げられる。 円、平成20年度は3兆9,863億円であ ‒‒ 調 査 対 象 企 業 ( 3 8 企 業 グ ル ー プ 9 5 社)の税金ならびに社会保険料事業主 負担分、および徴収税目の平成19年度 の合計額(総合的財政貢献額)は、7 兆9,933億円であった。これは政府等 の歳入金額の5.4%を占めている。 ‒‒ 調査対象企業の総合的な公的負担率は 50.4% 1であり、世界的に見てもベルギー に次いで高い負担率となっている。 ‒‒ 調査対象企業の総合的財政貢献額の合 計額が付加価値総額に占める割合は、 平成19年度の39.7%から、企業業績が 悪化した平成20年度は47.7%へ上昇し ており、租税等が企業にとって固定的 な負担であることを示唆している。 り、平成19年度に納税した負担税目の 合計額が平成19年度の政府の税収入な らびに社会保険料に占める割合は3.2% であった。特に、法人税、法人住民 税、事業税は、これらの税目の税収の 10%強を95社で担っている実情が明ら かとなった。 ‒‒ 調査対象企業の納付額は平成19年度か ら平成20年度にかけて大きく減少して いるにもかかわらず、政府法人税収に 占める割合は、平成19年度は10.4%、平 成20年度では9.5%と安定的であった。 ‒‒ 法人税等(法人税、法人住民税、法人 事業税所得割)が負担税目の合計額に 占める割合は平成20年度において 44.1%であり、多くの調査対象企業に おいて最大の負担税目となっている。 総合的財政貢献額 (Total Tax Contribution) 徴収税目 ‒‒ 調査対象企業の総合的財政貢献額の合 ‒‒ 調査対象企業の徴収税目合計額は、平 計額は、平成19年度は7兆9,933億 成19年度は3兆3,058億円、平成20年 円、平成20年度は7兆1,794億円であ 度は3兆1,931億円であった。最も金 った。これは平成19年度の政府等の歳 額が大きい税目は揮発油税であり、社 入金額の5.4%を占めている。平成19 会保険料従業員負担分と給与等源泉所 年度から20年度にかけての減少の主た 得税がこれに次ぐ金額であった。 る要因は法人税等の減少(7,559億 円)である。 1 ‒‒ 揮発油税について回答があった企業4社 の合計額は、当該税目の政府税収の約 調査対象企業の平成19年度と平成20年度の合算データの単純平均値 2010 Total Tax Contribution 3 68%を占めており、徴収負担が特定の企 業に集中する実態が明らかとなった。 分配価値に占める総合的財政貢 献の割合 ‒‒ 調査対象企業の税引後純利益、純支払 利子、給与総額と総合的財政貢献額 (負担税目と徴収税目の合計額)の 合計を企業が生み出す付加価値総額 と認識し、給与総額の付加価値総額に 対する割合を労働分配率とした場合、 労働分配率は利益の減少の一方、給与 分と、徴収税目のうち給与等源泉所得 税、特別徴収住民税および社会保険料 従業員負担分との合計を、雇用に係る 公的負担とした場合、従業員一人当た りの雇用に係る公的負担の平均値は平 成19年度は2,607,441円、平成20年 度は2,650,864円とほぼ横ばいで推移 している。 平成19年度、平成20年度の合算 ベースでの分析 総額はほぼ横ばいであったため、平成 ‒‒ 平成20年度の総合的な公的負担率は、 19年度は31.8%、平成20年度は42.2% 企業業績の悪化による税引前純損益の に上昇している。 悪化と、現金主義による法人税等の負 ‒‒ 総合的財政貢献額の付加価値総額に占 める割合を公共分配率とした場合、公 共分配率は平成19年度の39.7%から平 成20年度は47.6%に上昇している。 総合的な公的負担率 (Total Tax Rate) ‒‒ 調 査 対 象 企 業 の 総 合 的 な 公 的 負 担 率 (Total Tax Rate)の平均値は、企業 業績の悪化を反映し平成19年度の 41.6%から平成20年度は58.2%と大幅 に上昇している。 雇用に係る公的負担 ‒‒ 調査対象企業の社会保険料事業主負担 分の平成19年度の合計額は1兆301億 円であり、平成19年度の社会保険料事 業主負担分の政府等の歳入金額の約 3.8%を占めている。 4 Total Tax Contribution 2010 ‒‒ 負担税目のうち社会保険料事業主負担 担額の把握の影響を受け、全体的に高 くなっている。このような影響を緩和 し、平成19年度と平成20年度の平準化 を図るため、両年度の基礎データを合算 した上で総合的な公的負担率を求めた。 ‒‒ 損失を計上している企業グループ、総 合的な公的負担率がマイナスである企 業グループおよび100%を超過した企 業グループを除く29企業グループの総 合的な公的負担率の単純平均は50.4% となった。 産業比較 ‒‒ 調査対象38企業グループを3つの大分 類(製造、卸・小売、電力・ガス・情 報通信)および8つの産業分類(自動 車、化学・製薬、電力・ガス・情報通 信、機械、鉄鋼・金属、石油・ガス、 小売、商社)に区分して分析を行っ た。 ‒‒ 電力・ガス・情報通信事業に属する企 業グループ(4企業グループ)は、調 査対象企業(38企業グループ)の平成 20年度の総合的財政貢献額の35.6%を 占めている。比較的安定した企業業績 と固定資産税等、電源開発促進税等の 固定的な負担税目が特徴であり、総合 的な公的負担率は66.5%であった。 ‒‒ 石油・ガス事業では徴収税目が負担税 目を大きく上回っており、徴収税目の 総額は1兆5,643億円である。そのほ とんどが揮発油税を中心とする石油関 連諸税である。 ‒‒ 商社の総合的な公的負担率が低く、特 に法人税等の負担割合が低いことが挙 げられる。商社ではその他の負担税目 合計の占める比率が高いが、そのほと んど(98%)は関税である。 務費用の52%は移転価格税制に費やさ れている。 ‒‒ 税務コンプライアンス活動につき、調 査対象企業が負担に感じている項目を 3つ選択する質問を行ったが、上位項 目は、税務調査対応、法人税の申告調 整および法人税申告書の添付書類作成 であった。 国際比較 ‒‒ 国際比較データとして、PwCが先行調 査を行っている9カ国の総合的財政貢 献調査の結果を用いている。 ‒‒ 先行調査を行っている9カ国と比較し て、日本の総合的な公的負担率はベル ギーに次ぐ高水準となっている。 ‒‒ 日本とアメリカは法人税の表面実効税 率が40%台でほぼ同じという認識があ 税務コンプライアンスコスト ‒‒ 調査対象企業の税務部門の人数の平均 値は15.5人、中位値は8人であった。 税務部門および非税務部門において、 従業員が国際税務・国内税務に携わる 年間延べ日数の合計値を、年間一人当 たりの労働日数を240日と仮定して除 し、一社当たりの平均値を求めると、 国内税務に延べ8人(有効回答87社)、 国際税務に延べ2人(有効回答70社) が携わっている結果となった。 るが、本調査において、日本の法人税 実負担率、狭義の公的負担率、総合的 な公的負担率はいずれもイギリスやア メリカと比較した場合8%前後高くなっ ている。 ‒‒ 産業別分析において、製造業の総合的 な公的負担率について国際比較を行っ た場合、日本は47.9%でありベルギー に次いで高水準であり、アメリカと比 較して約10%、インドと比較すると約 25%高くなっている。 ‒‒ 税務コンプライアンスコストの平均値 の内訳をみると、国内税務に1億 1,677万円、国際税務に4,430万円が 費やされているが、そのうち55%が法 人税等の管理コストであった。国際税 2010 Total Tax Contribution 5 6 Total Tax Contribution 2010 第三章 総合的財政貢献調査 (Total Tax Contribution survey) のフレームワーク 負担税目と徴収税目 PwCが主要各国で実施している総合的 総合的財政貢献 (Total Tax Contribution) 財政貢献調査(Total Tax Contribution 負担税目に係る納付額および徴収税目 Survey)で採用されているフレームワー に係る徴収額の合計額を、総合的財政貢 クでは、企業に関連する租税負担を「負 献額と定義し、企業活動から生み出され 担税目」と「徴収税目」に区分する。負 る付加価値の総額に対する割合等の分析 担税目は、企業が直接的な費用として負 に用いる。 担し、純利益に影響を与える税目を言 う。徴収税目は、企業が実質的には税務 当局の代理機関として徴収する税であ り、原則として支出の際に費用負担(た だし徴収・管理に係る事務的費用を除 く)が生じないものを言う。企業にとっ ての徴収税目の意味は、その企業の経済 活動がなければ創出されない税収である という側面と、徴収納付に係る事務コス 総合的公的負担率 (Total Tax Rate) 総合的な公的負担率とは、ある事業年 度における税引前純利益(負担税目調整 後)に対する、当該事業年度に支出した 企業の負担税目の総額が占める割合とし て計算される。 ト、ビジネスのキャッシュフローに与え る影響、徴収漏れが生じた場合の税務リ スク等を徴収義務者として抱えるという 側面がある。 2010 Total Tax Contribution 7 企業の負担税目の総額 総合的な公的負担率 税引前純損益 分母の税引前純損益に対する調整は、 税、住民税および事業税に関して前年度 税引前純損益の計算上費用処理されてい の確定申告納付額および当年度の中間納 る負担税目(たとえば租税公課勘定に含 付額が当年度分の負担額として把握され まれる固定資産税等)の額を足し戻すと ることになり、税引前純損益の動向と法 いう考え方に基づいているが、調整する 人税等の納付額が一事業年度分の「期ず 負担税目額は現金主義で把握された金額 れ」を生じることに留意する必要があ であるため、会計上の数値を用いた分析 る。なお、前年納付した法人税等が還付 とは異なる。 された場合には負担額のマイナスとして 本調査においては企業の負担税目につ いて現金主義で把握しているため、法人 8 Total Tax Contribution 2010 (企業の負担税目の総額−法人税・ 住民税・事業税所得割) 把握している。 第四章 平成19年度、平成20年度 調査の実施方法 経済産業省および日本経団連の呼びか 本調査は調査対象企業に対して電子的 けに応じて参加意思表示を行った調査対 に作成された質問票を送付し、これに記 象企業は38企業グループ、95社であっ 入をしてもらう方法で行った。平成22 た。企業グループの一体的運営の進展を 年1月13日に質問票を電子メールで一斉 踏まえると、連結会計ベースでのグルー 配信を行い、回答期限である同年2月末 プ全体の公的負担を把握できることが望 日までに全調査対象企業の質問票が電子 ましいが、日本企業の広範囲に及ぶ資本 メールにより返信された。税理士法人プ 結合関係の特殊性も考慮し、親会社を中 ライスウォーターハウスクーパースは入 心として、企業グループの動向が把握で 手した質問票の回答に記載されたデータ きる範囲(例:連結子会社や財務諸表上 を匿名化し統計的に分析した。分析の過 の関係子会社のうち国内主要企業)で実 程において、企業から提供された質問票 施することとした。本調査では、子会社 の回答データの正確性について検証する や関連会社からのデータの協力を得た場 作業は行っていない。 合には、当該会社の平成19年度および 20年度の売上高がともに親企業の売上 高の15%未満の場合には、親会社のデー 調査の対象とした日本の租税および社 2 会保険料は次に掲げる54税目である 。 タに合算している。 2 社会保険料については、表では区分表示されているが、従業員負担分と事業主負担分は区 分しない。ただし、労働保険料(労災および雇用)は申告方法が異なるため健康保険・厚 生年金保険料とは別の税目としてカウントしている。また表では区分表記されているが、 控除対象外消費税を消費税に含めて1税目とし、同様に核燃料税、核燃料等取扱税および 核燃料物質等取扱税もまとめて1税目としている。 2010 Total Tax Contribution 9 表 1 対象税目一覧 利益にかかる税(Profit Tax) 負担税目 法人税 ✔ 事業税所得割 ✔ 市町村住民税 ✔ 都道府県住民税 ✔ 徴収税目 道府県民税配当割 ✔ 道府県民税利子割 ✔ 源泉徴収所得税(給与以外) ✔ 臨時特例企業税 ✔ 鉱産税 ✔ 資産にかかる税(Property Tax) 自動車取得税 ✔ 自動車税 ✔ 自動車重量税 ✔ 事業所税 ✔ 共同施設税 ✔ 固定資産税 ✔ 宅地開発税 ✔ 軽自動車税 ✔ 鉱区税 ✔ 不動産取得税 ✔ 特別土地保有税 ✔ 印紙税 ✔ とん税および特別とん税 ✔ 別荘等所有税 ✔ 水利地益税 ✔ 雇用にかかる税(People tax) 給与等源泉所得税 ✔ 特別徴収住民税 ✔ 社会保険料事業主負担分 社会保険料従業員負担分 10 Total Tax Contribution 2010 ✔ ✔ 生産活動にかかる税(Product tax) 負担税目 消費税および地方消費税 徴収税目 ✔ 控除対象外消費税 ✔ 揮発油税および地方揮発油税 ✔ ✔ 石油ガス税 ✔ ✔ 石油石炭税 ✔ ✔ 航空機燃料税 ✔ 軽油引取税 ✔ ✔ 石油価格調整税 ✔ ✔ 酒税 ✔ たばこ税および特別たばこ税 ✔ 道府県たばこ税 ✔ 市町村たばこ税 ✔ 関税 ✔ 電源開発促進税 ✔ 狭小住戸集合住宅税 ✔ ゴルフ場利用税 ✔ 事業税外形標準(資本割および付加価値割) ✔ 登録免許税 ✔ 宿泊税 ✔ 入湯税 ✔ 環境税(Planet tax) 核燃料税 ✔ 核燃料等取扱税 ✔ 核燃料物質等取扱税 ✔ 使用済核燃料税 ✔ 産業廃棄物税 ✔ 砂利等採取税 ✔ 乗鞍環境保全税 ✔ ✔ 環境協力税 ✔ ✔ 歴史と文化の環境税 ✔ ✔ ✔ 2010 Total Tax Contribution 11 税務コンプライアンスコストの調査に び当該活動に関する外部委託費用等につ 際しては、以下のように国内税務コンプ いての定量データの提供と、企業の負担 ライアンス活動の定義を明らかにし、例 となっている税務コンプライアンス活動 を示した上で、当該活動を担当する税務 に関する定性的な質問についての回答を求 部門ならびに非税務部門の担当人員およ めた。 税務コンプライアンス・コストの調査に関する事項 [1] 税務部門と非税務部門 (1) 税務部門とは、名称にかかわらず、その企業における税務を専門として担当する従業員が所属する部門、課、グループ 等をいう。 ただし、財務部や経理部の中に税務課ないし税務グループが設置されているような場合には、当該財務部や経理部のよ うな、より大きな部門全体をもって税務部門として回答することも可能とした。 (2) 非税務部門とは、税務部門以外の部門で、税金(社会保険料を含む)の申告、納付、徴収等に関与している従業員が属 する事業部、部門、課、グループ等をいう。税務コンプライアンスにかかわる非税務部門としては、たとえば、源泉所 得税・社会保険料の計算、申告事務を扱う人事部門、通関業者を介して関税および輸入消費税の申告を担当している各 事業部や調達部門、法人税におけるタックスヘイブン対策税制や間接外国税額控除の別表作成のために海外子会社から 情報を収集する国際事業部、税務コンプライアンスに関連するアプリケーション・システムの保守・変更等を行うIT部 門等がある。 [2] 外部委託費用等 外部委託費用(顧問税理士、会計事務所、システム提供者等に対する支出)がある場合には、対象事業年度において費用計上 した金額の回答を求めた。給与計算システム等を自社開発し(市販ソフトのカスタマイズを含む)、開発コストを固定資産に 計上している場合は、開発に係る日数の集計に替えて、年間の減価償却費を記入することも可としている。 [3] 国内税務コンプライアンス活動に該当するもの(例示) 各税目共通 申告書作成の基礎資料とする目的または税法が求める要件を満たす目的のため、税務目的の記録を作成、管理すること 申告書を作成するために必要な情報を収集すること 申告書等の作成、提出 納付書の作成、チェック 納税 税務当局からの質問への対応 税務調査対応 修正申告書または更正の請求書の作成、提出 異議申し立て、訴訟の提議を決定すること 個別事項に関する当局への照会 税制改正にキャッチアップ・対応するための諸活動(ITシステムの変更を含む) 税法の規定や申告書作成方法に関して社内または社外で行われるスタッフのトレーニング 12 Total Tax Contribution 2010 法人税 法人税課税所得の計算(貸倒引当金繰入限度額の計算等) 連結納税のために必要な計算 *年度決算において繰延税金資産および未払法人税等の見積計算にあたって、年度の課税所得の見積計算を行っている場 合、その作業結果が実質的に法人税確定申告書の根拠資料として利用されるときは、年度決算における当該見積計算のた めに費やした時間も税務コンプライアンス活動に該当するものとする。ただし、繰延税金資産の回収可能性の判定のため に費やした時間等、純粋に財務会計目的のために費やした時間は除外する。 消費税 消費税の課税非課税の判定 月次等で行う、消費税勘定(仮受消費税、仮払消費税)と対応する売上・仕入勘定の検証 雇用に係る税(従業員の源泉所得税、特別徴収住民税および社会保険料) 給与計算ソフトの調達・開発・変更・メンテナンス 従業員に交付する給与支払明細書の作成 年末調整 法定調書の作成、提出 社会保険料に関する申告書等の作成、提出 海外出向従業員等のための諸手続き 印紙税 印紙の購入 固定資産税 償却資産申告書の作成 税務コンプライアンス活動に該当しないもの 外国の税法により要求される申告書、届出書等の作成 企業買収の際に行われる買収リスク評価 タックスプランニング 関係会社に対する税務アドバイス(当該関係会社が対価を支払う場合、当該関係会社において税務コンプライアンス・コス トが発生する) 税務部門管理職による部門管理等の間接業務 [4] 国際税務コンプライアンス活動に該当するもの(例示) 非居住者に対する利子・配当・使用料等の支払に関する租税条約の規定の確認や租税条約届出書の作成、提出 海外の事業活動に関して日本の法人税等の申告書を作成するために必要な情報を収集すること(タックスヘイブン税制、外国 税額控除関連情報など。海外における申告を除く) タックスヘイブン税制に関する合算所得の計算、適用除外要件の検討、別表作成 移転価格税制に関して、日本の法人税の観点から行う、移転価格ポリシー、経済分析、契約書等の文書化、APAの取得 移転価格に特化した税務調査への対応 外国税額控除に関する申告書基礎データの収集、計算、別表作成 2010 Total Tax Contribution 13 第五章 平成19年度、20年度の調査結果 調査への参加と回答状況 調査対象企業38企業グループは、自動 車、化学・製薬、電力・ガス・情報通 調査対象企業には、日本の株式時価総 信、機械、鉄鋼・金属、石油・ガス、小 額上位50社のうち28社が含まれてお 売、商社に分類される幅広い業種を含ん り、平成20年度の総売上高は125兆 でいる。業種の分類は、国際的な比較可 5,868億円、従業員数 は1,058,752人、 能性に配慮した上で、データの匿名性を 総合的財政貢献額は7兆1,794億円、政 保持するために必要な企業数を考慮し上 府歳入に占める割合は5.4%であり、調査 記8分類にまとめている。 3 結果は日本の大企業の公的負担を分析す る上で有効なデータとなったと考える。 また、本調査では、調査対象企業の売 上高、税引前純損益、従業員数 、給与総 額、純支払利子額を把握した。 図 2 調査対象企業の産業別構成(数値は38回答企業グループ数の内訳) 商社 5 自動車 3 化学・製薬 7 小売 3 石油・ガス 3 38企業 グループ 電力・ガス・ 情報通信 4 鉄鋼・金属 5 機械 8 3 14 Total Tax Contribution 2010 国内で従事する正社員および就労時間が正社員と同様な従業員を指す。ただし、便宜的に 本調査では、法人住民税の分割基準として把握される従業員の数に基づく。 表 3 調査対象企業の売上等の概要 平成19年度 売上高 平成20年度 134 兆 7,943 億円 125 兆 5,868 億円 7 兆 9,560 億円 2 兆 9,669 億円 従業員数 1,046,420 人 1,058,752 人 給与総額 8 兆 1,136 億円 8 兆 1,013 億円 支払利息 7,774 億円 7,464 億円 受取利息 4,857 億円 4,231億円 税引前純損益 調査対象企業が回答した負担税 目と徴収税目 税務コンプライアンスコスト 調査対象企業95社中、92社(96.8%) 広範な税目を対照とした本調査におい が税務コンプライアンスコストについて ては、調査対象税目の多くが税務部門に 回答している。調査対象企業に対して、 おいて集中的に管理されていない税目で 税務コンプライアンス活動に要する税務 あった。このため、調査対象企業がそれ 部門および非税務部門における担当者数 ぞれの方法によって、各事業部、各事業 および費用の回答を依頼したが、多く企 所等から関連データの収集を行った。結 業では税務コンプライアンス活動に携わ 果として、実際に納税を行っていると回 った人数および日数を正確に把握するこ 答した負担税目の数は平成20年度の各 とは不可能であり、推計による回答がみ 社平均で15.4税目であった。平均値は平 られた。特に、非税務部門の人数を回答 成19年度と平成20年度で大きく増減し した企業は70社にとどまり、把握がよ ていない。 り困難であったことが伺える。 調査対象企業が納税している徴収税目 の数は、平均で6.5税目である。平均値 は平成19年度と平成20年度で大きく変 化をしていない。 2010 Total Tax Contribution 15 平成19年度の95社の総合的財政貢献額 は、政府歳入の5.4%を占めている。 総合的財政貢献額 (Total Tax Contribution) (約10.18%減)が、減少の主たる原因 は、法人税等の納付額が全体で7,559億 円減少していることである。 負担税目と徴収税目の金額の合計であ る総合的財政貢献額について、調査対象 企業の合計額は、平成19年度は7兆 9,933億円、平成20年度は7兆1,794億 円であった。これは平成19年度の政府 等の歳入金額の5.4%を占めている。総合 的財政貢献額は、平成19年度から平成 本調査の調査対象企業95社は、日本の 法人数約259万社の0.0037%に過ぎない が、日本政府の歳入の5.4%(平成19年 度)の貢献をしており、数少ない大企業 が日本の財政に貢献している割合は高い と言える。 20年度にかけて8,139億円減少している 表 4 調査対象企業の総合的財政貢献額 平成19年度 平成20年度 法人税等 2 兆 5,925 億円 1 兆 8,366 億円 その他 2 兆 0,949 億円 2 兆 1,497 億円 小計 4 兆 6,874 億円 3 兆 9,863 億円 徴収税目 3 兆 3,058 億円 3 兆 1,931 億円 総合的財政貢献額 7 兆 9,932 億円 7 兆 1,794 億円 日本政府歳入合計 148 兆 1,591 億円 4 −5 5.4% − 負担税目 総合的財政貢献額の歳入に占める割合 負担税目 平成20年度は3兆9,863億円であり、平 成19年度に納税した負担税目の合計額が 調査対象企業が平成19年度に納税した 負担税目の合計額は、4兆6,874億円、 16 Total Tax Contribution 2010 平成19年度の政府の社会保険料ならびに 税収入に占める割合は3.2%であった。 4 日本政府歳入合計は、租税および印紙収入、社会保険料収入および地方税収入の合計額を 表す。法人が負担することがない相続税等も含まれることに留意。 5 本報告書作成日現在で、平成20年度の社会保険料(事業主負担分および従業員負担分) の総額について公表されていないため、日本政府歳入合計および総合的財政貢献額の歳入 に占める割合を示すことができない。 表 5 調査対象企業の主な負担税目の合計額と政府等の歳入金額 平成19年度 主な負担税目 調査集計金額 政府等の歳入金額 (百万円) (百万円) 平成20年度 割合 調査集計金額 政府等の歳入金額 (百万円) (百万円) 注 割合 国税等 法人税 1,536,766 14,744,398 10.4% 947,901 10,010,600 9.5% 社会保険料事業主負担分 1,030,137 27,201,033 3.8% 1,062,773 - - 95,894 940,991 10.2% 84,251 883,109 9.5% 115,486 352,157 32.8% 111,936 340,472 32.9% 2,242 739,857 0.3% 2,302 717,047 0.3% 17,929 1,201,845 1.5% 19,149 1,088,425 1.8% 2 法人住民税 457,557 4,198,230 10.9% 338,385 3,815,365 8.9% 3 事業税(外形標準課税を含む) 598,236 5,607,734 10.7% 550,335 5,202,621 10.6% 4 固定資産税 494,985 9,944,711 5.0% 493,291 10,118,854 4.9% 5 32,244 312,968 10.3% 32,578 322,686 10.1% 4,687,493 148,159,110 3.2% 3,986,321 - - 関税 電源開発促進税 自動車重量税 印紙税・登録免許税 1 地方税 事業所税 負担税目合計 6 (出所) 財務省決算情報(http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/syukei.htm)、地方財政白書、国立社会保障人口問題研究所 「平成19年度社会保障給付費」(http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h19/kyuuhu_h19.asp) (注1) 社会保険料に係る政府等の歳入金額は、事業主拠出分の金額である。平成20年度は不明。 (注2) 印紙税・登録免許税に係る政府等の歳入金額は、国の決算における印紙収入の額である。 (注3) 法人住民税に係る政府等の歳入金額は、道府県民税の法人分ならびに市町村民税の法人均等割および法人税割を含み、 道府県民税の個人分および利子割ならびに市町村民税の個人均等割および所得割を除いた金額である。 (注4) 事業税の調査集計金額は、所得割、収入割および外形標準課税(付加価値割および資本割)の合計額である。 (注5) 固定資産税に係る調査集計金額および政府等の歳入金額には、都市計画税が含まれている。 (注6) 負担税目合計は、租税および印紙収入、社会保険料収入(平成20年度は不明)、地方税収入の合計をもって 「政府等の歳入金額」として比較している。法人が負担することのない相続税等も含まれていることに留意。 法人税、法人住民税、法人事業税所得 調査対象企業の各負担税目の総額が当該 割(以下、法人税等)など、企業利益を 税目に係る政府の歳入総額に占める割合 基準として課される税金は、景気の変動 は大きく変動しないことが調査結果から に税収が直接的に左右される。しかしな 明らかとなった。 調査対象企業の税引前 がら、経済全体が不況に見舞われる中、 純利益は、平成19年度から平成20年度 2010 Total Tax Contribution 17 法人税等は、多くの企業において最大の 負担税目である。納付額総額に占める 割合は、平成19年度53.4%、平成20年 度44.1%となっている。 にかけて約62.7%減少しており、それに 割合は平成19年度は53.4%、平成20年 伴い法人税等の総額も平成19年度と比 度は44.1%であった。ただし、上記分析 較して約29.8%減少しているが、調査対 において、本調査においては法人税等を 象企業が納税した法人税の税額は、平成 現金主義で把握しているため、前年度の 19年度の政府法人税収の10.4%、平成 確定申告納付額が翌年度分として把握さ 20年度の政府法人税収の9.5%を占めて れるため、税引前純利益の動向と法人税 おり、法人住民税、事業税も同様の傾向 等の納付額が一事業年度分の「期ずれ」 を示している。 を生じることに留意する必要がある。し 法人税等は、多くの調査対象企業にと って最大の負担税目であることがわか る。法人税等が負担税目の総額に占める たがって、平成20年度の企業業績の悪 化は平成21年度の法人税等の減少とし て把握されることになると考えられる。 図 6 調査対象企業の負担税目に占める法人税等の割合 100% 90% 80% 44.7% 60% 事業税外形標準 50% 1.9% 10.9% 40% 4.5% 5.3% 30% 20% 18 Total Tax Contribution 2010 法人税等 2.0% 32.8% 平成19年度 事業税所得割 11.8% 53.4% 10% 0% その他の負担税目 53.9% 70% 4.0% 4.5% 23.8% 平成20年度 市町村住民税 44.1% 都道府県住民税 法人税 調査対象企業の法人税、社会保険料 税9,479億円、社会保険料事業主負担分 (事業主負担分)および固定資産税の負 1兆628億円)。社会保険料事業主負担 担総額について、平成19年度と平成20 分は企業にとって固定的な負担税目であ 年度を比較すると、企業業績の悪化の影 り、固定資産税等の他の固定的な負担税 響を受け法人税額が減少している一方、 目と合わせて、不況期においては負担税 社会保険料事業主負担分はほぼ同額で推 目総額に占める割合が上昇する傾向にあ 移したことにより、調査対象企業の社会 るため、企業の公的負担の水準を議論す 保険料事業主負担分の合計額が法人税の る上では無視できない要素であることが 合計額を上回った(平成20年度:法人 わかる。 図 7 法人税、社会保険料事業主負担分、固定資産税の増減 ︵億円︶ 18,000 16,000 15,368 14,000 12,000 10,000 10,301 8,000 6,000 10,628 社会保険料事業主負担分 9,479 法人税 固定資産税 4,950 4,000 4,933 2,000 0 平成19年度 平成20年度 2010 Total Tax Contribution 19 徴収税目 徴収税目は、特定の産業に徴収義務が 揮発油税等については、揮発油税に ついて回答した調査対象企業4社で 集中する傾向にある。揮発油税は、4社 調査対象企業の平成19年度の徴収税 で当該税目からの税収の68%を納付し 当該税目からの政府税収の約68%を 目合計額は3兆3,058億円、平成20年度 ている。 納付している。同様に、石油石炭税 は3兆1,931億円であり、調査対象企業 も回答した調査対象企業8社で当該 が平成19年度に納付した徴収税目の合 税目からの政府税収の約54%を納付 計額は、政府等の歳入金額の2.2%を占め しており、両税目は徴税負担が特定 ている。調査対象企業が納付した徴収税 の企業に集中するという側面が改め 目で、その合計額が最も高かった税は、 て浮き彫りになった。 揮発油税等であり、これに社会保険料従 業員負担分、給与等源泉所得税が続く。 表 8 調査対象企業の主な徴収税目の合計額と政府等の歳入金額 平成19年度 主な徴収税目 調査集計金額 政府等の歳入金額 (百万円) (百万円) 平成20年度 割合 調査集計金額 政府等の歳入金額 (百万円) (百万円) 割合 注 国税等 源泉徴収所得税(給与等以外) 126,193 4,879,414 2.59% 129,384 4,444,043 2.91% 源泉所得税(給与等) 422,249 10,138,667 4.16% 418,092 9,987,965 4.19% 社会保険従業員負担分 910,284 29,673,014 3.07% 938,471 - - -221,631 12,841,069 -1.73% -262,987 12,442,976 -2.11% 280,933 512,851 54.78% 276,725 511,044 54.15% 1,398,838 2,110,543 66.28% 1,285,378 1,889,385 68.03% 365,810 12,116,279 3.02% 387,271 12,422,453 3.12% 軽油引取税 11,899 1,033,873 1.15% 9,526 918,784 1.04% 徴収税目合計 3,305,858 148,159,110 2.2% 3,193,132 - - 消費税(地方消費税含む) 石油石炭税 揮発油税(地方揮発油税含む) 1 地方税 特別徴収住民税 2 3 (出所)財務省決算情報(http://www.mof.go.jp/jouhou/shukei/shukei.htm)、地方財政白書、国立社会保障人口問題研究所、 「平成19年度社会保障給付費」(http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h19/kyuuhu_h19.asp) (注1) 社会保険料に係る政府等の歳入金額は、被保険者(従業員)拠出分の金額である。 (注2) 特別徴収住民税に係る政府等の歳入金額は、道府県民税個人分ならびに市町村民税個人均等割および所得割の合計金額である。 (注3) 徴収税目合計は、租税印紙収入、社会保険料収入(平成20年度は不明)、地方税収入の合計をもって「政府等の歳入金額」 として比較している。法人が負担または、徴収することのない税目も含まれていることに留意。 20 Total Tax Contribution 2010 地方税 企業が負担している地方税の構成をみる と、平成19年度は事業税所得割が31.6% 総合的財政貢献額に占める国税と地方税 で最も比率が大きいが、平成20年度は事 の構成は、平成19年度も平成20年度も 業税所得割の絶対額の減少を反映して、 ほぼ変わらず、国税が4分の3、地方税が 固定資産税が34%を占めており、景気の 4分の1を占めている。この結果はアメリ 変動に左右されない固定資産税の性質を カの2007年(平成19年)12月期を対象 現している。事業税外形標準の占める割 とした調査とほぼ同じ結果となっている 合も景気の変動に左右されず一定となっ (アメリカ連邦税の占める割合:75.5%)。 ている。 国税4分の3、地方税4分の1。 国税と地方税の構成比率は平成19年度 および20年度はほぼ変らず、アメリカ の調査とほぼ同じ結果となっている。 平成19年度と平成20年度毎に調査対象 図 9 総合的財政貢献額に占める国税と地方税の構成(平成20年度) 地方税 26% 国税 74% 2010 Total Tax Contribution 21 分配価値に占める総合的財政貢 献の割合 ことに起因する。総務省「労働力調査」 の平成20年から現在に至る就業者数を みると、就業者数は、平成20年5月の 企業が生み出した付加価値は、賃金、 6,478万人を最高に下降し始め、平成20 利子、配当、内部留保などの源泉とな 年11月から急激に減少、平成21年3月の り、分配面からみた国民所得を構成す 6,245万人で一旦底を打っている。その る。調査対象企業から提供された純支払 後、一時回復するも、平成22年2月の 利子額、給与総額(事業税の付加価値割 6,185万人まで減少する。リーマンショ の課税標準として用いる数値)および税 ック後、平成20年下半期から業績が急 引後純利益の額に、負担税目と徴収税目 激に悪化し、人件費削減の対応を迫られ の合計額(総合的財政貢献額)を加えた たものの、雇用契約などの期間との関係 額を、企業が生み出した付加価値総額で で実際に効果が現れ始めるのは平成21 あると想定した場合、給与総額の付加価 年に入ってからと言われている。このた 値総額に対する割合は労働分配率である め、今回の調査では労働分配率は増加し と考えることができる。一方、総合的財 ており、来年の調査結果での労働分配率 政貢献額の付加価値総額に対する割合 の動向を観察したい。 は、政府等の公共部門に分配された価値 であると考えることができるため、これ を本報告書では公共分配率と呼ぶことに する。 22 Total Tax Contribution 2010 労働分配率を圧迫する要因の一つは公 共部門への分配、つまり税金と社会保険 料である。公共分配率は、平成19年度 が39.7%であり、平成20年度が47.7%に 調査対象企業の平成19年度の労働分配 上昇している。不況下で分配可能な付加 率は31.8%であり、平成20年度の労働分 価値総額が減っている以上、政府等の公 配率は42.2%に上昇している。平成19年 共部門への分配が減少しないとすれば、 度から平成20年度にかけて、給与総額 長期的には企業は労働分配率を下げる行 が8兆円強でほぼ変わらなかったことに 動を取らざるを得ないことが想定され 対して、税引後純利益が大幅に減少した る。 図 10 分配価値に占める総合的財政貢献額の割合 投資家・ 設備投資への 支出 徴収税目 合計 16.4% 政府への支出 (公共分配率) 39.7% 税引後 純利益 27.1% 負担税目 合計 平成20年 3月期 23.3% 給与総額 純支払利息 1.4% (雇用にかかる 徴収税目を除く) 31.8% 従業員への支出 投資家・設備投資への支出 政府への支出 (公共分配率) 47.7% 徴収税目 合計 21.2% 負担税目 合計 26.5% 純支払利息 2.1% 税引後 純利益 8.0% 平成21年 3月期 給与総額 (雇用にかかる 徴収税目を除く) 42.2% 従業員への支出 2010 Total Tax Contribution 23 平成19年度、平成20年度の総合的な公的負担率 調査対象企業の総合的な公的負担率(Total Tax Rate)の平均値は、平成19年度 は41.6%、平成20年度は58.2%であり大幅に上昇している。これは、法人税等以外 の利益連動型ではない社会保険料事業主負担分、固定資産税等は、企業業績が悪化 しても減少しないことに起因しており、平成20年度では負担税目の半分以上を法 人税等以外の税金が占めている。社会保障財源を社会保険料事業主負担分に求めた 場合、リーマンショックに見られたような業績が急速に悪化した場合には、企業に とっての硬直的な負担となることが見て取れる。 Total Tax Rate 41.6% 58.2% (平成19年) 24 Total Tax Contribution 2010 (平成20年) 図 11 平成19年度、平成20年度の調査対象企業における総合的な公的負担率の内訳 70% 58.2% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 法人税等 18.2% 41.6% 9.7% 18.8% 法人税等 20.0% 21.3% その他の負担税目 平成19年 平成20年 社会保険料事業主負担分 その他の負担税目 11.9% 社会保険料事業主負担分 図 12 平成19年度、平成20年度の調査対象企業における総合的な公的負担率の分布 平成19年度(平成20年3月期) 5 平均値 41.6% データの個数 4 3 2 1 10 % 12 14% % 16 18% 20% 22% 24% 26% 28% % 30 32% 34% 36% 38% % 40 42% 44% 46% % 48 50% 52% 54% 56% 58% % 60 62% 64% % 66 68% 70% 72% % 74 76% 78% 80% 82% 84% % 84 86% % 0 総合的な公的負担率 平成20年度(平成21年3月期) 4 平均値 58.2% データの個数 3 2 1 10 12 % 14 % 16 % 18 % 20 % 22 % 24 % 26 % 28 % 30 % 32 % 34 % 36 % 38 % 40 % 42 % 44 % 46 % 48 % 50 % 52 % 54 % 56 % 58 % 60 % 62 % 64 % 66 % 68 % 70 % 72 % 74 % 76 % 78 % 80 % 82 % 84 % 86 % 88 % 90 % 92 % 94 % 96 % % 0 総合的な公的負担率 2010 Total Tax Contribution 25 総合的財政貢献の国内売上に対 する割合 6.8%、平成20年度が6.4%であった。調 査対象企業の売上高の総額が7.8%減少し たことに対して、総合的財政貢献額は全 調査回答企業が支払う租税および社会 体で10.2%減少しているため、総合的財 保険料の総額が売上高に占める割合の平 政貢献額の国内売上に対する割合の減少 均値を求めた。結果は、平成19年度が に結びついている。 図 13 平成19年度、平成20年度の総合的な公的負担の売上高に対する割合の分布 平成19年度(平成20年3月期) n=36 6 データの個数 平均値 6.8% 5 4 3 2 1 0 % % % % % % % % % % % % % % % 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 総合的な公的負担の売上高に対する割合 平成20年度(平成21年3月期) n=36 6 データの個数 5 平均値 6.4% 4 3 2 1 0 26 Total Tax Contribution 2010 % % % % % % % % % % % % % % % 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 総合的な公的負担の売上高に対する割合 雇用に係る公的負担 めている。調査対象企業は日本を代表す る大企業であり、給与水準が日本全体の 調査対象企業の平成19年度の従業員数 の合計である1,046,420人は労働力調査 6 平均給与水準よりも高いため相応の社会 保険料負担を行っていると考えられる。 による平成19年度の就業者数である 調査対象企業が納税した法人税の税額 6,412万人の約1.6%に相当する。一方、 は、平成19年度の政府法人税収の10.4% 調査対象企業の社会保険料事業主負担分 であることと比較すると、調査対象企業 の平成19年度の合計額は1兆301億円で の合計額が政府歳入金額に占める割合は あり、平成19年度の社会保険料事業主 低くなっている。 負担分の政府等の歳入金額の約3.8%を占 表 14 調査対象企業の従業員数と給与総額 平成19年度 平成20年度 対前年比(%) 従業員数(人) 1,046,420 1,058,752 1.2 給与総額(円) 8 兆 1,136 億円 8 兆 1,013 億円 -0.2 負担税目のうち社会保険料事業主負担 係る公的負担の総額は以下の通りであ 分と、徴収税目のうち給与等源泉所得 る。平成19年度において、調査対象企業 税、特別徴収住民税および社会保険料従 の雇用に係る公的負担の総額は、対応す 業員負担分との合計を、雇用に係る公的 る政府歳入額の総額の3.4%を占めている。 負担と定義する。調査対象企業の雇用に 表 15 調査対象企業の雇用に係る公的負担の総額 平成19年度 対前年比(%) 1 兆 627 億円 3.2 給与等源泉所得税 4,222 億円 4,180 億円 -1.0 特別徴収住民税 3,658 億円 3,872 億円 5.9 9,102 億円 9,384 億円 3.1 2 兆 7,284 億円 2 兆 8,066 億円 2.9 社会保険料事業主負担分 社会保険料従業員負担分 合計 6 平成20年度 1 兆 301 億円 総務省統計局統計調査部国勢統計課労働力人口統計室「労働力調査年報(基本集計)」 2010 Total Tax Contribution 27 調査対象企業の従業員一人当たりの雇 険料従業員負担分の合計が1,647,065円 用に係る公的負担の平成20年度の単純 となっている。調査対象企業の従業員一 平均は、2,650,864円であった(平成19 人当たりの給与と社会保険料事業主負担 年度、2,607,441円)。内訳は、社会保 を合わせた労務費は、若干だが減少して 険料事業主負担分が1,003,797円、給与 いる。 等源泉所得税、特別徴収住民税、社会保 表 16 従業員一人当たりの雇用に係る公的負担 負担税目 38全企業合算ベース 合計 1,623,002 2,273,933 1,801,506 239,604 6,928,388 2,607,441 3,423,271 2,839,574 458,911 10,607,856 38 負担税目 1,003,797 1,138,922 1,001,520 192,091 3,709,737 平成20年度 徴収税目 単位(円) 合計 1,647,065 2,220,913 1,825,699 210,764 6,872,502 2,650,863 3,359,836 2,842,476 402,856 10,582,239 38 (注) ここで負担税目とは、社会保険料事業主負担分をいい、徴収税目とは、 給与等源泉所得税、特別徴収住民税および社会保険料従業員負担分の合計額をいう。 平均値 各企業個 中位値 別計算 最小値 ベース 最大値 サンプル数 984,438 1,149,338 1,013,459 219,306 3,679,468 平成19年度 徴収税目 次に、給与総額に対する雇用に係る公 子供のいない独身者で29.5%となってお 的負担の比率を求めたところ、平成19 り、本調査の結果はこれを上回る水準と 年度の中位値は32.2%、平成20年度の中 なっている。労務費に対する雇用に係る 7 公的負担の比率は、社員の家族構成およ による2008年の給与所得課税および社 び累進税率構造を採用している場合は所 会保険料負担の労務費に対する比率は、 得水準によって影響を受ける。 位値は31.3%となっている。OECD調査 表 17 給与総額に対する雇用に係る公的負担の比率 負担税目 38全企業合算ベース 平均値 各企業個 中位値 別計算 最小値 ベース 最大値 サンプル数 平成19年度 徴収税目 12.7% 11.8% 10.8% 5.3% 22.9% 20.9% 22.0% 20.5% 11.5% 43.1% 合計 33.6% 33.8% 32.2% 17.0% 66.1% 38 負担税目 13.1% 11.7% 11.4% 5.0% 25.1% 平成20年度 徴収税目 21.5% 21.7% 20.1% 11.4% 46.6% (注) ここで負担税目とは、社会保険料事業主負担分をいい、徴収税目とは、 給与等源泉所得税、特別徴収住民税および社会保険料従業員負担分の合計額をいう。 7 28 Total Tax Contribution 2010 OECD Taxing Weges 2007/2008 合計 34.6% 33.4% 31.3% 16.8% 71.7% 38 図 18 雇用に係る公的負担の構成(従業員一人当たり) 単位(円) 3,000,000 2,500,000 869,903 886,394 2,000,000 1,500,000 社会保険料従業員負担分 349,582 365,781 403,517 394,892 984,439 1,003,798 1,000,000 500,000 特別徴収住民税 給与等源泉所得税 社会保険料事業主負担分 0 平成19年度 平成20年度 総合的な公的負担率(Total Tax Rate)の平成19年、平成20年合 算ベースでの分析 率を求めた。38企業グループ全体を対 象とする全企業合算ベース(A)による 総合的な公的負担率は、56.6%となって いる。企業グループ別に総合的な公的負 平成20年度はリーマンショックの影響 担率を求めると、総合的な公的負担率が により、企業収益が極端に悪化した事業 マイナスとなった企業グループを除き、 年度となり、これに加えて、現金主義に 最小値は17.6%、最高値は160.3%であ よる調査のため、平成19年度3月期の確 った。税引前純損失を計上している7企 定申告による法人税等の支払は平成20 業グループ、税引前純益を計上している 年度のデータとして把握され、平成20 が総合的な公的負担率がマイナスとなっ 年度の負担率はこの二つの要素があいま た1企業グループ、総合的な公的負担率 って全体的に高くなっている。このよう が100%を超過した1企業グループ 8 を除 な影響を緩和し、平成19年度と平成20 く29企業グループの総合的な公的負担 年度の平準化を図るため、両年度の基礎 率の単純平均(B)は50.4%、中位値 データを合算した上で総合的な公的負担 (C)は51.0%となった。 8 企業の税引前利益が減少した場合、分母がマイナスとなると総合的な公的負担率はマイナ スとなるが、税が損益に与える影響を中立化した企業の業績がわずかな利益を示すように なると総合的な公的負担率は利益に連動しない諸税負担が一定であるため100%を超過す る。 2010 Total Tax Contribution 29 総合的な公的負担率と法人税実負担率 9 総合的な公的負担率を地方税と国税と を比較した場合、総 合 的 な 公 的 負 担 率 いう視点から分析すると、単純平均で求 は、企業が支払う全ての負担税目の調整 めた全体の総合的な公的負担率である 後税引前純利益に対する割合を示す指標 50.4%は、国税31.8%、地方税18.6%か である一方で、法人税実負担率は、法人 ら構成される。地方税の中で総合的な公 税等の税引前純利益に占める割合であ 的負担率に占める割合が高い税目は、固 る。調査対象企業の法人税実負担率の平 定資産税(6.0%)、事業税所得割 均値は、35.5%であった(国内源泉所得 (5.8%)、法人住民税(4.3%)の順と 税を除く)。これに社会保険料事業主負 なっているが、産業によって比率は異な 担分を加味した負担率(以下、「狭義の る。 公的負担率」)は44.5%であった。 表 19 総合的な公的負担率(平成19年度および平成20年度の基礎データを合算) TTR>100%を除いた場合 全企業合算ベース(A) 56.6% - 平均値(B) 54.1% 50.4% 中位値(C) 51.8% 51.0% 最小値 17.6% 17.6% 最大値 160.3% 91.0% 30 29 サンプル企業グループ数 9 30 Total Tax Contribution 2010 法人税実負担率は、年間の法人税等納税額を税引前純利益で除した値である。狭義の公的 負担率とは、年間の法人税等と社会保険料事業主負担の納付額合計を、税引前純利益に社 会保険料事業主負担を加えた金額で除した値である。法人税実負担率と狭義の公的負担率 は、損失会社、負の値、100%を超える値を示した調査対象企業データを除外し、単純平 均を求めている。総合的な公的負担率は、同様に損失会社等を除く29企業グループの個 別の総合的な公的負担率の単純平均を用いている。 図 20 法人税実負担率、狭義の公的負担率、総合的な公的負担率(全体) 60.0% 50.4% 50.0% 1.4% 0.7% 40.0% 30.0% 4.9% 6.0% 14.6% その他の税目 20.0% 44.5% 事業税外形標準 35.5% 事業所税 固定資産税 22.7% 10.0% 社会保険料事業主負担分 法人税等 0.0% 総合的な公的負担率 法人税実負担率 狭義の公的負担率 (法人税等/税引前利益) (法人税等+社会保険料/ 調整税引前利益) 図 21 総合的な公的負担率の国税と地方税の構成 地方税 18.6% 4.3% 国税 31.8% 50.4% 地方税 18.6% 5.8% 1.4% 法人住民税 事業税所得割 事業税外形標準 6.0% 固定資産税 0.7% 0.5% その他の地方税 事業所税 2010 Total Tax Contribution 31 第六章 産業比較 調査対象企業である38企業グループを 10 油・ガス、小売、商社)に区分してその 製造 、卸・小売、電力・ガス・情報通 データの分析を行った。結果として、税 信の3つの大分類、および8つの産業分 負担の構造および水準は、産業によって 類(自動車、化学・製薬、電力・ガス・ 大きく異なることが明らかになっている。 情報通信、機械、鉄鋼・金属、機械、石 図 22 平成20年度の調査対象企業の総合的財政貢献額の割合 0.0% 3.0% 自動車 9.5% 5.0% 化学 ・製薬 電力 ・ガス ・情報通信 25.1% 機械 鉄鋼 ・金属 石油 ・ガス 35.6% 9.6% 小売 商社 12.3% 電力・ガス・情報通信事業者の法人税 実負担率は、平均を大きく上回っている。 また、総合的な公的負担率は、66.5%で 他を大きく上っている。 電力・ガス・情報通信事業に属する企 調査対象企業である電力・ガス・情報 業グループ数(4グループ)は、調査対 通信事業者は平成19年度から平成20年 象企業(38企業グループ)の10.5%を占 度にかけて売上額の減少が見られず(増 めるに過ぎないが、平成20年度に調査 減率0%)、税引前純利益の減少幅も調 対象企業が納付した負担税目と徴収税目 査対象企業平均が62.7%減となる中、同 の合計額(総合的財政貢献額)の35.6% 事業者平均では14%減にとどまるなど、企 を占めている。 業業績が安定していることが特徴である。 10 製造業は、自動車、化学・製薬、機械、鉄鋼・金属に属する調査対象企業の結果を反映さ せている。 32 Total Tax Contribution 2010 また、産業を問わず計算した法人税実負 ており、平成20年度の負担税目の納税 担率の平均値は35.5%であるが、電力・ 額と徴収税目の納税額の比率は1対6.5と ガス・情報通信事業者の法人税実負担率 なっている。平成20年度に石油・ガス は、48.8%(源泉所得税込みで50.6%) 事業者が納税した負担税目と徴収税目の となっており、全体平均を大きく上回っ 合計額は、1兆8,037億円であるが、そ ている。さらに、その他の税目におい のうち1兆5,643億円が徴収税目であ て、固定資産税、石油石炭税、電源開発 る。そのほとんどが石油関連諸税であ 促進税などの固定的な負担があることか り、石油・ガス事業者が平成20年度に ら、全ての税目を考慮した総合的な公的 徴収納付した石油関連諸税の総額は、 負担率は66.5%となった。 1兆4,973億円(揮発油税1兆2,780億 電力・ガス・情報通信に次いで総合的 財政貢献額が大きいのは石油・ガス事業 円、その他石油関連諸税2,192億円)に 上る。 であり、調査対象企業全体の財政貢献額 また商社ではその他の負担税目合計の の25.1%を占めている。石油・ガス事業 占める比率が高いが、そのほとんど では徴収税目が負担税目を大きく上回っ (98%)は関税である。 2010 Total Tax Contribution 33 表 23 産業別財務指標の平成19年度と平成20年度の推移(合算ベース) 化学・製薬 電力・ガス 情報通信 自動車 機械 鉄鋼・金属 石油・ガス 小売 商社 売上高 -21.9% -9.3% 0.0% -8.5% 7.3% -2.2% -1.8% -6.3% 税引前純利益 -94.9% -65.0% -9.2% -106.8% -41.0% -265.1% 5.6% -51.1% 従業員数 支払賃金給与 -2.6% 2.2% 3.1% 1.9% 2.3% -1.7% -2.5% 3.4% 4.6% -0.5% -1.9% -0.5% -3.8% -5.9% 5.5% 1.2% 表 24 産業別の総合的財政貢献額 平成19年度 平成20年度 構成比率 平成19年度 平成20年度 自動車 8,047 億円 6,822 億円 -15.2 10.1% 9.5% 化学・製薬 3,952 億円 3,554 億円 -10.2 5.0% 5.0% 2 兆 7,141 億円 2 兆 5,549 億円 -5.9 34.0% 35.6% 電力・ガス・情報通信 機械 1 兆 13 億円 8,812 億円 -12.0 12.5% 12.3% 鉄鋼・金属 7,092 億円 6,863 億円 -3.2 8.9% 9.6% 石油・ガス 2 兆 450 億円 1 兆 8,037 億円 -11.8 25.6% 25.1% 小売 2,142 億円 2,140 億円 -0.1 2.7% 3.0% 商社 1,086 億円 13 億円 -98.7 1.4% 0.0% 7 兆 9,933 億円 7 兆 1,794 億円 -10.2 100% 100% 産業別に法人税実負担率、狭義の公的負 製造業、卸・小売業ならびに電力・ガ 担率、総合的な公的負担率の比較を行っ ス・情報通信の三分類で上記方法により た。産業別で行う比較では、まず、38企 総合的な公的負担率を求めたところ、 業グループの平成19年度と平成20年度 卸・小売業では40.1%と低い水準である の基礎データを企業グループ単位で合算 一方、製造業では51.5%および電力・ガ し、平成19年度と平成20年度の平準化 ス・情報通信では、66.5%と相対的に高 を図った。その上で、損失会社等を除 い水準にあることが明らかになっている。 き、各企業グループの負担率を求め、同 種の産業に含まれる企業グループの負担 率の単純平均を求める方法により分析を 行った。 34 Total Tax Contribution 2010 対前年比 (%) 細分類による総合的な公的負担率を観 察した場合、電力・ガス・情報通信、小 売、機械、化学・製薬が全体の平均値で ある50.4%を上回っている。 図 25 調査対象企業の製造業、卸・小売業ならびに電力・ガス・情報通信の 総合的な公的負担率の税目構成 70.0% 66.5% 51.5% 60.0% 50.0% 1.5% 40.0% 0.7% 5.0% 17.0% 30.0% 1.5% 26.0% 0.3% 12.2% 40.1% 20.0% 10.0% 8.2% 0.5% 1.2% 事業税外形標準 11.8% 10.9% 事業所税 固定資産税 0.7% 4.9% 12.0% 社会保険料事業主負担分 33.5% 法人税等 10.1% 電力・ガス・情報通信 卸・小売 製造 0.0% その他の負担税目 図 26 調査対象企業の総合的な公的負担率(産業比較) 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% その他の負担税目 事業税外形標準 事業所税 固定資産税 社会保険料事業主負担分 法人税等 商社 小売 鉄鋼・金属 電力・ガス・情報通信 機械 化学・製薬 自動車 図 27 産業別の法人税実負担率、狭義の公的負担率、総合的な公的負担率 66.5 70.0% 59.8 56.3 60.0% 51.7 47.1 46.4 40.0 38.0 48.8 47.5 50.0% 40.0% 39.3 55.9 56.0 45.2 49.9 44.5 36.8 30.0% 30.5 35.5 25.9 18.5 12.5 20.0% 10.0% 0.0% 50.4 47.7 自動車 化学・製薬 機械 法人税実負担率 法人税等/税引前利益 電力・ガス 情報通信 鉄鋼・金属 狭義の公的負担率 小売 商社 全体 総合的な公的負担率 2010 Total Tax Contribution 35 第七章 平成19年度と平成20年度の推移 調査対象企業の財政状況の推移 企業の平成19年度と20年度で給与総額11 はほとんど変動がなく(0.2%減少)、従 平成19年度から平成20年度は景気の 業員数は微増している(1.2%増加)。ま 変動が大きく、調査対象企業の税引前純 た、支払利息・受取利息ともに減少して 損益の合計額は平成19年度から平成20 いるが、特に受取利息の減少幅が大きい 年度にかけて約62.7%減少している。売 (12.9%減少)。 上の総額は約6.8%減少であった。調査対象 表 28 回答企業の財務データの合計額の推移 平成19年度 売上高 平成20年度 対前年比(%) 134 兆 7,943 億円 125 兆 5,868 億円 -6.8 7 兆 9,560 億円 2 兆 9,669 億円 -62.7 従業員数 1,046,420 人 1,058,752 人 1.2 給与総額 8 兆 1,136 億円 8 兆 1,013 億円 -0.2 支払利息 7,774 億円 7,464 億円 -4.0 受取利息 4,857 億円 4,231 億円 -12.9 税引前純損益 負担税目の推移 少率はこれを上回っている。法人税等以 外の負担税目については、社会保険料事 負担税目の合計額は平成20年度では前 業主負担分が微増するとともに、固定資 年度比で約15%減少し、法人税等12 の合 産税等の変動幅も僅少であることから合 計額は約29.8%減少した。政府の法人 計額は若干だが増加している(平成19 税、法人住民税、法人事業税(外形標準 年度から平成20年度にかけて450億円の 分含む)からの税収は同期間で22.4%減 増加)。 少していることから、調査対象企業の減 11 事業税の付加価値割の課税標準額として集計される報酬給与額の合計額 12 法人税、法人事業税所得割、法人住民税など法人所得に課税される負担額の合計額 36 Total Tax Contribution 2010 表 29 主要負担税目および負担税目合計額の推移 平成19年度 平成20年度 対前年比(%) 1 兆 301 億円 1 兆 625 億円 3.2 1 兆 5,367 億円 9,479 億円 -38.3 固定資産税 4,949 億円 4,932 億円 -0.3 事業税所得割 5,099 億円 4,711 億円 -7.6 都道府県住民税 2,461 億円 1,799 億円 -26.9 市町村住民税 2,113 億円 1,584 億円 -25.0 関税 958 億円 842 億円 -12.1 石油石炭税 570 億円 804 億円 41.0 社会保険料事業主負担分 法人税 揮発油税等 負担税目合計 266 億円 376 億円 41.3 4 兆 6,874 億円 3 兆 9,863 億円 -15.0 平成19年度と平成20年度の主要な地方 に対して固定資産税、事業所税は微減、 税目に関する調査集計額の推移をみる 微増にとどまっている。 と、法人住民税の減少額が著しい。これ 表 30 主要地方税目の合計額の推移 平成19年度 都道府県住民税 2,461 億円 平成20年度 対前年比(%) 1,799 億円 -26.9% 市町村住民税 2,113 億円 1,584 億円 -25.0% 事業税所得割 5,099 億円 4,711 億円 -7.6% 固定資産税 4,949 億円 4,932 億円 -0.3% 事業所税 322 億円 325 億円 1.0% 事業税外形標準 882 億円 791 億円 -10.3% 徴収税目の推移 大きい税目としては、揮発油税、給与等 源泉所得税、石油石炭税があげられる。 徴収税目の合計額は平成19年度が3兆 揮発油税の政府税収は平成20年度に対 3,058億円、平成20年度が3兆1,931億 前年比10.5%減少しており、石油石炭税 円であり、約3.4%の減少となった。負担 は1.5%減少している。消費税の仕入税額 税目と比べて減少幅が少ない。減少額が 控除不足額の還付13 が平成20年度に増加 13 課税売上に係る納付消費税額を仕入に係る消費税額が超過した場合に生ずる。消費税の性 質上、最終消費以前の製造・流通段階で事業者が仕入に対して支払った消費税額は、製品 の最終価格を押し上げる税の累積効果を排除するために控除が認められていることに由来 し、一般的には、課税売上の減少、免税売上の増加等が還付の増加理由として挙げられ る。仕入の際に仕入価格と一緒に支払った消費税の還付であるため、企業の収益には影響 を与えない。 2010 Total Tax Contribution 37 している要因は一概には言えず、還付額 合の増加のほかに、仕入・設備投資を一 が増えている調査対象企業もあるが、納 定とした場合の国内売上の減少、売上を 付企業の納付額の減少額が全体の変動額 一定とした場合の仕入および設備投資の の総和を超過している。消費税額の減少 増加、さらには、中間納付額の還付のタ が著しい調査対象企業は必ずしも輸出製 イミング等が影響を与えていると考えら 品の生産者には限られておらず、このこ れる。 とから、売上に占める輸出免税売上の割 表 31 主要徴収税目の合計額の推移 揮発油税等 平成19年度 平成20年度 対前年比(%) 1 兆 3,988 億円 1 兆 2,853 億円 -8.1 社会保険料事業主負担分 9,102 億円 9,384 億円 3.1 給与等源泉所得税 4,222 億円 4,180 億円 -1.0 特別徴収住民税 3,658 億円 3,872 億円 5.9 石油石炭税 2,809 億円 2,767 億円 -1.5 源泉徴収所得税 1,261 億円 1,293 億円 2.5 92 億円 97 億円 5.5 道府県民税配当割 軽油引取税 118 億円 95 億円 -19.9 石油ガス税 8 億円 9 億円 10.6 石油価格調整税 2 億円 2 億円 -8.9 道府県民税利子割 8 億円 1 億円 -76.7 酒税 消費税 徴収税目の合計14 5,272 万円 1 億円 96.2 -2,216 億円 -2,629 億円 18.7 3 兆 3,058 億円 3 兆 1,931 億円 -3.4 総合的財政貢献の推移 7兆1,794億円であり、平成19年度から 平成20年度にかけて8,139億円減少して 調査対象企業38企業グループ、95社 いる(約10.18%の減少)が、その主た の総合的財政貢献額の合計額は、平成 る要因は、法人税の納税額の減少であ 19年度は7兆9,933億円、平成20年度は る。 14 合計には、この他、ゴルフ場利用税、入湯税、宿泊税を含む。 38 Total Tax Contribution 2010 第八章 税務コンプライアンスコスト 税金により企業に発生する負担は税負 業における税務を専門として担当する従 担のみではない。税制の簡素化は、税制 業員が所属する部門、課、グループ等を の経済活動に対する中立性を確保し、時 いう。調査対象企業の税務部門の人数の として税率の引き下げと同じ政策的効果 平均値は15.5人、中位値は8人であった をもたらすことがあることを忘れてはな (有効回答92社)。 らない。 次に、税務部門および非税務部門にお わが国の企業の税務コンプライアンス いて、従業員が国際税務・国内税務に携 コストの実態を把握するデータはこれま わる年間延べ日数の合計値を、年間一人 でに例がない。本調査では、各種納税事 当たりの労働日数を240日と仮定して除 務や社会保険料を含めた公的負担に関連 し、一社当たりの平均値を求めると、国 する手続に要する内部・外部費用につい 内税務に延べ8人(有効回答87社)、国 て、定量的に把握・分析を行った。 際税務に延べ2人(有効回答70社)が携 わっている結果となる。 税務部門の人数 税務コンプライアンスコストを測るた め、まず税務部門の人数を調査した。税 務部門とは、その名称にかかわらず、企 図 32 税務部門の人数の分布 n=92 12 中位値 8.0 平均値 15.5 10 企業数 8 6 4 2 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26- 51-76-101-201税務部門の人数 2010 Total Tax Contribution 39 今回の調査では、法人税等以外の幅広 ている従業員が属する部門である非税務 い税目を調査対象としていることから、 部門での発生費用も調査対象としてい 税務コンプライアンスコストについて る。調査結果では、税務コンプライアン も、税務を専門として行う部門のみなら ス活動に要する延べ日数の39%が非税務 ず、税務部門以外の部門で社会保険料を 部門で発生していることが判明した。 含む税金の申告、納付、徴収等に関与し 図 33 コンプライアンス活動に要する年間延べ日数-税務部門および非税務部門の構成 非税務部門 税務部門 39% 税務部門、非税務部門においてコンプ これに対して税務部門のみを取り出し ライアンス活動に要する年間延べ日数を て、コンプライアンス活動に要する年間 税目別に分析した場合、法人税が53%、 延べ日数の税目別構成を調べた場合、法 法人住民税、事業税が5%、給与等源泉 人税、法人住民税、事業税が84%を占め 所得税、特別徴収住民税、社会保険料が ている。 27%を占めている。 40 Total Tax Contribution 2010 61% 図 34 コンプライアンス活動に要する税務部門および非税務部門の年間延べ日数-税目別構成 固定資産税 3% 印紙税・登録免許税 1% 消費税 5% その他 6% 法人税 53% 給与等源泉所得税・特別 徴収住民税・社会保険料 27% 法人住民税・事業税 5% 図 35 コンプライアンス活動に要する税務部門の年間延べ日数-税目別構成 印紙税・登録免許税 1% 給与等源泉所得税・特別 徴収住民税・社会保険料 3% 固定資産税 3% その他 3% 消費税 6% 法人住民税・事業税 7% 法人税 77% 2010 Total Tax Contribution 41 非税務部門で取り扱う税金のうち、給 与等源泉所得税、特別徴収住民税、社会 保険料に係る事務がその年間延べ日数の 64%を占める。 図 36 コンプライアンス活動に要する非税務部門の年間延べ日数-税目別構成 固定資産税 3% その他 11% 印紙税・登録免許税 1% 法人税 17% 消費税 3% 法人住民税・事業税 1% 給与等源泉所得税・特別 徴収住民税・社会保険料 64% 税務コンプライアンスコスト コンプライアンスを要求される業務を含 めないこととした。調査票では、税目毎 上記、内部費用の調査データに加え に、役職別(部長級、課長級、係長級、 て、外部委託費用なども含めた税務コン 非役職)に従業員数が税務コンプライア プライアンスコストを算出した。 ンス活動に携わった年間延べ日数を調査 税務コンプライアンスコストの調査 は、平成20年度を対象としており、国 内税務と国際税務に分けて行っている。 計調査の企業規模1,000人以上から抽出 した一日当たりの平均報酬単価を役職毎 に乗じることにより費用を計算した。ま 結果は個別企業毎に把握し、国内税務 た、国内税務では外部委託費用および自 については87社、国際税務については 社開発システムの減価償却費(以下、外 50社が回答している。 部費用等)も調査対象としている。 ここでの国際税務とは、日本の税法が 国際税務については法人税等の国際税 国内企業に要求するコンプライアンス業 務に限定し、同じく従業員の役職別に年 務に限定することとし、海外子会社の現 間延べ日数を調査し、外部委託費用も調 地税法上要求されるコンプライアンスに 査対象としている。 係る国内親会社による支援業務、あるい は、国内企業が直接に海外の税法により 42 Total Tax Contribution 2010 し、これに平成20年度賃金構造基本統 結果として、平均的コンプライアンス た金額に法人税等が占める割合が24%に コストの内訳をみると、国内税務に1億 過ぎないことと比較して、比率が高く、 1,677万円、国際税務に4,430万円が費 法人税等が効率の悪い税金であることを やされている。法人税等の税務コンプラ 示している。 イアンスコストの一社当たり平均は 8,930万円で、税目別で見た場合、費用 の55%が法人税等の管理コストであっ た。これは日本の国税・地方税の税収合 これに対して日本のコンプライアンス コストの特徴として、消費税の占める割 合が低いことが挙げられる(3%)。 計額から、所得税等および相続税を除い 図 37 コンプライアンスコストの税目別構成 固定資産税 2% 印紙税・登録免許税 1% その他 6% 消費税 3% 給与等源泉所得税・ 特別徴収住民税・社会保険料 33% 法人税 53% 法人住民税・事業税 2% 表 38 法人税等の税務コンプライアンスコストの内訳(一社当たり平均) 法人税等コンプライアンスコスト 8,930 万円 内訳 国内税務 (人件費) 3,470 万円 国内税務 (外部委託費等) 1,029 万円 国際税務 (人件費) 1,223 万円 国際税務 (外部委託費等) 3,207 万円 2010 Total Tax Contribution 43 税制の簡素化に際しては、国内税務に 会社合算税制は平成22年度改正によ とどまらず、国際税務も視野にいれた検 り、その対象となるトリガー税率が25% 討が必要である。国際税務費用の内訳を から20%以下に引き下げられるなど、一 見てみると、52%が移転価格税制に費や 定の簡素化のための改正がなされた分野 されており、次いで外国税額控除が21%、 であるが、負担の半分以上を占めるのが 外国子会社合算税制(タックスヘイブン 移転価格税制であり、企業負担の軽減の 税制)が13%となっている。外国税額控 観点からの何らかの取り組みが期待され 除は平成21年度税制改正で外国子会社 る。 配当益金不算入制度が導入され、外国子 図 39 国際税務費用の構成 その他 14% 外国税額控除 21% 移転価格税制 52% タックス ヘイブン税制 13% 調査対象企業に、「システム上の管理 応」、「会計基準と税法との際に関する が困難である、相当の人材配置を要する 申告調整」、「法人税申告書の添付資 など、事務負担が重くコストとなってい 料」といった項目について企業の負担感 るもの上位3項目」を選択してもらっ が強い項目になっていると考えられる。 た。その回答によれば、「税務調査対 44 Total Tax Contribution 2010 図 40 調査対象企業が負担に感じている項目(有効回答92社、3項目選択) 税務調査対応 66 会計基準と法人税法との差異に関する申告調整 51 法人税申告書の添付書類 34 事業税付加価値割の計算 25 自治体別の地方税申告 20 従業員の所得税等の源泉徴収 20 連結納税の計算 17 償却資産の台帳管理(会計、国税、固定資産税) 14 法人税の更生に伴う過去複数年度の修正申告 10 消費税の仕入税額控除の計算 9 事業所税申告 7 電子申告に係る事務 3 その他 3 印紙税の管理 1 金融所得(配当・利子等)に係る所得税の計算 1 0 10 20 30 40 50 60 70 2010 Total Tax Contribution 45 第九章 国際比較 全体比較 (2009年度を対象とした調査結果の総 合的財政貢献額589億ポンド、回答企業 PwCでは日本で行われた総合的財政貢 献調査に先立ち、すでに2004年からイ ギリス、アメリカをはじめとする世界9 カ国で同様の調査を行っている。先行調 査国においてもFTE100、Business Roundtableといった団体と共同で調査 を行っており、調査対象企業の納税額が 政府等の歳入額に占める割合は、アメリ カで3.0%(2007年度を対象とした調査 結果の総合的財政貢献額940億ドル、回答 企業数40社)、イギリスで13.1% 数86社)など、各国を代表する企業の相 当数が調査対象企業に含まれている。 日本の総合的な公的負担率を国際比較15 した場合、日本企業が不況に見舞われた 2009年3月期の総合的な公的負担率であ る58.3%は現在までに調査した国の中で 最も高い値となっている。同様に2009 年3月期を対象として調査を行ったイギ リスの値と比較した場合において も、16.7%の差が存在する。 15 PwCの総合的財政貢献調査(Total Tax Contribution Survey)は国際的に統一された調査 手法を用いて、諸外国で調査を実施したものである。このため、本章では、調査年度は異 なるが、これまでに実施された国々の調査結果に基づき国際比較を行っている。 46 Total Tax Contribution 2010 図 41 総合的な公的負担率の国際比較 16 80% 70% 58.3% 60% 52.1% 50% 41.6% 42.8% 40% 31.0% 31.8% 27.6% 30.2% 30% 41.6% 35.1% 40.0% 20% カ ナ ダ 0% (2 00 7年 ス イ ) ス (2 00 オ 7年 ラ ) ン ダ( 20 南 06 ア 年 フ ) リ カ( 20 08 年 イ ) ン ド( オ 2 ー 00 ス 8年 ト ラ ) リ ア( 20 08 イ ギ 年 リ ) ス( 20 09 ア 年 メ ) リ カ( 20 07 ベ 年 ル ) ギ ー( 20 06 年 ) 日 本( 20 08 年 ) 日 本( 20 09 年 ) 10% 法人税等 雇用に係る税目 その他の負担税目 日本、アメリカ、イギリスの3カ国に 人税実負担率が低いが、社会保険料事業 ついて、法人税実負担率 、狭義の公的 主負担関係を含めた狭義の公的負担率お 負担率、総合的な公的負担率を個別に試 よび総合的な公的負担率ではアメリカと 算してみると、法人税実負担率につい 並ぶ水準となっている。法人税実負担 て、日本と法人税の表面実効税率が40% 率、狭義の公的負担率、総合的な公的負 台でほぼ同じアメリカとでは、日本企業 担率のいずれの指標を見ても、日本はイ の実負担が約8%程度高い結果となって ギリス、アメリカよりも8%前後高い水 いる。また、アメリカとイギリスを比較 準にある。 17 すると、イギリスはアメリカと比べて法 16 調査実施のタイミングと事業年度が各国で異なる為、各国の最も新しい値を採用している。 17 法人税実負担率=法人税等納税額÷税引前純利益 2010 Total Tax Contribution 47 図 42 法人税実負担率、狭義の公的負担率、総合的な公的負担率の国際比較 60% 50.4% 50% 41.6% 40% 44.5% 42.8% 34.7% 35.5% 35.3% 27.8% 30% 22.4% 20% 10% 0% イギリス アメリカ 法人税実負担率 日本 狭義の公的負担率 総合的な公的負担率 日本は社会保険料負担が低いとの認識 は、ベルギーに次ぐ高率であり、企業の が一般的にあるが、上記のデータをいわ 業績が堅調であった平成19年度におい ゆる雇用に係る税 18 の部分だけ取り出し て比較した場合、日本の2008年(平成 てもイギリス、オランダを超える水準と なっている。 20年度)の社会保険料事業主負担分 図 43 雇用に係る税の国際比較 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20.8% 06 年 年 ) ) 18.8% 12.9% 20 ー( ギ 11.9% 09 11.1% ル 8.3% 20 08 20 5.6% ベ ) 年 ) 年 08 20 南 ア フ リ カ( イ ン ド( 3.5% 20 オ 07 ー 年 ス ) ト ラ リ ア( 20 08 年 オ ) ラ ン ダ( 20 06 年 ) ア メ リ カ( 20 07 年 ) イ ギ リ ス( 20 09 年 ) 日 本( 20 08 年 ) ス イ ス( 20 07 年 ) 1.0% 0.5% 0% カ ナ ダ( 10% 3.5% 日 本( 20% 18 負担税目に分類される雇用に係る税には日本では社会保険料事業主負担分のみが含まれ る。諸外国では、雇用主負担となる個人所得源泉税等が含まれている。 48 Total Tax Contribution 2010 産業比較 定されていることから、結果の歪みを排 除する為、産業別国際比較では、中位値 各国の産業構造、データの比較可能性 を用いて比較を行っている。日本の製造 等を考慮し、イギリス、アメリカ、イン 業の総合的な公的負担率47.9%はベルギ ド、ベルギー、南アフリカの調査データ ーに次いで高い水準であり、アメリカと を用いて、製造業について日本のデータ 比較すると10%程度、インドと比較する と諸外国のデータの国際比較を行った。 と約25%の差が生じている。 なお、母集団に含まれるサンプル数が限 図 44 製造業の総合的な公的負担率(国際比較) 60.0% 54.2% 50.0% 38.7% 40.0% 30.0% 42.5% 47.9% 44.9% 23.7% 20.0% 10.0% 日本 ベルギー 次に製造業の負担税目の構造を調査し イギリス 南アフリカ アメリカ インド 0.0% インドは利益に係る税の比率が76.2% た。国際的な比較可能性を担保するた と圧倒的に高く、アメリカでは資産課税 め、税目を利益に係る税(profit)、資産に の割合が相対的に高い。イギリスでは利 係る税(property)、雇用に係る税 益に係る税の比率は低いが、雇用に係る (people)、生産活動に係る税 税および資産に係る税の比重が他と比較 (production)、環境に係る税 して高くなっている。ベルギーは雇用に (planet)に分類している。 係る税の比重が極めて高い。 2010 Total Tax Contribution 49 図 45 製造業の負担税目構成(国際比較) 100% 90% 環境にかかる税 80% 生産活動にかかる税 70% 60% 雇用にかかる税 50% 40% 資産にかかる税 30% 20% 利益にかかる税 10% 日本 税務コンプライアンスコスト 南アフリカ ベルギー インド アメリカ イギリス 0% し、調査対象企業の単純平均を取る と、0.78%となる。これは他国と比較す 企業別にコンプライアンスコストの合 ると低い水準となっている。 計を負担税目合計に占める割合を計算 図 46 各国の税務コンプライアンスコスト・人数比較 50 3.50% 2.90% 43.9 3.00% 45 40 2.50% 35 2.00% 2.00% 1.60% 1.50% 1.00% 0.50% 25 1.30% 20 15 0.78% 8.6 12.7 10 10 5 オーストラリア 税務部門、非税務部門の合計人数 南アフリカ アメリカ イギリス 負担税目の合計額に占める税務コンプライアンスコストの比率 50 Total Tax Contribution 2010 7 2.5 スイス 日本 0.00% 30 1.70% 0 おわりに 本調査は、企業の事業活動に伴い発生 力の維持・強化に向けての議論に有用な する全ての税金等の公的負担を対象項目 視点および資料を提供できるものと考え とし、その実数値を把握することによ る。今回は日本で初の大企業を対象にし り、同様の調査手法によって把握された た調査であったが、今後は業種ならびに 諸外国の企業の公的負担と比較しようと 調査対象企業の規模を拡大していくこと する実証分析である。このような実数に により、本調査の社会的意義を高めて行 基づく客観的分析を継続的に行うことに きたい。 より、今後の税制改正や企業の国際競争 編著者紹介 林幹 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 顧問/公認会計士・税理士 パートナーとして日本企業の海外進出・M&Aにか かわるタックスアドバイザリーに長年関与。21世紀 政策研究所(日本経団連)国際租税研究会等委員を 務める。 天野史子 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース シニアマネージャー/ドイツ税理士 東京大学法学部卒業。 旧自治省を経てPwCドイツファームに入社。税理士 法人プライスウォーターハウスクーパースに出向。 日本企業に対して欧州組織再編税制、移転価格税 制、VATコンサルティングを専門として行う。 2010 Total Tax Contribution 51 PwC 調査報告書 Total Tax Contribution(総合的財政貢献調査) 国別 イギリス オーストラリア ベルギー Total Tax Contribution: PricewaterhouseCoopers LLP 2009 survey for The Hundred Group in the UK What is your company’s Total Tax Contribution? Total Tax Contribution: PricewaterhouseCoopersand the Federation of Enterprises in Belgium 2009 update Total Tax Contribution 2010年発行 2010年発行 2009年発行 PricewaterhouseCoopers LLP 2009 survey for The Hundred Group Total Tax Contribution ? an on l i mp t a co t Toax tribu T on C t ha W PricewaterhouseCoopers and the Federation of Enterprises in Belgium 2009 update r ou is y y’s 08 20 s ult es yr rve su カナダ インド 南アフリカ Total Tax Contribution Canada’s Tax regime: complexity and competitiveness in difficult times Total Tax Contribution: How much in taxes do Indian companies really pay? Total Tax Contribution: What is the actual contribution of large companies to the fiscus in South Africa 2009年発行 2008 Survey 2009年発行 Total Tax Contribution Industry Tax Total Tax Contribution 2008 How much in taxes do Indian companies really pay?* What is the actual contribution of large companies to the fiscus? May 2009 *connectedthinking Total Tax Contribution 2008 Canada’s tax regime: complexity and competitiveness in difficult times* *connectedthinking アメリカ スイス Total Tax Contribution How much do large U.S. companies pay in taxes?* Total Tax Contribution How much income tax do large companies pay in Switzerland? 2009年発行 2009年発行 Total Tax Contribution Total Tax Contribution How much do large U.S. companies pay in taxes? 52 Total Tax Contribution 2010 Combien les grandes entreprises paient-elles d’impôts en Suisse? 2009年発行 産業別 Total Tax Contribution: PricewaterhouseCoopers LLP study of the UK Financial Services Sector for the City of London Corporation 2009年発行 Total Tax Contribution PricewaterhouseCoopers LLP study of the UK Financial Services Sector for the City of London Corporation Total Tax Contribution: A study of the economic contribution mining companies make to public fi nances Total Tax Contribution 2010年発行 A study of the economic contribution mining companies make to public finances Paying Taxes(世界の納税しやすさ調査) Paying Taxes 2011: The global picture 2010年発行 各調査のフルレポートは、以下のサイトをご覧ください。 www.pwc.com/jp/TTC 2010 Total Tax Contribution 53 PwCについて PwCのメンバーファームは、クライアントの産業に焦点をあてた監査、税務、アドバイザリーサービスの提供を通じて、クライアントの価値向 上を目指しています。PwCグローバルネットワークのメンバーファームが有する世界154カ国、161,000人以上のスタッフが、見識や経験、ソリ ューションを共有することによって、常に新しい視点から実践に即したアドバイスを提供しています。詳細は www.pwc.com をご覧ください。 プライスウォーターハウスクーパース インターナショナル リミテッド(PwCIL)のメンバーファームは、“PwC”というブランド名の下に活動 し、サービスを提供しています。また、これらのメンバーファームがPwCネットワークを構成しています。各メンバーファームは別組織であ り、PwCIL、またはその他のメンバーファームの代理人として活動することはありません。PwCILはクライアントにサービスを提供することは ありません。また、PwCILはメンバーファームの作為または不作為に対する責任、および賠償責任を負わず、メンバーファームの専門的な判断 をコントロールしたり、拘束することは一切ありません。 税理士法人プライスウォーターハウスクーパースについて 税理士法人プライスウォーターハウスクーパースは、PwCグローバルネットワークの日本におけるメンバーファームです。公認会計士、税理士 等約560名のスタッフを有する日本最大級のタックスアドバイザーとして、法人・個人の申告をはじめ、金融・不動産関連、移転価格、M&A、 事業再編、国際税務、連結納税制度など幅広い分野において税務コンサルティングを提供しています。 © 2010 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 無断複写・転載を禁じます。 本書において、PwCとは、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース、または、プライスウォーターハウスクーパース インターナショナ ルリミテッドのメンバーファームを指しています。各メンバーファームは別組織となっています。 本書は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショ ナルからのアドバイスを受けることなく、本書の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本書に含まれる情報は正確性または完全性 を、(明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本書に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起 こされたり、起こされなかったことによって発生した結果について、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース、およびその職員、代理人 は、法律によって認められる範囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 (2010年12月発行) お問い合わせ 本冊子、および本調査に関するお問い合わせは以下までお願いします。 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース Marketing & Communications email [email protected] 電話 03-5251-2400