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Japan Tax Update 「平成 法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)」
Japan Tax Update August 2010, Issue 52 PwC Japan Tax Newsletter 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース は、プライスウォーターハウスクーパース(PwC) グローバルネットワークの日本におけるメンバー ファームです。公認会計士、税理士等約560名の スタッフを有する日本最大級のタックスアドバイ ザーとして、法人・個人の申告をはじめ、金融・不 動産関連、移転価格、M&A、事業再編、国際税務、 連結納税制度など幅広い分野において税務コン サルティングを提供しています。 PwCのグローバルネットワーク (www.pwc.com) に属するPwC各メンバーファームは、クライアント およびクライアントを取り巻く人々の信頼の確立と、 価値の向上を目指して、監査、税務、アドバイザ リーサービスにおいて、クライアントの業種に焦点 をあてたサービスを提供しております。PwCは、 世界151カ国に163,000人のスタッフを有し、常に 新たな視点からクライアントのご要望に即したアド バイスを提供できるよう、そのネットワークを十分 に活用して問題解決に取り組んでいます。 このニュースレターは、概略的な内容をご紹介す る目的で作成しており、この情報が個々のケース にそのまま適用できるとは限りません。個別案件 への対応、またはより専門的な案件への取り組み に際しましては、税理士法人プライスウォーター ハウスクーパースの担当者にお問い合わせくださ い。 「平成 22 年度税制改正に係る 法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)」 の公表 2010 年8月 10 日付で国税庁より、「平成 22 年度税制改正に係る 法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)」が公表されました (国税庁ホームページへの掲載は、2010 年8月 13 日)。 本情報は、グループ法人税制導入に関連する平成 22 年度の法人 税関係法令等の改正に対応するもので、次の 6 つのカテゴリーに分 けられ、合計 16 問の質疑応答事例が掲載されています。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 完全支配関係 4 事例 各制度の概要 1 事例 受取配当等益金不算入 1 事例 寄附修正 1 事例 グループ法人間の資産譲渡 6 事例 現物分配による資産の譲渡 3 事例 今回のニュースレターでは、本質疑応答事例に掲載された各事例 及びその解説で明らかにされた事項のポイントをご紹介します。詳 細につきましては、以下の国税庁ホームページをご覧ください。 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/ hojin/100810/index.htm なお、本質疑応答事例で取り上げているグループ法人税制は、原則 として、2010 年 10 月 1 日以後の取引について適用になります。 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 〒100-6015 東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビル15階 電話 : 03-5251-2400(代表) http://www.pwc.com/jp/tax © 2010 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース プライスウォーターハウスクーパースとは、税理士法人 プライスウォーターハウスクーパース、または、プライス ウォーターハウスクーパースのグローバルネットワーク、 ないしはそのメンバーファームを指しています。個々の 組織は分離独立した法的組織となっています。 Japan Tax Update August 2010 1. 完全支配関係 問 1 完全支配関係を有することとなった日の判定 グループ法人税制や連結納税制度の適用における「完全支配関係」の判定日については法人税基本通達 1-3 の 2-2 において規定が設けられました。株式の購入により完全支配関係を有することとなる場合には、約定日ではなく、 株式の引渡しが行われた日(株式の譲渡により完全支配関係を有しないこととなる場合は株式の引渡しの日)が判 定日であることが明らかにされました。 問 2 いわゆる「みなし直接完全支配関係」 完全支配関係の判定においては、一の者が法人〔甲〕の発行済株式等の全部を直接に保有する場合に限らず、直 接完全支配関係がある法人〔乙〕を通じて発行済株式等の全部を保有する法人〔丙〕についても、当該一の者と当該 他の法人〔丙〕 との間には直接完全支配関係があるとみなされます。これが「みなし直接完全支配関係」といわれる ものであり、グループ法人税制の適用の判定において留意が必要です。 問 3 完全支配関係における 5%ルール 完全支配関係の判定上、一定の従業員持株会の株式保有割合が 5%未満である場合には、その 5%未満の株式を 発行済株式から除いたところで保有割合を計算することとされています。この完全支配関係の判定における従業員 持株会の範囲が、民法上の組合に該当するいわゆる証券会社方式による従業員持株会に限られており、人格のな い社団等に該当するいわゆる信託銀行方式による従業員持株会は該当しないことが明らかになりました。 問 4 資本関係がグループ内で完結している場合の完全支配関係 法人間の完全支配関係とは、法人の発行済株式のすべてがグループ内のいずれかの法人によって保有され、その 資本関係がグループ内で完結している関係、換言すればグループ内法人以外の者によってその発行済株式が保有 されていない関係をいうものと解されます。したがって、グループ内法人間での株式の相互保有がある場合でも、資 本関係がグループ内で完結している場合には、完全支配関係があると取り扱われることが明らかにされました。 2. 各制度の概要 問 5 グループ法人税制の適用対象法人等の比較 グループ法人税制の各制度は、概ね内国法人に対して適用されますが(ただし、寄附金の損金不算入・受贈益の益 金不算入の制度は法人による完全支配関係にある内国法人に限られます)、100%グループ内の内国法人からの 受取配当等の益金不算入の制度は、日本に支店等の恒久的施設を有する外国法人にも適用される旨が明らかにさ れています。 3. 受取配当等益金不算入 問6 完全子法人株式等に該当するかどうかの判定 内国法人が支払いを受ける「完全子法人株式等」に係る配当等の額については、負債の利子の額を控除することな く、その全額が益金不算入とされます。この制度は、平成 22 年 4 月 1 日以後に開始する内国法人の事業年度の所 得に対する法人税について適用されることから、配当等の額を支払う他の内国法人の計算期間の開始の日が平成 22 年 4 月 1 日前であっても、当該計算期間を通じて、配当等の額の支払いを受ける内国法人と当該他の内国法人 との間に完全支配関係がある場合には、当該措置の適用を受けることになります。 4. 寄附修正 問7 寄附修正事由が生じた場合の株主の処理 完全支配関係がある内国法人グループにおいて寄附が行われた場合には、各法人の株主において株式の帳簿価 額の修正を利益積立金額の増減として行う必要が生じます。①親法人から子法人へ寄附が行われた場合には、親 法人において子法人株式の帳簿価額増額と利益積立金額の増額、②子法人から他の子法人へ寄附が行われた場 PricewaterhouseCoopers 2 Japan Tax Update August 2010 合には、子法人と他の子法人のそれぞれの親法人において、子法人株式の減額と利益積立金額の減額及び他の 子法人株式の増額と利益積立金額の増額、③子法人から孫法人へ寄附が行われた場合には、親法人において子 法人株式の帳簿価額減額と利益積立金額の減額、子法人において孫法人株式の帳簿価額の増額と利益積立金額 の増額、をそれぞれ行うことが明らかにされています。 5. グループ法人間の資産譲渡 問8 完全支配関係がある法人間の資産の譲渡取引における譲渡の意義 譲渡損益調整資産を完全支配関係にあるグループ内の法人に譲渡した場合には、譲渡法人〔甲〕において譲渡損 益の繰延べ処理が行われますが、譲受法人〔乙〕が同グループ内の他の法人〔丙〕に更に譲渡した場合には、譲渡 法人においては繰り延べた譲渡損益を戻し入れると共に、譲受法人〔乙〕の他の法人〔丙〕への譲渡時の譲渡損益 について、繰延べ処理が行われることになる旨が明らかにされました。 問 9 非適格合併による資産の移転と譲渡損益の繰延べ 完全支配関係にあるグループの法人間の非適格合併により譲渡損益調整資産の移転が行なわれた場合には、被 合併法人における合併直前の税務上の簿価により合併法人に移転されたものとして取り扱われ、合併法人が当該 資産を譲渡した時点で繰延損益が実現することが明らかにされました。 問 10 譲渡損益調整資産(非減価償却資産)を簿価により譲渡した場合の課税関係 完全支配関係にあるグループの法人間で譲渡損益調整資産を時価と異なる価額で譲渡した場合には、譲渡法人に おいて、低廉譲渡のときは寄附金の減算認容及び損金不算入、高額譲渡のときは時価と譲渡対価の差額について 受贈益の計上を行い、時価と簿価の差額について譲渡損益の繰延べ処理を行います。一方、譲受法人においては、 低廉譲渡のときは時価と取得価額の差額について受贈益を計上の上益金不算入、高額譲渡のときは認定寄附金 の減算認容の上損金不算入の処理を行います。 問 11 譲渡損益調整資産(減価償却資産)を簿価で譲り受けた場合の譲受法人の申告調整 減価償却資産である譲渡損益調整資産の低廉譲渡の場合、減価償却費の損金算入限度額の計算は取得価額で はなく時価(取得価額に受贈益を加算した金額)を基礎として行い、会計上の減価償却費と当該受贈益相当額の合 計を損金経理による償却費として減価償却超過額の計算を行います。また、時価と取得価額との差額については受 贈益計上を行い、益金不算入の処理を行います。 問12 譲渡損益調整資産が減価償却資産である場合の戻入額の計算 完全支配関係にあるグループの法人に減価償却資産である譲渡損益調整資産の譲渡を行い、譲受法人で当該資 産の償却費が損金の額に算入された場合には、譲渡法人において繰り延べ処理された譲渡損益の戻入れを行う必 要があります。戻入額の計算は、原則法又は簡便法により行いますが、簡便法を適用する場合には、譲渡法人にお ける別表記載が要件とされるなど留意すべき事項が明らかにされています。 問13 譲渡損益調整資産に係る通知義務 完全支配関係にあるグループの法人間で譲渡損益調整資産の譲渡が行われた場合には、譲渡法人及び譲受法人 において一定の通知事由及び通知内容についての通知義務が課せられています。この通知の方法については特段 定められていませんが、通知書の書式例が公表されました。 6. 現物分配による資産の譲渡 問14 完全支配関係が外国法人によるものである場合の現物分配 現物分配により資産の移転を受ける者(被現物分配法人)が、その現物分配の直前において現物分配法人である 内国法人との間に完全支配関係がある内国法人のみである場合は、適格現物分配として取り扱われ、分配時にお いて移転資産の含み損益課税が生じません。しかし、被現物分配法人の中に外国法人が含まれる場合は、その現 物分配全体が非適格現物分配と扱われることになる旨が明らかにされました。 PricewaterhouseCoopers 3 Japan Tax Update August 2010 問15 親会社株式の現物分配 適格現物分配の要件として、被現物分配法人に交付する資産については金銭以外の資産であれば特に制限がな いことから、現物分配の直前に子会社と親会社との間に完全支配関係があるときには、当該親会社株式を対象とす る現物分配も適格現物分配となることが明らかにされました。 問16 適格現物分配制度の創設に伴う欠損金の制限措置の改正 親会社株式を対象として適格現物分配を行う場合、被現物分配法人である親会社において自己株式の取得は資本 取引であり、自己株式は税務上資産として取り扱われません。適格現物分配に係る欠損金等の損金算入制限の適 用上、切り捨てられる欠損金額を移転資産の含み益の範囲内とする特例が設けられましたが、親会社が移転を受 けた自己株式に含み益があったとしても、この特例の対象にはならないことが明らかにされました。 上記に関してご質問がございましたら、当法人の貴社担当者もしくは下記までお問い合わせください。 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 〒100-6015 東京都千代田区霞が関 3 丁目 2 番 5 号 霞が関ビル 15 階 電話 : 03-5251-2400(代表) パートナー 川崎 陽子 03-5251-2450 [email protected] マネージング・ディレクター 荒井 優美子 03-5251-2475 [email protected] シニアマネージャー 君塚 悟 03-5251-2712 [email protected] PricewaterhouseCoopers 4