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Japan Tax Update 2011 年度税制改正 (6 月 30 日施行)の概要 www.pwc.com/jp/tax

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Japan Tax Update 2011 年度税制改正 (6 月 30 日施行)の概要 www.pwc.com/jp/tax
www.pwc.com/jp/tax
Japan Tax Update
2011 年度税制改正
(6 月 30 日施行)の概要
Issue 66, July 2011
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2011 年 1 月 25 日に国会に提出され、
審議が棚上げされていた 2011 年度
税制改正法案(以下「改正法案」)は、
その一部が「現下の厳しい経済状況
及び雇用情勢に対応して税制の整
備を図るための所得税法等の一部を
改正する法律」として可決・成立し、6
月 30 日に公布・施行されました(以
下「2011 年度税制改正法」)。
改正法案のその他の項目、すなわち
税制の抜本改革の一環をなす改正
(法人実効税率の引き下げと課税ベ
ースの拡大)や納税環境整備に係る
改正については、引き続き審議が行
われることになります。
本ニュースレターでは、2011 年度税
制改正法の主な項目をご紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 法人税関連
(1) グループ法人税制等に関連する改正
(2) 外国法人による現物出資
(3) 新会計基準の導入等に伴う改正
2. 対内投資促進等の政策税制
(1) 国際戦略総合特別区域制度
(2) 認定研究開発事業法人等の課税の特例の創設
(3) 雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度の創
設
(4) エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合
の特別償却または特別税額控除制度の創設
(5) その他の政策税制の期限延長
3. 国際課税
(1) 外国税額控除制度に関連する改正
(2) 外国子会社合算税制に関連する改正
(3) 移転価格税制に関連する改正
4. 金融・不動産関連
(1) 証券税制
(2) 外国金融機関等の債券現先取引に係る利子の非課税
制度の拡充
(3) 振替公社債の利子の非課税制度の明確化
(4) 個人のデリバティブ取引
(5) 投資法人・特定目的会社関連
(6) イスラム金融に係る所要の税制措置
5. 消費税・所得税関連
(1) 免税事業者の要件の見直し
(2) 仕入税額控除におけるいわゆる「95%ルール」の見直し
(3) 認定事業会社の取締役等が受ける新株予約権等の行
使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等
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1. 法人税関連
(1) グループ法人税制等に関連する改正
2010 年度税制改正により導入されたグループ法人税制等に関して、その円滑な執行に向けて以下の見直しが行われま
した。
1) 100%グループ内の他の内国法人の株式を有する場合において、当該他の内国法人が清算中であるとき、解散(合
併による解散を除く)が見込まれるとき、またはその 100%グループ内で適格合併により解散することが見込まれるときは、
当該他の内国法人の株式については評価損を損金不算入とすることとされました(法法 33⑤、法令 68 の 3)。また、連結
納税開始時・加入時の時価評価(法令 122 の 12①五)や非適格株式交換・移転の場合の時価評価(法令 123 の 11①
五)においてもこれと同様に、当該他の内国法人の株式についての評価損を損金不算入とする措置が整備されました。
上記の改正は、2011 年 6 月 30 日以後に行う評価換え等について適用されます(法附則 12、令附則 11、13)。
2) 解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入制度においてマイナスの資本金等の額を期限切れ欠損金と同様に扱うこ
ととする(法法 59③、法令 118)ほか、連結納税制度において適用する期限切れ欠損金の損金算入制度について、対象
となる欠損金額から期限内の連結欠損金個別帰属額を控除しない等の整備が行われました(法法 59、81 の 9、法令
155 の 2 等)。
上記の改正は、前者については 2011 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用され(法附則 10)、後者につ
いては連結親法人の 2011 年 4 月 1 日以後に開始する適用連結事業年度(6 月 30 日前に終了する適用連結事業年度
を除く)の連結所得に対する法人税について適用されます(法附則 14、令附則 16 等)。
3) 適格分割等の場合の欠損金等の制限に係る特例計算について、その算定対象となる資産から移転を受ける法人の
自己株式が除外されます。
支配関係のある法人間の適格組織再編では一定の要件を満たさない場合には、欠損金の繰越控除の制限と特定資産
の譲渡等損失の損金算入制限を受けることがあります。この場合に、その制限を受ける適格組織再編が、事業を移転し
ない適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下「適格分割等」)であるときには、移転資産の含み損益の金額に
応じて制限対象となる金額を限定することができる特例が設けられています(確定申告書に移転資産の含み損益金額の
明細(別表7(1)付表三、別表 14(5))を添付することが要件とされます)。
今般の改正により、この特例について適格分割等により移転を受ける資産の中に、分割承継法人等(分割承継法人、被
現物出資法人または被現物分配法人)の自己株式が含まれている場合には、移転資産から自己株式を除外して含み損
益を算定することとされました(法令 113⑤一、123 の 9⑦一)。また、移転資産が分割承継法人等の自己株式のみである
場合には、明細(別表7(1)付表三、別表 14(5))の添付も不要とされます(法令 113⑥、123 の 9⑧)。
上記取扱いは「平成 22 年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他の資本に関係する取引等
に係る税制関係)」において示されていましたが、今般の改正により法令に明確化されたものです。
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4) 資本金が 1 億円以下の法人(以下「中小法人」)に適用される下記の中小企業特例について、100%グループ内の
複数の大法人(資本金 5 億円以上の法人等)に発行済株式の全部を保有されている中小法人には適用されないことに
なりました(法法 66⑥三、67、80①、81 の 12⑥、81 の 13、81 の 31①、143⑤三等)。
①
②
③
④
⑤
軽減税率
特定同族会社の特別税率(いわゆる留保金課税)の不適用
貸倒引当金の法定繰入率
交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
欠損金の繰戻しによる還付制度
2010 年度税制改正により、資本金 5 億円以上の(単一の)大法人に 100%支配される中小法人には上記の中小企業特
例は適用されなくなりました。改正により、同一グループに属する複数の大法人に 100%支配されている場合も、中小企
業特例の適用対象から除外されることとなりました。
上記の改正は、2011 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度(6 月 30 日前に終了する事業年度を除く)から適用されます
(法附則 13、16、50、61、71、76)。
(2) 外国法人が行う現物出資
外国法人が行う現物出資について、以下の措置が講じられました。
① 外国法人が内国法人に対して国外にある資産等の移転を行う現物出資は適格現物出資に該当しないこととさ
れます(法法 2 十二の十四、法令 4 の 3⑨)。
② 外国法人の日本支店等が内国法人に資産等の移転を行う適格現物出資に係る課税繰延べの要件について、
事業継続要件および株式管理要件が廃止されます(法令 188①十八、旧⑧)。
上記の改正は、2011 年 6 月 30 日以後に行われる現物出資について適用されます(法附則 11)。なお、同日前に行わ
れた現物出資について同日以後に事業継続要件または株式管理要件を満たさないこととなった場合についても、取戻し
課税を行わないこととされます(令附則 19)。
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(3) 新会計基準の導入等に伴う改正
1) 国際会計基準において求められている過年度遡及修正について、我が国においても「会計上の変更および誤謬の
訂正に関する会計基準(企業会計基準第 24 号)」が公表され、2011 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の期首以
後に行われる会計上の変更等から適用されることになりました。
当該会計基準においては、会計上の見積りの変更に関しては遡及修正を行わず、変更期間又は将来にわたって会
計処理を行うことになりますが、当該処理に対応して、固定資産の耐用年数を短縮した場合の臨時償却制度が廃止
され、従来、耐用年数の短縮年度に一時の費用として計上していた過年度の減価償却費不足額について、見積変
更時の未経過年数にわたって減価償却費として費用計上することとされました。法人税法上も、上記会計基準の導
入に対応して以下の措置が講じられました。
① 従来、臨時償却制度に対応する制度として、減価償却資産が技術革新等により著しく陳腐化した場合における
陳腐化償却制度が設けられていましたが、臨時償却制度の廃止に対応して、陳腐化償却制度が廃止されました
(旧法令 60 の 2)。
② 耐用年数の短縮特例について、国税局長の承認を受けた未経過使用可能期間をもって耐用年数とみなすこと
により、その承認後は未経過使用期間で償却できる制度とされました法令 57、61)。
上記の改正は、2011 年 4 月 1 日以後開始事業年度において、2011 年 6 月 30 日以後に承認を受けた場合より適
用されます(令附則 6)。
2)
棚卸資産の評価について、2011 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度(2011 年 6 月 30 日前に終了した事業年度
は除く)から切放し低価法が廃止されました(法法 29、法令 28、令附則 5)。なお、2011 年 4 月 1 日以後に開始し、
6 月 30 日以後最初に終了する事業年度の直前の各事業年度末の評価額をもって取得価額とする経過措置が講じ
られています(令附則 5)。
3)
確定申告書等の添付書類に、過年度事項の修正の内容を記載した書類が追加されました(株主資本等変動計算
書等に記載されている場合を除く)(法規33一、35二、37の10一、37の12二、37の17二、61②一)。上記の改正は、
法人の2011年4月1日以後に開始する事業年度(6月30日前に終了する事業年度を除く)から適用されます(法規附
則2、5、7、8 )
2. 対内投資促進等政策税制
(1) 国際戦略総合特別区域制度
1) 青色申告法人で総合特別区域法の指定法人に該当するものが、同法の施行の日から 2014 年 3 月 31 日までの間
に、国際戦略総合特別区域内において、特定機械装置等(機械装置については1台2千万円以上、建物等につい
ては1億円以上に限る)の取得等をして、特定国際戦略事業の用に供した場合には、以下の選択適用が認められま
す(措法 42 の 11、68 の 15、措法附則1十一、52、66)。
① 取得価額の 50%(建物等については、25%)の特別償却
② 取得価額の 15%(建物等については 8%)の税額控除(法人税額の 20%を限度とし、控除限度超過額は 1 年
間の繰越しが可能)
2)
青色申告法人で総合特別区域法の施行日から 2014 年 3 月 31 日までの間に指定特定事業法人に該当するもの
(下記(2)の認定研究開発事業法人等の課税の特例の適用を受けるものを除く)が、国際戦略総合特別区域内に
おいて行われる認定総合特別区域計画に定められた一定の事業を行う場合には、指定日以後 5 年を経過する日
までに終了する事業年度において、その事業に係る所得の金額の 20%を損金算入(所得控除)することが認められ
ます(措法 60 の 2、68 の 63 の 2、措法附則1十一、54、69)。
なお、上記 1)の特別償却または特別税額控除制度の適用を受ける事業年度においては、2)の特例は適用できません。
(2) 認定研究開発事業法人等の課税の特例の創設
青色申告法人で「特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法」の施行日から 2014 年 3 月 31
日までの間に研究開発事業計画または統括事業計画の認定を受けた認定研究開発事業者(以下「認定研究開発事業
法人」)または認定統括事業者(以下「認定統括事業法人」)に該当するものは、その認定に係る研究開発事業または統
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括事業に係る所得について、これらの事業計画の認定の日以後 5 年を経過する日までに終了する事業年度において、
これらの事業に係る所得の金額の 20%を損金算入(所得控除)することが認められます(措法 60 の 3、68 の 63 の 3、措
法附則1十、55、70)。
なお、認定研究開発事業法人にあっては試験研究費の特別税額控除制度または上記(1)の特別償却もしくは特別税額
控除制度の適用を受ける事業年度に、認定統括事業法人にあっては上記(1)の特別償却または特別税額控除制度の
適用を受ける事業年度においては、この特例は適用できません。
(3) 雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度の創設
青色申告書法人が、2011 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度において、以下の要件を
満たす場合には当該事業年度の法人税額から、増加した雇用保険一般被保険者の数(に 20 万円を乗じた金額(法人
税額の 10%(中小企業者等については 20%)を限度とする)を損金算入(所得控除)することが認められます(措法 42 の
12、68 の 15 の 2)。
① 前期及び当期に事業者都合による離職者がいないことの証明がされていること
② 基準雇用者数(当期末の雇用者数が前期末の雇用者数を超える人数)が 5 人以上(中小企業者等については、
2 人以上)および基準雇用者割合(基準雇用者数を前期末雇用者数で除した割合)が 10%以上であることにつ
き証明がされたものであること
③ 給与等支給額(当期の所得計算において損金算入される給与等)が比較給与等支給額(前期の給与等支給
額+(前期の給与等支給額 X 基準雇用者割合 X30%)以上であること
④ 雇用保険法第 5 条第 1 項に規定する適用事業を行っていること
上記の改正は、法人の 2011 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度(6 月 30 日前に終了する事業年度を除く)から適用
されます(法附則 50、67)。
(4) エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度の創設
地球温暖化問題への対応とわが国の環境・エネルギー技術の開発のため、青色申告法人が 2011 年 6 月 30 日から
2014 年 3 月 31 日までの間にエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、これを 1 年以内に国内にある事業
の用に供した場合には、取得価額の 30%の特別償却が認められます。中小企業者等については取得価額の 7%の税
額控除(法人税額の 20%を限度とし、控除限度超過額は 1 年間の繰越し)との選択適用が可能です(措法 42 の 5 の 2、
68 の 10 の 2、法附則 51、65)。
(5) その他の政策税制の期限延長
租税特別措置法の以下の政策税制の適用期限が 2012 年 3 月 31 日まで延長されました。
① 中小企業者等の法人税率の特例(措法 42 の 3 の 2、68 の 8)
② 試験研究を行った場合の特別税額控除の特例(措法 42 の 4 の 2、68 の 9 の 2)
③ エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度における即時償却
措置(措法 42 の 5、68 の 10)
④ 事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却または特別税額控除(措法 42 の 7、68 の 12)
3. 国際課税
(1) 外国税額控除制度に関連する改正
外国税額控除制度に関して以下の点が見直されました。
1)
複数の税率の中から納税者と税務当局等との合意により税率が決定される税について、最も低い税率を上回る部
分は、外国税額控除制度および内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆる外国子会社
合算税制)等の適用上、外国法人税に該当しないものとされます。
上記の改正は、2011 年 6 月 30 日以後に納付することとなる外国法人税について適用されます(法令 141③、令附
則 15)。
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2)
控除限度額の計算において、租税条約の規定により条約相手国等において租税を課することができるとされる所得
(租税条約の規定において控除限度額の計算に当たって考慮しないものとされる所得を除きく)で当該条約相手国
等において外国法人税を課されるものは、国外所得に該当するものとされます(法令 142④三、155 の 28④三)。こ
れにより、従来、租税条約の規定に認められた課税が行われているにも関わらず、二重課税が生じていた場合も今
般の改正により救済されることとなります。
上記の改正は、2011 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から適用されます(令附則 2)。
(2) 外国子会社合算税制に関連する改正
外国子会社合算税制の円滑な執行を図るため、以下の改正が行われました(措法 66 の 6、68 の 90、措令 39 の 14、39
の 15、39 の 17 の 2、39 の 114、39 の 115、39 の 117 の 2)。
1) 外国子会社合算税制における適用除外基準は、以下のとおりですが、株式等の保有を主たる事業とする統括会社
については、事業基準以外の適用除外基準の判定を統括事業により行うことが明確にされました。
 事業基準
 実体基準
 管理支配基準
 所在地国基準あるいは非関連者基準
2)
特定外国子会社等に該当するかどうかの判定における租税負担割合(いわゆるトリガー税率)の計算上、外国関係
会社の本店所在地国以外の国又は地域に所在する法人から受ける配当等が非課税所得の範囲から除外されるた
めの持株割合要件等が廃止されました。これにより、外国関係会社が受けた配当については全額非課税の場合で
も、租税負担割合の計算上は非課税所得として扱われず、計算式の分母への加算が不要となります。
3)
日本税法基準によって特定外国子会社等の合算対象とされる金額を計算する場合には、適格現物分配に係る課
税繰延べ規定の適用はないことが明確にされました。これにより、特定外国子会社が行った適格現物分配にかかる
キャピタルゲインは、合算対象とされる金額に含まれることとなります。
4)
その他
① 外国関係会社の所得の金額が零の場合のトリガー税率の判定は、外国法人税の表面税率により行うことが明確
にされました。
② 適用除外要件を満たす特定外国子会社においても合算課税の対象となる資産性所得の基因となる株式等に係
る「保有割合 10%未満」の要件の判定時期は、配当等については当該配当等の効力が生ずる日、譲渡につい
ては当該譲渡の直前であることが明確にされました。
③ 資産性所得に係る費用の計算について、次の措置が講じられました。
(i) 利子・配当等の額に対して課される外国源泉税の額は、資産性所得の金額の計算上控除できるよう計算
方法が見直されました。
(ii) 債券の償還差益に係る資産性所得の費用の額を簡便法により計算する場合には、償還の直前の事業年
度終了の時(現行:償還の直前)の総資産の帳簿価額を用いることとされました。
(iii) 株式等および債券の譲渡に係る資産性所得の金額の計算上控除する取得価額について、移動平均法等
により計算することが明確にされました。
(iv) 特許権等の使用料等に係る資産性所得の金額の計算上控除する特許権等に係る減価償却費は、継続適
用を要件として、日本税法基準又は現地税法基準のいずれかにより計算することが明確にされました。
④ 資産性所得の合算課税制度における以下の現行の適用除外基準について、それぞれ次の明確化が行われま
した。
(i) 資産性所得割合基準(当期純利益に占める資産性所得の合計額の割合が 5%以下である)
「当期純利益」には外国源泉税の額は含まれないことが明確にされました。
(ii) 収入金額基準(資産性所得の合計額に係る収入金額が 1,000 万円以下であること)
「収入金額」の定義を明確化し、償還差益に係る収入金額とは、償還金額ではなく償還差益であること等が
明確にされました。
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5)
特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例等(いわゆるコーポレート・インバ
ージョン)について、上記と同趣旨の改正が行われました(措法 66 の 9 の 2、68 の 93 の 2、措令 39 の 20 の 6、39
の 120 の 6)。
上記の改正は、内国法人の 2011 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度において、特定外国子会社等の合算対象とさ
れる金額(当該特定外国子会社等の 2010 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度分に係る)につき合算課税を行う場合
について適用されます(措法附則 58、59、74、75)。ただし、上記 3)の改正は、特定外国子会社等の 2011 年 6 月 30 日
以後に行われる現物分配について適用されます(措令附則 21②、30②)。
(3) 移転価格税制に関連する改正
移転価格税制の円滑な執行を図るため、租税特別措置法第 66 条の 4 第 2 項に規定される独立企業間価格算定方法
の適用優先順位が廃止されました。(措法 66 の 4、68 の 88、措令 39 の 12、39 の 112)。
改正前の移転価格税制では、いわゆる基本三法(独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method)、再販売
価格基準法(Resale Price Method)、原価基準法(Cost Plus method)が適用できない場合に限り、基本三法に準ずる方
法又は政令で定める方法(取引単位営業利益法もしくは利益分割法)を用いることができると定められていました。OECD
移転価格ガイドラインの改正を受けて、独立企業間価格の算定方法の適用優先順位を廃止し、独立企業間価格の算定
にあたっては最も適切な方法を選定することとされたものです。
上記の改正は 2011 年 10 月 1 日以後に開始する事業年度から適用されます(措法附則1二、57、73)。
4. 金融・不動産関連
(1) 証券税制
上場株式等の配当所得および譲渡所得等に係る軽減税率(現在 10%)の適用期限は 2011 年 12 月 31 日までとされて
いましたが、当該適用期限を 2 年延長することとされました(平成 20 年所法等改正法附則 32、33、43、45、94)。これに
伴い、日本版 ISA(非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得および譲渡所得等の非課税)の導入時期も 2014
年 1 月 1 日とされました(法附則 29、37)。
(2) 外国金融機関等の債券現先取引に係る利子の非課税制度の拡充
外国金融機関等の証券貸借取引および債券現先取引について、次の措置が講じられました(措法 42 の 2、措法 67 の
17⑦⑧)。
①
一定の要件を満たす証券貸借取引(現金または有価証券を担保とするものに限る)につき支払いを受ける利子
および貸借料等を非課税とする。
②
非課税となる証券貸借取引および債券現先取引の対象資産に、振替地方債、振替社債等、上場株式等(証
券貸借取引において用いる場合に限る)を加える。
上記の改正は、2011 年 6 月 30 日以後に開始する証券貸借取引または債券現先取引につき支払いを受ける利子およ
び貸借料等について適用されます(法附則 48、63)。
(3) 振替公社債の利子の非課税制度の明確化
非居住者等が受ける振替公社債の利子等の非課税制度について、次の措置が講じられました(措法 5 の 2、措法 5 の
3)。
①
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外国の法令に基づいて設定された信託で退職年金等信託に類するもの(受益者等課税信託に該当するもの
に限る)のうち、当該外国において主として退職年金、退職手当その他これらに類する報酬を管理し、または給
付することを目的として運営されるものの信託財産である振替公社債につき生ずる利子について、当該信託の
受託者が支払いを受けるものとみなして非課税制度を適用する。
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②
非居住者または外国法人が任意組合等の組合財産または受益者等課税信託の信託財産として有する振替公
社債につき支払いを受ける利子については、当該非居住者または外国法人が行う手続きに加え、当該任意組
合等の業務執行者または当該受益者等課税信託の受託者が一定の手続きを行う場合に限り、非課税制度の
適用を受けることができるものとする。
上記の改正は、2011 年 6 月 30 日以後にその計算期間が開始する振替公社債の利子について適用されます(法附則
25)。
(4) 個人のデリバティブ取引
店頭金融デリバティブ取引および店頭商品デリバティブ取引に係る所得について、先物取引に係る雑所得の課税の特
例の対象とし 20%申告分離課税としたうえで、市場金融デリバティブ取引および市場商品デリバティブ取引との損益通
算および損失額の 3 年間の繰越控除を可能とすることとされました(措法 41 の 14)。
上記の改正は、2012 年 1 月 1 日以後に行われるデリバティブ取引の差金等決済について適用されます(法附則 43)。
(5) 投資法人・特定目的会社関連
1) 特定目的会社および投資法人が取得する一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、価
格から控除する額が、不動産の価格の 5 分の 3(現行 3 分の 2)に相当する額とされた上で、適用期限が 2013 年 3 月
31 日まで延長されました(地法附則 11③⑤)。
2) 投資法人に係る配当等の損金算入要件の一つに、投資法人の発行した投資口に係る募集の 50%超が国内におい
て行われること、という要件(以下、「投資口国内募集要件」)がありますが、2011 年度税制改正施行令等公布前は、当該
要件を定める租税特別措置法施行令において「規約においてその発行をする投資口の発行価額の総額のうちに国内に
おいて募集される投資口の発行価格の占める割合が 50%を超える旨の記載または記録があるもの」と記載されており、投
資法人が増資により資金調達を行う際に、同内容を規約に記載の上、「個々の増資ごとに、その過半を国内で募集する
必要がある」との解釈がなされていました。
2011 年度税制改正施行令等により、「その発行をする」という文言が削除され、投資口国内募集要件とは、「規約におい
て投資口の発行価額の総額のうちに国内において募集される投資口の発行価額の占める割合が 50%を超える旨の記
載または記録があるもの」と変更されました。このことにより、投資法人の規約に当該改正を反映させれば投資口国内募
集要件は投資口の発行価額の累積総額により判定が行われることとなりました(措令 39 の 32 の 3)。
上記の改正は、投資法人の 2011 年 6 月 30 日以後に終了する事業年度分の法人税について適用されます(措令附則
27)。
3) 特定目的会社に係る配当等の損金算入要件の一つに、特定目的会社の発行した優先出資および基準特定出資に
係るそれぞれの募集の 50%超が国内において行われること、という要件(以下、「出資国内募集要件」)がありますが、
2011 年度税制改正施行令等公布前は、当該要件の解釈が必ずしも明らかとなっていたわけではありませんでした。
2011 年度税制改正施行令等により、出資国内募集要件とは、「資産流動化計画においてその発行をする優先出資また
は基準特定出資の発行価額の総額のうちに国内において募集等がされる優先出資または基準特定出資の発行価額の
占める割合(以下、「出資国内募集割合」という)がそれぞれ 50%を超える旨(2 以上の種類の優先出資を発行する場合
における資産流動化計画にあっては、それぞれの種類の優先出資ごとに出資国内募集割合が 50%を超える旨)の記載
または記録があるもの」(2011 年度税制改正施行令等によりアンダーライン部分が追加)とされ、二以上の種類の優先出
資を発行する特定目的会社については、それぞれの種類の優先出資ごとに国内募集の判定を行うことが明確化されまし
た(措令 39 条の 32 の 2③)。
上記の改正は、特定目的会社の 2011 年 6 月 30 日以後に終了する事業年度分の法人税について適用されます(措令
附則 26①)。
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なお、2011 年 6 月 30 日前に 2 以上の種類の優先出資を発行した特定目的会社(資産流動化法第 11 条第 2 項に規
定する新計画届出をしたものを除きます)については、2011 年 6 月 30 日以後に 2 以上の種類の優先出資を発行しない
限り、従前の例によることとされています(措令附則 26②)。
4) 金融商品取引法の適格機関投資家制度の見直しに伴い、機関投資家の範囲に、金融商品取引法第 2 条に規定す
る定義に関する内閣府令第 10 条第 1 項第 27 号に規定する海外年金基金で届出時における純資産額が 100 億円以
上であるものとして金融庁長官に届出を行ったものが追加されました(措法規則 22 の 18 の 4①一)。
(6) イスラム金融に係る所要の税制措置
2011 年度税制改正法とは別途、2011 年 5 月 17 日に成立した「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取
引法等の一部を改正する法律」において、イスラム債として発行される社債的受益権に係る所得税の非課税等、イスラム
金融に関する所要の税制措置が講じられています。なお、施行時期は政令等への委任事項となっています。
5. 消費税・所得税関連
(1) 免税事業者の要件の見直し
事業者免税点制度適用の判定について、以下の見直しが行われました。
法人の事業年度の基準期間(前々事業年度)における課税売上高が 1,000 万円以下である場合において、次に掲げる
期間の課税売上高が 1,000 万円を超えるときは、事業者免税点制度が適用されないこととなりました(消法 9 の 2)。また、
事業者免税点制度判定における課税売上高に代えて、判定期間中に支払った所得税法に規定する支払明細書に記載
すべき給与等の金額に相当するものの合計額によることが認められることとなりました(消規 11 の 2)。
①
事業者免税点制度適用の判定対象となる事業年度(以下「適用判定事業年度」)の前事業年度(事業年度が
7 月以下の場合を除き、7 月以下の場合は②による)が開始の日から 6 月の期間
適用判定事業年度の前事業年度が 7 月以下の場合、適用判定事業年度の前々事業年度(適用判定事業年
度の基準期間に含まれるものその他一定のものを除く)開始の日以後 6 月の期間(当該前々事業年度が 6 月
以下の場合には、当該前々事業年度開始の日からその終了の日までの期間)
②
上記の改正は、適用判定事業年度が 2013 年 1 月 1 日以後に開始する年度から適用されます(法附則 22①、規附則
1)。
【改正前】
基準期間の売上高だけで、免税点制度適用の判定を行う
(基準期間)
前々期
900 万円
(適用判定事業年度)
前期
3,000 万円
免税
当期
3,000 万円
免税
課税
【改正後】
基準期間の売上高と適用判定事業年度の前事事業年度の上半期の売上高により免税点制度適用の判定を行う
(適用判定事業年度)
(基準期間)
前々期
前期
900 万円
1,500 万円
免税
当期
3,000 万円
課税
課税
(2) 仕入税額控除におけるいわゆる「95%ルール」の見直し
課税売上割合が 95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除できる制度については、その課税期
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間の課税売上高が 5 億円(その課税期間が 1 年に満たない場合には年換算)以下の事業者に限り適用することとされま
した(消法 30②)。
上記の改正は、2012 年 4 月 1 日以後に開始する課税期間から適用されます(法附則 22③)。
(3) 認定事業会社の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等
特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法の制定に伴い、同法の認定を受けた外国株式会社
が会社法に相当する外国の法令の規定に基づく付与決議等により発行する新株予約権が、認定研究開発事業者また
は認定統括事業者の取締役等である個人に付与されるものについても、新株予約権等の行使時の課税を繰り延べる措
置が講じられました(措法 29 の 3)。
上記の改正は、同法の施行日以後に行う特定外国新株予約権の行使について適用されます(法附則 34)。
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