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犬山地域・飛水峡地域における三畳系~下部ジュラ系珪質粘土岩一層状チャート ユニットの航空写真と層序学的対比について A e

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犬山地域・飛水峡地域における三畳系~下部ジュラ系珪質粘土岩一層状チャート ユニットの航空写真と層序学的対比について A e
大阪徹化石研究会館,特別号,第 12 号,
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.145 157, 2∞1 年 12 月
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犬山地域・飛水峡地域における三畳系~下部ジュラ系珪質粘土岩一層状チャート
ユニットの航空写真と層序学的対比について
杉山和弘*・川上紳-**・高野雅夫付事
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チャートが連続的に露出しており,これらの地域では
はじめに
1970 年代後半から放散虫生層序学的研究が盛んに行われ
愛知県/岐阜県県境の木曽川河床や岐阜県飛騨JII拘床
てきた(例えば Nakaseko
andNish加町'8, 1979;Yao
は,美濃帯のチャートー砕屑岩シークェンスが大規模に露
e
ta1~
出していることでよく知られている.特に木曽川沿いの犬
両地域および岐阜市金華山地域において.
山地域や飛騨川沿いの飛水映地域には,シークエンス下部
来多数の研究者によって検討された三畳紀放散虫化石帯を
を代表する三畳紀珪費粘土岩や三畳紀一ジュラ紀層状
詳細に再検討した.その結果,下部三畳系~最下部ジュラ
1980). 近年 Sugiyama (1 997) は,犬山・飛水峡
Yao(1 982)
以
系に 20 の放散虫化石帯を設定すると共に,放散虫の出現・
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消滅イベントと幾つかの鍵層を用いて,下部三畳系~最下
部ジュラ系の岩相層序を連続的に復元した.
周知の通り,美濃帯のような付加帯における,堆積物あ
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るいは重量出化石の研究はこれまで層序学や構造地質学の
発展に対して多大な貢献を果たしてきた.しかしながら今
後は,
(1)新生界を中心に行われている高精度古海洋学
が,より古い時代を研究対象にシフトしていくと考えられ
ること, (2) 現在の海洋底に三畳系以前の堆積物が存在し
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杉山和弘・川上紳一・高野雅夫
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ないこと,などから,付加帯中の遠洋性堆積物及びそこか
「全地球史解読j によって撮影された高倍率の航空写真を
Sugiyama(1 997) の検討セクションを図示い
ら産する化石が,古海洋学的研究のターゲットとしても大
用いて.
きく注目されることが考えられる.そしてその際,
今後の同地域における研究の進展に基礎データを提供する
Sugiyama (1 997) において重複や欠落なく層序が組み立
ことを主な目的とする.加えて,飛水峡地域の層状チャー
てられている犬山・飛水峡地域の下部三畳系~最下部ジユ
トユニットにおいて,
ラ系の珪質粘土岩・層状チャートユニットは,当時の古海
Sugiyama(1 997)
のSection
HZ
以外のセクション(Section HD) における岩相層序と産
洋を考察する上で,世界的な研究が展開されうる場所とし
出放散虫化石を示し,犬山・飛水峡両地域における層状
て期待されるものである.
チャートユニットの特徴や,放散虫生層序を用いたチャー
また Sugiyama (1 997) の研究以降も,世界各地で三畳
系放散虫化石生層序の進展が見られることから{例えば
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1999) ,本邦でも三
ト層の高精度な対比の可能性についても言及する.
航空写真について
畳系~下部ジュラ系放散虫化石生層序の再検討がいずれ行
木曽川や飛騨川の河床には大規模な鍵頭が連続的に露出
われると予想される.その際,犬山・飛水映地域の珪質粘
しているが,多くの場合それらは観察者の足下に広があこ
土岩~層状チャートは,再び中心的な研究対象となること
とになる.従って通常の写真撮影方法では,露頭を広域的
が予想される.
に正面から撮影することは不可能である.このことから,
しかしながら,
Sugiyama(1 997)
は検討したセクショ
露頭の概略を示す際にはスケッチが用いられることが多い
ンの位置を簡単な位置図で示したにすぎず,他の研究者が
が(例えば水谷・小池, 1982 ;木戸 .1982),この場合.
同じセクションを用いて検討を行うことは困難な状況に
他の研究者がサンプリングの位置を正確に検証することは
あったそこで本論では,科学研究費補助金重点領域研究
難しい.チャート層の特徴をより詳細に示した Hori
犬山・飛水峡地織チャート層の航空写真と層序学的対比
(1 992) の露頭スケッチなどでは
このような問題は避け
1
4
7
に整合的に重なっている.この部分は.河床露頭に凹面を
ることが出来るが,さらに広域な露頭を対象とする場合に
形成し,側方に容易に追跡できる.色調的には.厚い珪質
は,詳細なスケッチの作成に莫大な労力と時闘が必要と
粘土岩層に近接する B-type チャート層下部では赤色を
なってくる.
呈するが,上部に向かつて緑~灰緑色に漸移し,やがて
以上のような理由から.
Sugiyama(1 997)
が検討を
チャート層自体が F-type へと変化している.この F-type
行ったセクションを中心として木曽川と飛騨川の河床露
チャート層は. Se
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nHD の上限を越えてさらに連続し,
頭の広範囲をヘリコプターから撮影し,航空写真として記
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nHZ まで続いている.
録した.以下に航空写真の詳細を記す.
放散虫化石は,概して保存状態不良で. Fig.2 に示され
ている種以外にも,種名を付けることが出来ない放散虫が
撮影者:中日本航空(株).
撮影日時:平成 9 年 4 月 26
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0-13:00 時.
多産する.しがしながら全体の産出量は,犬山地域に比較
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には,
Sugiyama
天候:晴天.
して著しく少ないと言える.
撮影高度: 120m 程度.
(1 997) が定義した Spine A2-D2 を含めて 45 分類群の
撮影枚数: 197 枚.
層位分布が示されている.それらのうち. HD-3 より上位
ネガ保管場所: (株)中日本航空.
で産出する白pnuchosphaera 属と.
HD- 14 より上位で
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sSugiyama に着目すると,
乙の航空写真は,大きく引き伸ばしてプリントしでも画像
産出する Poulpus
が鮮明であることから,サンプリングポイントを正確に図
本セクションは Sugiyama (1997) の TR4B 繕上部から
示することができるばかりでなく,チャート層の特徴,例
TR5B 帯下部に対比されることになる.
えば単層の厚さの変化を室内作業で把握することも可能で
ある.
以上の Section HD におけるデータと,
Sugiyama
(1997) が TR4B 帯から TR5B 帯を認定した犬山地域の
上記の航空写真を用いて.
Sugiyama(1 997)
が検討を
S配tion
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nQ ・Section R と坂祝地域のSection
行ったセクションを Plates 1-4 に示した.各 Plate の位置
N のデータを比較すると,犬山・坂祝地域の層状チャート
関係は Fig.1 に示しである.なお,各セクションに関する
層が赤色を主体としている点を除いて,岩相膚序の変化パ
記載および産出放散虫化石については Sugiyama
(
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ターンも全く一致している様子が伺える.従って. S
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を参照されたい.また Plate 3-1 には,今回新たに岩相層
HD の上部に認められる厚い珪質粘土岩層は犬山地域・坂
序と産出放散虫化石を記載するSection HD の位置も表し
祝地域の CS-1
である.
る.
で,犬山・坂祝地域のそれとほぼ同様の値である.従って
に示されている飛水峡河床においては,多少
の繰り返しは認められるものの,飛騨川上読方向に向かつ
て下位の地層が露出している.従ってSection
2-2) は,見かけ上 Section
HZ(Sugiyama,
H D(
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1997) の約
8m ほど下位に位置していることになる.柱状図ならびに
産出放散虫化石を Fig.2 に示した.
S配tion
チャート層の堆積速度も,少なくても TR5A 帯前後に関
しては,犬山・坂祝地域~飛水峡地域にかけては同じで
あったことになる.
考察および今後の課題
これまでの多くの研究により,三畳紀~ジュラ紀チャー
H D(
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e2-2) においては,摺曲構造が発遣
する箇所が認められるものの断層は認められない.摺曲
を考慮すると層厚は約 8m で
1997)に対比されることにな
また. Se
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nHD における TR5A 帯の層庫は約 6m
飛水岐地蟻のSection トむについて
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(Sugiyama,
トー砕屑岩シークェンスでは,マツバブルサイズでの構造
や層序についてはよく把握されるようになったといえる.
チャート層は岩相に基づ
また模式的な総合柱状図も幾っか示されている (K泊lUra
き,下部~中部の F-type (杉山ほか.
andHori, 1993 など) .しかしながら局所的に発達する多
1997)
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;Sugiyama,
(杉山ほか. 1
9
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:Sugiyama,
くの摺曲や断層によって
と,上部の B-type
実際の層序を下部三畳系から
1997) から F-type に漸移する部分に大別できる.下部~
ジュラ系にかけて連続的に野外で観察し,重複や欠落なく
中部の F-type は硬質で,河康において凸地形を呈し,層
層序を組み立てることはSugiy.釘na (1 997) まで行われて
状チャートのチャート単層と挟みの珪質粘土岩層の互層状
いなかった.ただし Sugiyama (1997) においては.復元
態が不明瞭である.色調は灰~灰緑色を主体としている.
された岩相層序が広域的に適用できるかどうかの検討結果
この F岬type チャート層の下限はプッシュに覆われており
は提示されていなかった.
観察不可能である.上部に位置する B-type は,場所によっ
ては層厚 20cm に達する珪質粘土岩盾を挟んで
F-type
今回のSection HD の検討結果より,少なくとも犬山・
坂祝地域と約 25km 離れた飛水峡地域の問に,全く同じ
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犬山・飛水峡地織チャー卜層の航空写真と層序学的対比
岩相層序が確認できることが明らかになった.また,
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文献
5A 帯前後に限って言えば,見かけ上ほぽ同じ堆積速度を
有することから,チャート層の堆積環境,例えば放散虫殻
の堆積量などは,ほぽ同じであったことが考えられる.航
空写真からも明らかなように,犬山・坂祝地域と飛水峡地
域ではチャート層の色調に大きな違いが認められる.放散
虫化石の保存状態の差を考慮すれば,このことは,続成作
用や二次的な変成作用といったものに起因している可能性
が考えられる.
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木戸
今回の検討において,離れた両地域にまたがって,
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l という岡ーの単層が追跡可能であることが確認された意
聡, 1982 ,岐阜県七宗町上麻生における三畳紀
チャートとジュラ紀珪質頁岩の産状について.大阪微
化石研究会誌,特別号, No.5, 135悶 15 1.
らも,議質粘土岩~層状チャートの岩相層序・生層序に関
Hori, R. , 1990, LowerJ
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Kimura, K.andHori, R. , 1993 , 0偽craping a
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する質の高いデータの集積が望まれる.また,それらの
水谷伸治郎・小池敏夫, 1982,岐阜県各務原市鵜沼,木曽
データを相互補完する意味においても,古地磁気層序や地
川河畔のジユラ紀瑳質頁岩と三畳紀チャート中の放散
球化学層序に闘する研究も今後さらに進展していかなけれ
虫.大阪微化石研究会誌,特別号, No.
義は大きいと言える.将来的には,放散虫生層序の精度の
更なる向上を伴って, CS-l 以外についても単層レベルで
の対比が可能となることが期待される.その際,本論で紹
介した航空写真においては
CS-l をはじめとして様々な
チャート層の特徴が明瞭に判別可能であることから, (1)
室内作業における特定のチャート層の年代や分布の予測
や,
(2) 野外調査の効率化に対して,大きく貢献するも
のと期待される.
さらに将来的には,犬山・飛水峡地域以外の本邦各地か
ばならない.こういった課題をクリアした時,はじめて新
生界で行われているような精度の高い古海洋学的研究が,
層状チャートを対象に繰り広げられることであろう.
なお本論で紹介した航空写真については,焼き増しプリ
ントしたもの,あるいは PhotoCD として,実費にて提供
可能である.興味のある方は筆者の一人である高野
([email protected]) までご連絡願いたい.
謝辞
本論は,杉山が名古屋大学大学院理学研究科に在籍時に
行った研究を基に,航空写真の撮影や飛水峡地域における
放散虫化石の再検討などの結果を加筆したものである.航
空写真の撮影に関しては,科学研究費補助金特定領域「全
地球史解読j の研究費{研究課題番号 07238105,平成 7
年度~平成 9 年度)を用いた.その際.熊湾蜂夫名古屋大
学名誉教授(現核燃料サイクル開発機構)をはじめ,関係
者の方々には様々な便宜を図っていただいた.記して感謝
いたします.
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