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ファンドニュース 有責組合の監査上の取扱いなどの改正について 背景
ファンドニュース 有責組合の監査上の取扱いなどの改正について 2015 年 5 月 背景 投資事業有限責任組合(以下、「有責組合」といいます。)の監査に関しては、日本公認会計士協会から業種別委員 会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」(以下、「38号」といいます。)が公表 されていますが、今般、この取扱いが改正されています。 有責組合の財務諸表等は、有限責任組合員に提出するために、投資事業有限責任組合契約に関する法律(以下、 「有責組合法」といいます。)、中小企業等投資事業有限責任組合会計規則(以下、「有責組合会計規則」といいます。)、 及び投資事業有限責任組合契約(以下、「組合契約」といいます。)に準拠して作成されており、未公開株式も含めた全 ての投資は、金融商品に関する会計基準とは異なり、組合契約に定める評価方法に従い時価で評価されています。 平成26年2月における監査基準の改訂及び同年4月における監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠 組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」が公表され、わが国においても一般目的の財務諸表に対する適正 性監査とは別に特別目的の財務諸表に対する準拠性監査という概念が整理されたことを受けて、日本公認会計士協会 では、平成27年3月31日に38号の改正を行い、有責組合会計規則等に準拠して作成された有責組合の財務諸表等の 会計上及び監査上の取扱いに関し、特別目的の監査に対応するための見直しを行いました。これにより、財務諸表等の 注記事項や、存続期限において投資証券が残存した場合の対応について整理されることになりました。今回は、この38 号の改正について解説します。 改正の概要 (1)財務諸表等の注記事項の追加 従来からの財務諸表等の注記事項に加え、以下が追加されました(37項)。 1. 財務諸表等が有責組合法、有責組合会計規則及び組合契約に準拠して作成している旨 2. 有責組合の有期限性の下での継続企業の前提の考え方 3. 存続期限までに資産の回収及び負債の返済を完了できなかった場合にはその旨 また、従来から投資の評価方法の概要を、重要な会計方針として記載することとなっていますが(38項)、付録1(3)注 記のひな型に記載の例示が追加され、投資の評価方法の具体的な記載が求められるようになりました。 (2)存続期限に資産の回収及び負債の返済が完了されない場合の対応 有責組合は、その設立当初に存続期限が定められていますが、存続期限までに資産の回収及び負債の返済が完了 されないおそれがある場合や実際に完了されない場合もありえます。そこで、投資(未公開株式)の評価方法などに対す る会計上及び監査上の取扱いについて検討され、以下のように整理されました。 ① 貸借対照表日の翌日から存続期限までの期間が一年未満になった場合(以下、「最終期の直前期」) 最終期の直前期においては投資の全銘柄が処分の対象となるため、従来より、評価基準による評価が早期換金化 による流動性リスクも加味した価額と乖離しないような対応が必要とされています。 また、前述したように、存続期限までに資産の回収及び負債の返済を完了できなかった場合にはその旨を財務諸表 等に注記することが追加されましたが、最終期の直前期においても、存続期間内での資産の回収及び負債の返済が 確実に完了すると見込まれない限り、継続企業の前提の考え方に従い、注記を検討する必要があります(64 項)。 ② 存続期限の事業年度(以下、「最終期」) 最終期において投資が残存した場合には、通常の事業年度における回収可能価額ではなく、速やかに換価処分さ れることを前提とした処分可能価額による評価が適切に財務諸表等に反映される必要があると考えられ、その点が追 加されました(27 項)。 さらに、処分可能価額の評価方法について、無限責任組合員から有限責任組合員への換金化の処分方針の説明 等を通じて組合員間に同意が認められ、それにより当該評価額が処分可能価額による評価を反映していると認められ る場合には、特別目的の監査として対応できるものとされました(61 項)。一方、処分可能価額の評価方法について組 合員の同意が認められない場合あるいは同意は認められるものの当該評価額が処分可能価額を反映していない場合 には監査の受嘱ができないものとされました(62 項)。なお、監査意見を表明する場合でも、存続期限までに資産の回 収及び負債の返済が完了できなかった事実について監査報告書でも強調事項として記載することが明記されました (107 項)。 適用時期 本実務指針は、平成27年4月1日以後開始する事業年度または会計期間に係る監査から適用されます。ただし、公 表日(平成27年3月31日)後に発行する監査報告書から早期適用することも可能とされています。 なお、内容にご質問等ございましたら、以下のお問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。 文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) マネージャー 熊 倉 彰 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) お問い合わせフォーム 本冊子は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本冊子の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本冊子に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本冊子に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされ たり、起こされなかったことによって発生した結果について、あらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められる範 囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2015 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. In this document, “PwC” refers to PricewaterhouseCoopers Aarata, which is a member firm of PricewaterhouseCoopers International Limited, each member firm of which is a separate legal entity Please see www.pwc.com/structure for further details.