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ファンドニュース はじめに 投信法改正による投資法人の海外不動産投資スキームについて( 2014年12月1日施行)

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ファンドニュース はじめに 投信法改正による投資法人の海外不動産投資スキームについて( 2014年12月1日施行)
ファンドニュース
投信法改正による投資法人の海外不動産投資スキームについて(2014年12月1日施行)
2014 年7月
はじめに
ファンドニュース(28)「J リートの多様化(2)~J リートによる海外不動産投資について」において、J リートによる海外不動
産投資に関するこれまでの動向、投信法改正の概要などについて解説しました。投信法改正については、2014 年 4 月
に 2013 年金融商品取引法等改正(1年半以内施行)等に係る政令・内閣府令案が公表され、2014 年 12 月 1 日から施
行されます。今回は、投信法改正における投資法人による海外不動産投資に関し当該政令・内閣府令案で明らかとな
った事項について解説します。
投信法改正による海外不動産の間接投資スキームの概要
2013 年 6 月の投信法改正により、投資法人が、海外不動産の所在する国の法令の規定その他の制限により、その取
得等ができない場合において、専らこれらの取引を行うことを目的とする法人の発行する株式を取得するときは、過半数
議決権保有制限の対象外となりました。投信法改正及びそれに対応する税制改正1によって、一定の要件を満たす場合
には、投資法人が海外不動産へ投資を行うために、過半の株式または出資を保有することによる間接投資スキームが可
能となりました。
図表 1 投資法人による海外不動産の間接投資のスキーム図
(出所:あらた監査法人 作成)
1 投資法人に係る課税の特例について、投資法人が海外不動産の取得等のみを目的とした海外の特別目的会社の株式等を取得した場合には、そ
の取得が実質的にその投資法人が海外にある不動産を取得する場合と同視できるものとして一定の要件を満たす場合に限り、他の法人の発行済株
式又は出資の総数又は総額の 50%以上を有していないこととする要件を適用しないこととされました。
投資法人による海外不動産の間接投資が認められる要件
投資法人が海外不動産投資を検討する場合、法令以外の制限によって実務上間接投資によらざるを得ない場合や
現地法制への対応や為替その他のリスク抑制などのために投資ストラクチャーの工夫が必要となる場合が想定されます。
そのため、投信法改正における投資法人による海外不動産の間接投資が認められるための要件が、どのようなものか確
認する必要があります。
(1) 投資法人による同一法人の発行する株式の過半を取得することができる場合(投信法施行令改正案第116条の2)
投資信託及び投資法人に関する法律施行令の改正案(投信法施行令改正案)では、不動産が所在する国の法令の
規定又は慣行その他やむを得ない理由により、①不動産の取得又は譲渡、②不動産の賃借、③不動産の管理の委
託という取引のいずれかを投資法人が自ら行うことが出来ない場合(ただし、投資法人が過半の株式を取得する法人
が、投資法人が自ら行うことができない取引を行うことが出来る場合に限られる)に、海外不動産を保有する法人の過
半の株式を取得することができる旨規定されています(投信法第 194 条、投信法施行令改正案第 116 条の 2)。
投資法人が上記①から③の取引を自ら行うことができない場合の理由について、不動産が所在する国の法令の規
定だけではなく、慣行その他やむを得ない理由も含まれているため、法令以外の制限によって実務上間接投資によら
ざるを得ない場合なども想定していると思われます。具体的にどのようなものであれば、その範疇に入るのか、スキーム
組成を検討する際には、検討・整理することが必要です。この点、金融庁が 2014 年 6 月に公表した「投資法人に関す
る Q&A」では、具体的にどの国が該当するかについて、各国の法令の規定、慣行などを鑑み、例えば、アメリカ合衆国、
インド、インドネシア、中華人民共和国、ベトナムおよびマレーシアが該当すると考えられるとしています。
(2) 海外不動産保有法人(投信法施行規則改正案第221条の2)
投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の改正案(投信法施行規則改正案)では、上記のような投資法人が
過半の株式を取得することができる法人は、以下の2つの要件を満たす必要があるとし、要件を満たす法人について
「海外不動産保有法人」と定義しています(投信法施行規則改正案第 105 条第 1 項へ)。
 所在する国において専ら①不動産の取得又は譲渡、②不動産の賃借、③不動産の管理の委託という取引を行う
ことをその目的とする。
 各事業年度経過後6か月以内に、その配当可能な額のうち、投資法人の有する株式の数又は出資の額に応じて
按分した額その他の当該法人の所在する国における法令又は慣行により、割り当てることができる額の金銭を当
該投資法人に支払うこと。
海外不動産保有法人が行うことが出来る取引は、上記のとおり、専ら①不動産の取得又は譲渡、②不動産の賃借、
③不動産の管理の委託の取引とされており、行える取引が限定されています。
また、海外不動産保有法人における内部留保については、上記のとおり制限が課されています。ここで、「配当可能
な額」とは、各事業年度において直前の事業年度の末日における以下図表 2 の①資産の額から、②から⑥までの合
計金額を引いた額とされています(投信法施行規則改正案第 221 条の 2 第 2 項)。「配当可能な額」の算定の基礎とな
る財務数値は、現地の会計基準によって算定され2、会計監査を受けたものであることが要求されます(投信法施行規
則改正案第 221 条の 2 第 3 項)。また、現地の会計基準によって会計上の利益が算定されるため、利益の額は日本
の会計基準によって算定された場合とは異なる可能性があるので留意が必要です。
図表2 配当可能な額の算定
(出所:あらた監査法人 作成)
開示に関する要求事項
(1) 概要
海外不動産保有法人の株式又は出資の過半を取得する場合には、規約、登録申請書、申込通知書、資産運用報
告書などにおいて追加の記載が要求されます。追加された記載の主な内容は、所在する国における分配規制、海外
不動産保有法人の組織形態、目的、計算および利益の分配方針、株主又は出資者が有する権利内容など所在する
国の規制や海外不動産保有法人に関する情報です。加えて、海外不動産保有法人が保有する不動産に関する情報
についても、日本の不動産を取得・保有する場合と同等の情報開示が要求されています。以下では、資産運用報告に
おける開示について概観します。
(2) 資産運用報告における開示
まず、投資法人の現況に関する事項において、海外不動産保有法人の過半の株式又は出資を有する場合には、
当該海外不動産保有法人および当該海外不動産保有法人が有する不動産に関して以下の開示が要求されています。
①海外不動産保有法人に関する事項(投資法人の計算に関する規則の改正案第73条第8項)
イ 当該海外不動産保有法人に対する出資額
ロ 当該海外不動産保有法人の組織形態、目的、事業内容及び利益の分配方針
ハ 当該投資法人の資産に属する当該海外不動産保有法人の株式又は出資の数又は額の当該海外不動産保
有法人の発行済株式又は出資の総数又は総額に対する割合
二 当該海外不動産保有法人が所在する国における配当に係る規制の内容
2 コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方 No 49
②海外不動産保有法人が有する不動産に関する事項(投資法人の計算に関する規則の改正案第73条第9項)
イ 当該不動産の所在、地番その他当該不動産を特定するために必要な事項
ロ 物件ごとに、当期末現在における価格(鑑定評価額、公示価格、路線価、販売公表価格その他これらに準じ
て公正と認められる価格をいう。)
ハ 当該不動産に関して賃貸借契約を締結した相手方がある場合には、物件ごとに当期末現在における稼働率
及びテナントの総数並びに当該投資法人の営業期間中における全賃料収入 (当該全賃料収入について、
やむを得ない事情により表示できない場合には、その旨)
二 当該投資法人の営業期間中における売買総額
投資法人の計算に関する規則の改正案では、連結計算書類の作成に関する規定の新設はなく、特定有価証券開
示府令の様式においても連結財務諸表の開示は求められていないため、海外不動産保有法人の株式又は出資の過
半を保有し、海外不動産保有法人が子会社に該当する場合であっても、投資法人が連結計算書類または連結財務
諸表を作成する義務はありません3。
投資法人の計算書類では、海外不動産保有法人の過半の株式または出資を有する場合、それらについて関係会
社株式または関係会社有価証券などとして適切な科目で貸借対照表において別掲され4、海外不動産保有法人から
の配当金は、営業収益の区分に受取配当金として計上されます(投資法人計算規則改正案第 48 条第 2 項)。
計算書類の注記事項として、①海外不動産保有法人の株式の取得額の総額又は出資の総額、②投資法人の資産
に属する当該海外不動産保有法人の株式又は出資の数又は額の当該海外不動産保有法人の発行済株式又は出資
の総数又は総額に対する割合、③海外不動産保有法人の貸借対照表および損益計算書の主要項目の開示が要求
されます。ここで、当該貸借対照表および損益計算書の作成において、準拠すべき会計基準について明文規定はあ
りませんが、上記の「配当可能な額」の算定とは異なり、現地の会計基準ではなく、日本の会計基準によって作成され
たものを記載するとの考え方が金融庁から示されています5。また、直近の決算日における数値について、日本の会計
基準に従って円換算し開示することが要求されます6。
おわりに
海外では、自国外の不動産に投資するリート、私募ファンドなどが多数存在していますが、日本の不動産ファンドがア
ウトバンド投資を行う事例はこれまでほとんどありませんでした。しかし、中長期的には、日本企業のグローバル化、投資
家ニーズの多様化などを背景として、日本においても発展が期待される分野であると考えます。
今回の投信法改正により、投資法人による海外不動産投資の基本的枠組みが整備されました。今後、組成に向けて
さまざまな側面における実務上の課題を含む組成の可能性について検討がなされると考えられます。当該制度が有効
活用され、わが国不動産ファンドによるアウトバウンド投資を促進することが期待されます。
3 コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方 No 67
4 コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方 No 66
5 コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方 No 69
6 コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方 No 70, 71
なお、本件の内容などにご質問などありましたら、以下のお問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。
文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。
(参考情報)

平成 25 年金融商品取引法等改正(1年半以内施行)等に係る政令・内閣府令案等の公表について
http://www.fsa.go.jp/news/25/syouken/20140425-1.html

平成 25 年金融商品取引法等改正(1年半以内施行)等に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの
結果等について
http://www.fsa.go.jp/news/25/syouken/20140627-13.html
あらた監査法人
第3金融部(資産運用)
マネジャー
鈴木
伸也
あらた監査法人 第3金融部(資産運用)
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