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ファンドニュース 内部監査基準の改訂と投資運用業者の内部監査についての 金融検査マニュアルにおける留意事項 はじめに

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ファンドニュース 内部監査基準の改訂と投資運用業者の内部監査についての 金融検査マニュアルにおける留意事項 はじめに
ファンドニュース
内部監査基準の改訂と投資運用業者の内部監査についての
金融検査マニュアルにおける留意事項
2014 年 10 月
はじめに
一般社団法人日本内部監査協会(以下、「内部監査協会」といいます。)による「内部監査基準」が改訂され、
2014 年 6 月 1 日から適用されることになりました。「内部監査基準」は、法令・規則等に基づくものではありませんが、内
部監査においてデファクト・スタンダードとなっている内部監査の専門職的実施の国際フレームワーク(International
Professional Practices Framework:以下、「IPPF」といいます。)のなかの 「内部監査の専門職的実施の国際基準」 (以
下、「国際基準」といいます。)を踏まえて作成されたものであり、日本の内部監査の実務においてもデファクト・スタンダ
ードとなっています。
今回のファンドニュースでは、「内部監査基準」の改訂を通じて一般的な内部監査の留意事項を確認したうえで、投資
運用業者や投資助言・代理業者の内部監査について、金融商品取引業者等検査マニュアルでどのような事項を留意し
ているのかを改めて確認したいと思います。
「内部監査基準」の改訂点の概説
(1)改訂の背景
前述の「IPPF」は、内部監査人の国際的専門職業団体である内部監査人協会(The Institute of Internal Auditors)に
より作成されました。その内容は、「拘束的な性格を持つ(Mandatory)ガイダンス」と位置付けられるものと、「強く推奨され
る(Strongly Recommended)ガイダンス」と位置付けられるものとがあります。前者には、前述の「国際基準」の他に「内部
監査の定義(Definition of Internal Auditing)と「倫理綱要(Code of Ethics」」」があり、後者には、「ポジション・ペーパー
(Position Papers)」、「実践要綱(Practice Advisories)」、「プラクティス・ガイド(Practice Guides)」があります。
今回の「内部監査協会」による「内部監査基準」の改訂は、2004 年の改訂以来となっており、この間に、「国際基準」に
ついては数次の変更があったことから、「国際基準」との間に乖離が生じていました。これが、今回の「内部監査基準」の
改訂の背景となっています。
(2)主な改訂点の要旨
「内部監査基準」の主な改訂点をまとめると以下のとおりになります。
主な改訂点
1.独立性と組織上の位置づけ
内容の要旨
内部監査の独立性と組織上の位置づけについて、以下の2点が追加されまし
た(項目番号 2.2.1 および 2.2.2)。
① 内部監査部門は、職務上取締役会から指示を受けること
② 内部監査部門が最高経営者以外に所属する場合でも、取締役会および
監査役(会)または監査委員会への報告経路を確保しなければならない
2.責任と権限の明確化
内部監査人の責任および権限について、以下の2点が追加されました(①は追
加ではなく表現の明確化)(項目番号 2.3.1 および 2.3.2)。
① 最高経営者および取締役会によって承認された組織体の基本規程とし
て明記されなければならない
② 内部監査部門長は、当該基本規程を適時に見直し、最高経営者および
取締役会の承認を得なければならない
3.内部監査の品質管理
内部評価と外部評価という品質管理の手続について、それぞれの実施頻度が
明確にされました。内部評価である「定期的な自己評価(下記の②)」は、少な
くとも年に1回、外部評価は、少なくとも5年ごとに実施されなければならないも
のと、記載されました(項目番号 4.2.2 および 4.2.3)。
また、内部評価の方法に次の2つがあることが追加されました。
① 内部監査部門の日常的業務に組み込まれた継続的モニタリング
② 定期的自己評価、または組織体内の内部監査の実施について十分な
知識を有する内部監査部門以外の者によって実施される定期的評価
なお、以下の外部評価についての記載は、実施頻度が明確化されたこと以外
は変更ありません。
外部評価は、内部評価と比較して内部監査の品質をより客観的に評価する手
段として有効であるため、組織体外部の適格かつ独立の者によって、少なくと
も5年ごとに実施されなければならない。
4.リスク評価に基づく計画の策
定における内部監査の外部
委託
内部監査業務を外部委託する際の責任範囲を明らかにするため、以下の記載
が新しく設けられました(項目番号 5.6.1)。
内部監査部門長は、内部監査業務を外部に委託する場合であっても、当該業
務に責任を負わなければならない
主な改訂点
5.内部監査の対象範囲
(総論)
内容の要旨
総論が整理され、対象となる経営諸活動が、ガバナンス・プロセス、リスク・マネ
ジメントおよびコントロールと体系的に統合されているかどうかを検討する、とさ
れました。
そのうえで、対象範囲の決定において、監査リスクが合理的水準に抑制されて
いなければならない、との記載の手直しがされました(項目番号 6.0.1)。
5.内部監査の対象範囲
ガバナンス・プロセスの評価項目として、以下が追加されました(項目番号
6.1.1)。
(1)ガバナンス・プロセス
・ 組織体として対処すべき課題の把握と共有
・ アカウンタビリティの確立
・ 組織体のIT(情報技術)ガバナンスによる、組織体の戦略や目標の達成
への貢献
なお、ガバナンス・プロセスに関する事項は取締役会マターであり、それ自体を
直接には内部監査で監査報告書に記載する意見の対象とはしないものの、ガ
バナンス・プロセスを評価したうえで、内部監査の対象とするリスク・マネジメント
およびコントロールに関連付けるものとされています。
5.内部監査の対象範囲
リスク・マネジメントの評価項目として以下が追加されました(項目番号 6.2.1 の
(2)以降)
(2)リスク・マネジメント
・ 組織体のリスクの受容水準に沿った適切な対応が選択されているかの評
価
・ 識別されたリスクの情報が適時に組織体の必要と認められる箇所に伝達
されているかの評価
・ 組織体が不正リスクをいかに識別し、適切に対応しているかの評価
・ アドバイザリー業務(*) の遂行過程において、業務執行部門の個々の業
務における目標と密接に結び付いたリスクに対応するとともに、その他の
重要なリスクの存在についても注意を払うこと
・ アドバイザリー業務を通じて得られたリスクに係る知見を、組織体のリスク・
マネジメントに対する評価プロセスに組み入れること
・ リスク・マネジメントの確立や改善について経営管理者を支援する場合に
は、内部監査部門は、経営管理者のリスク・マネジメントに係るいかなる責
任も負ってはならないこと
(*) 内部監査には、客観的意見を述べ助言・勧告を行うアシュアランス業務と
特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務があるとされています
(項目番号 1.0.1 「内部監査の本質」からの説明を抜粋し一部変更・省略
しています)。
主な改訂点
5.内部監査の対象範囲
内容の要旨
コントロールの評価項目として以下の①から⑤が追加で記載されました(項目
番号 6.3.1)
(3)コントロール
① 組織体の全般的または部門目標の達成状況
② 財務および業務に関する情報の信頼性とインテグリティ
③ 業務の有効性と効率性
④ 資産の保全
⑤ 法令、方針、定められた手続および契約の遵守
金融商品取引業者等検査マニュアルにおける監査態勢の確認事項
(1)監査態勢の基本的な考え方
金融商品取引業者等検査マニュアルの最初のセクションには、管理態勢のあるべき姿についての基本的な考え方
が示されています。このうち内部監査については「監査態勢」として、客観的かつ厳正な評価を行うための内部監査ま
たは外部監査の態勢を整備すべきである、とされています。また、具体対応例として以下が示されており、監査役監査
による監査の強化や、重要な事項についての外部監査等による評価を受けることなどが挙げられています。
[具体的対応例]
 他の部門から独立した内部監査部門(独立した内部監査部門の設置が困難な場合には、監査役による監査の客
観性を向上させる措置等)により、内部管理やリスク管理を含む全ての業務について、随時、又は定期的にその
運営状況を確認、評価し、必要な改善を図る態勢を整備する。
 重要な事項については、内部監査に加え、定期的に外部監査等による評価を受けるなど、業務運営の適切性を
図るための措置を講じる。
 内部監査や外部監査の結果について、経営陣に直接報告できる態勢を整備する。
(2)投資運用業者等の監査態勢の確認事項
金融商品取引業者等検査マニュアルのメインセクションとして、具体的な管理態勢についての確認項目が示されて
います。前半にそれぞれの業者に共通する確認項目が設けられており、内部監査の設置、位置づけ、内部監査規程
等の整備、内部監査計画等の策定、内部監査業務の運営、外部監査の活用、内部監査機能の充実、監査結果の取
扱いについての記載があります。後半にそれぞれの業者に対する確認事項が記載されており、このうち投資助言・代理
業者の監査態勢のなかに、「内部監査の対象とできない外部に委託した業務については、当該業務の所管部門等に
おける管理状況等を監査対象としているか」、という確認事項があります。したがって、外部委託した業務については、
所轄部門の管理業務を内部監査の対象とする必要があります。
また、投資運用業者の監査態勢として、「適正な運用が行われていることの検証」 と「客観性の高い時価算定を監査
の重点項目としているかどうか」、という確認事項があります。これらに対しては、前述のとおり、外部監査等の評価を受
け、その結果を効果的に活用していくことが重要と思われます。投資運用業においては、さまざまなタイプの外部監査
が提示され、実務に導入されています。「適正な運用が行われていることの検証」については、既に、SSAE16(86 号)
(*) と呼ばれる検証業務を導入していれば、内部監査の対象範囲のうち、かなりの部分がオーバーラップされており、
検証業務の結果を活用していくことが出来るでしょう。また、ファンドの財務諸表監査が実施されていれば、投資の時価
評価が監査の重点項目とされるのが一般的ですので、その結果を活用していくことが出来るでしょう。
(*)SSAE16 とは、米国公認会計士協会による Statement on Standards for Attestation Engagements No.16
“Reporting on Controls at a Service Organization”という保証業務基準の略称をいいます。また 86 号とは、SSAE16 と
同等の日本公認会計士協会による監査・保証実務委員会実務指針第 86 号「受託業務に係る内部統制の保証報告
書」の略称をいいます。
おわりに
「内部監査基準」の改訂により、内部監査の実務対応のあり方が、より明確になりました。たとえば、内部監査の品質管
理については、実施頻度が記載され定期的自己評価は少なくとも年に1回、外部評価は少なくとも5年ごとに実施される
ことが示されました。一方、金融商品取引業者等検査マニュアルにおいては、以前から重要な事項について、外部監査
等による評価を受けることが具体的な対応例として示されていました。内部監査に対する外部評価の導入や、
SSAE16(86 号)検証業務やファンド監査などのさまざまなタイプの外部監査等の活用は、内部監査の品質管理の向上や
内部監査の態勢を充実させていくうえで重要な役割を果たすものとなるでしょう。
あらた監査法人では、内部監査に関連するさまざまな支援業務を提供しております。また、資産運用業に関するさま
ざまなサービスも提供しております。
・内部監査の品質評価(外部評価の実施および内部評価支援)に関するサービスのご案内
・資産運用業に関するサービスのご案内
文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。
あらた監査法人
第3金融部(資産運用)
ディレクター 家
徳
真
樹
あらた監査法人 第3金融部(資産運用)
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