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ファンドニュース 「平成27事務年度 金融行政方針」の公表について はじめに

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ファンドニュース 「平成27事務年度 金融行政方針」の公表について はじめに
ファンドニュース
「平成27事務年度 金融行政方針」の公表について
2015 年 10 月
はじめに
金融庁は、2015 年 9 月 18 日に「平成 27 事務年度 金融行政方針」を公表しました。金融庁では、平成 25 事務年度
に、従来の「検査基本方針」に替え「金融モニタリング基本方針」を公表し、平成 26 事務年度においては、監督局の「オ
フサイト・モニタリング」と検査局の「オンサイト・モニタリング」の一体化をさらに図るため、監督方針と金融モニタリング方
針を統合し、一体化した方針として公表しました。本事務年度においては、検査・監督の枠組みにとどまらず、金融行政
が何を目指すかを明確にするとともに、その実現に向けた方針を「金融行政方針」として公表しています。
「平成 27 事務年度 金融行政方針」は、「Ⅰ.金融行政の目的」、「Ⅱ.金融行政の目指す姿・重点施策」、「Ⅲ.金融
庁の改革」の 3 つで構成されています。本事務年度においても、昨年度の金融モニタリングにおいて重点施策として検
証が行われた「フィデューシャリー・デューティー1」が具体的重点施策の一つとして掲げられ、徹底を図ることとされてい
ます。
今回のファンドニュースでは、「平成 27 事務年度 金融行政方針」のうち資産運用業者に影響すると考えられる項目
について、重点的に説明します。
Ⅰ.金融行政の目的
「Ⅰ.金融行政の目的」において、「金融行政の目指すもの」として以下を掲げています。
金融を取り巻く環境が急激に変化する中においても、
①
景気のサイクルに大きく左右されることなく、質の高い金融仲介機能(直接金融・間接金融)が発揮されること
②
こうした金融仲介機能の発揮の前提として、将来にわたり金融機関・金融システムの健全性が維持されるととも
に、市場の公正性・透明性が確保されること
⇒①②を通じ、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大がもたらされること
なお、金融行政を取り巻く経済・市場の環境が急激に変化している中で、金融システムの安定を維持し、金融仲介機
能の適切な発揮により、デフレからの脱却を目指すことが重要であるという考え方は、昨事務年度から大きな変更はあり
ません。
1
他者の信任に応えるべく一定の任務を遂行する者が負うべき幅広いさまざまな役割・責任の総称
Ⅱ.金融行政の目指す姿・重点施策
「Ⅱ.金融行政の目指す姿・重点施策」として、「1. 活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透
明性の確保」、「2. 金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保」、「3. 顧客の信頼・安心感の確保」、「4.
IT 技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応」、「5. 国際的な課題への戦略的な対応」、「6. その他の重
点施策」の 6 つが掲げられ、それぞれにおいて具体的重点施策が示されています。これまでの基本方針においては、
主要行等各業態別に重点施策および着眼点が示されていましたが、本方針では、それぞれの具体的重点施策の中で
必要に応じて各業態について言及されています。
1. 活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保
まず、家計、機関投資家・資産運用業者、販売会社、市場・経済、のそれぞれにおける課題と目指す姿とを明らかに
しています。なお、これらの課題については、2015 年 7 月に公表された「金融モニタリングレポート」にて指摘されている
ことから、昨事務年度の金融モニタリング結果が本事務年度の金融行政方針に反映されていると考えられます。
課
題
目指す姿
家計



金融資産の過半が現預金
資産運用のリターンが低い
金融リテラシーの向上

中長期・分散投資の促進を通じた、
より安定的な資産形成の実現
機関投資家・資産運用業者

資金の性格・規模に見合う運用・リ
スク管理の高度化

運用・リスク管理の高度化によるリタ
ーンの安定的な向上
ガバナンスの改善
高度な金融人材の集積
投資先企業への建設的なエンゲー
ジメントによる企業価値向上



販売会社(銀行、証券会社、保
険会社等)


市場・経済


手数料稼ぎを目的とした投信の回
転売買等
手数料の透明化等

真に顧客のためになる質の高い金
融商品・サービスの提供
リスクマネーの供給が不十分
グローバルな金融機関(資産運用/
金融仲介)のプレゼンスが小さい


リスクマネーの適切な供給
厚みのある株式市場・社債市場等
の発展、清算・振替機能の強化
グローバルな金融機関の集積によ
る市場活性化
質の高い市場情報の流入


その上で、具体的重点施策として「(1) 経済の持続的な成長に資する、より良い資金の流れの実現」のために以下の
5 項目を挙げるとともに、その前提として「(2) 市場の公正性・透明性の確保に向けた取組みの強化」を示しています。
(1) 経済の持続的な成長に資する、より良い資金の流れの実現
① NISA の更なる普及と制度の発展
 NISA の利用拡大、ジュニア NISA 普及のための広報の充実
 金融経済教育等の推進による、特に若年層への浸透の促進
 制度の更なる発展を念頭に、利用状況等を検証
② 企業統治改革を「形式」から「実質の充実」へと向上
 「コーポレートガバナンス・コード」、「スチュワードシップ・コード」の策定はゴールではなくスタートであり、
企業統治の更なる充実に向けてフォローアップ会議を設置し情報発信
③ フィデューシャリー・デューティーの浸透・実践
 投資信託・貯蓄性保険商品等の商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関の行動が、
真に顧客のためになっているかを検証するとともに、この分野における以下のような民間の自主的な取組
みを支援
投資運用業者
フィデューシャリー・デューティーの取組み
系列販売会社との間の適切な経営の独立性の確保、顧客の利益に適う商品の組
成・運用等
保険会社
顧客のニーズや利益に真に適う商品の提供等
販売会社
顧客本位の販売商品の選定、顧客本位の経営姿勢と整合的な業績評価、
商品のリスク特性や各種手数料の透明性の向上、これらを通じた顧客との間の利
益相反や情報の非対称性の排除等
④ 金融機関による資産運用の高度化の促進
 信託銀行・投資運用業者等の資産運用およびその関連業務について、運用の専門人材の確保・育成を
含め、高度化に向けた取組みを促進
⑤ 成長資金の供給の促進と市場の整備
 成長資金の供給の促進
 社債市場・デリバティブ市場等の活性化に向けた取組み
(2) 市場の公正性・透明性の確保に向けた取組みの強化
具体的重点施策として、5 項目が掲げられていますが、特に資産運用業者に影響すると考えられる項目として
は以下があります。
① 金融取引のグローバル化、複雑化、高度化に対応した市場監視機能の強化
 監視手法の高度化、海外当局との連携強化、市場関係者等による市場規律の強化等に向けて、証券取
引等監視委員会の態勢を強化
 検査・調査において把握した問題の背後にある根本原因の的確な追究・評価を通じて、制度・監督上の
論点や市場規律に関する共通課題を抽出
② 市場のインフラ・システムの頑健性の確保
 取引所、清算・振替機関の安定的な運営の確保
 非清算店頭デリバティブ取引の決済リスクの低減に向けた取組みを推進
以下 2.から 6.については、特に資産運用業者に影響すると考えられる項目を中心に列挙します。
2. 金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保
「金融システムの健全性維持」のための具体的重点施策としての「経営管理態勢・リスク管理等の水準向上」において、
「グローバルに活動する金融機関」については、たとえば、「グループガバナンスの強化」や「海外金融機関のわが国
における業務展開への対応」が求められています。
「国内で活動する金融機関」については、金融商品取引業者等に対して、より実効的なリスク管理態勢および内部監
査態勢の確立に向けた取組みを促すとされています。
3. 顧客の信頼・安心感の確保
「高齢者に対する適切な勧誘販売態勢の整備」、「相談・苦情態勢の整備」、「インターネット等を利用した非対面取引
の安全対策・不正送金への対応」などについて検証するとしています。また、「顧客保護等の観点からの各種業者等へ
の対応」として、業者別に対応が整理されています。
4. IT 技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応
IT 技術の進展が将来の金融業に与える影響を前広に分析するとともに、望ましい金融規制のあり方を検討していくた
め、具体的重点施策として、「FinTech1への対応」、「サイバーセキュリティの強化」、「アルゴリズム取引等への対応」が掲
げられています。
5. 国際的な課題への戦略的な対応
2008 年の世界的な金融危機後、国際的に規制強化の動きが継続しており、こうした規制の副作用や予期せざる影響
も懸念されているほか、金融機関の活動や取引のグローバル化に対応するため、具体的重点施策として、「国際的な金
融規制改革の取組みに関する戦略的な対応」、「国際的なネットワーク・金融協力の強化」が掲げられています。
6. その他の重点施策
その他の重点施策として、「金融指標の信頼性・透明性の維持・向上」、「業務の継続態勢の整備」、「システムの安定
稼動」、「情報セキュリティ管理の徹底」など 7 項目について検証するとされています。
Ⅲ.金融庁の改革
「Ⅲ.金融庁の改革」では「金融庁のガバナンス」および「金融行政のあり方」について言及されています。金融行政の
あり方として、「金融機関等の個々の活動を細かく規制するのではなく、金融機関等の創意工夫を引き出すことで、全体
として質の高い金融サービスの実現を図る」ことや、「法令等に規定されるミニマムスタンダードとしての「ルール」の遵守
に課題のある金融機関等に対しては、引き続き、検査・監督において厳正に対処していくが、その際においても、問題の
根本原因を検証し、抜本的な改善につなげることを目指す」ことが示されています。
1
IT を活用した革新的な金融サービス事業
おわりに
本事務年度の金融行政方針では、これまでの基本方針における主要行等各業態別の検査・監督の対応策ではなく、
金融行政の目指す姿を示した上で具体的重点施策を掲げていることから、より広範囲かつ実質的な対応が必要と考え
られます。このような中で資産運用業者におかれましては、今回の金融行政方針の内容を十分に理解して、適切な対応
が必要となります。
なお、本件の内容などにご質問などありましたら、以下のお問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。
文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。
PwC あらた監査法人
第 3 金融部(資産運用) マネージャー
長
尾
由美子
PwC あらた監査法人 第3金融部(資産運用)
お問い合わせフォーム
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