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賃貸仲介手数料

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賃貸仲介手数料
アセットマネジメント
賃貸仲介手数料
不動産 重要論点
定義
リース契約の交渉および締結を行う際、貸手側には往々にして、初期直接原価が発生します。初期直接原価とは、「リー
ス契約の交渉および締結に直接起因する増分原価」と定義されています(IAS 第 17 号第 4 項)。
この定義のもとでは、増分原価のみが初期直接原価として取り扱われます。増分ではない内部原価(例えば、販売費及
び一般管理費や、一般間接費等)は、発生の都度費用計上することとされています。一方、手数料、法務専門家報酬、
アレンジメント報酬や仲介手数料といった増分の外部原価は、通常、初期直接費用として認められます。
賃貸仲介手数料
認識と測定
ファイナンス・リース契約の交渉および締結に伴い貸手に発生した初期直接原価は、未収ファイナンス・リース料の当初
測定額に含まれます1。リースの計算利子率の定義によれば、当初直接原価は自動的に未収ファイナンス・リース料に含
まれることになります。よって、当初直接原価は特段、別途加算される必要はありません(IAS 第 17 号第 38 項)。当初直
接原価をファイナンス・リース債権の当初測定に含めることで、リース期間にわたって認識される収益は減少することとな
ります。
不動産 重要論点
オペレーティング・リース契約の交渉および締結に伴い貸手に発生した初期直接原価は、リース資産の帳簿価額に加算
され、リース収益と同じ基準に基づきリース期間にわたって費用認識されます(IAS 第 17 号第 52 項)。当初直接原価は、
リース資産の耐用年数ではなくリース期間にわたり、費用認識されることとなります。従って、当初直接原価をリース資産
と区別して償却することが重要となります。リース期間がリース資産の耐用年数より著しく短いこともあります。
当初直接原価の即時費用認識は認められません。
上述のように、仲介業者に支払われた賃貸仲介手数料のうち IAS 第 17 号における「当初直接原価」の定義に該当する
ものは、リース資産の帳簿価額に加算され、リース収益と同じ基準で、リース期間にわたって費用認識されなければなり
ません(IAS 第 17 号第 52 項)。従って、発生した賃貸仲介手数料は、他のリース契約に起因する当初直接原価とともに
リース資産の帳簿価額に加算され、リース資産と同じ勘定科目で表示されることとなります。
リース期間とはリース契約において資産の賃貸を行うものと合意されたノンキャンセラブルの期間のことです2。有償もしく
は無償でリース契約の継続を選択できる条件が付されている場合において、リース契約開始時点に当該条件が実行さ
れることが合理的に見込まれる場合、その将来期間もリース期間に含まれます。
賃貸仲介手数料
不動産 重要論点アセットマネジメント
賃貸仲介手数料
不動産 重要論点
1
2
この取り扱いは製造業者または販売業者である貸手には適用されません。
IAS 第 17 号第 4 項
会計処理
以下の表は、それぞれ異なるシナリオにおける、外部エージェント(仲介業者)に支払われた報酬(賃貸仲介手数料)の
会計処理を示しています。
1. 建設もしくは開発段階中に発生した賃貸仲介手数料
背景
A 社は、完成後にオペレーティング・リー
ス契約による貸出しを行う予定で、不動産
の建設に着手しました。 その建設期間中
に、A 社はエージェント(仲介業者)に対
し、賃借人となるB社の誘致の報酬として
賃貸仲介手数料を支払いました。賃借人
B 社とのリース契約期間は 5 年間です。
エージェントに支払った賃貸仲介手数料
は賃借人 B 社とのリース契約に直接起因
するものです。
PwC
建設中に発生した賃貸仲介手数料はリース契約の交渉および締結に関連
するものです。 そのため、これら賃貸仲介手数料は、リース資産の帳簿価額
に加算され、リース期間である5年間にわたって費用認識されなければなりま
せん(IAS第17号第52項)。A社は支払った賃貸仲介手数料を、リース契約開
始の日から償却し始めなければなりません(シナリオ2参照)。
当初認識における測定:
発生した賃貸仲介手数料(IAS 第 17 号第 52 項)および建設に要した原価
(IAS 第 40 号第 20 項)。
公正価値モデル
原価モデル
(建設期間中の)事後測定:
(建設期間中の)事後測定:
発生した賃貸仲介手数料を含む、
建設中不動産の公正価値(IAS第
40号第30項およびIAS第40号第33
項)。
発生した賃貸仲介手数料および建
設中不動産の取得原価からその減
損損失額を控除した価額(IAS第40
号第30項およびIAS第16号第30
項)。
(建設期間中の)当初認識後の期間
の損益計算書に与える影響額:
(建設期間中の)当初認識後の期間
の損益計算書に与える影響額:
不動産の公正価値の変動額。
減損が適用される場合には、その減
損損失額。
(竣工後の)事後測定:
(竣工後の)事後測定:
次頁のシナリオ 2 参照。
次頁のシナリオ 2 参照。
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2. 新築建物(投資不動産として即時に使用可能なもの)の取得後最初のリース契約に対し、発生した賃貸仲介手数料
背景
C 社は、オペレーティング・リース契約によ
る貸出しを行う予定で、新築の不動産を
購入しました。C 社はエージェントに対し、
賃借人となるD社の誘致の報酬として賃
貸仲介手数料を支払いました。賃借人 D
社とのリース契約期間は 5 年間であり、同
一条件により追加で 2 年間、無償で契約
延長できるオプションがついています。D
社はこのオプションを行使することが合理
的に見積もられます。
3
4
発生した賃貸仲介手数料はリース契約の交渉および締結に関連するもので
す。 そのため、これら賃貸仲介手数料は、資産計上され、リース期間である 7
年間にわたって費用認識されなければなりません(IAS 第 17 号第 52 項)。
当初認識における測定:
発生した賃貸仲介手数料(IAS 第 17 号 52 項)および取得に要した原価(IAS
第 40 号第 20 項)
公正価値モデル
原価モデル
事後測定
事後測定
7 年間のリース期間にわたり償却され
る賃貸仲介手数料を含む、不動産の
公正価値(IAS 第 40 号第 30 項およ
び IAS 第 40 号第 33 項)3(次頁の例
を参照)。
賃貸仲介手数料の未償却残高に加
え、取得原価から不動産の減価償却
累計額および減損損失累計額を控除
した価額(IAS 第 40 号第 30 項および
IAS 第 16 号第 30 項)。
当初認識後の期間の損益計算書へ
の影響:
当初認識後の期間の損益計算書へ
の影響:
リース期間中の、資産計上された賃貸
仲介手数料の償却額、および不動産
の公正価値の変動額4 。
リース期間中の、資産計上された賃貸
仲介手数料の償却額、および不動産
の減価償却費さらに該当する場合に
はその減損損失額。
公正価値は各事業年度末の評価額により決定されます。独立第三者間取引において、取引の知識がある自発的な当事者の間で、
資産が交換される金額に影響を及ぼす全ての要素を考慮する必要があります。
公正価値の変動は、期首及び期末の評価額に基づき決定された数値に、その他の変動である取得、除却及び賃貸仲介手数料の
資産計上とその償却等を考慮したものと、一致することになります。
PwC
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実例
Z 社は X1 年 1 月 1 日において 158 億円で未稼働不動産を取得しました。取得日において、Z 社はエージェントである
X 社に対し、賃借人 Y 社とのリース契約の交渉および締結の報酬として、3 億円の賃貸仲介手数料を支払いました。リ
ース期間は 3 年です。Z 社はこの発生した賃貸仲介手数料を投資不動産の帳簿価額に含めて資産計上し、定額法に
より 3 年間のリース期間にわたって償却しました。建物自体は 40 年にわたって減価償却を行います6。3 年後、賃借人 Y
社と新たな 5 年間のリース契約締結を交渉するため、Z 社は再びエージェントである X 社に対し、5 億円の賃貸仲介手
数料を支払いました。単純化のため、その他の取得、建て増し、処分、転用による増減はないものとします。
原価モデル 公正価値モデル (単位:億円)
不動産の取得原価
158
158
3
3
建物の減価償却費
△4
-
資産計上された賃貸仲介手数料
の償却費
△1
△1
-
△0.3
(159.7 - 158 - 3 + 1 = -0.3)。
公正価値による評価損益は、貸借対照表価額を期末外部鑑
定評価額と一致させることから生じています。
X2 年 1 月 1 日時点の帳簿価
額
156
159.7
評価報告書にもとづく期末の不動産の公正価値は 159.7
とする。
建物の減価償却費
△4
-
資産計上された賃貸仲介手数料
の償却費
△1
△1
3年間での償却
-
0.1
(158.8 – 159.7 + 1 = 0.1)
公正価値による評価損益は、貸借対照表価額を期末外部鑑
定評価額と一致させることから生じています。
X3 年 1 月 1 日時点の帳簿価
額
151
158.8
評価報告書にもとづく期末の不動産の公正価値は 158.8
です。
建物の減価償却費
△4
-
資産計上された賃貸仲介手数料
の償却費
△1
△1
3年間での償却
-
0.3
(158.1 - 158.8 + 1 = 0.3)
公正価値による評価損益は、貸借対照表価額を期末外部鑑
定評価額と一致させることから生じています。
146
158.1
評価報告書にもとづく期末の不動産の公正価値は158.1です。
5
5
建物の減価償却費
△4
-
資産計上された賃貸仲介手数料
の償却費
△1
△1
-
△3.4
(158.7 – 158.1 - 5 + 1 = -3.4)
公正価値による評価損益は、貸借対照表価額を期末外部鑑
定評価額と一致させることから生じています。
146
158.7
評価報告書にもとづく期末の不動産の公正価値は158.7です。
資産計上された賃貸仲介手数料
公正価値による損益
公正価値による損益
公正価値による損益
X4年1月1日時点の帳簿価額
資産計上された賃貸仲介手数料
公正価値による損益
X5年1月1日時点の帳簿価額
取得原価
40年間での減価償却7
3年間での償却
40年間での減価償却
40年間での減価償却
40年間での減価償却
5年間での償却
etc.
財務諸表の注記において、賃貸仲介手数料の取り扱いおよび賃貸仲介手数料の最初の支払いとその後の償却による
不動産帳簿価額の増減について、その開示の要否が検討される必要があります。
6
7
単純化のために、建物一体として減価償却を行うものとします。
定額法、残存価額を 0 として計算しています。158 億円/40 年=3.95≒4 億円として例示しています。
PwC
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<お問い合わせ先>
あらた監査法人 フィナンシャル・サービス・アシュアランス部
パートナー
ディレクター
マネージャー
清水 毅
太田 英男
藪谷 峰
TEL : 03-3546-8450
Email : [email protected]
本資料は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッシ
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は完全性を、(明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本資料に含まれる情報に基づき、意思決定し何ら
かの行動を起こされたり、起こされなかったことによって発生した結果について、あらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、
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