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組織再編成等に係る再編当事者の資本関係が決定されると,次に,当該組織再編成等がその再編 種類と再編当事者の資本関係に応じて設けられている適格要件を充足しているかどうか判定してい くことになります。 今般の税制改正においては,まず,会社法の整備等により,対価を交付しない組織再編成等(い

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組織再編成等に係る再編当事者の資本関係が決定されると,次に,当該組織再編成等がその再編 種類と再編当事者の資本関係に応じて設けられている適格要件を充足しているかどうか判定してい くことになります。 今般の税制改正においては,まず,会社法の整備等により,対価を交付しない組織再編成等(い
(第三種郵便物認可)
平成23年2月14日
組織再編成等に係る再編当事者の資本関係が決定されると,次に,当該組織再編成等がその再編
種類と再編当事者の資本関係に応じて設けられている適格要件を充足しているかどうか判定してい
くことになります。
今般の税制改正においては,まず,会社法の整備等により,対価を交付しない組織再編成等(い
わゆる無対価組織再編成)が広範に行われる状況になってきていることから,無対価組織再編成の
法人税法上の取扱いが明確化されています。また,現物分配が新たに適格組織再編成の対象になっ
たことから適格現物分配に係る適格要件が新設されています。これらについて次節以降で詳しく取
り上げたいと思います。
税務上は,従前,実務上対価の交付を省略しているものについては,省略されていないものとし
て取り扱って課税関係を律していましたが,対価の交付を省略したものと認められない無対価組織
再編成まで法令上認められるようになったことを受けて,今般の税制改正ではこのような無対価組
織再編成の税務上の取扱いが明確にされています。基本的には,合併,分割,株式交換について,
たとえ対価の交付がない合併,分割,株式交換であっても,対価の交付を省略していると認められ
るものについては適格組織再編成の対象とすることとし,従前からの税務上の考え方を法人税法及
び法人税法施行令に明文化しています。
なお,現物出資及び株式移転に関しては,被現物出資法人の株式を交付しない現物出資や株式移
転完全親法人株式を交付しない株式移転は,会社法上想定し得ないことから,税務上も特段の規定
は置かれていません。また,新設合併,新設分割についても,対価の交付がない新設合併及び新設
分割も想定されないため,税務上,無対価組織再編成に係る規定は設けられていません。
平成23年2月14日
(第三種郵便物認可)
税務上適格合併となるためには,被合併法人の株主等に合併法人株式等以外の資産が交付されな
いことが要件とされているところですが,対価の交付がない合併(無対価合併)については,実務
上合併対価の交付が省略されたと認められる場合に限り,被合併法人の株主等に合併法人株式又は
合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されない合併に該当するものとし
て適格組織再編成の対象として取り扱われていました。
今般の税制改正においては,合併前において合併に係る被合併法人と合併法人との間に完全支配
関係がある場合で,かつ,合併対価を交付しない場合でも合併対価を交付していたとすれば成立し
たであろう資本構成・株主構成と同じになるような場合の無対価合併を適格合併の対象となるよう
整理しています。具体的には,以下に記載するような形態の無対価合併は,対価要件をかかわらし
めずに適格要件の判定を行い得るよう明確化されました。
なお,無対価合併が適格組織再編成の対象となり得るのは,合併前に合併法人と被合併法人に完
全支配関係がある場合に限られますが,保有する株式の譲渡等により完全支配関係が継続しないこ
とが見込まれる場合でも,支配関係が継続することが見込まれる一定の場合においては,適格組織
再編成の対象となり得ることとされています(法法2十二の八ロ,法令4の3③)。ただし,共同
事業を営むための合併については,無対価合併に係る被合併法人のすべて又は合併法人が公益法人
等の資本または出資を有しない法人でない限り,無対価合併の手当てはなされていません(法令4
の3④柱書き)。
①
合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある場
合,合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係があるとき(法法2十二の八
イ,法令4の3②一)
。
②
合併前に合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合
で,以下の関係があるとき(法法2十二の八イ,法令4の3②二)
。
次に掲げる関係がある場合における当該完全支配関係
イ)合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
(第三種郵便物認可)
平成23年2月14日
ロ)一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ハ)合併法人及び当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式
等の全部を保有する関係
ニ)被合併法人及び当該被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株
式等の全部を保有する関係
なお,完全支配関係の定義にある「一の者」が個人である場合には,「一の者」には当該個人の
特殊関係者が含まれますが(法令4の2①②),上記法人税法施行令第4条の3第2項第2号ロに
登場する「一の者」はあくまでも一人の個人を指すのであって当該個人の特殊関係者は含まれない
ことにご留意ください。「支配関係」及び「完全支配関係」を規定する法人税法施行令第4条の2
第1項及び第2項において「次条(法令4の3)において同じ」等の規定もなく,また,法人税法
施行令第4条の3第2項第2号ロにおける「一の者」に特殊関係者を含めてしまうと一の個人から
当該個人の特殊関係者に非課税で資産等の移転を行うことができてしまうため,その趣旨を鑑みて
も特殊関係者は含まれないと考えるのが合理的であると思われます。
従前,法人税法上,分割は次のように定義され,分割承継法人株式が分割法人株主に交付される
ことを前提としていると解されることから,分割承継法人の株式が交付されない分割は税務上「分
割」に該当せず,結果として適格分割として扱われる余地がないのではないかという向きがありま
平成23年2月14日
(第三種郵便物認可)
した。
分割により分割法人が交付を受ける分割承継法人の株式その他の資産のすべてがその分割の日
において当該分割法人の株主等に交付される場合の当該分割をいう。
分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産がその分割の日において当該分割法人の株主
等に交付されない場合の当該分割をいう。
この点,国税庁ホームページの質疑応答事例(吸収分割に当たり,分割承継法人から分割法人に
株式の割当てを行わない場合の適格判定(分割型分割),子会社を分割承継法人とする分割におい
て対価の交付を省略した場合の税務上の取扱いについて(分社型分割))において無対価分割の適
格要件を明らかにしており,対価の交付が省略されたと考えられる分割,つまり,無対価による分
割によって成立する株主構成・資本関係が仮に対価を交付していたら成立していたであろう株主構
成・資本関係と同様であれば,契約書に「対価の交付が省略された」旨の記載を行うことで,適格
分割として取り扱って差し支えないとされていました。今般の税制改正では,当該質疑応答事例で
の考え方を法人税法および法人税法施行令に明文規定として織り込んでいます。
平成22年度税制改正では,まず,下記のように「分割型分割」および「分社型分割」の定義上,
「分割対価資産が交付される分割」と「分割対価資産が交付されない分割」
(無対価分割)の2つに
区分しています。
・
分割の日において当該分割に係る分割対価資産(分割により分割法人が交付を受ける分割
承継法人の株式その他をいう。
)のすべてが分割法人の株主等に交付される場合の当該分割
・
分割対価資産が交付されない分割で,その分割の直前において,分割承継法人が分割法人
の発行済株式等の全部を保有している場合又は分割法人が分割承継法人の株式を保有してい
ない場合の当該分割
・
分割の日において当該分割に係る分割対価資産が分割法人の株主等に交付されない場合の
(第三種郵便物認可)
平成23年2月14日
当該分割(分割対価資産が交付されるものに限る。
)
・
分割対価資産が交付されない分割で,その分割の直前において分割法人が分割承継法人の
株式を保有している場合(分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場
合を除く。)の当該分割
そのうえで,後者の「分割対価資産が交付されない分割」(無対価分割)の場合には,株式の交
付が省略されていると認められる次の資本関係にある場合の無対価分割は,対価要件をかかわらし
めずに適格要件の判定を行うことができるよう明確化されています(法令4の3⑥⑦⑧)。なお,
無対価分割が適格組織再編成の対象となり得るのは,分割前に分割法人と分割承継法人に完全支配
関係がある場合に限られますが,保有する株式の譲渡等により完全支配関係が継続しないことが見
込まれる場合でも,支配関係が継続することが見込まれる一定の場合においては,適格組織再編成
の対象となり得ることとされています(法法2十二の十一,法令4の3⑦)。また,同様に,当該
分割が共同事業を営むための分割に該当する場合においても,一定の分割型分割に限り適格分割の
対象とされています(法令4の3⑥二イまたはハ,法令4の3⑧)
。
①
分割前に当該分割に係る分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による完全支配
関係がある場合で,以下の関係があるとき(法法2十二の十一,法令4の3⑥一)
。
イ)分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係(分割型分割の場合)
ロ)分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係(分社型分割の場合)
②
分割前に当該分割に係る分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係がある
場合で,以下の関係があるとき(法法2十二の十一,法令4の3⑥二)
。
無対価分割型分割の場合には以下のイからハに該当する関係
イ)分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ)一の者が分割法人及び分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ハ)分割承継法人及び当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行
済株式等の全部を保有する関係
平成23年2月14日
(第三種郵便物認可)
無対価分社型分割の場合には二に該当する関係
ニ)分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係
なお,無対価合併においても説明したとおり,上記法人税法施行令第4条の3第6項第2号ロに
登場する「一の者」はあくまでも一人の個人を指すのであって当該個人の特殊関係者は含まれない
ことにご留意ください。
無対価株式交換についても,従前より,実務上交換対価の交付が省略されたと認められる場合に
限り,株式交換完全子法人の株主等に株式交換完全親法人株式又は株式交換完全支配親法人株式の
いずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されない株式交換に該当するものとして適格組織再
編成の対象として取り扱われていました。
今般の税制改正では,株式交換前において株式交換に係る株式交換完全子法人と株式交換完全親
法人の間に完全支配関係がある場合で,かつ,株式交換の対価を交付しない場合でも当該対価を交
付していたとすれば成立したであろう資本構成・株主構成と同じになるような場合の無対価株式交
換を適格株式交換の対象となるよう整理しています。具体的には,以下に記載するような形態の無
対価株式交換は,対価要件をかかわらしめずに適格要件の判定を行いうるよう明確化されました。
なお,無対価株式交換が適格組織再編成の対象となり得るのは,株式交換前に株式交換完全親法人
と株式交換完全子法人に完全支配関係がある場合に限られますが,保有する株式の譲渡等により完
(第三種郵便物認可)
平成23年2月14日
全支配関係が継続しないことが見込まれる場合でも,支配関係が継続することが見込まれる一定の
場合においては,適格組織再編成の対象となり得ることとされています(法令4の3⑮一)
。ま
た,無対価株式交換が共同事業を営むための株式交換に該当する場合においても,下記で説明する
親法人完全支配関係がある場合に限っては,適格株式交換の対象とされることになっています(法
令4の3⑯)。
①
株式交換前に株式交換に係る株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に当該株式交換
完全親法人による完全支配関係がある場合で,当該株式交換が株式交換完全子法人の株主に株式
交換完全親法人の株式その他の資産が交付されない株式交換である場合には,適格株式交換の対
象から除外されました(法令4の3⑭一)
。本規定で除外される無対価株式交換は,以下のよう
な株式交換を想定しています。
②
株式交換前に株式交換に係る株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者によ
る完全支配関係がある場合で,以下のいずれかの関係があるとき(法令4の3⑭二)
。
・
一の者が株式交換完全子法人および株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する
関係(同一者完全支配関係)
・
株式交換完全親法人及び当該株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する者が株
式交換完全子法人の発行済株式等の全部を保有する関係(親法人完全支配関係)
無対価合併においても説明したとおり,上記法人税法施行令第4条の3第14項本文に登場する
「一の者」はあくまでも一人の個人を指すのであって当該個人の特殊関係者は含まれないことにご
留意ください。
平成23年2月14日
(第三種郵便物認可)
前述したとおり,今般の税制改正においては,法人の行う現物配当等について組織再編税制の一
環として取り扱うこととされました。ここでは,税法上,新設された現物分配の定義規定及び現物
分配に係る適格要件を解説した上で,適格・非適格それぞれの場合の当事者の課税関係並びに現物
分配制度の活用手法につき解説します。
現物分配とは,法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)がその株主等に対し,次に掲げ
る事由により金銭以外の資産を交付することをいいます。また,現物分配により保有資産を移転し
た法人を現物分配法人,資産の移転を受けた法人を被現物分配法人として定義されました(法法2
十二の六,十二の六の二)
。
・
剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限り,資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分
割型分割によるものを除く)
,利益の配当(分割型分割によるものを除く)又は剰余金の分
配(出資に係るものに限る)
・
法人税法第24条第1項第3号から第6号に掲げるみなし配当事由
なお,負債の移転を伴う事業の現物分配についてですが,会社法上の実行の可否はともかく,少
(第三種郵便物認可)
平成23年2月14日
なくとも税務上は,現物分配による事業の移転は想定されておらず,資産と負債を一体とした取引
については今回の改正の対象とはされていません。
適格現物分配とは,内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち,その現物分配により資産の
移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人
(普通法人又は共同組合等に限る)のみであるものをいいます(法法2十二の十五)
。
これは,平成22年度税制改正により導入されたグループ法人税制の一環として,グループ内での
現物配当につき非課税とすることを目的として,組織再編税制に組み込んだものです。ただし,外
国グループ会社への資産移転に対して課税の繰延べを認めると日本での課税機会が失われてしまう
ため,適格現物分配は内国法人から内国法人への資産移転に限定されています。従って,現物分配
を受ける株主に1人でも個人が存在したり,外国法人が含まれる場合には,現物分配全体が非適格
となります。
また,組織再編税制の一形態ではあるものの,会社分割等他の再編とは異なり,現物分配は対価
を交付しない取引であることから,適格となるためには,分配直前に完全支配関係があれば足り,
その後の完全支配関係の継続は求められていません。
適格現物分配及び非適格現物分配の各当事者の課税関係をまとめると【図表12】のようになりま
す。
区分
現物分配法人
被現物分配法人
適格現物分配
・ 資産は帳簿価額にて譲渡
・ 配当所得に係る源泉徴収不要
・ 資産は帳簿価額にて移転
・ 配当金は組織再編行為として全
額益金不算入
・ 一定の場合,欠損金や含み損の
制限規定が適用される
非適格現物分配
・ 資産は時価にて譲渡
・ 資産は時価にて移転
・ 配当所得に係る源泉徴収が必要 ・ 配当金は受取配当等の益金不算
入制度が適用される
現物分配が適格現物分配に該当した場合,分配財産につき現物分配直前の帳簿価額での譲渡をし
たものとして,現物分配法人において譲渡損益は計上されません(法法62の5③)。また,被現物
分配法人においては,当該帳簿価額相当額が資産の取得価額とされますが,これによる収益の額は
全額益金不算入となります(法法62の5④,法令123の6①)
また,適格現物分配制度は組織再編税制の一環として整備されており,他の再編同様,含み益を
平成23年2月14日
(第三種郵便物認可)
有する資産を欠損金や含み損資産を法人株主に移転することで,租税回避の余地があることから,
一定の場合に被現物分配法人において欠損金や含み損の制限規定が適用になります。この点につい
ては後述します。
さらに適格現物分配については,配当所得に係る源泉徴収も不要となります(所法24①)
。
なお,資本の払戻しや自己株式の取得等のみなし配当事由の場合,配当する財産の帳簿価額から
減少する資本金等の額を控除した,みなし配当の額について上記の取扱いが行われます。
現物分配が非適格現物分配に該当した場合,従来同様,分配される資産の含み損益につき,現物
分配法人にて課税が行われます。
被現物分配法人は,資産を時価で受け入れるとともに,同額の受取配当金が計上されます。当該
受取配当金については所得税の源泉徴収の対象となります。また益金不算入制度の適用が可能で
す。
適格現物分配については,後述する会社清算時の残余財産の分配における活用の他,孫会社の子
会社化や,親子会社の株式持合い解消への活用が期待されています。
孫会社の子会社化は,持株会社体制への移行後の子会社の兄弟会社化等,実務上のニーズの高い
再編形態です。従来であれば子会社を分割法人,親会社を分割承継法人とした無対価の分割型分割
の手法を用いたケースが大半でしたが,新法施行後は現物配当や株式譲渡等も選択肢となるものと
思われます。
孫会社を子会社化する手法について,株式譲渡,分割型分割及び現物配当の比較を行うと【図表
14】のとおりです。
(第三種郵便物認可)
手法
平成23年2月14日
メリット
デメリット・留意点
株式譲渡
(時価譲渡)
・
・
法務上の手続きが簡易
・ 資金決済が必要
株式の譲渡損益につき譲渡損 ・ 株式の譲渡損益につき繰延べ
益調整資産に該当する場合は繰
られる場合でも時価を測定する
延べることが可能
必要がある
無対価分割型
分割
(適格分割)
・ 資金決済不要
・ 会社法の手続きが煩雑
・ 適格分割の場合,資産は帳簿 ・ 一定の場合,欠損金や含み損
価額で移転し,課税関係は生じ
の制限規定の対象となる
ない
・ 子会社では孫会社株式の帳簿
価額の減額処理が生じる
現物配当
・ 資金決済不要
・ 子会社に分配可能額があるこ
(適格現物分配) ・ 会社法上の手続きが簡易
とが前提
・ 適格現物分配の場合,資産は ・ 一定の場合,欠損金や含み損
帳簿価額で移転し,譲渡関係は
の制限規定の対象となる
生じない(ただし,配当財産の
帳簿価額については,留保所得
を構成)
親子会社の株式持合いの解消についても,実務上のニーズが高い再編形態です。親子会社の株式
の持合いが生じるケースとしては,株式交換を行う場合に完全子法人となる会社が自己株式を保有
していた場合に当該自己株式に対して完全親会社株式が交付されるケースや,親子会社が共同株式
移転で持株会社を設立した場合に親会社が保有していた子会社株式に対して持株会社株式が割当て
られるケースがあります。こうした場合,会社法においては親会社株式を相当の時期に処分するこ
とが求められます(会社法135③)
。
この点,親会社への株式譲渡(親会社による自己株式取得)を行った場合と現物配当を行った場
合を比較したのが,【図表15】ですが,記載のとおり,現物配当は,資金決済が不要なことに加
え,適格現物分配に該当する限りにおいて,みなし配当の源泉徴収も不要である点,メリットが大
きい手法であると思われます。
また,適格現物分配については,一定の場合に被現物分配法人において欠損金の制限規定が適用
になる点は前述したとおりですが,自己株式は税務上は資本金等の控除項目であり(法令8①十八
ロ),資産ではないことから,仮に子会社が保有する親会社株式が上場株式等で分配時点で含み益
があった場合であっても,含み益がないものとして欠損金の特例規定の適用が可能,すなわち,欠
損金の制限規定の適用は受けない点が,国税庁より公表された質疑応答事例において公表されてい
ます(
「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例問16」)。したがって欠損金の制限規定適用
によるデメリットは生じないことになります。
平成23年2月14日
(第三種郵便物認可)
手法
メリット
デメリット・留意点
株式譲渡
(自己株式取得)
−
・ 資金決済が必要
・ みなし配当が生じた場合の源
泉徴収義務
・ 親会社において株主総会特別
決議が必要
・ 親会社に分配可能額があるこ
とが前提
現物分配
・
・
資金決済不要
・ 子会社に分配可能額があるこ
子会社における株主総会の普
とが前提
通決議で可能
法人を清算する場合,残余財産について全て現金化せず,金銭以外の財産を株主に分配すること
も,実務上は多数行われているところですが,こうした解散による残余財産の分配も,法人税法第
24条第1項第三号に規定されるみなし配当事由として,適格要件を充足する場合は,残余財産は帳
簿価額で移転されることになり,含み損益課税なく財産分配が可能になります。
この点に関し,内国法人が非適格現物分配による残余財産の全部の分配又は引渡しを行った場合
には,残余財産の確定時における価額にて譲渡を行ったものとして,各事業年度の所得の計算を行
うとともに,当該分配又は引渡しによる譲渡利益額又は譲渡損失額については,残余財産の確定の
日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入される旨が改正法において規定されています
(法法62の5①,②)
。
当該規定は,本来であれば現物分配による資産の譲渡損益の測定については,分配時の時価によ
り行われ,分配日の属する事業年度の損益となるところ,残余財産の全部分配時には,分配前に譲
渡損益を確定させる必要があり,また,実際の分配時には法人が存在していないことから置かれた
譲渡損益の測定及び認識時点に係る特例規定です。
したがって,残余財産の一部の分配の場合であっても,当該分配が非適格現物分配に該当する場
合には,原則どおり,譲渡損益課税が行われることになります。
以下の設例では,土地を保有する会社の清算につき,換価した上で金銭で分配するケースと現物
分配するケースを比較しています。
(第三種郵便物認可)
平成23年2月14日
(単位:百万円)
(借)現金
300
(貸)土地
150
土地譲渡益
(借)法人税等
(注1)42
150
(貸)未払法人税等
42
法人税額27百万円+住民税額5百万円+事業税額10百万円=42百万円
課税所得金額=土地譲渡益150百万円−繰越欠損金額50百万円
−事業税額10百万円=90百万円
法人税額=課税所得金額90百万円×30%=27百万円
住民税額=法人税額27百万円×20%=5百万円
事業税額=(事業税額控除前)課税所得×10%=(土地譲渡益150百万円−繰越欠損金額50百
万円)×10%=10百万円
(借)未払法人税等
42
(貸)現金
42
資本金等の額
10
現金
(注2)
308
利益積立金額
(注3)
298
内,59百万円(みなし配当298百万円×20%)は源泉税額として徴収
解散時利益積立金190百万円+土地譲渡益150百万円−法人税等42百万円
(単位:百万円)
(借)現金
仮払税金
249
(注1)
59
(貸)S社株式
みなし配当
50
(注2)
298
平成23年2月14日
資本金等の額
(第三種郵便物認可)
(注3)40
みなし配当に係る源泉徴収税額:みなし配当298百万円×20%=59百万円
交付金銭308百万円−対応資本金等の額10百万円=298百万円
みなし配当298百万円+S社株式簿価50百万円−交付金銭308百万円=40百万円
ケースAの場合,最終事業年度末でS社に繰越欠損金はないため,P社への引継ぎはありませ
ん。
(単位:百万円)
(借)資本金等の額
10
(貸)現金
(注1)
50
利益積立金額
190
土地
150
内,みなし配当に係る所得税額については源泉徴収されることになる。
(単位:百万円)
(借)現金
仮払税金
土地
資本金等の額
41
(貸)S社株式
(注1)
9
みなし配当
50
(注2)
190
150
(注3)
40
みなし配当に係る源泉徴収税額:金銭配当に対応するみなし配当額については,分配財産
の帳簿価額の比で計算します(平成22年度10月6日付国税庁質疑応答事例参照。
)。
源泉徴収税額=(交付金銭50百万円−減少資本金等の額10百万円×(金銭簿価50百万円÷残
余財産簿価200百万円)
)
×20%≒9百万円
(交付金銭50百万円+土地簿価150百万円)
−対応資本金等の額10百万円=190百万円
みなし配当190百万円+S社株式簿価50百万円−(交付金銭50百万円+土地簿価150百万
円)=40百万円
詳しくは欠損金の項で解説しますが,ケースBの場合,P社が残余財産確定日の翌日の属する事
業年度開始日の5年前の日から継続してS社を支配していることから,S社の繰越欠損金50百万円
はP社に引き継がれることになります。これは,適格現物分配の活用により,S社が土地を帳簿価
額で移転させることで欠損金の利用が行われないことによる効果です。
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