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5 資本金等の額がマイナスとなる法人に おける「取引相場のない株式等」の評価 C A S E

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5 資本金等の額がマイナスとなる法人に おける「取引相場のない株式等」の評価 C A S E
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C A S E
資本金等の額がマイナスとなる法人に
おける「取引相場のない株式等」の評価
5
税理士法人プライスウォーター
ハウスクーパース 税理士
UESTION
深田 かおり
資本金等の額がマイナスの場合の
類似業種比準価額と配当還元価額の算定方法
未上場の当社は、過去の組織再編の影響
により、税務上の資本金等の額がマイナス
・直前期末の資本金等の額: ▲ 100 百万円
・直前期における配当金額:
直前々期における配当金額:
となっています。この場合の、財産評価基
本通達に基づく取引相場のない株式の算定
・直前期の利益金額:
直前々期の利益金額:
方法を具体的に教えてください。
なお、当社は従業員数が 100 人を超え
ていますので、類似業種比準価額方式で株
・直前期末の利益積立金額:
200 百万円
250 百万円
1,500 百万円
135 円
価を算出する大会社に該当します。また、
類似業種の株価(A):
土地保有特定会社や比準要素 1 の会社等
類似業種の 1 株当たり配当金額(B):
4円
類似業種の1株当たり利益金額(C):
その他、当社の株価計算に必要な情報は
16 円
以下のとおりです。
・直前期末の発行済株式数:
・直前期末の資本金の額:
38 zeimu QA
50 百万円
・類似業種の比準要素等
の特定の評価会社には該当しません。
参 考
法法2十六
評基通180、
188-2
平成 18 年 12 月 22 日
「
「財産評価基本通達
の一部改正について」
通達等のあらましに
ついて
(情報)
(
」国税
庁その他法令解釈に
関する情報)
平成 20 年 6 月 9 日
「類似業種比準価額
計算上の業種目及び
類似業種の株価等の
計算方法等について
(情報)
(
」国税庁その
他法令解釈に関する
情報)
40 百万円
1,000,000 株
類似業種の1株当たり純資産価額(D):
500 百万円
209 円
平成 18 年5月の会社法施行及びそ
において、仮に資本金等の額が負の値であっ
れに伴う法人税法関係法令の改正に伴
たとしても、その結果算出された負の値の株
い、取引相場のない株式を評価する際の各比
価(1株当たりの資本金等の額を 50 円とし
準要素の数値は、「1株当たりの資本金等の
た場合の株価)に、同じ資本金等の額を基と
額(法人税法2条 16 号の資本金等の額)を
した負の値(1株当たりの資本金等の額の
50 円とした場合の株式数」を基として計算
50 円に対する倍数)を乗ずることにより約
することになりました。
分されるため、結果として適正な評価額が算
これにより、「1株当たりの資本金の額を
出されることになる旨が記載されております。
50 円とした場合の株式数」を基に株価を算
また、同情報には、配当還元価額を算出する
定していた従前とは異なり、評価会社の資本
場合も、同様にマイナスのまま計算すればよ
金等の額がマイナスの場合に、どのように株
いことが示されています。
価を算定するのか判断に迷うケースが多くな
りました。
しかし、このような場合でも、財産評価基
本通達 180 に規定される類似業種比準価額算
具体的な計算方法は、以下の解説でご確認
ください。
解説
1
類似業種比準価額の算定
定の算式どおり、そのまま計算することにな
まずは、1株当たりの資本金等の額を 50
ります。この取扱いは、平成 18 年 12 月 22 日
円とした場合の発行済株式数を算定し、評価
公表の「「財産評価基本通達の一部改正につ
会社の1株(50 円)当たり配当金額、利益
いて」通達等のあらましについて(情報)」
金額、純資産価額の3要素を計算します。
2012.2
CASE 5 資本金等の額がマイナスとなる法人における「取引相場のない株式等」の評価
発行済株式数(1株当たり資本金等 50
①
このように、資本金等の額がマイナスの値
円の場合)
であっても、マイナスの値のまま最後まで計
▲ 100 百万円÷ 50 円=▲ 2,000,000 株
算することで、最終的に約分され、正の値の
②
評価会社の1株(50円)当たり配当金額B
(40 百万円+50 百万円)÷2÷
▲ 2,000,000 株=▲ 22.5 円
③
評価会社の1株(50円)当たり利益金額C
200 百万円÷▲ 2,000,000 株=▲ 100 円
評価会社の1株(50 円)当たり純資産価
額D
2
配当還元価額の算定
配当還元価額についても前述と同じ考え方
で、算定過程で生じたマイナスの値を、その
まま財産評価基本通達 188-2に規定される算
式に当てはめて算出することで、最終的に正
の値の株価が算出されます。
(▲ 100 百万円+ 1,500 百万円)÷
▲ 2,000,000 株=▲ 700 円
▲ 22.5 円
▲100 円
×
= 450 円
10 %
50 円
なお、同通達 188-2括弧書きには、1株当
スであることから、1株当たりの資本金等の
たりの資本金等の額を 50 円とした場合の配
額を 50 円とした場合の発行済株式数がマイ
当金額が「2円 50 銭未満のもの及び無配の
ナスの値となり、B C D の各要素もマイナ
ものにあっては2円 50 銭とする」旨が規定
スの値となります。通常、財産評価の算定過
されています。ご質問のケースでは、1株
程では「負の値が生じた場合には0とする」
(50 円)当たり配当金額が▲ 22.5 円であり、
など、負の値のまま算定を続けるケースはめ
この値は2円 50 銭未満ではありますが、仮
ったにありませんが、ここではこのまま計算
に2円 50 銭に置き直すと、適正な株価が算
を続けることになります。
定されないことになってしまいますので、▲
次に、類似業種と評価会社の各要素を、財
22.5 円をそのまま用いて計算を続けるものと
産評価基本通達 180 の下記の算式に当てはめ、
平成 18 年 12 月 22 日公表の情報で示されてい
評価会社の1株当たりの資本金等の額を 50
ます。
円とした場合の株価を算出します。
B
C
D
+
×3+
B
C
D
5
CASE 5
ここで、評価会社の資本金等の額がマイナ
A×
Selection Q&A
④
株価が算出されることとなります。
なお、同情報には、資本金等の額がマイナ
スとなるケースで、無配等の場合は2円 50
× 0.7
=▲ 523.5 円(10 銭未満切捨)
銭を▲2円 50 銭と読み替える旨は明記され
ていませんが、実務上は、1株(50 円)当
たり配当金額が、0円以上2円 50 銭未満の
深田 かおり
最後に、評価会社の本来の1株当たりの資
場合には「2円 50 銭」に、▲2円 50 銭超0
FUKADA kaori
本金等の額は 50 円とは異なるため、1株当
円未満の場合には「▲2円 50 銭」に置き直
たりの資本金等の額の 50 円に対する倍数を
して計算することにより対応しているようで
乗じて、評価会社の1株当たりの株価を算出
す。平成 18 年 12 月 22 日公表の情報に基づけ
します。
ば、基本的にはこのような考え方に弊害があ
税理士。早稲田大学商
学部卒業。2004 年 2 月
税理士法人プライスウ
ォーターハウスクーパ
ース入所。
日系、
外資系
企業に対する税務コン
サルティング業務(主
にグループ内組織再編
及び事業承継等に関す
るコンサルティング業
務)
に携わっている。
▲ 100 円
50 円
(注)
▲ 523.5 円×
= 1,047 円
(注)▲ 100 百万円÷1,000,000 株=▲100 円
るとはいえませんが、実際の運用に当たって
は個別に所轄官庁に確認しておくことが肝要
と思われます。
2012.2
zeimu QA 39
Selection
C A S E
5
CASE 5
資本金等の額がマイナスとなる法人における「取引相場のない株式等」の評価
コメント
近年、組織再編に伴う抱合株式の処理や
れるところでしょう。
上場会社の市場における自己株取得、グル
また、平成 20 年6月9日公表の「類似
ープ税制下の自己株取得等により、資本金
業種比準価額計算上の業種目及び類似業種
等の額が0又はマイナスとなるケースが頻
の株価等の計算方法等について(情報)」
繁に見受けられるようになりました。その
において、類似業種の株価等の計算の基と
結果、このような会社の株価評価に際して
なる標本会社から、「資本金等の額が0又
取扱いに迷う事案が増えてきましたので、
はマイナスである会社」を除外することが
本稿では、類似業種比準価額や配当還元価
明らかとされました。
額算出の過程で仮にマイナスの値が生じた
しかし、同情報には、これらの会社の株
としても、マイナスのまま計算を続ける旨
価等を含めて「類似業種の株価等を計算す
を、具体例を示してご説明しました。
ることは不適当と考えられる」ため除外す
この取扱いは平成 18 年 12 月 22 日に国税
るという理由が示されています。このこと
庁が公表した情報に基づくものです。ただ
から、資本金等の額がマイナスの会社の評
し、上記 2 の配当還元価額算出時の2円
価について、平成 18 年 12 月 22 日公表の情
50 銭未満の場合の取扱いのように、国税
報に基づき単純にマイナスのまま計算する
庁からの詳細な正式見解が出されていない
ことで、本当に適正な評価額が算出されて
ため、依然として判断に迷う部分も多く残
いると考えてよいのか疑義が残るところで
っていますので、関係法令等の整備が望ま
はあります。
●日本税理士会連合会の推薦図書に指定!
法人税申告書の書き方
平成23年版 附:公益法人の申告書の書き方、
グループ法人税制における申告書の書き方
渡辺 淑夫・自閑 博巳 共著
B5判・612頁
定価3,780円(税込)
40 zeimu QA
2012.2
◇本書は、類書に見られるような記載要領をもとにした通り一遍の解説
ではなく、多数の具体的な設例を用いながら、実践的な作成手順に
従い詳細に解説しています。
◇平成23年4月1日以後終了事業年度分に対応すべく、最新の法令通
達に準拠しています。
また、平成23年の法人税関係の改正が一目で
分かるように改正のあらましを巻頭に載せて使いやすくしています。
お問い合わせ・お申し込みは
〒101-0065 東京都千代田区西神田1-1-3(税研ビル)
税務研究会
TEL 03(3294)4741 FAX 03(3233)0197
http://www.zeiken.co.jp
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