今日のホテルブランドにとって 顧客ロイヤルティを高める要因は何か? コンシューマーインテリジェンスシリーズ jp
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今日のホテルブランドにとって 顧客ロイヤルティを高める要因は何か? コンシューマーインテリジェンスシリーズ jp
www.pwc.com/jp コンシューマーインテリジェンスシリーズ 今日のホテルブランドにとって 顧客ロイヤルティを高める要因は何か? PwC のコンシューマー インテリジェンスシリーズ では、急速な変化を続け るメディア、 ホスピタリティ、 テクノロジーを取り巻く 環境における、消費者の 態度と行動について考察 します。 調査の概要および目的 PwC のコンシューマーインテリジェンスシリーズの今号では、1,026人の旅行者(ビ ジネス客およびレジャー客の合計) にインタビューを実施。彼らの好みが、大手グローバ ルホテルのロイヤルティプログラムの投資優先順位付けに、どのように影響するのかを 調査した結果を報告する。私たちはホテル業界における顧客ロイヤルティに焦点を当て た4つの質問を彼らに投げかけ、より本質的な理解をするべく、その回答を分析した。 1. ロイヤルティに関するミレニアル世代の旅行者の行動は、当該世代特有のものなのか、 または旅行者全般におけるより大きなマクロトレンドを示すものなのか? 2. ホテル間の競争激化や統合整理が進むホテルマーケットにおいて、ロイヤルティプ ログラムの価値は、ロイヤルティの構築や会員の利用や、ブランドやオーナーの価値 にどのように影響しているか? 3. 会員利用を促すロイヤルティプログラムの最も重要な要素は何か?ホテルブランド は会員利用を促すために何をできるのか?目に見えるハード面のメリットと目に見 えないソフト面のメリットのどちらを重視するかについて検討する場合、ホテルの ロイヤルティプログラムはどちらに注目すべきなのか? 4. シェアリングエコノミーの旅行選択肢が増えている中で、伝統的なホテルのロイヤ ルティプログラムが勝ち抜くためにはどうすればよいのか? 回答者属性 合計 1,026 名 59%ビジネス客(年間宿泊数 10 泊以上対象) 41%レジャー客(年間宿泊数 5 泊以上対象) 1 14% : 21-29 歳 21% : 30-39 歳 20% :40-49 歳 22% :50-60 歳 23% :61-69 歳 3 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 1. ミレニアル世代のロイヤルティに関する考え方、受け止め方は、 レジャー客を問わず引き付ける要素を 当該世代特有のものなのか、 それとも旅行者全般におけるよ ロイヤルティプログラムはビジネス客、 持っている り大きなマクロトレンドを示すものなのか? ロイヤルティを検証するにあたり、世代別のグループで態度や行動がどのように異な るのかを調査した。近い将来、バイイングエコノミーの大部分を占めるようになるミレ ニアル世代(本件調査では21歳から29歳の年齢層と定義)の旅行者が持つ、特定のロイ ヤルティプログラムに対するロイヤルティや愛着度は低いのだろうか? ロイヤルティプログラムへの平均入会件数 ミレニアル世代 その他 ビジネス 3.4 3.9 平均して何件のロイヤルティプログラムに入会しているのかを世代別に調査したと ころ、世代間で大差はないという興味深い結果が出ている。 レジャー 2.3 3.2 合計 3.0 3.6 ミレニアル世代:その他の世代の旅行者と変わらない 30歳以上の旅行者は平均して 対照的に、ミレニアル世代のレジャー客が入会しているロイヤルティプログラムは 平均2.3件で、同世代のビジネス客と比較して低くなっている。その要因としては次のよ うなことが考えられる。 件のロイヤルティ プログラムに入会している • ミレニアル世代のレジャー客は、従来型の宿泊施設よりも、シェアリングエコノミー 型の宿泊施設を利用することにより関心を持っている(Section 4参照) 。 3.6 一方でミレニアル 3.0件の 世代は ロイヤルティプログラムに 入会している ミレニアル世代のビジネス客は、平均して3.4件のロイヤルティプログラムに入会し ている。30歳以上のビジネス客(平均3.9件)よりはやや少ないが、30歳以上のレジャー 客(平均3.2件)よりは多い。 4 • ミレニアル世代のレジャー客は、ロイヤルティプログラムの入会件数を積み上げる時 間が、他の世代のレジャー客と同じようには無かった。 • ミレニアル世代のレジャー客は、30歳以上の旅行者やビジネス客と同じような旅行経 験や、同じ頻度で旅行することがなかった。 結果的には、 ミレニアル世代と30歳以上の旅行者におけるロイヤルティプログラムへの 関心度には、 示唆するほどの大きな違いはなかった。むしろ、私たちがミレニアル世代に 過度に注目してしまったために、ミレニアル世代以外も含むマクロトレンドを蔑ろにし ていなかったか、自問しなければならない。 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 2. 交換の経済:ロイヤルティとバリューの交換 ホテル企業は旅行者が特定のプログラムに入会する動機を理解した上で、最善のブラ ンドエンゲージメント手法を考える必要がある。旅行者は3つ以上のロイヤルティプロ 旅行者が特定のロイヤルティプログラムを選択する動機について調査したところ、ビ グラムに入会していることを踏まえると、ホテル企業は他のロイヤルティプログラムと ジネス客、レジャー客ともにポイントバリューと価格をより重視することが分かった。 の差別化をどう図るべきなのだろうか? しかし、レジャー客がロイヤルティプログラムを選択する上で最も重視する上位3つの 要素に、ロイヤルティ特典がランクインしていないことは興味深い。これは何を示唆し 最終的には、最も多くの会員利用を促すブランドが最も高い経済的果実を得る可能性 ているのだろうか。 が高い。私たちはビジネス客やレジャー客が、 この一年間にどのくらいの頻度でポイント ロイヤルティとバリューの交換の経済性を検証する上で問うべきことは、 ロイヤルティ プログラムは誰のためにあるものなのか、そしてロイヤルティプログラム、交換頻度、交 換する特典をどのように連携させるのか?である。 旅行者が特定のロイヤルティプログラムを選択する動機は何か? を利用しているのかを尋ねた。答えはやや意外で、レジャー客の約60%が過去一年間に おいてポイントを利用していなかった。 今回の調査ではミレニアル世代とその他の世代の旅行者が、どのくらいの頻度で ホテルのロイヤルティプログラムのポイントを利用するのかについても確認している。 一見すると、 ミレニアル世代は年齢が上の世代の旅行者よりもロイヤルティプログラム のポイントを利用することが少ないようだ。 過去一年間にどのくらいの頻度でポイントを利用したか? 54% ポイントの価値 46% 41% 38% 値頃感 40% 自分に合ったサービス 27% 他のロイヤルティ プログラムとの提携 (クレジットカード、 エアラインなど) 家族・友人 その他 33% 31% 7% 7% 3% 6% ビジネス vs レジャー ビジネス客 30% レジャー客 18% 58% 35% 7% ミレニアル世代 vs その他 ミレニアル世代 52% その他 39% 0回 ビジネス客 52% 33% 47% 1~3回 14% 13% 3回以上 レジャー客 調査対象 ビジネス客(600名)、 レジャー客(426名) 問7:ロイヤルティプログラムに参加するに至った決め手は何ですか? 5 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 ただし、より詳しく分析してみると、ミレニアル世代の行動はレジャー客の行動に似 ていることが分かった。従って、ミレニアル世代がロイヤルティプログラムのポイント を利用するか否かには、彼らの行動特性ではなく、旅行の回数(量)が影響しているので はないかと考えられる。 いずれにしても、ミレニアル世代やレジャー客と一貫性を持ったかかわり方を理解し ているブランドは、より大きくロイヤルティの基盤を築くことができる。 ホテルロイヤルティプログラムの価値基準は往々にして、 ビジネス客寄りのものとなっ ている。ロイヤルティプログラムが成熟し、価値を創出しようとするにつれ、 ホテル企業 はどこに投資するのか優先順位付けの方法を決める必要がある。ホテル企業は、 「全客層 を対象にプログラムをデザインするのか、それよりも最も収益性の高い客層に焦点を当 てるのか」を自問する必要がある。 Points redemption Redeemed points for ビジネス客、 レジャー客それぞれが好む特典は何か? ビジネス客 (n=423) レジャー客 (n=180) 無料宿泊特典 84% 79% 客室アップグレード 21% 12% 航空マイル 13% 19% 商品 12% 7% ポイント交換したもの 会員による利用内容について、もう少し深堀りしてみる。過去12カ月でポイントを交 換している回答者に対し、5つある交換景品のカテゴリーそれぞれを検討した上で、ポイ その他 0% 2% ント交換時に選択したもの全てを選択してもらった。カテゴリーには、 ハード面 (物理的) の利点(宿泊、航空会社のマイル、その他の商品)とソフト面(目に見えない)の利点(アッ ビジネス客600人、レジャー客426人 プグレードまたは他の経験)が含まれる。消費者が何を有益と考えるのかを理解すると、 質問5a:過去12カ月で何回ポイント利用しましたか? 人々が魅力的と感じるものについてターゲットを絞ったプロモーションを実施するこ 質問5b:ポイントは何のために利用しましたか? とに役立つと考えられる。 ビジネス客はソフト面の利点を有益と考える 30歳以上の旅行者は目に見えるハード面の利点を、 ミレニアル世代は経験を求める 今回の調査では、ビジネス客、レジャー客ともに無料宿泊特典が最も有益であると考 えていることが分かった(ビジネス客の84%、レジャー客の79%)。また、二番目に有益 と考えるものは、ビジネス客では客室のアップグレード(21%)、レジャー客では航空会 社のマイル獲得(19%)であることが分かった。 世代別のポイント利用の理由に焦点を当てることにすると、少し異なる状況も見えて くる。全ての旅行者にとって無料宿泊特典が最も重視する選択肢であることに変わりは ないが、ミレニアル世代の旅行者の36%が客室のアップグレードを二番目に重視する選 択肢としているのに対し、その他の世代の旅行者で客室アップグレードを選ぶのは16% に留まっている。 この好みの違いは、客室のアップグレードに必要なポイント数が、一般的なレジャー 客の利用頻度では貯まりにくい水準に設定されているか、 またはビジネス客が客室のアッ プグレードのような体験型の特典をより好むようになったことに起因するものと思われる。 ビジネス客が出張でホテルに宿泊することが多い場合、彼らはその際に得たポイントを、 先々にレジャー目的で利用するホテルでの宿泊体験をより良いものとするために、客室 のアップグレードやアップセルに活用する可能性がある。会員の旅行理由をポイント利 用のパターンから把握することができれば、ホテルはより利用者に訴求する特典を提案 することができるようになり、結果としてより多くの会員利用を促せると考えられる。 6 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 ポイント利用に関してミレニアル世代は、よりビジネス客に近い行動をとっている。 このことはミレニアル世代が30歳以上の旅行者よりも、客室のアップグレードのような ソフト面の特典によりメリットを感じており、マクロトレンドに見られるホテルでの経 験の重要性の高まりを裏付けている。 他ではできないゲスト経験や、今までにない体験を提供することは、利用者のロイヤ ルティの構築やブランドへの愛着心の醸成にあたり、今後も重要な要素であり続けると 考えている。 旅行者が好みのブランドのホテルに泊まるために 許容できる追加料金はいくら? +27米ドル +23米ドル 旅行者がポイントと交換したいものは何か? Redeemed points for (those that redeemed any points in past 12 months) その他(n=533) ミレニアル世代(n=70) 無料宿泊特典 64% 85% 客室アップグレード 36% 16% 航空マイル 19% 14% 商品 19% 10% その他 1% 0% 最も重要なことは、年齢に関係なく、利用者がポイントの価値を理解し、またポイント の価値が利用者の行動を後押しするということである。これは2つの理由から重要であ る。まず、プログラムが会員利用を促すことと、会員とホテルオーナーに対する価値のバ ランスをとり続けるに当たっては、通貨価値の変動が会員の行動にどのような影響を与 えるのかを念頭に置く必要がある。第二に、市場統合の流れでロイヤルティプログラム を統合する際には、ポイント価値と会員全体に対して公平性を確保することに焦点を当 てるべきである。 7 Millennials (n = 70) Others (n=533) Hotel nights 64% 85% ビジネス客 レジャー客 Upgrades 36% 16% ロイヤルティ=より高いホテルブランドの対価 Airline miles 19% 14% ホテル企業はロイヤルティプログラム、 Merchandise 19% 10% 交換特典、交換頻度を戦略的に組み合わせ、さ まざまな方法で自社ポイントの価値を高めている。 この相互作用がホテルにより多くの Other 1% 0% 収益をもたらしているのだとすれば、それはどの程度なのか? 私たちの調査では、ほとんどの旅行者が、彼らの好みのホテルに泊まるために追加料 金を払うということが分かった。ビジネス客とレジャー客の大半(ビジネス客69%、レ ジャー客59%)が、好みのホテルブランドを冠したホテルに泊まるために、一滞在あたり 追加で10米ドルから50米ドル払う。しかし、ビジネス客はレジャー客よりも平均して少 し高めの追加料金(ビジネス客27米ドル、レジャー客23米ドル)を払っても構わないと 考えている。 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 3. ブランドとロイヤルティに対する愛着が与えるインパクト 前章では特にホテルのロイヤルティプログラムに着目したが、本章ではホテルでの経 験や旅行経験に注目し、利用者のブランドに対する愛着度やロイヤルティを高める要素 が何なのかを検証する。 ホテルに対するロイヤルティは、利用者がブランドに対して感じる価値とロイヤルティ プログラムに対して感じる価値によって構成される。例えば、私たちの調査回答者は、 スターウッドホテルズ&リゾーツを一番好きなブランドと回答しており、その理由とし て目に見えない価値、つまり、そのホテルで経験したことの素晴らしさを挙げている。 しかしながら、同社のロイヤルティプログラム「SPG」は、会員数ではヒルトンやマリ オットといった古くからあるプログラムの後塵を拝する4位にランクされている。これは、 目に見えるハード面の価値もロイヤルティプログラムの人気を左右しているためである。 客室の質、 それに加えて. . . ビジネス客もレジャー客も、ホテルを選ぶ最も重要な要素として客室の質を挙げてい る。もし、客室の質がホテル選びにおいて不動の地位を占めるならば、 ブランドへの愛着 に影響する他の要素はどのようなものなのか。ビジネス客はブランドへの愛着度を左右 する上位3つの要件の1つとしてロイヤルティプログラムを挙げている。 事実、全般的に旅行者は、ロイヤルティはホテルへのアクセスの良さ(例えば利便性、 視認性、利用できるホテル軒数など)や、プロモーション(例えば割引特典、アップグレー ド、ダブルポイント、無料宿泊特典など)そしてサービスといった他の要素に左右される と答えている。 旅行者にとって、ロイヤルティとは 自ら要 求して い るわ けで は な い 特典を享受すること。 一方で、レジャー客にとってのロイヤルティは、ホテルの特典プログラムとはより関 係が薄く、むしろ価格にひも付く値頃感やそのホテルグループ内のホテルブランドの多 彩さや価格帯の幅の広さといった点にひも付いている。 8 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 利用者の好みがロイヤルティを左右する 利用者は好みのホテルブランドの何を重視しているのか? Redeemed points for (those that redeemed any points in past 12 months) ビジネス客 レジャー客 客室の質 79% 76% 立地・ロケーション 68% 67% 30% • 効率的で丁寧なチェックイン手続き 価格 41% 69% サービス・経験 26% 23% • プログラム会員に対する挨拶 “コンシェルジュに頼めば、 何でもやってくれる。” • チケット手配やさまざまな提案といった コンシェルジュサービス アメニティ(スパ、ジム) • チェックインの際や客室でのウェルカムギフト 14% • チェックイン前にホテル支配人から 届くウェルカムメール 14% 館内の料飲施設 12% 10% クレジットカードとの提携 10% 12% ブランド認知度 7% 9% “ロイヤルティプログラムの表と裏を知るくらい多くの旅行をして いれば、サードパーティサイトを介してホテルを予約したいとは 言わないと思います。” 9 しかし、 どのブランドについても価格水準があり、 より多彩なホテルブランドポートフォ リオがあれば、利用者のロイヤルティをさらに多様に維持できるので、価格そのものが 問題ではないという考えもある。 全ての年代のビジネス客と30歳以上のレジャー客については、以下に示す様な個々 のニーズにあった経験も重視している : 会員特典 48% 客室の質や立地に次いで、ビジネス客は客室料金ではなくロイヤルティ特典を重視 する。これは驚くことでもなく、出張費で客室料金が賄われ、 その分のロイヤルティポイ ントが貯まっていき、休暇の際に無料宿泊特典として使えるからである。逆にレジャー 客は価格に敏感で、ロイヤルティ特典にはあまり関心がないと言える。 “到着前に必要なものがないか、 ホテルのマネージャーから ウェルカムメールが届くんだ。” これに対し、ホテル企業はロイヤル ティプログラム全体と今日の旅行者の ロイヤルティを高めるために特別な瞬 間を創造する力を常に磨く必要がある。 賢い利用者は何を欲しいか、 そして、 どうしたら欲しいものを手に入れられるかを 理解している 旅行者はホテルのロイヤルティプログラムの表と裏についてさらに理解してきてい る。彼らは比較のためにサードパーティーサイトを調べた上で、 ホテルに直接予約を入れ、 最も安い価格とより多くのポイントを得ている。こうすることで、 ホテルのロイヤルティ ポイントを稼ぎ、プロモーションを利用し、またアップグレードや特別な場面での特別 なサービスを得ているのである。 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 4. シェアリングエコノミーはロイヤルティを阻害するか? 旅行者はテクノロジーを活用してより安い価格、よりユニークな経験、そしてより多 くの選択肢を得る中で、時に自分の宿泊先の選択肢としてシェアリングエコノミーにも 目を向けている。その魅力の一方で、シェアリングエコノミーには課題も伴う。私たち の調査では利用者が安全面、衛生面および宿泊品質の不透明さに懸念を示していること が分かった。 レジャー客の88%およびビジネス客の90%は、従来型とは異なる宿泊施設の存在を 知っているものの、 これらの施設をあまり使ってはいない。 (ビジネス客の16%、 レジャー 客の24%) レジャー客が選ぶのは. . . シェアリングエコノミーを選択する理由: ホテルを選ぶ理由: 値頃感があるから 60% 予約が 簡単だから よりアットホームに 感じるから 59% 便利だから 新しい場所を 見つけたいから 55% 自分に合った サービスを 受けられるから 80% 78% 53% 事実、多くのビジネス客にとってシェアリングエコノミーは、選択肢の1つではないの である。私たちの調査によると、ほぼ三分の一のビジネス客が、雇用先の方針により、従 来型と異なる宿泊施設には泊まれないと回答しており、盗難を含む損害賠償、人身損害、 物的損害などを懸念している。さらに、多くのビジネス客がホテル宿泊に伴うさまざま なメリットを魅力的と考えている。 同様に、私たちが調査したレジャー客 の多くが宿泊品質と安全面に懸念を示 している。 “私どもの会社では実際、シェアリング エ コノミー に泊 まっては ならな いと 非常に強く警告しています。損害賠償 などを懸念すると...” ミレニアル世代のレジャー客はシェアリングエコノミーを宿泊先の選択肢として 積極的に活用 シェアリングエコノミーについて非常に関心の高いミレニアル世代のレジャー客の 中で、60%の人々が冒険的な経験を求めている。一般的に若年層の旅行者は比較的リス クをいとわず、価格志向であり、価格の割にユニークな経験を求めている。 こうした利用者は、より気ままに旅行をでき、また滞在期間についても制約が少ない という点で、他の利用者よりも自由度が高いと言える。彼らはまた、人とのかかわりや検 索、商品やサービスの購入をオンラインを通じて行うなど、最新技術やソーシャルメディ アにも親しんでいる。 “時に普段とは違う道に逸れて誰かの 家に泊まるのは冒険的であり、得する こともある。” 10 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 調査結果 ブランドの力 シェアリングエコノミー型の宿泊施設が有名ホテルブランドを冠する場合、ビジネス 客およびレジャー客にとってそうした施設に宿泊する選択肢はより現実的になものになる。 しかしながら、以下の様な疑問や懸念は引き続き対応が必要となる : • サービス、 品質および清潔さについて、 利用者に対する保証はどの程度なのか。 • 各施設の規定や運営管理はどのように行われるのか。 • 遵法性をどのような基準で判定するのか。 • 各社は全ての施設状況をどの様に把握するのか。 • シェアリングエコノミー型の宿泊施設にホテルのブランドを付けるにあたり、 どのよう な基準や要件を満たさなければいけないのか。 • ホテルと共通する特徴や特典を周知するために新しいブランド名が必要か。 • 施設を使う際には施設所有者と借主の間で直接のやり取りが発生するのか。 • 責任の所在や遵法性が欠けることによりホテルブランド価値に悪影響があるのではな いか。 利用者の中には、こうした取り組みがブランドの過度な拡大になりうると考える向き もある。一方で、今回の調査対象となった全てのレジャー客が、 ホテルブランドのロイヤ ルティポイントの付与対象になるならば、シェアリングエコノミー型の宿泊施設により 頻繁に泊まるだろうと回答している。 11 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 考察のポイント 1. ミレニアル世代のロイヤルティプログラムに対する態度や行動は、世代特有なものではない。実際に、30歳以上の 旅行者と非常に似ている。各ブランドは、ミレニアル世代だけをターゲットとするのではなく、本質的には全ての 世代を考慮してロイヤルティプログラムを作るべきである。これは、それぞれの態度や行動は互いに似ているか らである。 2. ロイヤルティプログラムそのものが成熟するにつれ、ホテル企業は全ての消費者セグメントにおいて、ブランドに 対する親しみを高めるための投資優先順位を判断するのと同時に、最も有益な客層をターゲティングする必要が 出てくる。究極的には、会員の利用を最大限高めることができるホテルブランドが最大の経済的な果実を得られ ると考えられる。 3. 客室の質の他に、ビジネス客とレジャー客では宿泊に対するニーズとロイヤルティプログラムに対する考えの基 準が異なる。ビジネス客は自ら宿泊代金を支払わない場合も多いので、客室価格に対する関心度は低いが、ロイヤ ルティプログラムは将来の無料宿泊特典を稼げるために重要と考えている。一方で、レジャー客はより価格志向 である。ホテルブランドとしては、会員特典とロイヤルティプログラムをうまく作りこむべきである。 4. シェアリングエコノミーは非常に高い注目を浴びる一方、冒険的な若いミレニアル世代を除いた多くの利用者の 間では、シェアリングエコノミーに内在する品質に対する懸念がある。むしろ、こうした利用者はブランドネーム が安全面、安心感そして品質について保証するといったことを望んでいるといえる。ホテル企業にとっては、シェ アリングエコノミーパートナーと協調することによるビジネスチャンスがあるとも考えられるが、一方でこうし たモデルの実施に伴う課題は多く残る。 12 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 日本におけるビジネスホテルチェーンとロイヤルティプログラムに関する考察 日本で展開する日系ホテルチェーンの多くは、 宿泊特化型のホテルを展開 するビジネスホテルチェーンである ラグジュアリーセグメントからバジェットセグメントまで幅広いクライアント層を ターゲットに、複数のブランドを展開する大手のグローバルホテルチェーンとは対照的 に、日本のビジネスホテルチェーンは、30代から50代の日本人のビジネスパーソンを主 たるクライアントターゲットとして、単独ブランドのホテルを展開している。そのため、 利用者が出張時の宿泊利用で貯めたポイントを、週末のレジャー利用で使えるリゾート ホテルやフルサービスのホテルもあわせて展開しているチェーンは極めて少ない。 ホテルチェーンの他にレストラン事業などを展開する事業会社では、会員による相互 利用を高めるための割引特典を提供していたり、ホテルチェーンを展開する鉄道会社で は、交通系 IC カードとホテルの会員証を共通化してポイントの互換性を高めることで、 会員になった後の使い勝手をよくしている例もある。しかし、国内のビジネスホテルチェー ンのロイヤルティプログラムは、ホテル以外の事業体(クレジットカードや共通ポイン トカードなど)と提携していないチェーン独自のロイヤルティプログラムが多く見られ る。こうした背景には、海外のホテルと比較してホテルのチェーン化やチェーン間の統 合が進んでいない国内ホテルの特性も影響していると思われる。また、出張の多いビジ ネスパーソンは複数の会員カードを持ち歩くことになり不便な側面があることに加え、 ポイントの利用範囲や互換性が乏しいため、現時点では利用者が会員になるインセンティ ブは限定的なものと思われる。ホテルのロイヤルティプログラムの脅威として、 OTA (オ ンライン旅行代理店)のロイヤルティプログラムの存在が以前にも増して顕在化してい る。利用者がホテルの予約時に利用する OTA は、インターネット上で互換性の高いポイ ントを付与しているため、ホテルに対するロイヤルティを高めたいホテルと OTA が対 峙する状況が生じている。また、OTA のロイヤルティプログラムのポイントは利便性が 高いことから、OTA が加盟ホテルのチェーン化を進めているとも考えられる。 13 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ 今後、 国内のホテルが取るべきロイヤルティプログラムの運営管理体制に おいて、 解決すべき課題はどのようなものがあると考えられるだろうか? 国内のホテルチェーン、特にビジネスホテルチェーンにおいては、ロイヤルティプロ グラムを専任する担当部署が存在しないことが多く、ロイヤルティプログラムの運営管 理が他の業務との兼務で行われているケースが多いようである。その結果、会員属性を 分析してマーケティングに反映したり、会員にとってより魅力的なサービスや付加価値 を提供することでロイヤルティを高め、会員が予約する際に OTA を経由せずに自社チェー ンに直接予約してもらうといった、ホテルロイヤルティプログラムの本質的な目的が果 たせていないと考えられる。 これ以外にも、多くのビジネスホテルチェーンでは同業他社の動向をにらみながら、 会員に対して客室の無料アップグレードやレイトチェックアウトといった特典を提供 しているが、深夜から早朝の数時間寝るだけといった滞在が多いであろうビジネスパー ソンにとって、こうした特典は必ずしも魅力的ではなく、チェーンのポイント交換先の 自由度が高い OTA のロイヤルティプログラムを利用する方にメリットを感じるといっ た状況がある。 また、ホテルチェーン本部のロイヤルティプログラムとは別に、ホテル単館でのロイ ヤルティプログラムが存在するために、複数の会員カードや ID・パスワードを持たなけ ればいけないケースや、ホームページでロイヤルティプログラムの入会案内を掲載して いるにもかかわらず、実際に入会するためにはホームページだけでは完結しない煩雑な 入会手続きが必要になるなど、個別のケースを挙げれば多くの課題がある。 近年は訪日外国人旅行者の増加などに後押しされてホテルマーケットが活況を呈し ており、国内のホテルチェーン、特にビジネスホテルチェーンにとっては客層が変化す ることも考えられる。今後はミレニアル世代がバイイングエコノミーの大半を占めるよ うになる中で、SNS やアプリの活用といったデジタルマーケティングの強化も避けられ ない。OTA に集客を頼るという選択肢は、より OTA に力を与え、送客手数料の引き上げ といった形での OTA チェーン化の加速も懸念される。また、それに対抗する形でのホテ ル間の連携や合従連衡が必要となり得る。変化する客層や、さらに多様化するであろう 利用者のニーズに対応するためには、各社が自社のあるべき姿、自社にとって重要な客層、 そして、その客層に提供したい付加価値を把握し、ロイヤルティプログラムのあり方や 具体的な提供価値を見直し、その運営管理体制を強化することに真剣に取り組む必要が あるのではないだろうか。 14 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ www.pwc.com /jp お問い合わせ先 PwCコンサルティング合同会社 〒100-6921 東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内パークビルディング21F Tel:03-6250-1200 (代表) 澤田 竜次 パートナー [email protected] 川井 徹也 シニアマネージャー [email protected] 黒川 英郎 マネージャー [email protected] PwC Japanは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた監査法人、京都監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC 弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。 PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義) としています。私たちは、世界157カ国に及ぶグローバルネットワークに208,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサー ビスを提供しています。詳細はwww.pwc.com をご覧ください。 本報告書は、PwCメンバーファームが2016年3月に発行した 『What’ s driving customer loyalty for today’ s hotel brands?』 を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に 依拠してください。 電子版はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/thoughtleadership.html オリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/us/en/industry/communications/publications/cis-hotel-loyalty.html 日本語版発刊月:2016年5月 管理番号:I201603-4 ©2016 PwC. All rights reserved. PwC refers to the PwC Network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors.