...

01 02 03 04

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

01 02 03 04
#
マエストロの解説
□□□□■
05
□□□□■□□□□■□□□
□■□□□□■
複雑になりすぎた 法人税をもう
一度勉強しよう
マエストロの解説
海外に積極的に事業展開する多国籍企業に
とって、移転価格税制に関する問題は、最も対
応が難しく、コストのかかるものの一つといえ
る。BEPS 行動計画においても、主要な検討項
目となっており、行動計画 8 から行動計画 10 ま
税務における第一人者 〝税務マエストロ 〟による税実務講座
でがその領域をカバーしている。このうち、最
今週のマエストロ&テーマ
も重要と考えられる「無形資産」についての討
BEPSプロジェクト
の進捗と税制改正へ
の影響④
議草案と、「グループ内役務提供」についての
#
130
品川克己
税理士法人プライスウォ
ーターハウスクーパース
(ディレクター)
無形資産については、行動計画 8 で扱ってい
るが、無形資産の広範かつ明確な定義の採用、
無形資産関連利益の適正配分の確保、価格付け
の困難な無形資産の移転に係る移転価格税制お
よび特別措置の策定等が進められ、最終的には
「OECD 移転価格ガイドライン」の関連個所を
改定することとなる。
また、グループ内役務提供については、移転
価格の観点から租税回避の可能性が高い取引を
扱っている行動計画 10 において検討が進めら
れ、最終的には OECD 移転価格ガイドライン
略歴
89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国
際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及
び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロー
スクールにて客員研究員として日米租税条約につ
いて研究。97年より00年までOECD租税委員会
に主任行政官として出向(在フランス)
し、
「 OECD
移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」
の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財
務省を辞職し現職。
第 7 章(グループ内役務提供に対する特別の配
慮)が改正されることとなる。
1
無形資産に関する議論
(1)比較可能性としての移転価格ファクター
今般の討議草案においては、次の項目につい
て、移転価格税制の適用に当たってどのように
次回のテーマ
131
#
考えるべきかについて議論されているが、最終
控除対象外消費税額
等の取扱い
的には、現行 OECD 移転価格ガイドライン第 1
熊王征秀
① ロケーションセービング
税理士
24
討議草案がすでに公表されている。
章及び第 2 章の改正につながることとなる。
消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化
など、消費税法の改正が続く。消費税マエス
トロが実務ポイントを解説する。
ロケーションセービングとは、地域や国に
※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
[email protected]
とをいい、コスト削減の結果所得が増加するこ
No.581 2015.2.2
よって異なる賃金水準や物価水準(設備投資額
等)の差を利用して事業コストの削減を図るこ
ととなる。この増加した所得がロケーション
試みている。
セービングによる利益となるが、これを親会社
具体的には、無形資産は「有形資産や金融資
と関連子会社の間でどのように配分・帰属させ
産ではなく、所有又は支配することができ、独
るのかが移転価格税制上の問題点である。
立企業間取引での使用又は移転によって報酬が
このロケーションセービングを含むその他の
生じるもの」とされている。特許、ノウハウ、
「市場の特徴」について、移転価格税制の適用
企業秘密、商標、商号、ブランド、契約上の権
上、比較可能分析を行うべき項目としている。
利、政府の免許などは無形資産とされ、現地の
ただし、比較可能性調整は容易ではなく、ロ
可処分所得や購買力などの市場環境は、個別企
ケーションセービングの配分についても、ロー
業が所有、支配できるものではないので、無形
カル市場に信頼できる比較対象があれば比較可
資産と区別すべきとされている。のれんや継続
能性調整も不要であるとされているものの、比
企業としての価値については、個別の定義は必
較対象がない場合には関連者の機能・リスク・
要ない概念とされている。
資産を含む関連する事実と状況の全ての分析に
(3)無形資産の所有の概念
基づくべきとされており、結局、実務的にはか
無形資産の法的所有の概念は、移転価格分析
なり困難な分析・調整が求められることとなろ
の重要なファクターではあるが、独立企業原則
う。
の下での適正対価の問題とは別であり、無形資
② 集合労働力
産の開発、改良、維持、保護、利用の各場面で
集合労働力について、その移転によって時間
の機能・リスク、資産の分析検討によるべきと
とコストの節減になる場合は比較可能性の調整
されている。つまり、移転価格問題の検討に当
によることが適切であり、出向者によって価値
たっては、法的所有の概念より経済的所有の概
あるノウハウやその他の無形資産が移転する場
念がより重要であると結論づけているものと考
合には別個にその価値を検討すべきとされてい
えられる。
る。
(4)無形資産の移転及び使用の概念
③ グループシナジー
無形資産の権利の移転、無形資産の結合的移
グループシナジーについて、単なる偶発的利
転、無形資産の使用が関連する取引等の場合に
益に対しては対価支払いが不要であり、組織的
おいては、その取引内容の特定とともに比較可
優位性の有無及びその内容並びにグループシナ
能性分析等の移転価格分析を行うこととされて
ジーによる利益の起因となったグループ協調活
いる。移転した権利の改良や使用に制限が課せ
動については、機能分析及び比較可能性分析に
られている場合には、その性質・程度を特定す
よって移転価格の決定が可能とされている。た
ることが必要であるとされている。また、2 以
とえば、一括購入などにより規模のメリットな
上の無形資産が関連している場合など、一つの
どは、その貢献度(一般的には購入額割合)に
無形資産の移転に伴い必然的に他の無形資産も
比例して配分することとなろう。
移転する場合には、双方の価値を検討すべきと
(2)無形資産の定義
されている(たとえば、商標使用権の移転は、
移転価格税制の適用にあたって、
「無形資
通常、それに関連するレピュテーション価値の
産」をどうとらえるかという問題は、理論的に
移転も伴い、双方の価値を考慮することとな
も、また実務的にもきわめて重要な論点であ
る)。
る。今般の討議草案において無形資産の定義を
No.581 2015.2.2
25
2
グループ内役務提供についての指針
・中核事業に関係する役務
・研究開発活動
行動計画 10 は、移転価格税制において、第
・製造、生産活動
三者との間では発生しないが、発生しても非常
・販売、マーケティング、物流
に稀にしか発生しない取引(たとえば、マネー
・財務業務(資金調達)
ジメントフィーや本社費等の支払い)を関連者
・天然資源の採集、探査、処理
間で行うことで生じる所得移転を防止するルー
・保険、再保険業務
ルを策定することに焦点を当てている。今般公
・上級管理職
表された行動計画 10 の討議草案は、OECD 移
(2)独立企業間価格の決定に関する簡便法
転価格ガイドライン第 7 章の改定案であり、付
低付加価値グループ内役務提供に係る独立企
加価値の低いグループ内役務提供に焦点を当て
業間価格の決定について、選択適用が可能な簡
ている。
易な対価の算定方法(簡便法)が提案された。
(1)低付加価値グループ内役務提供の標準的
簡便法を選択する場合、グループ内で行われる
な定義
同様の役務提供に対しては、すべからく簡便法
低付加価値グループ内役務提供とは、多国籍
を継続して適用する必要がある。なお、算定過
企業グループのメンバーによって提供されるも
程は下記の 5 つのステップから構成される。
ので、
(イ)補助的な性質を持ち、
(ロ)多国籍
企業の中核的な事業に関わるものではなく、
① 低付加価値グループ内役務を提供する企
業におけるコストの算定
(ハ)ユニークで価値のある無形資産を使用し
グループ企業全体の年間の役務費用を合計
たり、無形資産の価値の創造を導くものでな
し、役務を提供する企業だけに便益のある活動
く、
(ニ)相当程度または重要なリスクを前提
(株主活動を含む)の費用と、特定の一社に対
としたりコントロールするものではなく、重要
して行った役務に係る費用を除き、それ以外の
なリスクを生み出すものでもない役務提供が該
グループメンバーに便益のある活動の費用を算
当する。一般的には、次の活動が対象となると
出する。
考えられている。
② グループメンバーに対する役務提供費用
の配賦
◦会計監査
◦買掛金や売掛金の処理や管理
上記①で集計した費用を役務の提供や状況に
◦人材配置、採用、教育、報酬、福利厚生等の
応じた方法で配賦する。たとえば、人材に関す
る役務であれば人数、IT サービスであればシ
人事関連
◦健康、安全、環境面のモニタリングやデータ
ステムの使用者数などが使用されよう。また、
総売上に対する割合も適切な場合があろう。
集計
◦ IT システム(企業が IT 事業を中核としてい
③ マークアップの設定
低付加価値グループ内役務提供の独立企業間
ない場合)
◦社内外の連絡や広報の支援
価格は、該当費用に適切なマークアップを適用
◦法務や税務業務
して算定される。一定のカテゴリーの役務提供
◦一般的な管理または事務活動
に対して、同じマークアップ率を適用する必要
また、下記のような活動は低付加価値グルー
があるが、セーフハーバーとして、対象費用に
プ内役務提供とはみなされない。
対して 2% から 5% のマークアップ率が挙げら
26
No.581 2015.2.2
れている。ただしこのマークアップ率は低付加
行う場合にはグループ内役務提供が行われたと
価値の役務提供に対するマークアップ率である
みなされる。
ことから、他の役務提供に対するマークアップ
⑥ 低付加価値の役務提供は、その性質から
としては適用できない。また企業をパススルー
便益の確認が明確ではない場合が多いため、グ
するのみの費用(立替金など)はマークアップ
ループ企業が受ける便益や算定方法について移
の対象とはならない。
転価格文書を作成しておくことが適当といえ
④ 低付加価値グループ内役務提供の集計
る。なお、移転価格文書には以下の内容を記載
低付加価値グループ内役務提供に対する請求
することとなろう。
額の合計には、①で求められる特定のメンバー
a . 当該低付加価値グループ内役務提供の概要
に対して提供した役務の費用(マークアップを
のせる)と、グループの全メンバーに配賦され
た費用とそのマークアップが含まれる。
⑤ 低付加価値グループ内役務提供の便益テ
ストの実施
グループ内役務提供が行われたか否かは、グ
ループ企業に対して、商業上の地位を高めるた
めに経済的もしくは商業的価値を提供するか否
i . 対象となる業務が低付加価値の役務提供
に該当する理由
ii . 多国籍企業の事業において当該役務を提
供する合理性
iii.各役務に対して関連者が受ける便益
iv.費用の配賦方法と当該配賦方法が最も適切
であることの説明
v. 適用されるマークアップの確認
かで決定される。つまり、その活動が独立企業
b. 契約書
によって行われる場合に比較可能な状況にある
c. 対象費用合計の計算方法
独立企業がその活動に対して対価を支払う場
d. 選定した配賦方法による費用配分の計算
合、あるいは自分自身のために自らその活動を
記事に関連するお問い合わせ先
記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお
伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:[email protected]
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
No.581 2015.2.2
27
Fly UP