...

八 尾 地 域 新 第 三 系 の 堆... 早 川 秀 樹* No. 14,

by user

on
Category: Documents
28

views

Report

Comments

Transcript

八 尾 地 域 新 第 三 系 の 堆... 早 川 秀 樹* No. 14,
NOM(News of Osaka Micropaleontologists)
No. 14, pp. 41 - 50 (1986).
八尾 地域新第 三系 の堆積物分 析
早 川 秀 樹*
Analysys
of
Sediments
of
the
Neogene
Hideki
ABSTRACT
gravel
Area,
Sedimentological
composition
Central
Japan.
part
of
microfossils.
the
and
Formations
which
are
generally
Higashibessho
predominant
Formation
Paleocurrents
from
Environmental
change
yama
paleocurrents
The rate
of
of
except
and
south
to
is
are
of
rock
Formation,
is observed
composed
in
coarse
the
performed
which
in
north
are
observed
between
the
層 群 の 形 成 に 関 す る地 史
環境 の推定 に重要
と な る堆 積 物 組 成 や 古 流 向 に 関 す る デ ー タ は あ
ま り提 供 さ れ て い な い。 筆 者 は 京 都 大 学 卒 業 研
山 県 八尾 地 域 に お い て 層 序 学 的 研 究
川,1983;Hayakawa,1985MS
地 域の新 第三 系の層 序 につ いては現在
種
組 成 な らび に 古 流 向 の 計 測 に つ い て 報 告 す る。
本 研 究 を す す め る に あ た り,京 都 大 学 理 学 部
地 質学 鉱 物 学 教 室 の 亀 井 節 夫 教 授,な
らび に 石
planktonic
the Otogawa
gravels
are
the
学 的 研 究 を行 って い る。 し か し 八尾 地 域 の 新 第
)が,同
Yatsuo
middle
in
Tenguyama
Higashibessho
ど)。 な か
論 文 を 準 備 中 で あ り,今 回 は 堆 積 物 組 成,礫
the
the
the
upper
part
of the
the Tenguyama
Formation.
で も 津 田(1953)は 八 尾 層 群 の 堆 積 相 及 び 軟 体 動
を進 め て き た(早
in
in
particle,
in
of
準 層 序 の 一 つ と して 多 くの 研 究 が行 わ れ て き た
究 以 来,富
sediment
Andesitic
八 尾 地 域 の 新 第 三 系 は北 陸 地 方 新 第 三 系 の 標
三 系 に つ い て は こ れ ま で,古
Area
contains
abundant
the Tenguyama
and
Ⅰ.は じめ に
物 化 石 に 基 づ い て,同
on
sediments.
conglomerates
lower
part
suggested
本 ・野 沢,1960な
Yatsuo
the Neogene
System
fragments
decreases
Formations.
(津 田,1953;坂
the
Hayakawa*
analysis
Higashibessho
No microfossil
System
*石 油 公 団
and
Formation.
the
Tengu-
田 志 朗 助 教 授 に は一貫 し て ご 指 導 を賜 っ た。 同
に 微 化 石 抽 出 用 の 残 渣 試 料 を 用 い た。 各 試 料 は
教 室 の 地 史学 研 究 室 の 方 々に は 貴 重 な ご 討 論 ・
ナ フ サ も し くは ヘ キ サ メ タ リ ン 酸 を 用 い て泥 化
ご 援 助 を 頂 い た。 特 に 竹 村 厚 司 博 士 に は 原 稿 の
さ せ,60メ
作 成 に つ い て 様 々 な ご 協 力 を 頂 い た。 以 上の 方
を使 用 し,堆 積 物 粒 子 の 観 察 の 際 に は,ス
ッ シ ュ以 下200メ
ッ シ ュ以 上 の 残 渣
ライ
ドガ ラ ス 上 に 両 面 テ ー プ で 粒 子 を 接 着 し,双 眼
々に 対 し厚 く感 謝 す る 次 第 で あ る。
実 体 顕 微 鏡 を 用 い て 観 察 を 行 っ た。 堆 積 物 粒 子
.地 質
Ⅱ
と して は,岩
今 回 研 究 を 行 った 地 域 は富 山 県 砺 波 市 東 方 の
東 砺 波 丘 陵 で あ る(第1図)。
早 川(1985MS)は
本 地 域 の 新 第 三 系 を 下 位 よ り,楡 原,岩
王 山,黒
瀬 谷,東
別 所,天
狗 山,音
稲,医
川,三
田の
石 片,石
英,長
石,火
山 ガ ラ ス,
雲 母,植
物 片 な ど の 炭 質 物,微
化石 な どが認め
られ1試
料 に つ き200以
また,微
化 石 に つ い て は 中 世 古 他(1984)と
上 の 粒 子 を 同 定 した。
に 準 定 量 的 方 法 に よ る観 察 を 行 い,浮
底 生 有 孔 虫,珪
藻,放
同様
遊性及び
散 虫,ウ ニ 及 び 海 綿 の 骨
8累 層 に 区 分 し,下 位 の 楡 原 累 層 か ら東 別 所 累
針 等 を 認 め た。 な お,珪 藻 化 石 は小 泉(1976)の
層 まで を 八 尾 層 群,上
方 法 に よ り珪 藻 用 プ レパ ラ ー トを作 成 し観 察 を
位 の3累
層 を砺波層 群 と
行 っ た。
し て い る。
こ の う ち 本 論 文 で 研 究 を 行 っ たの は 黒 瀬 谷,
東 別 所,天
狗 山 の3累
層 で あ る。 本 地 域 の 黒 瀬
谷 累層 は砂 岩 ・泥 岩 の 互 層 を主 と し,最 上 部 は
厚 い 軽 石 質 凝 灰 岩(山
田 中 凝 灰 岩)か
らな る。
東 別所 累 層 は 泥 質 岩 よ りな り,下 位 よ り栃 上 泥
岩,塩
谷 砂 岩,浅
谷 シ ル ト岩,三
層 に 区 分 さ れ る(早 川,1983)。
b.分
析結果
各 試 料 の 堆 積 粒 子 の 組 成 を 第1表,第3図
に
示 す。
黒 瀬 谷 累 層 上 部(和
田 川 ル ー ト)の 堆 積 粒 子
谷 泥 岩 の4部
は 山 田 中 凝 灰 岩 周 辺 を除 き,ほ
天狗 山累層 は
片 よ りな り,石 英,長
とん ど が花崗 岩
石 等 は 極 め て 少 な い。 東
主 に礫 岩 ・砂 岩 よ り な り,不 整 合 で 東 別 所 累 層
別 所 累 層 の 栃 上 泥 岩 層 も 同 じ傾 向 を示 し,ほ
を お お う。 天 狗 山 累 層 は ほ ぼ 早 川(1983)の 音 川
ん どが 岩 片 よ りな る。 しか し和 田 川 ル ー トで は
累 層 下 部 に相 当 す る。 音 川 累 層 は 砂 岩 ・シル ト
塩 谷 砂 岩,浅
岩 を 主 と し,西 部 で は 天 狗 山 累 層 を,東 部 で は
東 別 所 累 層 を不 整 合 で お お っ て い る。
.堆 積 物 粒 子 組 成
と
谷 シル ト岩 下 部 は岩 片 の 割 合 が や
や 少 な くな り,浅 谷 上 部 及 び 三 谷 泥 岩 下 部 で は
岩 片 は ほ とん ど 含 まれ ず,石
多 い。 他 の ル ー トで も,塩
英 や火 山ガ ラスが
谷 砂 岩,浅
谷 シル ト
岩 で は 下 位 の 栃 上 泥 岩 よ りも 岩 片 の 割 合 が 少 な
Ⅲ
い。 三 谷 泥 岩 は 上 位 へ 岩 片 の 割 合が 高 くな って
a.試
い る。 天 狗 山 累 層 に は あ ま り一 定 の 傾 向 は み ら
料及び 研究 法
和 田 川,山
田 川,新
山 の3ル
ー トに お い て,
東 別 所 累 層 を 中 心 と して 黒 瀬 谷 累 層 上 部 か ら音
川累層 下部 までの堆 積物 粒子 組成 の分析 を行 っ
た。 試 料 採 取 位 置 を 第2図
第3図
に,各 試 料 の 層 準 は
に 示 す。 本 研 究 に お け る試 料 は,伊
東(1
986)が 用 い た試 料 と ほ ほ同一 で あ る。
東 別 所 累 層 は 主 に 泥 質 岩 よ りな る た め,中
れ ず,音
川 累 層 は東 部 の 新 山ル ー トで 岩 片 が 多
い。
微 化石は黒 瀬谷 累層上 部か ら含 まれ東別所 累
層 の ほぼ全層 準 か ら産す るが,天 狗 山累層,音
川累層 か らは全 く産出 して いな い。微 化石 の う
ち放散 虫は東 別所 累層の ほ とん どの試 料に含 ま
世
れ るが,量 は少な いもの が多 い。有孔 虫化石 は
古 他(1984)に よ る微 化 石 総 合 調 査 の 方 法 と 同 様
浅谷 シル ト岩以 下の層 準 か ら多 くが産 す る。 そ
第2図 粒子組成試料採取地点。この図は国土地理院発行の2万5千分の1地形図「宮森新」を使用したものである。●が本研究
第2表 礫種 組成 一覧表
And.:
Cr.:
Andesites,
Rhy.:
Granites,
Qz.:
Rhyolites,
Quartzite,
Qp.:
Ch.:
Quartz
Chert,
porphyry,
Ss.:
Tf.:
Sandstone,
Tuff,
Sh.:
れ に対 し珪 藻 化 石 は 和 田 川 ル ー トで は 三谷 泥 岩
天 狗 山 累 層 下 部(葎
よ り,山 田 川 ル ー トで は 浅 谷 シル ト岩 と塩 谷 砂
所 累 層 三 谷 泥 岩 下 部(三
岩 よ り産 し,東 方 へ よ り下 位 の 層 準 か ら 産 出 し
(正 間)の5層
Shale
ケ 原a,和
田 川 橋),東
谷),黒
別
瀬 谷累 層 下 部
準 であ る 。
て い る。 こ れ ら の 珪 藻化 石 に はDenticulopsis
な ど の 浮 遊 性 種 が 数 多 く含 まれ て い る(伊 東,
1986)。
b.計数結果
各 地 点 で の 礫 種 絹 成 の 比率 を 第2表
点 の 位 置 と礫 種 の グ ラ フ を 第4図
Ⅳ.礫 種 組 成
数 地点
山 岩,流 紋 岩,石
英 斑 岩,凝
ャ ー ト,砂 岩,及
に 区 分 して,礫
灰 岩,花崗
び 頁 岩 の9種
とん どが下位 の岩
瀬 谷),天
光 寺,頼
ー
岩,石
ツ ァ イ トや チ ャ ー トが ほ と んど を 占 め る。 天 狗
山 累層の礫 岩 では和 田川橋 の もの は三谷泥 岩の
成 の 森,葎
狗 山 累 層 上 部(葎
岩 の 礫 岩 に は 安 山 岩 が ほ と ん ど 含 ま れ ず,コ
の岩石 種
種 組 成 を 調 査 した 。 そ れ らの 層
準 は 音 川 累 層 最 下 部(千
原c,大
黒
より
稲 累 層 に 由 来 す る安 山 岩 の 礫 か ら な る 。三 谷 泥
本 地 域 で み られ る9地 点 の 礫 層 に つ い て,安
英,チ
地
に 示 す。
瀬 谷 累層 下 部 の 礫 岩 は 坂 本 ・野 沢(1960)に
室 牧 礫 岩 と さ れ た もの で,ほ
a.計
に,各
ケ原b)
ケ
礫 種 組 成 に 近 い が,他
は安 山 岩 が 多 い。 音 川 累
層 最 下 部 の 礫 岩 は 場 所 に よ り礫 種 に よ る 量 の 差
が大 き い が,全
体 と して 安 山岩 は 東 方 へ 増 加 す
第5図 計 測 地 点 及 び 古 流 向。 累層 名 は 第4図
と 同 じ。1ク
ロ ス ラ ミナ;2グ
た は フル ー トキ ャス ト;3チ
ア マ ー ク;4イ
ル ープ ま
ャ ネル 状 ス コ
ン プ リケ ー シ ョ ン。
る.
本 研 究 で 得 られ た 八 尾 層 群 の 古 流 向,礫
種組
成 の デ ー タ は 少 な い が,黒 瀬 谷 累 層 最 下 部 の 礫
岩 は ほ と ん ど が 岩 稲 累 層 起 源 の 安 山 岩 よ りな り
Ⅴ.古
流向
この 時 期 に は 坂 本(1966)が 述 べ て い る よ う な 南
a.計
方 が 隆 起 し北 に 傾 動 す る 構 造 運 動 が 存 在 し た と
測地 点
本 研 究 地 域 内 で は 数 層 準 に お い て,流
痕,ク
ロ ス ラ ミ ナ,礫 の イ ン プ リケ ー シ ョ ン な どの 古
流 向 を 示 す堆 積 構 造 が認 め られ,6地
点 に おい
て 古 流 向 の 解 析 を 行 っ た。 そ れ らは,黒
層 の 下 部,中
部 お よび 最 上 部,天
部 お よび 中 部 の5層
瀬 谷累
狗 山累層の 下
考 え られ る。 本 研 究 の 堆 積 物 粒 子 組 成 に よ る と
東 別 所 累 層 は 全 層 準 を 通 じて,浮
放 散 虫 な ど の 外 洋 性 浮 遊 性 微 化 石 が 多 く 含 まれ
て お り,珪 藻 化 石 に も 浮 遊 性 種 が多 い こ とか ら
全 体 と して 遠 洋 性 の 堆 積 物 で あ る と い え る。 こ
の こ と は,和
準 で あ る。
遊 性 有 孔 虫,
田 川沿 いの東別 所累層 中部 に おい
て 岩 片 の 量 が 著 し く減 少 す る こ と と 調 和 的 で あ
b.計
る。
測 結果
第5図
に 古 流 向 の 計 測 地 点 及 び そ の 結 果 を示
天 狗 山 累 層 ・音 川 累 層 か ら は 微 化 石 が ほ と ん
ど 産 出 せ ず,比
す。
本 研 究 地 域 西 半 部 の 黒 瀬 谷 累 層 で は,フ ル ー
較 的 粗 粒 の 堆 積 物 が多 く下 位 の
東 別 所 累 層 と は 堆 積 環 境 が 全 く異 な って い る 。
トキ ャ ス トや グ ル ー ブ キ ャ ス トな ど の ソ ール マ
一ク が まれ に 認 め られ 、 中 ・下 部 の も の は 南 北
天 狗 山 累 層 は礫 ・砂 等 の 粗 粒 砕 屑 物 か ら な り,
方 向 に 近 く,上 部 で は 西 南 西-榮
ほ ぼ 南 → 北 を 示 し,こ の 時 期 に は 南 方 の 陸 地 か
南 東方向 が観
浅 海 性 の 軟 体 動 物 化 石 を産 す る。 そ の 古流 向 は
察 され た。 研 究 地 域 西 部 の 天 狗 山 累 層 下 部 で は
ら砕 屑 物 が 供 給 さ れ た。 従 って,東
チ ャ ネ ル 状 ス コ ア マ 一ク が 観 察 さ れ,そ
堆 積 後,本
はN5W∼N26Wで
の方向
あ る。 ま た こ れ と同 じ露 頭
別 所 累層の
地 域 で は 基 盤 の 上 昇 が あ り,不 整 合
が 形 成 さ れ た と考 え られ る。
で は,礫 の イ ン プ リケ ー シ ョ ン に よ り,南 西 →
北 東 方 向 の 古 流 向 が 測 定 され た。 本 地 域 中 央 部
の 天 狗 山 累 層 中 部 で は,カ
レン トリ ッ プ ル クロ
文献
ス ラ ミ ネ ー シ ョン に よ りほ ほ 南 → 北 方 向 の 古 流
向 が 認 め られ た。
早 川 秀 樹(1983):富
山県 八尾地 域西 部の 新第 三
系 の 層 序 と 年 代.NO卜1.N◎.10.Pp.レ13。
.考 察
Ⅵ
Hayakawa, H.(1985MS) : Geology of the Neo—
gene System in the
津 田(1953)は 本 地 域 の 新 第 三 系 の 堆 積 環 境 に
つ い て,主
に軟 体 動 物 化石 や 岩 相 に基 づ い て 考
ter
Thesis,
察 を 行 った。 そ れ に よ る と,黒 瀬 谷 累 層 は 一 般
伊 東 佳 彦(1986):北
に 浅 海 で 堆 積 し,上 部 で は 海 が 深 くな っ た 形 跡
.NON, が 認 め られ,東
小 泉 格(1976):珪
層)は
別 所 累 層(津
田(1953)の 城 山 累
比 較 的 深 い 静 か な海 に 堆 積 し た と さ れ て
Southern
Toyama Prefecture,
No.13(本
Central
Kyoto Univ..
Part
Japan.
of
Mas-
102pp.
陸 新第 三系 の珪藻 化石 層序
誌).
藻.N畷, N◎.5, pp.22-36.
中 世 古 幸 次 郎 ・西 村 明 子 ・山 内 守 明 ・菅 野 耕 三
い る。 ま た,八 尾 層 群 の 堆 積 期 間 を通 じ て 北 に
・竹 村 厚 司(1984):微
傾 く傾 動 運 動 が あ り,こ の 運 動 が 八 尾 層 群 の 堆
古 幸 次 郎 編,関
積 を も た ら し た と して い る。
災 害 科 学 研 究 所 報 告,pp.7・12.
化 石 総 合 調 査.中
西 国 際 空 港 地 盤 地 質 調 査.
世
坂本
坂本
亨(1966):富
山積 成盆地 南半部 の新生 界
津 田 禾 粒(1953):富
山 県 八 尾 町 付 近 の 地 質-特
とそ の 構造 発 達 史 。地 調 報 告,No.213,pp
に 八 尾 層 群 に 関 す る 地 史 学 的 研 究.新
.1-27.
理 研報,Ser.Ⅱ,Vol.1,No.2,pp.1-35。
亨 ・野 沢
保(1960):五
万分 の一地 質図
幅 「八 尾 」 及 び 同 説 明 書.地
質 調 査 所,69pp.
潟 大
Fly UP