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4 連結納税下での欠損金の控除額計算 C A S E 平成 23 年度の税制改正後の控除額計算への

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4 連結納税下での欠損金の控除額計算 C A S E 平成 23 年度の税制改正後の控除額計算への
Selection
C A S E
連結納税下での欠損金の控除額計算
税理士法人プライスウォーター
ハウスクーパース 税理士
UESTION
4
飯島 哉文
平成 23 年度の税制改正後の控除額計算への
影響も踏まえて
当社グループでは、当社を連結親法人
(3 月決算法人)、S1 社、S2 社を連結子
法人(共に 3 月決算法人)とする連結納
税を平成 24 年 3 月期より開始します。
明してください。
【前提条件】
〔図表 1〕平成 24 年 3 月 31 日現在の
資本関係図
べての連結法人において、連結納税開始前
Selection Q&A
連結納税開始にあたり、当社をはじめす
改正後の繰越控除の計算方法についても説
連結納税グループ
の単体の繰越欠損金(連結欠損金とみなさ
れ、連結納税に持ち込むことができるもの)
当社
( 連結親法人 )
を有しています。平成 24 年 3 月期におい
て連結所得が生じた場合、連結所得計算上、
どのような順序で繰越控除が行われるのか、
100%
100%
S1 社
( 連結子法人 )
S2 社
( 連結子法人 )
また、平成 23 年 12 月 2 日に公布され
CASE 4
具体例を交えて説明してください。
た平成 23 年度の積み残し項目に係る税制
改正により欠損金の繰越控除制度の見直し
が行われ、連結欠損金の控除限度額が連結
所得の 80 %とされたと聞いていますが、
●
当社の資本金は5億円です。
各連結法人の連結欠損金は以下のとおりで
す。
●
〔図表 2〕各連結法人の連結欠損金
(単位:万円)
平成 21 年3月期
平成 22 年3月期
平成 23 年3月期
2,000
1,500
500
S 1社(連結子法人)
300
200
100
600
S 2社(連結子法人)
100
200
1,000
1,300
2,400
1,900
1,600
5,900
当社(連結親法人)
連結グループ合計
●
合計
4,000
当社が有する連結欠損金は、「非特定連結欠損金」として連結所得から控除できるものです。
S 1社及び S 2社が有する連結欠損金は、それぞれ「特定連結欠損金」として、各連結法人の
個別所得を限度として控除できるものです。
●
平成 24 年3月期における連結所得は 3,500 万円(連結欠損金控除前。以下同じ)です。なお、
連結法人ごとの内訳は、当社 2,000 万円、S 1社 1,000 万円、S 2社 500 万円です。
●
1
繰越控除の順序
子法人の特定連結欠損金個別帰属額を、(そ
まず、連結納税グループが、ある連
れを有する)連結法人自身の個別所得に優先
結事業年度(法人税法施行令 155 条の 19 第1
的に充てて控除を行い、次に、特定連結欠損
項及び第2項でみなされる場合を含みます。)
金控除後の連結所得に対して、非特定連結欠
において有する連結欠損金に特定連結欠損金
損金を控除します。連結所得計算における連
を含む場合の連結欠損金の繰越控除の順序に
結欠損金についても、青色欠損金の場合と同
ついてご説明します。これは、最初に各連結
様に、欠損金の発生の古い年度のものから控
2012.2
参 考
法法81の9
法令155の21
zeimu QA 33
Selection
C A S E
4
CASE 4
連結納税下での欠損金の控除額計算
除していきます。控除順序を図に示すと〔図
以下、本事例に沿って解説します。
表 3〕のようになります。
2
(1)第一順位:平成 21 年 3 月期発生の連
平成 24 年 3 月期における連結欠損金の
結欠損金の控除
繰越控除
まず、平成 21 年3月期に発生した S 1社
①
貴社グループの、平成 24 年3月期におけ
及び S 2社がそれぞれ保有する特定連結欠
る具体的な欠損金の控除計算は、〔図表 4〕
損金を、S 1社及び S 2社の個別所得(連
のようになります。
結欠損金控除前。以下同じ)からそれぞれ
控除することになります。平成 21 年3月
欠損金の控除計算は、欠損金の発生年度の
古い順に行われます。
期発生の特定連結欠損金に係る暫定的な控
〔図表 3〕欠損金の充当順位
単体納税
連結納税
X 1年発生 X 2年発生 X 3年発生 X 4年発生 X 5年発生 X 6年発生 X 7年発生
当期(X 8年)
連結親法人
連結子法人
連結子法人
▲
②
▲
①
▲
③
▲
②
▲
④
★
⑥
所得
▲
⑤
所得
▲
⑤
所得
★ 非特定連結欠損金
▲ 特定連結欠損金
上の番号は、各法人において控除されるみなし連結欠損金の充当順序を示すものである。
〔図表 4〕平成 24 年 3 月期の連結欠損金の繰越控除計算
各連結法人の個別所得/欠損金額
(単位:万円)
貴社
調整前個別所得金額又は欠損金額
非特定連結欠損金の当期控除額
非特定連結欠損金控除後の個別所得金額
S 2社
1,000
500
3,500
0
▲ 500
▲ 300
▲ 800
2,000
500
200
▲ 2,700
▲ 700
34 zeimu QA
2,700
▲ 2,700
500
200
連結欠損金控除後の各連結法人の連結欠損金残高
連結法人名
合計
2,000
特定連結欠損金の当期控除額
特定連結欠損金控除後の個別所得金額
S 1社
0 連結所得金額
(単位:万円)
平成 21 年
3月期
平成 22 年
3月期
500
合計
貴社(連結親法人)非特定連結欠損金
0
S 1社(連結子法人)特定連結欠損金
0
0
100
100
S 2社(連結子法人)特定連結欠損金
0
0
1,000
1,000
合計
0
800
1,600
2,400
2012.2
800
平成 23 年
3月期
1,300
CASE 4
連結納税下での欠損金の控除額計算
除限度額は、S 1社のものが「個別所得
で計算された 300 万円控除後)>特定連結
1,000 万円>特定連結欠損金 300 万円」の
欠損金 200 万円」のため、控除限度額は
ため、控除限度額は 300 万円となり、S 2
200 万円、S 2社では「個別所得 400 万円
社のものが「個別所得 500 万円>特定連結
(第一順位で計算された 100 万円控除後)>
欠損金 100 万円」のため、控除限度額は 100
特定連結欠損金 200 万円」のため、控除限
万円となり、2社合計400 万円となります。
度額は 200 万円となり、2社合計 400 万円
次に、特定連結欠損金の暫定的な控除限
となります。
度額と連結所得金額とを比較し、特定連結
次に、特定連結欠損金の確定的な控除限
度額を算定します。本事例では「連結所得
本事例では、「連結所得 3,500 万円>特定連
1,100万円(第一順位で計算された2,400万円
結欠損金の暫定的な控除限度額 400 万円」
控除後)>特定連結欠損金の暫定的な控除限
となるため、400 万円が特定連結欠損金の
度額400万円」となり、この400万円が特定
確定的な控除限度額となり、連結所得金額
連結欠損金の確定的な控除限度額として連
から控除されることになります。
結所得金額から控除されます。
②
②
次に、貴社で平成 22 年3月期に発生し
た非特定連結欠損金を連結所得金額から控
た非特定連結欠損金を連結所得金額から控
除することになります。貴社では「連結所
除することになります。貴社では「非特定
得 3,100 万円(上述①の 400 万円控除後)>
連結欠損金 1,500 万円>連結所得 700 万円
非特定連結欠損金 2,000 万円」ですから、
(上述①の 400 万円控除後)」ですから、控
控除限度額は 2,000 万円となり、当該 2,000
除限度額は 700 万円となり、当該 700 万円
万円は非特定連結欠損金から控除されるこ
は非特定連結欠損金から控除されることに
とになります。
なります。
平成 24 年3月期の連結所得 3,500 万円は、
以上のように、連結欠損金は発生年度の古
い順に控除されますので、平成 21 年3月期
平成 21 年3月期及び平成 22 年3月期に各
発生のS 1社及びS 2社の特定連結欠損金400
連結法人で発生した連結欠損金 3,500 万円
万円及び貴社の非特定連結欠損金 2,000 万円
(内訳は S 1社・ S 2社の特定連結欠損金
の合計 2,400 万円が、第一順位として連結所
500 万円・ 300 万円、貴社の非特定連結欠
得3,500 万円から控除されることになります。
損金 2,700 万円)が控除に充てられます。
その結果、平成 24 年3月期の連結所得は
(2)第二順位:平成 22 年 3 月期発生の連
結欠損金の控除
①
平成 22 年3月期に発生した連結欠損金
についても、第一順位と同様に計算してい
きます。
CASE 4
次に、貴社で平成 21 年3月期に発生し
Selection Q&A
欠損金の確定的な控除限度額を算定します。
ゼロとなります。
3
税制改正後の繰越控除計算
上記と同様の条件の下、貴社グループの平
成 24 年3月期の連結納税の計算において、
S 1社及び S 2社がそれぞれ特定連結欠
仮に平成 23 年度税制改正の内容が適用され
損金を有していますので、まず特定連結欠
た場合(連結欠損金の控除限度額が連結所得
損金の暫定的な控除限度額を算定します。
の 80 %に制限)の繰越控除額の計算は、次
S 1社では「個別所得 700 万円(第一順位
頁〔図表 5〕のとおりとなります。
2012.2
飯島 哉文
IIJIMA Saimon
税理士法人プライスウォ
ーターハウスクーパース
マネージャー・税理士。
1978年神奈川県鎌倉市
生まれ。慶應義塾大学
経済学部卒業。2002 年
9 月税理士法人プライ
スウォーターハウスク
ーパースに入所。日系
及び外資系企業の申告
書作成業務、税務顧問
業務、
連結納税・組織再
編等に係るアドバイス
業務に従事。
zeimu QA 35
Selection
C A S E
4
CASE 4
連結納税下での欠損金の控除額計算
S 1社:個別所得 1,000 万円
税制改正後の計算方法については、税制改
>特定連結欠損金 300 万円
正前と基本的な考え方は同様です。連結欠損
∴ 300 万円
金の繰越控除の順序は、各連結子法人の特定
S 2社:個別所得 500 万円
連結欠損金個別帰属額を(それを有する)連
>特定連結欠損金 100 万円
結法人自身の個別所得に優先的に充てて控除
∴ 100 万円
を行い、次に、特定連結欠損金控除後の連結
となり、2社合計で 400 万円となります。
所得に対して、非特定連結欠損金を控除し、
同様の計算方法を欠損金の発生の古い年度の
次に、特定連結欠損金の暫定的な控除限
ものから順に行っていきます。
度額と連結所得金額とを比較し、特定連結
ただし、ご質問にあったとおり「連結所得
欠損金の確定的な控除限度額を算定します。
平成 21 年3月期発生の特定連結欠損金
から控除できる連結欠損金の金額が連結所得
の 80 %に制限される」点に注意する必要が
に係る確定的な控除限度額計算は
あります。そのため、本事例において、平成
連結所得 2,800 万円>特定連結欠損金の暫定
24 年3月期において控除できる連結欠損金
的な控除限度額400 万円
は3,500 万円× 80 %= 2,800 万円となります。
∴ 400 万円
(1)第一順位:平成 21 年 3 月期発生の連
となります。
結欠損金の控除
①
②
平成 21 年3月期に発生した S 1社及び S
次に、貴社で平成 21 年3月期に発生し
た非特定連結欠損金を連結所得金額から控
2社がそれぞれ保有する特定連結欠損金を、
除します。
上述①の
400 万円控除後
S 1社及び S 2社の個別所得(連結欠損金控
除前。以下同じ)からそれぞれ控除します。
貴社:連結所得2,400 万円
平成 21 年3月期発生の特定連結欠損金
>非特定連結欠損金 2,000 万円
∴ 2,000 万円
に係る暫定的な控除限度額は
〔図表 5〕平成 24 年 3 月期の連結欠損金の繰越控除計算(税制改正後)
各連結法人の個別所得/欠損金額
(単位:万円)
貴社
調整前個別所得金額又は欠損金額
非特定連結欠損金の当期控除額
S 2社
1,000
500
3,500
0
▲ 500
▲ 300
▲ 800
2,000
500
200
▲ 2,000
0
非特定連結欠損金控除後の個別所得金額
500
200
700 連結所得が発生
(単位:万円)
平成 21 年
3月期
平成 22 年
3月期
平成 23 年
3月期
合計
貴社(連結親法人)非特定連結欠損金
0
1,500
500
2,000
S 1社(連結子法人)特定連結欠損金
0
0
100
100
S 2社(連結子法人)特定連結欠損金
合計
36 zeimu QA
2,700
▲ 2,000
連結欠損金控除後の各連結法人の連結欠損金残高
連結法人名
合計
2,000
特定連結欠損金の当期控除額
特定連結欠損金控除後の個別所得金額
S 1社
2012.2
0
0
1,000
1,000
0
1,500
1,600
3,100
CASE 4
連結納税下での欠損金の控除額計算
この 400 万円が、特定連結欠損金の確定
となり、非特定連結欠損金から控除される
ことになります。
的な控除限度額として連結所得金額から控
以上のように、平成 21 年3月期発生の S 1
除されます。
社及び S 2社の特定連結欠損金 400 万円及び
②
次に、貴社で平成 22 年3月期に発生し
貴社の非特定連結欠損金 2,000 万円の合計
た非特定連結欠損金を連結所得金額から控
2,400 万円が、第一順位として連結所得 2,800
除します。
万円から控除されることになります。
貴社:非特定連結欠損金1,500 万円
(2)第二順位:平成 22 年 3 月期発生の連
>連結所得0万円
上述①の
400 万円控除後
結欠損金の控除
① 第一順位と同様に計算していきます。
S 1社及び S 2社がそれぞれ保有する特
Selection Q&A
∴0万円
となり、欠損金の控除限度額に達してしま
定連結欠損金の暫定的な控除限度額は
ったため、貴社が有する非特定連結欠損金
第一順位で計算された
300 万円控除後
からの控除額はゼロとなります。
S 1社:個別所得700 万円
このように、税制改正後の欠損金の控除計
>特定連結欠損金 200 万円
算については、控除限度額が連結所得の
80 %に制限されるため、平成 24 年3月期の
第一順位で計算された
100 万円控除後
連結所得 3,500 万円から控除される連結欠損
CASE 4
∴200 万円
金は税制改正前の 20 %減の 2,800 万円(内訳
S 2社:個別所得400 万円
>特定連結欠損金 200 万円
∴ 200 万円
は S 1社・S 2社の特定連結欠損金 500 万円・
300 万円、貴社の非特定連結欠損金 2,000 万
となり、2社合計で 400 万円となります。
次に、特定連結欠損金の確定的な控除限
度額を算定します。
円)となり、連結所得を超える連結欠損金を
有していた場合であっても課税所得が発生す
ることになります。
第一順位で計算された
2,400 万円控除後
連結所得 400 万円>特定連結欠損金の暫定的
な控除限度額400 万円
コメント
平成 23 年度の連結欠損金の控除限度額
また、繰越欠損金に係る繰延税金資産を
の改正は、平成 24 年4月1日以降に開始
計上している場合には、繰越欠損金解消の
する事業年度(本事例の場合は、貴社の平
スケジューリングに影響を及ぼす(例えば、
成 25 年3月期)より適用となります。こ
80 の繰越欠損金の解消に必要な将来所得
れまでは連結所得が発生しても、それを相
が、従来は 80 であったのに対して改正後
殺できる連結欠損金を有している場合には、
は 100 となる)可能性があります。その結
欠損金控除後の連結所得がゼロとなり法人
果、従来は繰越欠損金に係る繰延税金資産
税の納税が不要でしたが、今後は一定の納
として計上していたものを取り崩す必要が
税が必要となってくることから、キャッシ
出てくる等、会計上にも影響がありますの
ュフローに影響が生じることになります。
で注意が必要です。
2012.2
zeimu QA 37
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