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1 外国子会社が行う現物配当の留意事項 C A S E 外国子会社が行う現物配当の

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1 外国子会社が行う現物配当の留意事項 C A S E 外国子会社が行う現物配当の
Selection
C A S E
外国子会社が行う現物配当の留意事項
税理士法人プライスウォーター
ハウスクーパース 公認会計士
UESTION
1
白井 啓資
外国子会社が行う現物配当の
タックスヘイブン税制の適用関係
当社(内国法人)は、X 国に所在する
ープ内での取引のため現金を用いた譲渡取
100 %子会社 A 社を有しております。A
引ではなく、A 社から当社へ B 社株式を現
社は同じく X 国に所在する 100 %子会社
物配当する形を考えております。なお、X
B 社を保有しております。
国において、現物配当に伴う A 社への課
税は生じません。
本件における、当社のタックスヘイブン
会社とすることを検討しております。グル
税制の適用関係について説明してください。
―現物分配前の資本関係―
[日本]
Selection Q&A
このたび、X 国における当社グループの
資本関係を見直し、B 社を当社の直接の子
―現物分配後の資本関係―
当社
[日本]
当社
現物分配
A社
[X国] 100%
B社株
A社
100%
CASE 1
100%
[X国]
100%
B社
B社
X国で非課税とされた B 社株式の譲
の発行済株式等の 50 %超を直接または間接
渡益は、A社に係るタックスヘイブン
に保有する外国法人)のうち、次の①②のい
対策税制の租税負担割合の算定上、分母(A
ずれかに該当する法人をいいます(措法 66
社の課税所得)に加算されることになります。
の6①②、措令 39 の14 ①)
。
そのため、その金額によってはA社の租税負
①
法人の所得に対して課される税がない国
担割合が 20 %以下となり、A社が特定外国
または地域に本店または主たる事務所を有
子会社等に該当する可能性があります。
する外国関係会社
その場合、A社が適用除外要件を充足しな
②
その事業年度の所得に対して課される租
い限り、B社株式の譲渡益がA社の適用対象
税の額が、その所得の金額の 20 %以下で
金額に含まれ、貴社で合算課税の対象とする
ある外国関係会社
必要があります。
租税負担割合とは上記②を指し、ご質問に
解説
1 租税負担割合の計算
(1)特定外国子会社等の意義
特定外国子会社等とは、外国関係会社(居
住者、内国法人及び特殊関係非居住者が、そ
ある取引によりX国におけるA社の租税負担
割合が 20 %以下となれば、A社は特定外国
子会社等に該当します。
(2)租税負担割合の計算
特定外国子会社等の判定における租税負担
2011.9
参 考
法法2十二の十五
61の13、
62の5
措法66の6①②④⑤
措令39の14①②
39の15①②⑨
zeimu QA 21
Selection
C A S E
1
CASE 1
外国子会社が行う現物配当の留意事項
割合の計算は、次のように行うこととされて
る現物分配のうち、資産の移転を受ける者が、
います(措令39 の14 ②)。
その現物分配の直前において内国法人との間
〔算式〕
外国関係会社の各事業年度の所得に対して
課される租税の額
外国関係会社の各事業年度の所得の額
を帳簿価額で譲渡したものとする法人税法
62 条の5の規定の適用を受けることができ
外国関係会社の各事業年度の決算に基づ
ません。したがって、本件に日本の税法を当
く所得の金額につき、その本店所在地国の
てはめた場合、A 社は貴社に、現物分配する
外国法人税に関する法令の規定により計算
資産(B社株式)を時価で譲渡したものとし
した所得の金額を算出する。
て取り扱われることとなり、X国において非
上記イに、その所得の金額に係る次の①
課税とされているB社株式の譲渡益は、租税
から⑤までに掲げる金額の合計額を加算す
負担割合の算定上、非課税所得として取り扱
る。
う必要があると考えられます。
ハ
本件現物分配は左記〔計算の順序〕の①に
上記ロから、その所得の金額に係る下記
⑥に掲げる金額を控除する。
該当して、その額が加算されて分母が大きく
① 非課税所得の金額
なる分だけ租税負担割合が小さくなります。
② 損金算入支払配当等の額
その結果、A社が特定外国子会社等と判定さ
③ 損金算入外国法人税の額
れる可能性が高くなります。
④
2
我が国の法令により計算した場合の保
険準備金の繰入限度超過額
⑤
22 zeimu QA
せん。そのため、本件現物分配は適格現物分
は、次の順序で計算します(措令 39 の14 ②一)
。
ロ
公認会計士。同志社大
学大学院商学研究科修
了。
2003 年 10 月中央青山
監査法人京都事務所
(現 京都監査法人)
入所。07 年 8 月税理士
法人プライスウォータ
ーハウスクーパース入
所。
日系・外資系企業の
申告書作成など税務関
連業務に従事。
ご質問の場合、A社は内国法人ではありま
配に該当することはなく、現物分配する資産
イ
SHIRAI keiji
います(法法2十二の十五)
。
この租税負担割合の計算の分母となる金額
〔計算の順序〕
白井 啓資
に完全支配関係がある内国法人のみとされて
我が国の法令により計算した場合の保
適用対象金額の計算
X国で非課税とされるB社株式の譲渡益が
生じたことにより、A社の租税負担割合が
険準備金の取崩し不足額
20 %以下となった場合、A社が特定外国子
⑥ 益金算入外国法人税の額
会社等に該当することになります。A社が適
①の非課税所得の金額とは、本店所在地国
用除外要件を充足しない限り、A社の適用対
の法令により外国法人税の課税標準に含まれ
象金額は日本で合算課税の対象となります。
ないこととされる所得の金額とされています
特定外国子会社等の適用対象金額の計算の
(措令 39 の 14 ②一イ)。ご質問によると、A
一要素となる基準所得金額の計算は、日本の
社によるB社株式の現物分配に関して、X国
法令に準拠して計算する方法と本店所在地国
で課税が生じていないとのことです。したが
の法令に準拠して計算する方法のいずれかを
って、本件現物分配が非課税所得に該当する
選択できますが、原則として一度選択した方
か否かを検討する必要があります。
法を継続する必要があります(措令39の15⑨)
。
(3)適格現物分配の判定
(1)日本の法令に準拠して計算する方法
我が国の法人税法上、適格現物分配とされ
この方法は、特定外国子会社等の各事業年
る現物分配は、内国法人を現物分配法人とす
度の決算に基づく所得の金額について、法人
2011.9
CASE 1
外国子会社が行う現物配当の留意事項
特定外国子会社等が適用除外基準を満たす
します(措令 39 の 15 ①)。ただし、法人税法
場合であったとしても、当該特定外国子会社
のすべての規定が適用されるわけではなく、
等が、2010 年4月1日以後に開始する各事
一部の規定については適用されません。その
業年度において、下記に掲げる「特定所得の
適用のない規定には、法人税法 6 1 条の 1 3
金額」を有するときは、その金額の合計額
(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
(「部分適用対象金額」といいます。)に内国
及び法人税法 62 条の5(現物分配による資
法人の当該特定外国子会社等に対する株式等
産の譲渡)第3項から第6項なども含まれて
の保有割合に応じた金額が、内国法人の益金
います。
の額に算入されます(措法66 の6④)
。
本件現物分配に係る B 社株式の譲渡益につ
ただし、部分適用対象金額(=特定所得の
いては、前述のとおり適格現物分配に該当せ
金額の合計額)が下記(イ)
(ロ)のいずれかで
ず、また法人税法 61 条の 13 が適用される余
ある場合は、内国法人への益金算入、すなわ
地もないため、基準所得金額に含まれること
ち合算課税の対象にはなりません(措法 66
になります。
の6⑤)
。
(2)本店所在地国の法令に準拠して計算す
(イ)部分適用対象金額に係る収入金額が、
1千万円以下である場合
(ロ)部分適用対象金額が、当該特定外国子
業年度の決算に基づく所得の金額について、
会社等の所得金額の5%相当額以下であ
本店所在地国の法人所得税に関する法令によ
る場合
なお、特定所得とは、以下に掲げる金額を
り計算した所得の金額に一定の調整を加えて
基準所得金額を算定します(措令 39 の 15 ②)。
いいます(措法 66 の6④一∼七)
。
これは、納税者の計算の便宜を考慮して規定
①
されたものですが、注意すべきは、この「一
特定法人株式等(保有割合 10 %未満の
株式等)の配当等
定の調整」に、本店所在地国の法令により外
② 債券の利子
国法人税の課税標準に含まれないこととされ
③ 債券の償還差益
る所得の金額、いわゆる非課税所得を加算す
④
ることが含まれているという点です(措令
39 の15 ②一)。
前述のとおり、本件現物分配に係る B 社株
式の譲渡益は非課税所得に該当すると考えら
CASE 1
る方法
こちらの方法は、特定外国子会社等の各事
Selection Q&A
税法及び租税特別措置法の規定に従って計算
特定法人株式等(保有割合 10 %未満の
株式等)の譲渡益
⑤ 債券の譲渡益
⑥ 使用料
事例のポイント
⑦ 船舶・航空機リース料
れます。したがって、本店所在地国の法令に
A社はB社株式の 100 %を保有しています
海外子会社の資本関係
準拠する方法を採っても、(1)と同様に基準
ので、B社株式の譲渡益は上記④の特定法人
によって再構築する際
所得金額の計算で加算する必要があります。
株式等の譲渡益には該当しません。したがっ
3
て、A社が適用除外要件を充足する場合、B
適用除外基準を満たす場合の取扱い
最後に、「特定外国子会社等が適用除外基
準を満たす場合」について見てみます。
社株式の譲渡益は特定所得に該当せず、合算
課税の対象に含まれません。
を組織再編や現物分配
には、現地での課税関
係だけでなく、タック
スヘイブン税制の適用
関係についても慎重に
検討する必要がありま
す。
2011.9
zeimu QA 23
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