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5 事業譲渡を行った場合の 課税関係について C A S E
Selection 事業譲渡を行った場合の 課税関係について 税理士法人プライスウォーター ハウスクーパース 公認会計士・税理士 C A S E 5 中田 幸康 参 考 UESTION 法法 61 の 13、62 の 8 法令 122 の 14 グループ間事業譲渡の課税関係 123 の 10 内国法人 A 社は、内国法人 B 社及び内 を教えてください。 国法人 C 社の株式の 100%を保有してお なお、A 社グループは連結納税制度を採 ります。このたび、A 社グループ内の事業 用しておりません。 再構築の一環として、C 社の事業の一部を 〔図〕A社グループ内の事業再構築 〔図〕参照)。 この事業の統合にあたっては、事業譲渡 の手法により行う予定です。事業譲渡の対 価は、当該事業の時価と同額の現金とし、 Selection Q&A B 社に統合することとなりました(右記 A社 100% 100% B社 C社 時価の算定は第三者に鑑定評価を依頼する 予定です。 事業譲渡 内国法人が事業の譲渡/譲受を行う CASE 5 この場合の、B 社及び C 社の課税関係 (1)譲渡側(C 社)の課税関係 場合には、当該事業を時価で取引する 資産の譲渡にあたっては、その時価で取引 こととなります。その際、時価と簿価との間 を行うことが原則となります。ここでいう資 に差額が生じることが多々あります。この差 産には、有形の資産・負債の他、無形の資産 額については、原則として、譲渡側では当該 も含まれます。事業譲渡の場合には、有形の 事業の譲渡損益が認識され、課税所得の計算 資産・負債の他、無形の価値も移転するもの に組み込まれることとなります。 と考えられますので、個別の有形資産・負債 他方、譲受側では各資産・負債を時価で受 について時価評価を行った上、このような無 け入れるとともに、各資産・負債の時価の総 形資産についてもその時価評価を行い、事業 中田 幸康 額と譲受対価の差額を資産調整勘定もしくは 譲渡の対価が決定されることとなります。 NAKATA yukiyasu 負債調整勘定として計上し、償却を行うこと 譲渡側においては有形資産・負債及び無形 となります。 資産の対価と各資産の簿価との差額は、資産 また、100%グループ法人間で事業譲渡を の譲渡損益として認識され、課税所得計算に 行った場合には、グループ税制が適用される 組み込まれることとなります。 ため、一定の資産の譲渡損益については繰り (2)譲受側(B 社)の課税関係 延べられることとなります。 解説 譲受側については、譲り受けた資産・負債 の個別の時価を使用して帳簿価額を決定する 1 事業譲渡時の課税関係 こととなります。このとき、 「個別の資産と負 事業譲渡時の譲渡側ならびに譲受側の原則 債の時価評価額の合計額」と「事業譲渡の対 的な課税関係は以下のようになります。 価の総額」が異なるケースがあります。この 場合の差額は税務上、資産調整勘定もしくは 2012.7 公認会計士、 税理士。 1996年より大手監査法 人にて監査業務に従事。 2001年 10月税 理 士 法 人プライスウォーター ハウスクーパースに入 所。2005年11月から約 3年 半のドイツ赴 任を 経 て、2009年6月 よ り 日本に復帰。主として 国際税務ならびに組織 再編等の税務アドバイ ス業務に従事。最近で は、環境関連税制への 関与も行っている。 ま た、2004年3月 国 際 会計学修士を取得して いる。 zeimu QA 37 Selection C A S E 5 CASE 5 事業譲渡を行った場合の課税関係について 負債調整勘定として処理をすることとなりま グループ税制が適用されることに留意が必要 す(法法 62 の8①②③)。 です。 ① 退職給付債務引受額 従業員を引き継いだ場合、その退職給付債 グループ税制においては、100%グループ 務を引き継ぐ場合があります。このような場 内の法人で発生した特定の資産(譲渡損益調 合には、一定の金額を退職給付債務引受額と 整資産)の譲渡等については、その譲渡損益 して負債調整勘定に計上することとなります を繰り延べることとなります(法法 61 の 13)。 (法法 62 の8②一)。 したがって、事業譲渡の対象資産に譲渡損益 退職給付債務から発生した負債調整勘定は、 調整資産が含まれている場合には、留意が必 原則として対象となった従業者が退職をした 要です。 時に取崩しが行われることとなります(法法 譲渡損益調整資産には、以下の資産が含ま 62 の8⑥一)。 れます(法法 61 の 13 ①)。 ② 短期重要債務見込額 ① 固定資産 移転を受けた事業等につき、3年以内に事 ② 土地(土地の上に存する権利を含み、固 業の利益に重大な影響を与える債務(短期重 定資産に該当するものを除く。) 要債務見込額)が発生することが見込まれる ③ 有価証券 ような場合、この短期重要債務見込額につい ④ 金銭債権 ては負債調整勘定として計上することとなり ⑤ 繰延資産 ます。 他方、以下の資産については、譲渡損益調 短期重要債務見込額に係る負債調整勘定は、 整資産から除かれます(法令 122 の 14 ①)。 当該負債が発生するか事業譲渡の後3年が経 ① 売買目的有価証券 過した場合等に取崩しが行われることとなり ② 譲渡を受けた法人において売買目的有価 ます(法法 62 の8⑥二)。 ③ 資産調整勘定及び負債調整勘定 証券として取り扱われる有価証券 ③ 譲渡した法人における譲渡直前の一単位 上記の①②の調整を行った後に、個別の資 あたりの帳簿価額が、1,000 万円未満の資 産と負債の時価評価額の合計額と事業譲渡の 産 対価の総額に差額がある場合には、その差額 なお、資産調整勘定は通常、譲渡直前の帳 は税務上、資産調整勘定もしくは負債調整勘 簿価額が存在しないため、譲渡損益調整資産 定として計上されることとなります(法法 62 に含まれることとなります。 の8①③)。 (2)譲受側(B 社)の課税関係 当該資産調整勘定及び負債調整勘定は、60 譲受側はグループ税制の下でも資産・負債 か月で取り崩されることとなります(法法 62 を時価で受け入れることとなるため、上記 1 の8⑦)。 2 グループ間取引の課税関係 事業譲渡の場合の原則的な課税関係は、上 38 zeimu QA (1)譲渡側(C 社)の課税関係 (2)の課税関係と特に異なるところはありま せん。 (3)寄附修正 記 1 で述べた通りですが、100%グループに グループ法人内において、時価と異なる対 属する会社間で事業譲渡を行った場合には、 価で事業譲渡を行った場合、その差額は寄附 2012.7 CASE 5 事業譲渡を行った場合の課税関係について 上記の例では、A 社において、 本件において、仮に C 社が B 社に対して時 借)B 社株式 貸)利益積立金 価より低額で事業を譲渡した場合には、 「C 社 借)利益積立金 貸)C 社株式 に寄附金、B 社に受贈益」が発生することに という仕訳が必要になります。 なります。 3 消費税の取扱い なお、グループ法人間における寄附金及び 事業譲渡は、その契約が個別資産の譲渡と 受贈益は、原則として全額損金不算入及び益 なりますので、資産ごとに消費税の課税・非 金不算入となります。 課税の判定が必要になります。 さらに、グループ法人間において寄附金及 特に土地や債権等が譲渡資産に含まれる場 び受贈益が発生した場合には、株主において 合には、当該事業譲渡は消費税法上の非課税 寄附修正の必要性があることにも留意が必要 取引に該当します。 事例のポイント です。 事業譲渡にあたっては、 会計上の営業権と税務 コメント 上の資産調整勘定と負 Selection Q&A 金及び受贈益として取り扱われます。 債調整勘定の考え方は 事業譲渡の場合には、グループ税制の対象 大きく異なることとな 整勘定及び負債調整勘定として、税法独特 となりますので、各譲渡資産が譲渡損益調 ります。 の処理が行われることとなります。 整資産に該当するか否かの確認も重要とな また、100%のグループ法人内における ります。 このため、事業譲渡の 場合の繰延税金資産・ 負債の計上にも留意が 必要です。 ●会計上・税務上の経理処理や申告調整方法等も織り込みわかりやすく解説! Q&A 会社法・会計と法人税の異同点 成松 洋一 著 A5判・240頁 定価2,310円(税込) ◇本書は、会社法、企業会計と法人税の異同点とその調整を テーマに組織再編成、 資本等取引、 有価証券の譲渡損益等、 資産の評価損、 リース取引などの項目を取り上げ、77のQ&A でわかりやすく解説しています。 ◇会計上・税務上の経理処理や別表四、五(一)の申告調整 等を織り込み、関連する判例や裁決例も参考として掲載し ています。 お問い合わせ・お申し込みは 税務研究会 お客さまサービスセンター 〒101-0065 東京都千代田区西神田1-1-3(税研ビル) TEL 03(3294)4741 FAX 03(3233)0197 http://www.zeiken.co.jp 2012.7 zeimu QA 39 CASE 5 事業譲渡にあたっては、税務上は資産調